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以下はちょっぴりNDネタバレです
と言っても、テロメアという単語が出てくるってだけだけど・・・。
NDを読んでいて、「テロメア・・・なんてすばらしい言葉だ!」と思ったのは私だけではないだろう。
この魔法の言葉さえ唱えれば、子氷河だろうが子カミュだろうが、子デスだろうが子ミーノスだろうが。
紫龍爺さんだろうが、春麗ばあさんだろうが、なんだって書けてしまうのである。
というわけで、テロメアで妄想・・・。
登場人物は、氷河、サガ、カミュ。
カミュ先生が、こわれてます。
テロメア妄想 その1
午後、書類に目を通していたサガは、宝瓶宮からのただならぬ小宇宙を感じて顔をあげた。
午後、書類に目を通していたサガは、宝瓶宮からのただならぬ小宇宙を感じて顔をあげた。
それがまたどーでもいい、というより弟子馬鹿の錯乱した叫び声だと知って眉をしかめていると、部屋の扉がノックされ女神が現れた。
女神は至って平静だったが、そのそばに小さな子供を連れていた。
金髪碧眼、どこかで見たことのあるような顔。
女神は子供と目線を合わせるようにしゃがんで、そこに待つように言って聞かせると、サガの傍らにきて小声で告げた。
「氷河のテロメアが狂わされたので、今からクロノスと話をつけてきます。その間彼の子守りをお願いします。」
氷河の子守りをしたい人間なら、他にいるだろうとサガは思った。
「氷河は今8歳です。どうやらシベリアに来たばかりの様子。今のカミュと合わせると混乱するでしょうし、何よりも一緒にしておくと、少々危険という気もするのです。」
13歳の少女が冷静に言い放つのを、サガは複雑な思いで聞いた。
確かにサガも、さっきちらりと聞いてしまったのだ。
かわいい、かわいすぎる。いっそコフィってしまおうか・・・と。
「カミュは私の守護につかせますから、あなたはここで彼を見てあげてください。
氷河は8歳までに多少のトレーニングは積んできていますが、小宇宙にも目覚めていませんし、マザコンぶりもひどいもんです。しかしまぁ、普通の子供と思っていただければいいかと思います。ここに着替えがあります。宝瓶宮に保管されていた8歳の子供用と今の彼の分と。なるべく早く帰ってきますから、よろしくお願いします。」
有無を言わせず一気に話すと、女神は戸口の氷河に告げた。
「カミュと仕事に行ってきます。そこにいるお兄さんは、カミュと同じ黄金聖闘士です。しっかり言うことを聞くんですよ。」
なんという面倒な仕事だろう。
しかし、多分、氷河に罪はない。
少なくとも8歳の、今の氷河には。
コバルトブルーのTシャツと黒のパンツ、ぼろぼろのレッグウォーマーというおなじみの服装のまま小っちゃくなった氷河は、緊張した面持ちで両の拳をぐっと握りしめている。
「私はサガ。カミュが戻るまでよろしく。」
「よろしくお願いしますっ!」
カミュの指導によるものなのか、礼儀正しく頭を下げた。
もともと、子供は嫌いではない。
カミュやミロが幼かった頃を思い出して、サガはふと笑みを漏らした。
「お茶にしようか。」
ホットミルクとビスケットを差し出すと、氷河は素直に喜んで頬張った。
おいしそうに一枚を平らげると、サガに尋ねる。
「あの、アイザックも、カミュと一緒なんでしょうか?」
「アイザック?」
「一年先輩なんです。僕、気付いたら一人でここにいたんだけど・・・。」
「あ、ああ、彼のことか、そうだな、彼もカミュと一緒だ。」
慌てて話を合わせながら、彼が今は、もうこの世にはいないことにサガは思い当った。
「そっか、それなら安心しました。あのぅ、これ、半分持って帰ってもいいですか? アイザックも好きだと思うから。」
「それなら帰りにまたあげるから、これは君が食べなさい。」
「はい。」
氷河はにっこりとほほ笑むと、安心したようにもう一枚に手を伸ばした。
窓からの陽を受けて、金色の髪はキラキラと輝いている。
さながら天使のように。
氷河について、サガはこれといった印象を持ってはいない。
というより、弟子を思うカミュのインパクトが強すぎるのだと思う。
氷河本人については、無口で、感情を内に秘めた、氷の聖闘士というイメージ。
その氷河が子供の頃はこんなにも感情豊かな少年であったことに、サガはやや戸惑いを覚えた。
お茶の時間が済んでしまうと、後は何をして過ごせばいいものか。
普段なら無論トレーニングが待っているのだろうが、今の氷河を人目にさらすわけにもいかない。
そういえば、とサガは思い当って、隣室の書庫へと案内した。
「興味のある本はあるだろうか。」
教皇の間ではあるが、ここにはサガの本も置いてある。
子供の頃のカミュは、いつも嬉々として本を借りに来た。
このあたりの本は、多分あっという間に読破してしまったはずだ。
気に入った本を見つけると、もう他のものは目に入らなくなってしまう。ひどい時はその場に立ったまま、黙々と読み続けていることもあった。
そんな少年時代のカミュを思い出して、サガは笑みをこぼした。
追憶から我に返ると、氷河は困ったように背表紙を眺めている。
必死に文字を追っていくが、読めそうなものはほとんどない。
物理の専門書や哲学書、ラテン語の辞典に歴史書。
そんなものを8歳にして喜んだカミュが普通でないのだが、あいにくサガも同じような子供だった。
紅い顔をして、文字を睨んでいる氷河をみて、「ミロ・アイオリアタイプだったか」とサガは思った。
それにしては体つきが華奢で、あの二人のような爆発寸前のエネルギーといったものも感じられない。
ああ、本当に普通の子供だったんだなとサガは思った。
本当に、ごく普通の子供たち。
それが努力に努力を重ねて、奇跡を起こしたのだ。
やがて氷河は一冊の本を手に取った。
中世の宗教画を集めた本だった。
正直に言えば、氷河はまだギリシャ語が読めない。
絵なら何とかなると思ったのだ。
けれども眺めているうちに、一枚の絵に釘付けになった。
(この女の人、マーマみたい・・・。)
そんな風にして午後は、至って平穏に過ぎた。
共に過ごしているうちに、カミュがどうしてああなってしまったのか、サガにも少しわかるような気がしてきた。
スカイブルーの美しい瞳を輝かせて、氷河はよく笑った。
ごく短い時間しか過ごしていないのに、自分に対してすっかり心を許してしまったようだった。
疑うことを知らないのかと思うと、心のどこかが訳もなく痛む。
ああ、いっそコフィって・・・。
さっき聞いた声がよみがえってきて、サガはふるふると頭を振った。
従者が用意した夕食を氷河はせっせと食べ、片付けは自分がするといって泡だらけになりながら熱心に皿を洗った。
「食事が済んだら、風呂か。風呂だろうな・・・。」
何となくカミュに怒られそうな気がして、サガはひとり呟いた。
しかし一日の予定から入浴を省くということは、彼には考えられないことだった。
それでも8歳ともなれば、風呂は一人で入れるのである。
氷河は雪焼けしていないシャツの下の真っ白な肌をさらしながら、機嫌よく浴室に入ってゆき、やがてほかほかと湯気を立てながらあがってきた。
「広いお風呂なんですねぇ。城戸邸も広かったけど、あの時はみんなで入ってたからぎゅうぎゅうでした。僕、ちょっと泳いじゃった。アイザックに話したら、きっとうらやましがるだろうなぁ。」
そう言ってほほ笑む氷河の髪から、ポタポタと滴が垂れた。
「ほら、ちゃんと髪を拭かないと風邪をひくぞ。」
サガはタオルを手に取って、ごしごしとその金色の髪を拭いた。
「ふふ、いつもそれでカミュにも叱られるんです。でもここは暖かいから、風邪はひかないと思うけど。」
椅子に腰かけたサガに背中を預けるようにして髪を拭いてもらいながら、少年は甘えるように言った。
氷河が寝室に入って、サガはほっと溜息をついた。
クロノス神との話し合いは、まだ決着がつかないのだろうか・・・。
そう思いつつ、サガは夕刻から手つかずだった書類に目を落とした。
ほどなくして、部屋のドアが開いた。
顔をあげるとパジャマを着た氷河が、枕を抱いて立っている。
「あの・・・、カミュ先生は・・・まだなんでしょうか・・・?」
「ああ、なるべく早く帰ると聞いていたが、まだのようだ。・・・どうかしたか?」
「・・・海の音が、するみたいで・・・。」
「あの・・・、カミュ先生は・・・まだなんでしょうか・・・?」
「ああ、なるべく早く帰ると聞いていたが、まだのようだ。・・・どうかしたか?」
「・・・海の音が、するみたいで・・・。」
心細そうな声。サガは歩み寄って、肩に手を置いた。
先ほどまでの明るい様子とはうって変わって、瞳は涙に濡れていた。
しばらく一人で寝室にいたものの、こらえきれなくなって出てきたようだった。
「海?・・・今日は少し風が強いから、吹き上げてくる風の音が、波のように聞こえるのだろうか。」
氷河は枕に、鼻先を押し付けるようにしてうなずいた。
「海の底は、寒いし、さみしいと思う。
先ほどまでの明るい様子とはうって変わって、瞳は涙に濡れていた。
しばらく一人で寝室にいたものの、こらえきれなくなって出てきたようだった。
「海?・・・今日は少し風が強いから、吹き上げてくる風の音が、波のように聞こえるのだろうか。」
氷河は枕に、鼻先を押し付けるようにしてうなずいた。
「海の底は、寒いし、さみしいと思う。
どうして僕は、マーマを置いてきてしまったのかな・・・。」
顔をあげた氷河の瞳からは、大粒の涙がはらはらとこぼれた。
サガは氷河の顔を両手で包むようにして、涙に濡れた頬を親指でぬぐってやった。
サガは氷河の顔を両手で包むようにして、涙に濡れた頬を親指でぬぐってやった。
「母上は君のことを愛してくれたのだろう? だったら連れて行きたいなどと思ってはいない。君が頑張っている姿を、天国から見守っている。さみしくはないはずだ。」
不安げに揺れる瞳を優しく見つめながら、サガはその秀でた額を小さな額とこつんとあわせた。
「一緒に眠ろうか。怖い夢を見ないように。」
遠く吹きすさぶ風の音は、確かに波のようにも聞こえた。
忘れられないあの岬から、声を運ぶように。
闇に覆い尽くされた日々の中で、確かに自分もこの音を恐れていた気がする。
あまたの眠れぬ夜、見上げていた天井を、サガはわずかに睨むようにした。
広いベッドで向かい合うようにしてぎゅっと抱きしめてやると、安心したのか氷河はすぐに寝息をたて始めた。
温かくて、わずかに甘いにおいがする。
温かくて、わずかに甘いにおいがする。
子供の息遣いを間近に感じながら、いつしかサガも深い眠りに落ちていった。
覚えてはいないけれど、何だか幸せな夢を見た。
そう思って氷河は目を開けた。
起き上がろうとして、自分の上に乗せられた、腕の重みに気づく。
自分をしっかりと抱きしめている逞しい二本の腕。
寝息とともに規則正しく上下する、がっちりとした胸。
ナ、ナンダ! ココハドコダ! コレハダレダ!
声にならない叫びをあげながら見上げると、端正な顔と豪奢なプラチナブロンドが目に入った。
「ナ、ナ、何コレ―!!」
「あ、戻ったのか。」
目を覚ましたサガはのんびりとそう言ったが、パニックを起こしている少年を目にして我に返った。
昨夜彼が纏っていた子供用のパジャマは、体の変化について行かれずに破れ、申し訳程度に腕に絡みついているだけである。
氷河が上体を起こすと、引き裂かれた布切れがはらはらと落ちた。
それが子供サイズの服であったなど、氷河に気づく余裕はない。
当然のことながら、自分が破いたのではなく、破かれたのだと判断を下した。
とび退るようにベッドから降りると、今度は自分の全身を目にしてさらに顔を赤くした。
ひったくるようにシーツを手繰り寄せて、体に巻きつける。
「落ち着け、事情を話せばわかる。」
「じ、事情って、なんですかっ!」
「カミュも知っていることだ。大丈夫だ。何も、ない。何もしていない。
そうだ、クールだ。クールになれ、氷河っ!!」
その時、勢いよく部屋のドアが開いた。
振り返ったサガの瞳に、オーロラエクスキューションの構えが映った。
振り返ったサガの瞳に、オーロラエクスキューションの構えが映った。
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テロメア妄想 その1
午後、書類に目を通していたサガは、宝瓶宮からのただならぬ小宇宙を感じて顔をあげた。
午後、書類に目を通していたサガは、宝瓶宮からのただならぬ小宇宙を感じて顔をあげた。
それがまたどーでもいい、というより弟子馬鹿の錯乱した叫び声だと知って眉をしかめていると、部屋の扉がノックされ女神が現れた。
女神は至って平静だったが、そのそばに小さな子供を連れていた。
金髪碧眼、どこかで見たことのあるような顔。
女神は子供と目線を合わせるようにしゃがんで、そこに待つように言って聞かせると、サガの傍らにきて小声で告げた。
「氷河のテロメアが狂わされたので、今からクロノスと話をつけてきます。その間彼の子守りをお願いします。」
氷河の子守りをしたい人間なら、他にいるだろうとサガは思った。
「氷河は今8歳です。どうやらシベリアに来たばかりの様子。今のカミュと合わせると混乱するでしょうし、何よりも一緒にしておくと、少々危険という気もするのです。」
13歳の少女が冷静に言い放つのを、サガは複雑な思いで聞いた。
確かにサガも、さっきちらりと聞いてしまったのだ。
かわいい、かわいすぎる。いっそコフィってしまおうか・・・と。
「カミュは私の守護につかせますから、あなたはここで彼を見てあげてください。
氷河は8歳までに多少のトレーニングは積んできていますが、小宇宙にも目覚めていませんし、マザコンぶりもひどいもんです。しかしまぁ、普通の子供と思っていただければいいかと思います。ここに着替えがあります。宝瓶宮に保管されていた8歳の子供用と今の彼の分と。なるべく早く帰ってきますから、よろしくお願いします。」
有無を言わせず一気に話すと、女神は戸口の氷河に告げた。
「カミュと仕事に行ってきます。そこにいるお兄さんは、カミュと同じ黄金聖闘士です。しっかり言うことを聞くんですよ。」
なんという面倒な仕事だろう。
しかし、多分、氷河に罪はない。
少なくとも8歳の、今の氷河には。
コバルトブルーのTシャツと黒のパンツ、ぼろぼろのレッグウォーマーというおなじみの服装のまま小っちゃくなった氷河は、緊張した面持ちで両の拳をぐっと握りしめている。
「私はサガ。カミュが戻るまでよろしく。」
「よろしくお願いしますっ!」
カミュの指導によるものなのか、礼儀正しく頭を下げた。
もともと、子供は嫌いではない。
カミュやミロが幼かった頃を思い出して、サガはふと笑みを漏らした。
「お茶にしようか。」
ホットミルクとビスケットを差し出すと、氷河は素直に喜んで頬張った。
おいしそうに一枚を平らげると、サガに尋ねる。
「あの、アイザックも、カミュと一緒なんでしょうか?」
「アイザック?」
「一年先輩なんです。僕、気付いたら一人でここにいたんだけど・・・。」
「あ、ああ、彼のことか、そうだな、彼もカミュと一緒だ。」
慌てて話を合わせながら、彼が今は、もうこの世にはいないことにサガは思い当った。
「そっか、それなら安心しました。あのぅ、これ、半分持って帰ってもいいですか? アイザックも好きだと思うから。」
「それなら帰りにまたあげるから、これは君が食べなさい。」
「はい。」
氷河はにっこりとほほ笑むと、安心したようにもう一枚に手を伸ばした。
窓からの陽を受けて、金色の髪はキラキラと輝いている。
さながら天使のように。
氷河について、サガはこれといった印象を持ってはいない。
というより、弟子を思うカミュのインパクトが強すぎるのだと思う。
氷河本人については、無口で、感情を内に秘めた、氷の聖闘士というイメージ。
その氷河が子供の頃はこんなにも感情豊かな少年であったことに、サガはやや戸惑いを覚えた。
お茶の時間が済んでしまうと、後は何をして過ごせばいいものか。
普段なら無論トレーニングが待っているのだろうが、今の氷河を人目にさらすわけにもいかない。
そういえば、とサガは思い当って、隣室の書庫へと案内した。
「興味のある本はあるだろうか。」
教皇の間ではあるが、ここにはサガの本も置いてある。
子供の頃のカミュは、いつも嬉々として本を借りに来た。
このあたりの本は、多分あっという間に読破してしまったはずだ。
気に入った本を見つけると、もう他のものは目に入らなくなってしまう。ひどい時はその場に立ったまま、黙々と読み続けていることもあった。
そんな少年時代のカミュを思い出して、サガは笑みをこぼした。
追憶から我に返ると、氷河は困ったように背表紙を眺めている。
必死に文字を追っていくが、読めそうなものはほとんどない。
物理の専門書や哲学書、ラテン語の辞典に歴史書。
そんなものを8歳にして喜んだカミュが普通でないのだが、あいにくサガも同じような子供だった。
紅い顔をして、文字を睨んでいる氷河をみて、「ミロ・アイオリアタイプだったか」とサガは思った。
それにしては体つきが華奢で、あの二人のような爆発寸前のエネルギーといったものも感じられない。
ああ、本当に普通の子供だったんだなとサガは思った。
本当に、ごく普通の子供たち。
それが努力に努力を重ねて、奇跡を起こしたのだ。
やがて氷河は一冊の本を手に取った。
中世の宗教画を集めた本だった。
正直に言えば、氷河はまだギリシャ語が読めない。
絵なら何とかなると思ったのだ。
けれども眺めているうちに、一枚の絵に釘付けになった。
(この女の人、マーマみたい・・・。)
そんな風にして午後は、至って平穏に過ぎた。
共に過ごしているうちに、カミュがどうしてああなってしまったのか、サガにも少しわかるような気がしてきた。
スカイブルーの美しい瞳を輝かせて、氷河はよく笑った。
ごく短い時間しか過ごしていないのに、自分に対してすっかり心を許してしまったようだった。
疑うことを知らないのかと思うと、心のどこかが訳もなく痛む。
ああ、いっそコフィって・・・。
さっき聞いた声がよみがえってきて、サガはふるふると頭を振った。
従者が用意した夕食を氷河はせっせと食べ、片付けは自分がするといって泡だらけになりながら熱心に皿を洗った。
「食事が済んだら、風呂か。風呂だろうな・・・。」
何となくカミュに怒られそうな気がして、サガはひとり呟いた。
しかし一日の予定から入浴を省くということは、彼には考えられないことだった。
それでも8歳ともなれば、風呂は一人で入れるのである。
氷河は雪焼けしていないシャツの下の真っ白な肌をさらしながら、機嫌よく浴室に入ってゆき、やがてほかほかと湯気を立てながらあがってきた。
「広いお風呂なんですねぇ。城戸邸も広かったけど、あの時はみんなで入ってたからぎゅうぎゅうでした。僕、ちょっと泳いじゃった。アイザックに話したら、きっとうらやましがるだろうなぁ。」
そう言ってほほ笑む氷河の髪から、ポタポタと滴が垂れた。
「ほら、ちゃんと髪を拭かないと風邪をひくぞ。」
サガはタオルを手に取って、ごしごしとその金色の髪を拭いた。
「ふふ、いつもそれでカミュにも叱られるんです。でもここは暖かいから、風邪はひかないと思うけど。」
椅子に腰かけたサガに背中を預けるようにして髪を拭いてもらいながら、少年は甘えるように言った。
氷河が寝室に入って、サガはほっと溜息をついた。
クロノス神との話し合いは、まだ決着がつかないのだろうか・・・。
そう思いつつ、サガは夕刻から手つかずだった書類に目を落とした。
ほどなくして、部屋のドアが開いた。
顔をあげるとパジャマを着た氷河が、枕を抱いて立っている。
「あの・・・、カミュ先生は・・・まだなんでしょうか・・・?」
「ああ、なるべく早く帰ると聞いていたが、まだのようだ。・・・どうかしたか?」
「・・・海の音が、するみたいで・・・。」
「あの・・・、カミュ先生は・・・まだなんでしょうか・・・?」
「ああ、なるべく早く帰ると聞いていたが、まだのようだ。・・・どうかしたか?」
「・・・海の音が、するみたいで・・・。」
心細そうな声。サガは歩み寄って、肩に手を置いた。
先ほどまでの明るい様子とはうって変わって、瞳は涙に濡れていた。
しばらく一人で寝室にいたものの、こらえきれなくなって出てきたようだった。
「海?・・・今日は少し風が強いから、吹き上げてくる風の音が、波のように聞こえるのだろうか。」
氷河は枕に、鼻先を押し付けるようにしてうなずいた。
「海の底は、寒いし、さみしいと思う。
先ほどまでの明るい様子とはうって変わって、瞳は涙に濡れていた。
しばらく一人で寝室にいたものの、こらえきれなくなって出てきたようだった。
「海?・・・今日は少し風が強いから、吹き上げてくる風の音が、波のように聞こえるのだろうか。」
氷河は枕に、鼻先を押し付けるようにしてうなずいた。
「海の底は、寒いし、さみしいと思う。
どうして僕は、マーマを置いてきてしまったのかな・・・。」
顔をあげた氷河の瞳からは、大粒の涙がはらはらとこぼれた。
サガは氷河の顔を両手で包むようにして、涙に濡れた頬を親指でぬぐってやった。
サガは氷河の顔を両手で包むようにして、涙に濡れた頬を親指でぬぐってやった。
「母上は君のことを愛してくれたのだろう? だったら連れて行きたいなどと思ってはいない。君が頑張っている姿を、天国から見守っている。さみしくはないはずだ。」
不安げに揺れる瞳を優しく見つめながら、サガはその秀でた額を小さな額とこつんとあわせた。
「一緒に眠ろうか。怖い夢を見ないように。」
遠く吹きすさぶ風の音は、確かに波のようにも聞こえた。
忘れられないあの岬から、声を運ぶように。
闇に覆い尽くされた日々の中で、確かに自分もこの音を恐れていた気がする。
あまたの眠れぬ夜、見上げていた天井を、サガはわずかに睨むようにした。
広いベッドで向かい合うようにしてぎゅっと抱きしめてやると、安心したのか氷河はすぐに寝息をたて始めた。
温かくて、わずかに甘いにおいがする。
温かくて、わずかに甘いにおいがする。
子供の息遣いを間近に感じながら、いつしかサガも深い眠りに落ちていった。
覚えてはいないけれど、何だか幸せな夢を見た。
そう思って氷河は目を開けた。
起き上がろうとして、自分の上に乗せられた、腕の重みに気づく。
自分をしっかりと抱きしめている逞しい二本の腕。
寝息とともに規則正しく上下する、がっちりとした胸。
ナ、ナンダ! ココハドコダ! コレハダレダ!
声にならない叫びをあげながら見上げると、端正な顔と豪奢なプラチナブロンドが目に入った。
「ナ、ナ、何コレ―!!」
「あ、戻ったのか。」
目を覚ましたサガはのんびりとそう言ったが、パニックを起こしている少年を目にして我に返った。
昨夜彼が纏っていた子供用のパジャマは、体の変化について行かれずに破れ、申し訳程度に腕に絡みついているだけである。
氷河が上体を起こすと、引き裂かれた布切れがはらはらと落ちた。
それが子供サイズの服であったなど、氷河に気づく余裕はない。
当然のことながら、自分が破いたのではなく、破かれたのだと判断を下した。
とび退るようにベッドから降りると、今度は自分の全身を目にしてさらに顔を赤くした。
ひったくるようにシーツを手繰り寄せて、体に巻きつける。
「落ち着け、事情を話せばわかる。」
「じ、事情って、なんですかっ!」
「カミュも知っていることだ。大丈夫だ。何も、ない。何もしていない。
そうだ、クールだ。クールになれ、氷河っ!!」
その時、勢いよく部屋のドアが開いた。
振り返ったサガの瞳に、オーロラエクスキューションの構えが映った。
振り返ったサガの瞳に、オーロラエクスキューションの構えが映った。
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この記事へのコメント
プライベートでの14歳氷河の魅力は言わずもがなですから、無邪気な子氷河の誰をも虜にしてしまう魅力は言わずもがなでしょうねv
Re:無題
コメント、ありがとうございます。
先日アニメの子氷河をちょっとだけ見たのですが、圧倒的なかわいらしさでした!!
本当に、みんな虜です。
サガは師匠ではないので、存分に甘やかせばいいのにと思いました。
先日アニメの子氷河をちょっとだけ見たのですが、圧倒的なかわいらしさでした!!
本当に、みんな虜です。
サガは師匠ではないので、存分に甘やかせばいいのにと思いました。
2011/12/06(火) 08:53 | ふうこ
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