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こんにちは。
ちょっぴりおセンチな話を書いてしまいました(恥)。
なんかふいに、書きたくなりました。
クロスボックスはどこなんだとは聞かないで~。
何かあったら、水瓶座の黄金聖衣がとんでくるはず・・・。
ちょっぴりおセンチな話を書いてしまいました(恥)。
なんかふいに、書きたくなりました。
クロスボックスはどこなんだとは聞かないで~。
何かあったら、水瓶座の黄金聖衣がとんでくるはず・・・。
ちゃらちゃらと音楽が流れ、どこもかしこも赤や緑や金色で飾られた街の中を一輝は歩いていた。
クリスマスというものがあることは知っている。
子供の頃、孤児院に一度だけサンタクロースが来たことがあった。
そのときに一輝は靴を、瞬はセーターを貰った。
履いていた靴が破れていたので、少しサイズは大きかったが重宝した。
今年は、瞬がどうしても一緒に過ごしたいと言うので、一輝はその時を城戸邸で過ごすことにした。
この場合、何か手土産でも用意すべきなのか。
弟たちの喜びそうなものを探しながら、ぶらぶらと街を歩いてゆく。
と、そこに見知った顔を見つけた。
氷河。
華やかな街の喧騒など、まるで関係ないという顔をしている。
Tシャツに薄いコート一枚ひっかけて、片手には小さな鞄。
ああ、もしかしてシベリアへ帰るのか?
一輝は思わず気配を消して、氷河の姿を追いかけた。
クリスマスにはシベリアへ帰るのだと聞いたことがある。
帰るったって、そこにはもう誰もいない。
氷の海の底に母親の遺体と、自分で建てた墓標が二つ。
奴の気持ちもわからないではない。
だが、傍から見るのはいやなものだ。
あの薄っぺらいコートから覗いている、冷え切った白い指先のように。
街を歩く二人連れは、大抵腕を組んだり、手をつないだりしている。
何かを母親にねだって泣いている子供。
キラキラとした飾りを胸元にあてて、鏡を覗き込んでいる少女達。
氷河は薄い唇を引き結んだまま、駅に向かって歩いている。
どうして奴があんな風に、笑いもせずに一人で歩かねばならないのか。
心を海に沈めねばならないのか。
店の音楽が少し遠くなる。
人々の足が少し早くなる。
駅が近い。
ビルの前に、ひと際大きなクリスマスツリーが飾られていた。
無数に光る、金色のベル。赤いリボン。
そこで氷河は初めて顔をあげ、きらびやかなツリーを一瞥した。
ほんの一瞬。
お前は何を思い出した?
前よりも少し細い後ろ姿。
近寄って行って蹴りとばしてやった。
2、3歩よろめいたのち、氷河は振り返った。
「ああ、一輝か。」
「シベリアへ行くのか?」
「そうだ。」
答えと同時に、こめかみに右足が飛んでくる。
蹴られたら蹴り返さねば気が済まぬらしい。
片手で防ぐと、ちっと小さく舌打ちが聞こえた。
「じゃあな。」
「ああ」
だからそんな風に。
心を殺すな。
後ろ姿を抱きしめる。
冷たい耳に、頬を押し付ける。
「待っててやる。挨拶を済ませたら、ここへ、帰ってこい。」
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ちゃらちゃらと音楽が流れ、どこもかしこも赤や緑や金色で飾られた街の中を一輝は歩いていた。
クリスマスというものがあることは知っている。
子供の頃、孤児院に一度だけサンタクロースが来たことがあった。
そのときに一輝は靴を、瞬はセーターを貰った。
履いていた靴が破れていたので、少しサイズは大きかったが重宝した。
今年は、瞬がどうしても一緒に過ごしたいと言うので、一輝はその時を城戸邸で過ごすことにした。
この場合、何か手土産でも用意すべきなのか。
弟たちの喜びそうなものを探しながら、ぶらぶらと街を歩いてゆく。
と、そこに見知った顔を見つけた。
氷河。
華やかな街の喧騒など、まるで関係ないという顔をしている。
Tシャツに薄いコート一枚ひっかけて、片手には小さな鞄。
ああ、もしかしてシベリアへ帰るのか?
一輝は思わず気配を消して、氷河の姿を追いかけた。
クリスマスにはシベリアへ帰るのだと聞いたことがある。
帰るったって、そこにはもう誰もいない。
氷の海の底に母親の遺体と、自分で建てた墓標が二つ。
奴の気持ちもわからないではない。
だが、傍から見るのはいやなものだ。
あの薄っぺらいコートから覗いている、冷え切った白い指先のように。
街を歩く二人連れは、大抵腕を組んだり、手をつないだりしている。
何かを母親にねだって泣いている子供。
キラキラとした飾りを胸元にあてて、鏡を覗き込んでいる少女達。
氷河は薄い唇を引き結んだまま、駅に向かって歩いている。
どうして奴があんな風に、笑いもせずに一人で歩かねばならないのか。
心を海に沈めねばならないのか。
店の音楽が少し遠くなる。
人々の足が少し早くなる。
駅が近い。
ビルの前に、ひと際大きなクリスマスツリーが飾られていた。
無数に光る、金色のベル。赤いリボン。
そこで氷河は初めて顔をあげ、きらびやかなツリーを一瞥した。
ほんの一瞬。
お前は何を思い出した?
前よりも少し細い後ろ姿。
近寄って行って蹴りとばしてやった。
2、3歩よろめいたのち、氷河は振り返った。
「ああ、一輝か。」
「シベリアへ行くのか?」
「そうだ。」
答えと同時に、こめかみに右足が飛んでくる。
蹴られたら蹴り返さねば気が済まぬらしい。
片手で防ぐと、ちっと小さく舌打ちが聞こえた。
「じゃあな。」
「ああ」
だからそんな風に。
心を殺すな。
後ろ姿を抱きしめる。
冷たい耳に、頬を押し付ける。
「待っててやる。挨拶を済ませたら、ここへ、帰ってこい。」
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