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ND再開までに紫氷を書きたい!!と思っていたわけですが、どうやら間に合いそうにもなく。
以前書きかけていた話を仕上げてみました。
紫龍×春麗 カミュ×氷河という公式CP(?)前提。
多分健全です。
が、流血表現というか自傷っぽい表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
カミュと紫龍はA型だね~って話です。
髪も長いし、どっか所作とか似ていて、氷河がもやもやするといいなという。
思えば紫龍の旧誕生日って、2月11日でしたよね??
以前書きかけていた話を仕上げてみました。
紫龍×春麗 カミュ×氷河という公式CP(?)前提。
多分健全です。
が、流血表現というか自傷っぽい表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
カミュと紫龍はA型だね~って話です。
髪も長いし、どっか所作とか似ていて、氷河がもやもやするといいなという。
思えば紫龍の旧誕生日って、2月11日でしたよね??
うっかりと触れてしまったコップは、テーブルから落ちて音を立てて割れた。
零れた水の上でキラキラと輝く破片を氷河はしばらく見つめ、それから片付けるために椅子を離れた。
永遠に融けない氷と硝子は、似ているようで違う。師の繰り出す荘厳な技とは比較にならない、割れたちっぽけな硝子片に、氷河はどこか親しみを覚えた。手を伸ばすと、その切っ先が指に触れた。鋭い痛みが走る。瞬く間に指先から、鮮やかな赤い色が染みだした。12宮での戦い以降、ぼんやりと自分を覆っている悲しみが、一つの形を得たかの様だった。衝動的に、氷河は硝子を握りしめた。
心と釣りあうくらいまで。強く。
しかしふと我に返る。
手を開いて、ぱらぱらと硝子片を振り落すと、退いてソファに身を投げ出した。
馬鹿だな、俺は。
天井を見上げて大きく息をつくと、立ちあがり洗面所に向かった。無意識でも、利き手にはしなかった。そのことに安堵しつつ、淡々と傷口を洗い流し硝子片を取り除く。水で流しても、血は次々に溢れてくる。その手をタオルに包むと、氷河は再びソファに戻った。
眠たい。
ソファの上で小さく丸まって、目を閉じる。
うっすらと目を開けると、長い黒髪が見えた。
腰をかがめて床を掃いている。
ああ、さっきの硝子。
起き上がろうとした氷河は、自分の身に、ブランケットがかけられていることに気が付いた。血のついていない方の手でそれを脇に置くと、真っ直ぐに起き直った。
「すまない」
「いや。それより手、怪我したみたいだな」
先ほどの自分を思い出して、氷河はとっさに手をひいた。
「大したことない」
紫龍は掃除道具を脇へ片付けると、薬箱を持って戻ってきた。
「もう、平気だ」
左手を背中の後ろに隠すと、紫龍は小さくため息をついた。
「だからと言って、手当てを怠るのはよくない」
同じことをよく、カミュも語った。
修行中は厳しかったが、小屋に戻ってからは、わずかな打ち身でさえないがしろにはしなかった。その行動から、自分とアイザックは聖闘士としての心構えを学んだし、同時に師の深い愛情も感じとっていた。
傷跡について、紫龍は何も言わなかった。
包帯がずれぬように、しっかりと均等に巻きつけてゆく手つきが、師と似ていることに氷河は気づいた。取り戻しようもない師との日々を思い出して、ふいに突き上げるような胸の痛みを氷河は感じた。
「……正論ばかりだな。しかし、自分はどうなんだ? 一人ですべて背負い込んで、命すら顧みない。俺は、お前の戦い方は嫌いだ」
左手を委ねたまま、氷河はふてくされたように言った。
日頃無口な彼が、そんな風に自分のことを語るのを、紫龍は不思議な面持ちで聞いた。
磨羯宮でのことを言っているのだろうか。しかしあのときは、誰か一人でも教皇の間にたどり着こうと誓い合ったはず。
大体命を顧みぬという点では氷河だって大差なく、彼に文句を言われる筋合いはなかった。
「気が付いた人間が、自分にできることを精一杯やる。それだけのことだ。俺が特別だとは思わん」
「……彼女がいるのだろう? 置いてゆくような真似はするな」
小さな声で、呟くように氷河は言った。クールを装っていても、実は情が深い。彼らしいと思って、紫龍は小さく笑った。
「世界を護ることは、彼女を護ることだと思う。そのためなら俺は、命を捨てても構わない」
妙に清々しい声だ。
「そんな風に、言うなよ」
「あ、おい」
まだ巻き終えていないのに、氷河は立ちあがって背を向けた。包帯を垂らしたまま、じっと窓の外をみつめている。
何が彼の機嫌を損ねているのかわからない。
「もし護り通せたとしても、お前がいなかったら、彼女にとっての世界は形を変えてしまうんだぞ」
額を窓に押し当てて、氷河は拳を握った。
まだ、血を流し続けている傷口を。
紫龍は歩み寄ると、自分のてのひらに、その手をそっと載せた。
遺された氷河の痛み。
「わかった。ちゃんと覚えておく」
抱き寄せた腕の中で、金色の髪が頷くように小さく揺れた。
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うっかりと触れてしまったコップは、テーブルから落ちて音を立てて割れた。
零れた水の上でキラキラと輝く破片を氷河はしばらく見つめ、それから片付けるために椅子を離れた。
永遠に融けない氷と硝子は、似ているようで違う。師の繰り出す荘厳な技とは比較にならない、割れたちっぽけな硝子片に、氷河はどこか親しみを覚えた。手を伸ばすと、その切っ先が指に触れた。鋭い痛みが走る。瞬く間に指先から、鮮やかな赤い色が染みだした。12宮での戦い以降、ぼんやりと自分を覆っている悲しみが、一つの形を得たかの様だった。衝動的に、氷河は硝子を握りしめた。
心と釣りあうくらいまで。強く。
しかしふと我に返る。
手を開いて、ぱらぱらと硝子片を振り落すと、退いてソファに身を投げ出した。
馬鹿だな、俺は。
天井を見上げて大きく息をつくと、立ちあがり洗面所に向かった。無意識でも、利き手にはしなかった。そのことに安堵しつつ、淡々と傷口を洗い流し硝子片を取り除く。水で流しても、血は次々に溢れてくる。その手をタオルに包むと、氷河は再びソファに戻った。
眠たい。
ソファの上で小さく丸まって、目を閉じる。
うっすらと目を開けると、長い黒髪が見えた。
腰をかがめて床を掃いている。
ああ、さっきの硝子。
起き上がろうとした氷河は、自分の身に、ブランケットがかけられていることに気が付いた。血のついていない方の手でそれを脇に置くと、真っ直ぐに起き直った。
「すまない」
「いや。それより手、怪我したみたいだな」
先ほどの自分を思い出して、氷河はとっさに手をひいた。
「大したことない」
紫龍は掃除道具を脇へ片付けると、薬箱を持って戻ってきた。
「もう、平気だ」
左手を背中の後ろに隠すと、紫龍は小さくため息をついた。
「だからと言って、手当てを怠るのはよくない」
同じことをよく、カミュも語った。
修行中は厳しかったが、小屋に戻ってからは、わずかな打ち身でさえないがしろにはしなかった。その行動から、自分とアイザックは聖闘士としての心構えを学んだし、同時に師の深い愛情も感じとっていた。
傷跡について、紫龍は何も言わなかった。
包帯がずれぬように、しっかりと均等に巻きつけてゆく手つきが、師と似ていることに氷河は気づいた。取り戻しようもない師との日々を思い出して、ふいに突き上げるような胸の痛みを氷河は感じた。
「……正論ばかりだな。しかし、自分はどうなんだ? 一人ですべて背負い込んで、命すら顧みない。俺は、お前の戦い方は嫌いだ」
左手を委ねたまま、氷河はふてくされたように言った。
日頃無口な彼が、そんな風に自分のことを語るのを、紫龍は不思議な面持ちで聞いた。
磨羯宮でのことを言っているのだろうか。しかしあのときは、誰か一人でも教皇の間にたどり着こうと誓い合ったはず。
大体命を顧みぬという点では氷河だって大差なく、彼に文句を言われる筋合いはなかった。
「気が付いた人間が、自分にできることを精一杯やる。それだけのことだ。俺が特別だとは思わん」
「……彼女がいるのだろう? 置いてゆくような真似はするな」
小さな声で、呟くように氷河は言った。クールを装っていても、実は情が深い。彼らしいと思って、紫龍は小さく笑った。
「世界を護ることは、彼女を護ることだと思う。そのためなら俺は、命を捨てても構わない」
妙に清々しい声だ。
「そんな風に、言うなよ」
「あ、おい」
まだ巻き終えていないのに、氷河は立ちあがって背を向けた。包帯を垂らしたまま、じっと窓の外をみつめている。
何が彼の機嫌を損ねているのかわからない。
「もし護り通せたとしても、お前がいなかったら、彼女にとっての世界は形を変えてしまうんだぞ」
額を窓に押し当てて、氷河は拳を握った。
まだ、血を流し続けている傷口を。
紫龍は歩み寄ると、自分のてのひらに、その手をそっと載せた。
遺された氷河の痛み。
「わかった。ちゃんと覚えておく」
抱き寄せた腕の中で、金色の髪が頷くように小さく揺れた。
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