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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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氷河の何が好きってマザコンなところ。
私の初恋の人はウルトラマンタロウで、傷つくとウルトラのハハが出てくるのが萌えだった。
兄弟100人設定(女兄弟を入れたら一体何人?)はどうよと思うのだけど、その事実がなければ氷河のマザコンもあそこまでこじれないかったと思うので、ありだと思っている。

それで、氷河は自分の生い立ちを、カミュにちゃんと話したのか?
話したとしたらいつなのか・・・と考えてみた。

もっと早くに話していたパターンもいずれ書いてみたいのだけれど、今回はうだうだバージョンで。

拍手[10回]



先生が来る! その2



「不思議だな。君と氷河はどこか似ている。」
城戸邸の応接間でお茶の支度を整える瞬を見ながら、カミュは一人呟くように言った。
人当たりのよい笑みを浮かべながら、音のしないよう器用に茶器を並べる姿は、氷河とはまるで違う。氷河が、どこか人を拒絶するようなそれでいて淋しげな瞳をしているのに対し、こちらの少年は一瞬にして人の心をとらえてしまう人懐っこい琥珀色の瞳を持っている。ふっくらとした唇は少女のように紅く、彼が戦士であるとはにわかには信じがたい。
それなのに、ふとしたしぐさや表情は、どこか愛弟子と重なって見える。
十代の少年特有の共通点というわけではないだろう。もう一人の弟子であるアイザックと氷河が重なって見えることなどなかった。
そればかりではない。横にいる、いかにもやんちゃ坊主といった風情の星矢とも、どこがどうとは言えないが、何やら氷河とダブって見えるところがある。
城戸邸を訪れるのは二度目だが、そんなことを思ってさっきからカミュは落ち着かない気分なのだ。
「そりゃあ、だって」
カミュの斜め横でソファに身を沈めていた男が、身を乗り出すようにして言葉を継いだ。
「兄弟なんだろう?当然だ。」
言った本人に悪気はなかった。
氷河の師であるカミュは当然知っていると思っていたからだ。
しかし、一瞬にして表情をこわばらせたカミュを見て、アイオリアは自分の過ちに気が付いた。
それだけではない。先ほどまで柔和な笑みをたたえていた瞬の顔がさっと曇り、アイオリアに事実を告げた張本人たる星矢までもが、しまったというように顔を赤くして唇を噛んでいた。
教皇を演じるサガの命を受け、アイオリアが制裁のため日本を訪れたとき、確かに星矢は言った。
兄弟をうれるか、と。
そうなのかとアイオリアは思っただけだった。
以来、似てるとか似てないとか深く考えることもなく、取り立てて誰かと語り合うこともなかったが、彼らが兄弟であるという認識はしっかりとアイオリアの中に根付いていた。
幾分青ざめたように見えるカミュは、考えごとをする時の癖で人差し指を唇にあてながら、アイオリアの言葉を繰り返した。
「・・・きょう・・・だい・・・?」
もはや回収不能となったその言葉がカミュの口から洩れるのと、瞬を手伝ってキッチンから菓子を運んできた氷河が、トレーごとそれを取り落すのはほとんど同時だった。
「あ、兄弟といっても、父親だけです。僕らはそれを、認めたわけでもない。」
瞬は取り繕うようにそう言ってから、いたわるように氷河を見た。
「それに、俺たちがこのことを知ったのも最近っていうか・・・」
必死の様相で送られてきた星矢の目配せを、氷河は傲然と無視して言った。
「違う!言っただろ、星矢。俺だけは子供のときから母親に聞いて知っていたと。」
「ごめん。」
切りつけるような氷河の視線に、星矢はさらに顔を赤くしてうつむいた。
「カミュ・・・黙っていてすみませんでした。でも俺は、聖域からの勅命に従うつもりだったし、あなたを裏切るつもりで東京に来たわけじゃない。それだけは信じてください。」
それだけ言って、氷河は部屋を飛び出していった。
瞬はその後を追いかけようと身を浮かしかけたものの、後を追う星矢の背を見守ってから、黄金聖闘士二人の方に向き直った。
「知っていると思ったのだ・・・すまなかった。」
アイオリアは呻くようにそう言った。
「いや・・・」
カミュの方は思いに沈むように、まだ唇に指をあてたまま。
その姿から怒りは感じられなかった。
「あの・・・氷河は・・・言わなかったんじゃなくて、言えなかったんだと思います。あなただからこそ、知られたくなかったのかもしれない。あんまり、いい話じゃないから。」
瞬はそのように前置きして、自分たちの出生について語り始めた。
アイオロスから女神を託されたのが城戸光政だということは二人も知っていることだったが、その女神を守護する聖闘士にするために城戸が送り込んだ子供たちがすべて彼の実子であるというのは初めて聞く話だった。
「兄さんが暗黒聖闘士を引き連れて僕らを倒しにやってきたのも、射手座の聖衣が欲しかったからじゃない。デスクイーン島でこのことを知って、城戸の血を継いだ人間を、皆殺しにしようとしたんです。おそらくは、自分も含めて・・・。」
この際だからこのこともはっきりしておこうと、瞬は語気を強くして言った。
「僕らは皆、僕らを無理やり肉親から引き離した城戸という男を憎んでいたから、このことを知ったとき、体中の血が逆流するような気がしました。氷河だけは、お母さんから聞いて知っていたって言うけれど・・・。
もし、富士で兄さんと戦ったのが氷河じゃなかったら、多分兄さんは今みたいに僕らのもとには戻ってきてくれなかったと思うんです。
正直・・・僕は、考えないようにしているだけで、城戸光政という人を心から許したわけじゃない。聖闘士になったことは誇りに思ってます。けれど、自分の母がどんなに苦しんだかとおもうと、一生好きにはなれないと思う。だから氷河はどうやって許したんだろうって、時々思うんです。お母さんが事故で亡くなったことを告げても、城戸光政という人は、眉ひとつ動かさなかったって言ってたけど・・・。」
カミュは目を閉じて、深くため息をついた。
初めて氷河と出会った時のことを思い出す。
不安げに蒼い瞳でこちらをうかがいながらも、覚悟を決めたように拳を握りしめ、唇を固く結んでいた。そしてその瞳は、聖闘士になる理由を問うたとき、ふいに光を宿した。
死ぬだろう、と思った。
8歳にしてあの子は、黄泉の国から母に呼ばれれば、あっさりと命を捨てるような子供だった。
聖戦は死の国の神との戦い。
戦えるわけがないと。
しかしアイザックが海に消えたとき、自分は氷河に戦いの道を歩ませることを決めた。そのために、母との決別を促しもしたのだ。
「多分氷河は憎むことより、愛することを選んだんだと思います。僕はそれは、すごいことだと思う。」
どこまで知っているのか、瞬は弁護するように、カミュの目をみつめた。
「少し、行き過ぎではあるがな。」
その声音に愛情がこもっていることを感じ取って、瞬はにっこりといたずらっぽい笑みを浮かべた。
「僕らはみんな歪んでいるんです。僕だって知ってはいるんだ、自分を支えてくれているのは、一輝兄さんだけじゃないってことくらい。それなのに、兄さんがいなければ、生きている意味がないという気すらする。子供の頃の僕には、それだけが生きる理由だったから。」
その言葉に、カミュは息を飲んだ。
天秤宮で言ったあの子の言葉―。
死んだ母親以外、自分は何も持たない、と。
その言葉は棘のように胸に突き刺さり、いつまでも心をイラつかせた。
彼らが兄弟だと知った時も、一番初めに思ったのはそのことだった。
もう自分でも気が付いている。自分の甘さに。
私たちがいるだろうと、そう言いたかったのだ。
 
「勅命は手紙で伝えたのだ。だから氷河も打ち明ける機会を逸したのかもしれない。」
「勅命というのは、銀河戦争に対する制裁のことか。」
「ああ、あれもそれだけの覚悟で聖闘士となったのだろうが、自分で正しい判断をしてくれてたすかった。」
 
城戸邸を出て、正面の坂道を下ってゆくと、やがて海に面した公園に出る。
ただまっすぐに駆けてきて、氷河は海に突き当たった。海と陸とを隔てる鉄の柵に手を置き、その上に顎を乗せたまま、キラキラと光を受けて輝く波を見つめる。
寄せては返す波の動きを見ているうち、気持ちは幾分落ち着いてきた。
ふと、気配を感じて振り返ると、しょんぼりとうつむいている星矢の姿。
「ごめん。俺がアイオリアに話しちゃったんだ。ただ兄弟だって言っただけだったから、余計にいけなかった。それに余計な嘘までつこうとして本当にごめん。」
氷河はふっと表情を和らげると、星矢の方に向き直って、柵にもたれかかった。
「別に・・・隠していたわけではないし。俺がちゃんと話さなかったのがいけない。」
それから左手でくしゃりと前髪をかき混ぜると、大きくため息をついた。
「あんな風に飛び出してきてしまって恥ずかしいな。どうやって戻ればいいんだろう。皿も割ったままだ。」
星矢はくすりと笑みを浮かべると、肩を並べるようにして氷河のそばに立った。
「普通でいいんじゃないか。俺なんてギリシアでしょっちゅうやってたし。」
「出来るか。俺はあんな馬鹿な真似初めてだ・・・。」
足の先に小さな石が落ちていることに気づいて、氷河はそれを軽く蹴とばした。
「別に・・・お前たちと兄弟だってことを、恥じているわけじゃないぞ。」
「うん・・・わかってる。」
顔をあげた二人の瞳に映ったのは、こちらに向かって歩いてくるカミュの姿だった。
さっと緊張した氷河の背をぽんとはたいて、星矢は海沿いの道を駆けていった。
 
カミュはそのまま手すりに手をついて海をみつめた。
海からの風が、紅い絹のような髪を巻き上げる。カミュはそれを軽く抑えるようにして耳にかけると、強い意志を感じさせる美しい瞳をそっと閉じた。
憧れてやまない師の姿を、氷河は息を飲んで見守る。
やがて見開かれたその瞳は、慈しむかのように優しく、きらめく海をみつめた。
「お前を育てるのに、私は結構苦労したのだ。いつまでたってもわからないと思っていたことが、今日で少し、わかったような気がする。」
「え・・・?」
自分よりはるか高みにいて、すべてを見通しているかにみえる師の言葉とは思えず、氷河は聞き返した。
それには答えず、カミュはわずかに顎を引くと、腕を組んで氷河を見た。
「割れた皿はそのままにしてあるから片付けること。アイオリアに非礼をわびること。それと、健気な弟に礼を言った方がよいな。」
カミュが首を傾けるようにすると、氷河は頷いて城戸邸の方へと駆けだした。
その姿に昔と変わらぬ生真面目さを認めて、カミュはふと笑みをこぼした。





 
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先生が来る! その2



「不思議だな。君と氷河はどこか似ている。」
城戸邸の応接間でお茶の支度を整える瞬を見ながら、カミュは一人呟くように言った。
人当たりのよい笑みを浮かべながら、音のしないよう器用に茶器を並べる姿は、氷河とはまるで違う。氷河が、どこか人を拒絶するようなそれでいて淋しげな瞳をしているのに対し、こちらの少年は一瞬にして人の心をとらえてしまう人懐っこい琥珀色の瞳を持っている。ふっくらとした唇は少女のように紅く、彼が戦士であるとはにわかには信じがたい。
それなのに、ふとしたしぐさや表情は、どこか愛弟子と重なって見える。
十代の少年特有の共通点というわけではないだろう。もう一人の弟子であるアイザックと氷河が重なって見えることなどなかった。
そればかりではない。横にいる、いかにもやんちゃ坊主といった風情の星矢とも、どこがどうとは言えないが、何やら氷河とダブって見えるところがある。
城戸邸を訪れるのは二度目だが、そんなことを思ってさっきからカミュは落ち着かない気分なのだ。
「そりゃあ、だって」
カミュの斜め横でソファに身を沈めていた男が、身を乗り出すようにして言葉を継いだ。
「兄弟なんだろう?当然だ。」
言った本人に悪気はなかった。
氷河の師であるカミュは当然知っていると思っていたからだ。
しかし、一瞬にして表情をこわばらせたカミュを見て、アイオリアは自分の過ちに気が付いた。
それだけではない。先ほどまで柔和な笑みをたたえていた瞬の顔がさっと曇り、アイオリアに事実を告げた張本人たる星矢までもが、しまったというように顔を赤くして唇を噛んでいた。
教皇を演じるサガの命を受け、アイオリアが制裁のため日本を訪れたとき、確かに星矢は言った。
兄弟をうれるか、と。
そうなのかとアイオリアは思っただけだった。
以来、似てるとか似てないとか深く考えることもなく、取り立てて誰かと語り合うこともなかったが、彼らが兄弟であるという認識はしっかりとアイオリアの中に根付いていた。
幾分青ざめたように見えるカミュは、考えごとをする時の癖で人差し指を唇にあてながら、アイオリアの言葉を繰り返した。
「・・・きょう・・・だい・・・?」
もはや回収不能となったその言葉がカミュの口から洩れるのと、瞬を手伝ってキッチンから菓子を運んできた氷河が、トレーごとそれを取り落すのはほとんど同時だった。
「あ、兄弟といっても、父親だけです。僕らはそれを、認めたわけでもない。」
瞬は取り繕うようにそう言ってから、いたわるように氷河を見た。
「それに、俺たちがこのことを知ったのも最近っていうか・・・」
必死の様相で送られてきた星矢の目配せを、氷河は傲然と無視して言った。
「違う!言っただろ、星矢。俺だけは子供のときから母親に聞いて知っていたと。」
「ごめん。」
切りつけるような氷河の視線に、星矢はさらに顔を赤くしてうつむいた。
「カミュ・・・黙っていてすみませんでした。でも俺は、聖域からの勅命に従うつもりだったし、あなたを裏切るつもりで東京に来たわけじゃない。それだけは信じてください。」
それだけ言って、氷河は部屋を飛び出していった。
瞬はその後を追いかけようと身を浮かしかけたものの、後を追う星矢の背を見守ってから、黄金聖闘士二人の方に向き直った。
「知っていると思ったのだ・・・すまなかった。」
アイオリアは呻くようにそう言った。
「いや・・・」
カミュの方は思いに沈むように、まだ唇に指をあてたまま。
その姿から怒りは感じられなかった。
「あの・・・氷河は・・・言わなかったんじゃなくて、言えなかったんだと思います。あなただからこそ、知られたくなかったのかもしれない。あんまり、いい話じゃないから。」
瞬はそのように前置きして、自分たちの出生について語り始めた。
アイオロスから女神を託されたのが城戸光政だということは二人も知っていることだったが、その女神を守護する聖闘士にするために城戸が送り込んだ子供たちがすべて彼の実子であるというのは初めて聞く話だった。
「兄さんが暗黒聖闘士を引き連れて僕らを倒しにやってきたのも、射手座の聖衣が欲しかったからじゃない。デスクイーン島でこのことを知って、城戸の血を継いだ人間を、皆殺しにしようとしたんです。おそらくは、自分も含めて・・・。」
この際だからこのこともはっきりしておこうと、瞬は語気を強くして言った。
「僕らは皆、僕らを無理やり肉親から引き離した城戸という男を憎んでいたから、このことを知ったとき、体中の血が逆流するような気がしました。氷河だけは、お母さんから聞いて知っていたって言うけれど・・・。
もし、富士で兄さんと戦ったのが氷河じゃなかったら、多分兄さんは今みたいに僕らのもとには戻ってきてくれなかったと思うんです。
正直・・・僕は、考えないようにしているだけで、城戸光政という人を心から許したわけじゃない。聖闘士になったことは誇りに思ってます。けれど、自分の母がどんなに苦しんだかとおもうと、一生好きにはなれないと思う。だから氷河はどうやって許したんだろうって、時々思うんです。お母さんが事故で亡くなったことを告げても、城戸光政という人は、眉ひとつ動かさなかったって言ってたけど・・・。」
カミュは目を閉じて、深くため息をついた。
初めて氷河と出会った時のことを思い出す。
不安げに蒼い瞳でこちらをうかがいながらも、覚悟を決めたように拳を握りしめ、唇を固く結んでいた。そしてその瞳は、聖闘士になる理由を問うたとき、ふいに光を宿した。
死ぬだろう、と思った。
8歳にしてあの子は、黄泉の国から母に呼ばれれば、あっさりと命を捨てるような子供だった。
聖戦は死の国の神との戦い。
戦えるわけがないと。
しかしアイザックが海に消えたとき、自分は氷河に戦いの道を歩ませることを決めた。そのために、母との決別を促しもしたのだ。
「多分氷河は憎むことより、愛することを選んだんだと思います。僕はそれは、すごいことだと思う。」
どこまで知っているのか、瞬は弁護するように、カミュの目をみつめた。
「少し、行き過ぎではあるがな。」
その声音に愛情がこもっていることを感じ取って、瞬はにっこりといたずらっぽい笑みを浮かべた。
「僕らはみんな歪んでいるんです。僕だって知ってはいるんだ、自分を支えてくれているのは、一輝兄さんだけじゃないってことくらい。それなのに、兄さんがいなければ、生きている意味がないという気すらする。子供の頃の僕には、それだけが生きる理由だったから。」
その言葉に、カミュは息を飲んだ。
天秤宮で言ったあの子の言葉―。
死んだ母親以外、自分は何も持たない、と。
その言葉は棘のように胸に突き刺さり、いつまでも心をイラつかせた。
彼らが兄弟だと知った時も、一番初めに思ったのはそのことだった。
もう自分でも気が付いている。自分の甘さに。
私たちがいるだろうと、そう言いたかったのだ。
 
「勅命は手紙で伝えたのだ。だから氷河も打ち明ける機会を逸したのかもしれない。」
「勅命というのは、銀河戦争に対する制裁のことか。」
「ああ、あれもそれだけの覚悟で聖闘士となったのだろうが、自分で正しい判断をしてくれてたすかった。」
 
城戸邸を出て、正面の坂道を下ってゆくと、やがて海に面した公園に出る。
ただまっすぐに駆けてきて、氷河は海に突き当たった。海と陸とを隔てる鉄の柵に手を置き、その上に顎を乗せたまま、キラキラと光を受けて輝く波を見つめる。
寄せては返す波の動きを見ているうち、気持ちは幾分落ち着いてきた。
ふと、気配を感じて振り返ると、しょんぼりとうつむいている星矢の姿。
「ごめん。俺がアイオリアに話しちゃったんだ。ただ兄弟だって言っただけだったから、余計にいけなかった。それに余計な嘘までつこうとして本当にごめん。」
氷河はふっと表情を和らげると、星矢の方に向き直って、柵にもたれかかった。
「別に・・・隠していたわけではないし。俺がちゃんと話さなかったのがいけない。」
それから左手でくしゃりと前髪をかき混ぜると、大きくため息をついた。
「あんな風に飛び出してきてしまって恥ずかしいな。どうやって戻ればいいんだろう。皿も割ったままだ。」
星矢はくすりと笑みを浮かべると、肩を並べるようにして氷河のそばに立った。
「普通でいいんじゃないか。俺なんてギリシアでしょっちゅうやってたし。」
「出来るか。俺はあんな馬鹿な真似初めてだ・・・。」
足の先に小さな石が落ちていることに気づいて、氷河はそれを軽く蹴とばした。
「別に・・・お前たちと兄弟だってことを、恥じているわけじゃないぞ。」
「うん・・・わかってる。」
顔をあげた二人の瞳に映ったのは、こちらに向かって歩いてくるカミュの姿だった。
さっと緊張した氷河の背をぽんとはたいて、星矢は海沿いの道を駆けていった。
 
カミュはそのまま手すりに手をついて海をみつめた。
海からの風が、紅い絹のような髪を巻き上げる。カミュはそれを軽く抑えるようにして耳にかけると、強い意志を感じさせる美しい瞳をそっと閉じた。
憧れてやまない師の姿を、氷河は息を飲んで見守る。
やがて見開かれたその瞳は、慈しむかのように優しく、きらめく海をみつめた。
「お前を育てるのに、私は結構苦労したのだ。いつまでたってもわからないと思っていたことが、今日で少し、わかったような気がする。」
「え・・・?」
自分よりはるか高みにいて、すべてを見通しているかにみえる師の言葉とは思えず、氷河は聞き返した。
それには答えず、カミュはわずかに顎を引くと、腕を組んで氷河を見た。
「割れた皿はそのままにしてあるから片付けること。アイオリアに非礼をわびること。それと、健気な弟に礼を言った方がよいな。」
カミュが首を傾けるようにすると、氷河は頷いて城戸邸の方へと駆けだした。
その姿に昔と変わらぬ生真面目さを認めて、カミュはふと笑みをこぼした。





 
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