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一輝は氷河(Bスワ)の手を引いて屋敷の階段を下り、重たい一枚板のドアを開けようとしたところで瞬と鉢合わせた。押そうとしたドアが勝手に動いたので、一輝は少し前のめりになった。首からかけたタオルで汗を拭く瞬は、早朝のジョギングを終えたところのようだ。
「あれ? 兄さん・・・と氷河?」
瞬は珍しそうに二人の顔を交互に見つめると、つながれている手に気づいた。視線を感じて一輝は慌ててその手を放したが、
「出かけてくる」
そう言って再び氷河の手を引っ張った。
「あ、朝ご飯は?」
「いらん」
一輝は氷河の手を引いて走り、氷河の方は大人しく手を引かれたままちらりとこちらを振り返った。
「変なの」
顔を合わせれば喧嘩ばかりだと言うのに、どうもあの二人のことはよくわからない。拳を交えた者同士の暗黙の了解のようなものがあって、ごくたまに入り込めない気がするときがある。喧嘩を目にする度お互いもっと素直になればいいのにと思うけれど、そうなったら二人きりでどっかに行っちゃう気がする。
「手なんかつないじゃって。一線越えちゃった?」
呟くと、妙に従順そうな氷河の顔が思い出されて、瞬は頭を横に振った。
庭だけでも相当な広さがあった。門を出たところで、ようやく一輝は氷河の手を放した。
スワンとしてはずっとつないでいたい気分であったが、大通りに出ると朝でもそれなりに人が歩いている。
「まずは飯だな。・・・と言ってもこの時間だとコンビニくらいか」
目的を定めたようで、一輝は前を向いてずんずんと歩いてゆく。その背中は、記憶にあるものより一回り大きくなった気がする。あの頃のようなピリピリと張り詰めた気配はないのに、あの頃よりずっと強くなったことがわかる。ほれぼれする背中だ。そう思うのは自分だけではないようで、時折すれ違う人の視線を感じる。
どうだ、これが俺の一輝様だ。
そう叫びたい気持ちでぶつけられた視線を振り返ると、3人寄り添うように立っている女子高生が、口元に手をやってピョンピョンとはねた。
あ・・・。
スワンは女子高生の後ろの、窓ガラスに映る自分の姿に気づいた。
豪奢な金髪の、貴公子然とした姿がそこにはあった。一輝にだけ投げかけられていると思っていた視線は、自分が動かしているこの躰にも向けられていたものだった。
(くそう、派手な奴・・・)
男の自分から見ても嫌になる程の美貌に苛立ち、それからそんな男が身に着けようとしていたもっさりしたレッグウォーマーを思い出して、スワンは小さく笑った。
「どうした?」
一輝が振り返る。
「あ、いえ」
飛びつきたい思いをこらえて、スワンは一輝に駆け寄った。
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一輝は氷河(Bスワ)の手を引いて屋敷の階段を下り、重たい一枚板のドアを開けようとしたところで瞬と鉢合わせた。押そうとしたドアが勝手に動いたので、一輝は少し前のめりになった。首からかけたタオルで汗を拭く瞬は、早朝のジョギングを終えたところのようだ。
「あれ? 兄さん・・・と氷河?」
瞬は珍しそうに二人の顔を交互に見つめると、つながれている手に気づいた。視線を感じて一輝は慌ててその手を放したが、
「出かけてくる」
そう言って再び氷河の手を引っ張った。
「あ、朝ご飯は?」
「いらん」
一輝は氷河の手を引いて走り、氷河の方は大人しく手を引かれたままちらりとこちらを振り返った。
「変なの」
顔を合わせれば喧嘩ばかりだと言うのに、どうもあの二人のことはよくわからない。拳を交えた者同士の暗黙の了解のようなものがあって、ごくたまに入り込めない気がするときがある。喧嘩を目にする度お互いもっと素直になればいいのにと思うけれど、そうなったら二人きりでどっかに行っちゃう気がする。
「手なんかつないじゃって。一線越えちゃった?」
呟くと、妙に従順そうな氷河の顔が思い出されて、瞬は頭を横に振った。
庭だけでも相当な広さがあった。門を出たところで、ようやく一輝は氷河の手を放した。
スワンとしてはずっとつないでいたい気分であったが、大通りに出ると朝でもそれなりに人が歩いている。
「まずは飯だな。・・・と言ってもこの時間だとコンビニくらいか」
目的を定めたようで、一輝は前を向いてずんずんと歩いてゆく。その背中は、記憶にあるものより一回り大きくなった気がする。あの頃のようなピリピリと張り詰めた気配はないのに、あの頃よりずっと強くなったことがわかる。ほれぼれする背中だ。そう思うのは自分だけではないようで、時折すれ違う人の視線を感じる。
どうだ、これが俺の一輝様だ。
そう叫びたい気持ちでぶつけられた視線を振り返ると、3人寄り添うように立っている女子高生が、口元に手をやってピョンピョンとはねた。
あ・・・。
スワンは女子高生の後ろの、窓ガラスに映る自分の姿に気づいた。
豪奢な金髪の、貴公子然とした姿がそこにはあった。一輝にだけ投げかけられていると思っていた視線は、自分が動かしているこの躰にも向けられていたものだった。
(くそう、派手な奴・・・)
男の自分から見ても嫌になる程の美貌に苛立ち、それからそんな男が身に着けようとしていたもっさりしたレッグウォーマーを思い出して、スワンは小さく笑った。
「どうした?」
一輝が振り返る。
「あ、いえ」
飛びつきたい思いをこらえて、スワンは一輝に駆け寄った。
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