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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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続きです。

拍手[17回]




新しい客の姿を見て、ラダマンティスは眉をひそめる。
面倒な奴が来た・・・。
一体何の用があってケーキ屋などに来たのか、長い前髪の男は、部下一名を連れて案内を待っていた。待つ間に店内を見渡した彼は、まずは不死鳥の席を眺めてにやりと笑い、ついでパンドラとラダマンティスに気が付くと、驚いた顔をして軽く目礼し、何か思いを巡らしているようだった。
こいつにだけは見られたくなかったと、ラダマンティスは思った。
ミーノスは店員に何やら告げると、つかつかとこちらへ歩み寄ってきた。そうして不死鳥のそばで立ち止まると、ぶしつけに少女の顔を覗き込んだ。
「何か用か。」
不死鳥が声をかけるが目を向ける気配はない。少女の方はといえば、不自然なほどうつむいてケーキを食べ続けている。ミーノスは少女の顔に手をかけると、無理やり自分の方へと向き直らせた。
いくらなんでも失礼だと、ラダマンティスが立ち上がりかけたところで、ミーノスの声が響いた。
「聖衣を脱いだ君が、こんなにかわいらしいとは思いませんでしたよ、キグナス。」
ギクッと肩をすくめた少女は、やがて開き直ったようにフォークを置くと、ミーノスを睨みつけた。
「これはどういう茶番ですか?場合によっては、許すわけにはいきませんね。」
 
「キグナス・・・?!」
ラダマンティスは記憶をたどり、そういえばハーデス城に乗り込んできた青銅聖闘士に、生意気そうな金髪の小僧がいたなと思い当った。
あの小僧が、一体何の訳あって、女の格好で不死鳥といちゃついているのか。
そもそも何故ハーデス様は、今日この時間にと指定して、自分にパンドラ様を案内させたのか。
いやな予感がもやもやと形になるのを感じながら顔をあげると、パンドラの視線が刺さった。その瞳は不信の色に染まっていた。
「わ、私は何も知ら・・・。」
上ずった自分の声は、どこか遠くから聞こえてくるような気がした。
カタン、と椅子の音がして、パンドラが立ち上がった。
ラダマンティスは慌ててその後を追う。
 
パンドラは夜の闇を思わせる深く黒い瞳でまっすぐに一輝を見据えた。
一輝は腕を組み、じっと目を閉じている。
キグナスは唇をかんで、ミーノスを睨んでいる。
女神とは休戦中である。こんな市街地で、神の意志を無視して戦いを再開するわけにはいかない。
「一体どういうことだ。」
とに角事情を整理しようとラダマンティスが口を開いた途端、はじかれたようにキグナスが立ち上がった。
「とぼける気か!卑怯者っ!」
怒りの矛先を見つけて一気に吐き出そうとした言葉を、しかし氷河は飲み込まざるを得なかった。
氷河の背後で立ち上がった一輝が、腕を引いて抱き寄せると深く口づけたからだった。
あっけにとられて開いている唇に、熱い舌が容赦なく入ってくる。
ななな・・・・?!
氷河は羞恥と怒りで、目の前がチカチカした。
張り倒してやろうかと思ったが、がっちりと体を抑え込まれていて、身動きすらままならない。
無遠慮な唇がようやく離れていったとき、氷河はへなへなと脱力しそうになった。
「俺とこいつがつきあっていると、何か問題があるのか。」
耳慣れた低い声が何か喋っている。
「もうずいぶんと前から、こいつは俺のものと決まっている。いきなり割り込んできて、茶番とはずいぶん失礼な言い草だな。」
はったりが得意な奴だとは思っていたが、ここにきてこのクソ度胸はある意味尊敬に値する。しかし、しかし、自分の立場は一体どうなるのだろう・・・?
一輝の腕の中から、氷河はちらりと視線を走らせた。
何やら言葉を失っている風の男二人の間に、じっと唇を噛んでいる少女の姿が見えた。
好きになった男に男の恋人がいたらショックだろう。
しかし好きになった男が、自分との交際を断るために、女装させた男を恋人に仕立ててきたら、もっとショックに違いない。
そんなことをぼんやりと氷河は考えた。
「キグナス、一輝の言っていることは本当か・・・?」
パンドラが小さな声でそう問うたとき、氷河は腕をほどくよう目だけで一輝に伝えると、少女の方にまっすぐに向き直った。
「・・・俺の命は、こいつに預けてある。そうやってずっと、戦ってきた。」
言ってからそれは、嘘ではないと気付く。
この男がいなければ、もうずっと前に、自分は命を手放していただろう。
気付いたら気付いたで猛烈に恥ずかしくなって、氷河は目をそらしてうつむいた。顔が熱い。きっと耳まで赤くなっている。
「・・・フフ・・・」
やがてパンドラの赤い唇から、不敵な笑みがこぼれた。
「まぁ、よかろう。・・・しかし私は、欲しいものは必ず手に入れる女だ。」
挑発的な黒い瞳。美しいなと氷河は思った。
「帰るぞ。」
 
 
城戸邸の応接間で、沙織と瞬は向かい合って座っていた。
いや、瞬の姿はしているが、その髪は夜の闇よりも黒い。
「・・・気が済みましたか?ハーデス?」
「まさかミーノスが来るとは思わなかった・・・。」
不満げに呟くと、ハーデスは椅子の背に体重を預けてきしらせた。
女神は薫り高い紅茶を口にすると、優雅にカップをソーサーの上に戻した。
「人間はそれ程単純なものではありませんよ。」
「面倒だな。100年足らずしか生きないくせに、何を悠長なことをやっているのだ。
・・・しかし、あの白鳥は気に入った。」
 
 
部屋に戻って、氷河は言葉を失った。
部屋一面、埋め尽くすように飾られた花。
「エリシオンからの花だそうですよ。」
その面倒な世界に、ハーデス自身が足を踏み込んでいないことを女神は祈った。
 
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新しい客の姿を見て、ラダマンティスは眉をひそめる。
面倒な奴が来た・・・。
一体何の用があってケーキ屋などに来たのか、長い前髪の男は、部下一名を連れて案内を待っていた。待つ間に店内を見渡した彼は、まずは不死鳥の席を眺めてにやりと笑い、ついでパンドラとラダマンティスに気が付くと、驚いた顔をして軽く目礼し、何か思いを巡らしているようだった。
こいつにだけは見られたくなかったと、ラダマンティスは思った。
ミーノスは店員に何やら告げると、つかつかとこちらへ歩み寄ってきた。そうして不死鳥のそばで立ち止まると、ぶしつけに少女の顔を覗き込んだ。
「何か用か。」
不死鳥が声をかけるが目を向ける気配はない。少女の方はといえば、不自然なほどうつむいてケーキを食べ続けている。ミーノスは少女の顔に手をかけると、無理やり自分の方へと向き直らせた。
いくらなんでも失礼だと、ラダマンティスが立ち上がりかけたところで、ミーノスの声が響いた。
「聖衣を脱いだ君が、こんなにかわいらしいとは思いませんでしたよ、キグナス。」
ギクッと肩をすくめた少女は、やがて開き直ったようにフォークを置くと、ミーノスを睨みつけた。
「これはどういう茶番ですか?場合によっては、許すわけにはいきませんね。」
 
「キグナス・・・?!」
ラダマンティスは記憶をたどり、そういえばハーデス城に乗り込んできた青銅聖闘士に、生意気そうな金髪の小僧がいたなと思い当った。
あの小僧が、一体何の訳あって、女の格好で不死鳥といちゃついているのか。
そもそも何故ハーデス様は、今日この時間にと指定して、自分にパンドラ様を案内させたのか。
いやな予感がもやもやと形になるのを感じながら顔をあげると、パンドラの視線が刺さった。その瞳は不信の色に染まっていた。
「わ、私は何も知ら・・・。」
上ずった自分の声は、どこか遠くから聞こえてくるような気がした。
カタン、と椅子の音がして、パンドラが立ち上がった。
ラダマンティスは慌ててその後を追う。
 
パンドラは夜の闇を思わせる深く黒い瞳でまっすぐに一輝を見据えた。
一輝は腕を組み、じっと目を閉じている。
キグナスは唇をかんで、ミーノスを睨んでいる。
女神とは休戦中である。こんな市街地で、神の意志を無視して戦いを再開するわけにはいかない。
「一体どういうことだ。」
とに角事情を整理しようとラダマンティスが口を開いた途端、はじかれたようにキグナスが立ち上がった。
「とぼける気か!卑怯者っ!」
怒りの矛先を見つけて一気に吐き出そうとした言葉を、しかし氷河は飲み込まざるを得なかった。
氷河の背後で立ち上がった一輝が、腕を引いて抱き寄せると深く口づけたからだった。
あっけにとられて開いている唇に、熱い舌が容赦なく入ってくる。
ななな・・・・?!
氷河は羞恥と怒りで、目の前がチカチカした。
張り倒してやろうかと思ったが、がっちりと体を抑え込まれていて、身動きすらままならない。
無遠慮な唇がようやく離れていったとき、氷河はへなへなと脱力しそうになった。
「俺とこいつがつきあっていると、何か問題があるのか。」
耳慣れた低い声が何か喋っている。
「もうずいぶんと前から、こいつは俺のものと決まっている。いきなり割り込んできて、茶番とはずいぶん失礼な言い草だな。」
はったりが得意な奴だとは思っていたが、ここにきてこのクソ度胸はある意味尊敬に値する。しかし、しかし、自分の立場は一体どうなるのだろう・・・?
一輝の腕の中から、氷河はちらりと視線を走らせた。
何やら言葉を失っている風の男二人の間に、じっと唇を噛んでいる少女の姿が見えた。
好きになった男に男の恋人がいたらショックだろう。
しかし好きになった男が、自分との交際を断るために、女装させた男を恋人に仕立ててきたら、もっとショックに違いない。
そんなことをぼんやりと氷河は考えた。
「キグナス、一輝の言っていることは本当か・・・?」
パンドラが小さな声でそう問うたとき、氷河は腕をほどくよう目だけで一輝に伝えると、少女の方にまっすぐに向き直った。
「・・・俺の命は、こいつに預けてある。そうやってずっと、戦ってきた。」
言ってからそれは、嘘ではないと気付く。
この男がいなければ、もうずっと前に、自分は命を手放していただろう。
気付いたら気付いたで猛烈に恥ずかしくなって、氷河は目をそらしてうつむいた。顔が熱い。きっと耳まで赤くなっている。
「・・・フフ・・・」
やがてパンドラの赤い唇から、不敵な笑みがこぼれた。
「まぁ、よかろう。・・・しかし私は、欲しいものは必ず手に入れる女だ。」
挑発的な黒い瞳。美しいなと氷河は思った。
「帰るぞ。」
 
 
城戸邸の応接間で、沙織と瞬は向かい合って座っていた。
いや、瞬の姿はしているが、その髪は夜の闇よりも黒い。
「・・・気が済みましたか?ハーデス?」
「まさかミーノスが来るとは思わなかった・・・。」
不満げに呟くと、ハーデスは椅子の背に体重を預けてきしらせた。
女神は薫り高い紅茶を口にすると、優雅にカップをソーサーの上に戻した。
「人間はそれ程単純なものではありませんよ。」
「面倒だな。100年足らずしか生きないくせに、何を悠長なことをやっているのだ。
・・・しかし、あの白鳥は気に入った。」
 
 
部屋に戻って、氷河は言葉を失った。
部屋一面、埋め尽くすように飾られた花。
「エリシオンからの花だそうですよ。」
その面倒な世界に、ハーデス自身が足を踏み込んでいないことを女神は祈った。
 
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