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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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以前書いたミッドガルド妄想話
氷河とは別に肉体を授かったミッドガルドが桃方面で暴走する。
性格は違うのに体はシンクロしているため、ミッドガルドがいい気分になると氷河も必然的にそうなっちゃうという、変態設定です。
桃色ミっちゃんが暴走して氷河が困るパターンなら、カミュ・氷バージョンも面白かろうと思い、そこから脳内ではミっちゃんによる12宮突破計画が・・・。
某様からアドバイスを頂き妄想だけは散々楽しんでみたものの、どうも私では書けそうにないのです。

ミッドガルドが、カミュ先生にのしかかり、氷河が慌てふためく。
のりのりのミロ×ミッドガルドと、シンクロしちゃってる氷河を慰める(無論桃方面で)カミュ先生。

ここは鉄板だと思うのですが、どうにも私には書けず・・・。(わ~ん、N様すみません~)

うん、じゃあ、書けそうなところから書いてみようと、書いてみたのが双児宮篇です・・・。
いや、書けてはいませんけれども・・・。

なかなか前に進めないので丸投げしてみます。

何かひらめいた方、続きを書いて下さい・・・などと、わりと本気で叫んでみる。
この組み合わせの方が萌えるだろう・・・というようなご意見もあれば伺ってみたいデス。

私としてましては、シュラ×ミッドガルドwith紫龍が読みたいです。


・・・というわけで以下は半端な桃色話。
カノン×氷河(背景にサガ×ミッドガルド)です。
18歳未満の方、組み合わせ等苦手な方はお控えください。


拍手[22回]



ミッドガルド妄想 双子座篇


「どうして目覚ましが止まってたんだっ!!」
今更考えても遅いことを心の中で叫びながら、氷河は12宮の階段を駆け下りていた。
カミュは昨日から任務で出かけている。だからって、気が弛んだんだろうか。
俺は俺で、書庫の資料整理という、大切な仕事があるというのに。
こんなことで、カミュの顔に泥を塗るなんて。
ああ、嘆いていても仕方ない。
兎に角今は急ぐことだ。
 
挨拶だけを残して各宮を走り去る。
ミロも不在でよかった。見つかったら絶対にからかわれて足止めされるところだ。
安堵したのも束の間、双児宮で腕を掴まれた。
「おい、お前、どこから湧いて出た?」
宮の中ほどに立っていたカノンは、氷河の腕を掴むと、ぶしつけにこう尋ねた。
「すまない。今、急いでるんだ。」
「宮の主として、確認せぬわけにはいかない。先ほど、お前は下から上がってきてサガと一緒にこの階段を降りて行った。その後、誰かが上がっていった気配はない。それなのにお前は上から来てこの宮を降りてゆく。これは、どういうことだ?」
「俺が、サガと??」
「ここに寄って言葉を交わしたから間違いない。」
「確かに俺は、書庫でサガの手伝いをする予定でした。だが寝坊して・・・」
そう言う氷河の髪は、確かにいつも以上にはねている。
服だってタンクトップにだらしなくシャツを引っ掛けただけだ。
「あの・・・本当に俺と似てましたか?」
「似てるというより、お前そのものだった。サガとて彼をお前の名で呼んでいた」
氷河の血の気が一気に引いた。
ミッドガルドに間違いない。
何故だか実体を伴って復活したミッドガルド。
俺とおんなじ姿をしているなんて、奴しか考えられない。
満足して消えたはずなのに、また、戻ってきたというのか。
聖域で何をするつもりなのか・・・嫌な予感しかしない。
ああ・・・とうめいて氷河は頭を抱えた。
「あいつ・・・消えたんじゃなかったのか?! だったら余計急がなくてはっ!」
「あいつ?」
「ああ、貴方には関係ない」
眉根を寄せたカノンの顔を見て、さすがに失礼だったかと氷河は言葉を繋いだ。
「あ、すみません。貴方が、ということではなくて、あれは、いてはいけない存在だから」
同じ姿形をした、いてはいけない存在?
カノンは腕を捕えていた力を強めた。
「聞かせてもらおうか。いてはいけない『あいつ』の正体を」
「でも、急がないと。放っておいたら何するかわからない」
「何するかわからないような奴なのか。だが、サガがついている。焦ることはない」
いえ、だから、そのサガ相手に何するか気が気じゃないんだって!!
誰もいない書庫で二人きり。
いや、誰かいるとかいないとか、そんなことを気にするような奴じゃない。
だが、あいつのやることなんて、十中八九決まっている。
叫びだしたい気持ちを堪えながら、氷河はカノンの顔を見上げた。
「あ!! そうか、岬!! スニオン岬に閉じ込めればいいのか!」
別々の身体と人格を持っているのに、妙なところだけシンクロして消すに消せない。
岬に閉じ込めておけば、誰の目に留まることもなく安泰だ。
そうだ、それがいい!!
だったら早くサガに伝えて、とっとと奴を閉じ込めて貰おう!!
輝き始めた氷河の瞳とは逆に、カノンの瞳は暗く濁った。
「ほう・・・岬にか。・・・お前にどれほど正当な理由があるのか聞かせてもらおうか」
自ら地雷を踏みまくったことには気づかずに、どうして12宮ってこんなに面倒なんだろうかと氷河は思った。
 
 
一刻も早く二人を追いかけたいのに、私室に押し込まれて椅子に腰を掛けた。この十二宮で、不幸にも守護者の注意を引いてしまった場合、ちゃんと話さなければいっそう面倒なことになるということは、氷河も経験上知っている。それはカノンにおいても同じことのようだった。
 
「聖戦より前の話ですが、俺、敵に捕らわれて洗脳されたことがあるんです。情けない話ですが、ミッドガルドと名乗って、敵方についたんです・・・。」
その、ミッドガルドが、どういうわけか実体を伴って現れたと、氷河は打ち明けた。
なんだ、双子ではないのか・・・と、カノンはちょっと冷静になる。それにしても洗脳された別人格が実体を持って動き回るなど聞いたことがない。何がしかの存在が、実体化に寄与しているに違いなく、氷河一人でそいつを捕えてどうこうできる問題ではないはずだ。
「教主も倒したし、女神に逆らおうという気は持ってないみたいなんですけど、とにかくやることが滅茶苦茶で・・・。でも、あいつを殺すと俺も死ぬ。だから倒すことも出来ずにいました・・・でも、聖域に現れるなんて・・・あン・・っ!」
「?」
俯きがちに話していた氷河の身体が小さくはねるのを、カノンは見逃さなかった。白い肌が、薄らと赤く染まっている。
「いえ、なンでも・・・ナイです・・・あの、俺、行かなきゃ・・・」
立ち上がった氷河の腕を掴むと、氷河の身体がびくりと震え、その顔は泣きそうに歪んだ。
その表情が、妙に色っぽい。
「まだ話の途中だ。それに、何でもないようには見えないが?」
「あとでちゃんと話しますから、今は行かせてください。じゃないとあいつ・・・!」
言いながら氷河は手の甲を唇にあてた。
少し、息が荒い。
ミッドガルドというのが一人でどこかに行ったのなら急ぐ必要もあるだろう。だが、同行しているのはサガだ。任せておいても問題はあるまいと、カノンは鷹揚に構えた。
「そのミッドガルドというのが、女神に逆らうものではないという保証はない。このこと、カミュは知っているのか?」
「・・・いいえ・・・」
「お前ひとりで抱え込んでいい問題ではないだろう?」
「・・・・・・でも」
「?」
「先生には知られたくない・・・」
瞳にはじわじわと涙が浮かぶ。思いがけず涙を目にして、カノンは一瞬たじろいだ。
「なるべく内密に事を運んでやる」
そう言うと、救いを求めるかのように蒼い瞳が一瞬大きく見開かれた。しかしまた、手の甲が口元を覆う。その手を掴んで引きはがすと、氷河の肩が小さく震えた。
「あの、あいつと躰がシンクロしていて・・・。ちょっと今・・・・」
目を逸らして荒い息をついてから、氷河は意を決したように向き直った。
「ミッドガルド・・・・・・あいつ・・・色魔なんです・・・」
「は??」
予想外の言葉に、カノンは呆気にとられて氷河を見た。
うつむいた氷河の耳が、真っ赤に染まっている。
「洗脳されるときに・・・・・・色々あって・・・今のあいつは色欲を満たすことしか考えていない・・・女神に歯向かうとかではなくて、頭の中それだけで・・・。あの・・・サガにも失礼なことを・・・」
「ぶっ」
氷河には悪いが、思わず噴いてしまったカノンである。
「わ、笑いごとじゃないんですっ!! あいつ、俺と同じ姿格好で、誰彼かまわず、す、すごいことを・・・」
すがるようにカノンのシャツの裾を掴んだ氷河は、そこまで言ってふいにうつむいた。
「すごいこと?」
「・・・ハイ・・・」
「今も?」
氷河は、いたたまれないという風に身を縮こまらせた。耳も、首筋も、どこもかしこも赤い。色が白いから余計に目立つ。
「それでお前までシンクロして、感じているというわけか?」
こくりと氷河が頷く。
く・・・。かわいいじゃないか。
 
思えば先ほど現れた氷河は、自分の知っている氷河とは少し違った。
サガの姿を認めるとうれしそうに口元をほころばせ、肩を並べた。
同じ場所で仕事をするのだからその場で待っていればいいものを。下から上がってきて一緒に降りて行ったということは、サガを迎えに来たのに違いなく、なんとなくそのことがカノンの中で引っかかっていた。
ああ、別人格なのだと思えば、確かに合点がいく。
 
氷河には悪いが、ちょっと面白くなってきたカノンである。
あの真面目くさった愚兄が、そのミッドガルドの誘惑にどこまで耐えうるのか。
何しろ見た目だけなら天下一品の美少年。
各種しがらみがあるから手を出さずにいるものの、向こうから迫られて拒みきれる男がいるだろうか。
「ミッドガルドが色欲を満たしたいと考え、サガがそれに応える・・・別にそれで問題はないのではないか」
カノンの言葉に、氷河は信じられないという風に目を見張った。
「サガは・・・立派な方です。そんなこと、するわけない。俺が、そんな馬鹿なことしたと思われて、軽蔑されるのが嫌なんだ」
「だが、いま現にことは進んでいるんだろう?」
「それはミッドガルドが、勝手にのしかかって・・・」
「立派な方か・・・だがあいつも男だ。しかも人一倍欲深い男」
カノンの瞳が不穏に光った。
彼が海将軍になったのには、兄であるサガとの相克が原因だったらしいということを思い出して、氷河は慌てた。
「そんな・・・すべては、あいつがいけないんだ。ミッドガルドが・・・」
「では賭けをしようか? サガが、ミッドガルド相手にどうするか?」 
正面から見据えられて、氷河は目を逸らすことが出来なかった。
「あれとていっぱしの聖闘士だ。ミッドガルドとやらに襲われる心配などないはずだ。お前の言うとおり立派な男なのだとしたら、誘惑されることなく、仕事に集中するはずだ。昼までの3時間、サガが拒み通したら、ミッドガルドを岬に幽閉する口利きをしてやろう。そのかわり」
「?」
「俺が勝ったら、お前にミッドガルドと同じことをしてもらう」
「!?」
「サガの人望はその程度か?」
「・・・・・・・」
「ん?」
「・・・わかりました・・・。俺は、サガを信じていますから」
 
 
ミッドガルドの身に何かあればわかるというので、二人は双児宮の私室で待つことにした。
「間違いなんてあるわけないから、本でも読んでます」
そう言って氷河は、本棚から一冊、本を借りた。
窓際の席に腰かける。
だが、気が気ではない。
一刻も早く書庫に駆け付けたかったのに、何故こんなことになってるんだろう。
そう考えている間にも、唇に熱を感じた。
そうだよな・・・あいつがそんな、じっとしているわけがない・・・。
立ち上がりかけると、カノンと目が合った。
「どうした? もう負けか?」
「違います。・・・ただちょっと・・・ミッドガルドが仕掛けたから・・・嫌だっただけだ」
「ふうん」
 
少し離れたソファでコーヒーを飲みながら、氷河の様子をうかがう。
懸命に本を読んでいるふりをしているが、読んでいないのは一目瞭然だ。
さっきからしきりに口元に手をやる。
ミッドガルドの身に何かあればって、そういうことか。
「あ・・・」
氷河の左手から、本が落ちる。
カノンはそれを拾い上げて、氷河を見おろした。
蒼い目にはうっすらと涙が浮かんでいて、得も言われぬ色香が漂っている。
「進行状況を説明して貰わねばフェアじゃないな」
氷河は口に当てていた手を外すと、太腿の上で強く握りしめた。
「・・・だ、だから、ミッドガルドが。サガが、自分から動いているわけじゃない」
「ふうん・・・だが、お前もずいぶん感じているみたいだが」
「ちが・・・っ」
「答えろ。今、向こうは何してる?」
「・・・・・・」
俯いたために頬にかかった髪を掬う。
そのついでに耳を撫で上げると、それだけで体はびくりと震えた。
「お前が偽れば勝負にならん」
正論だと思ったのか、氷河はうるんだ瞳で一瞬カノンを見上げると、再び下を向いて絞り出すように言った。
「・・・あ・・・・・・サガの・・・を・・・くちで・・・」
おい。
予想以上に速い展開だな。
時計をちらりと眺めて、カノンはちょっぴり悲しい気持ちになった。
サガよ、既にアウトだ。
というか氷河。
お前の判定だとそれはセーフなのか?
そんなもの欲しそうな顔で指噛んでるってお前・・・。
「ん・・・っ!」
声を漏らした氷河が、慌てて両手で口元を覆い、苦しそうにきつく目を閉じた。
「フ・・・この勝負、俺の勝ちだな。」
 
 
白いカーテン越しに差し込む光が、氷河を照らしている。
ベッドの上に広がる淡い、金色の髪。
翳を落とすほど、長いまつげ。
そのどれもが清浄な美しさを湛えていて、心のどこかで希求していた聖なるものを間近で捕えているような錯覚を起こさせた。
負けを認めた氷河は、おとなしくカノンに従う。
というよりも、氷河自身限界ではあったのだろう。
耳朶を口に含んだまま左手を差し出すと、いくらか迷ったのち唇を薄く開いた。
人差し指と中指で、口腔をかき混ぜる。
熱く柔らかな舌が、その後を追って絡みついた。
何もかもが、上気してこちらを誘っている。
しかしそれは、ミッドガルドが兄を欲してのこと。
「躰がシンクロしていると言ったな? だったらお前が感じれば、向こうも感じると、そういうわけか?」
光を帯びるカノンの瞳に、怯えるようにして氷河は頷いた。
カノンの長い指が触れる。
「ミッドガルドは色魔だって?」
「・・・・・・」
「だったら、こんなにしているお前は何だ?」
氷河は、言うなという風に、目を逸らした。
 
 
 
「・・・というわけで、我々は、お前が誘惑に耐えてミッドガルドをかわしてくれることを期待していた訳なんだが。見事に期待を裏切ってくれたな、サガよ」
「お・・・俺・・・本当に信じてたんですけど・・・」
氷河がうるうると涙を浮かべて睨んでいる。
「その割にあんたたちだって楽しんでたみたいじゃないか?」
眉間にしわを寄せたサガの腕に、ミッドガルドが腕を絡めている。
「うるさいっ!! お前さえあんなことしなければ・・・!!」
「だけど教皇のローブとか着てるの見たらつい・・・わかるだろう?」
「わかるかっ!!」
「試してみろよ。俺も今度、この人で試してみるから。」
「なっ・・・」
「だけど、そっちだってすごかったよな。俺、あんたのこともずーっと感じてたよ」
サガの横をするりと抜けて、ミッドガルドはカノンの首に腕を回した。
まんざらでもないカノンがミッドガルドの腰を抱くのを見て、氷河は少しどきりとした。
「・・・っ・・・とにかくもう、お前消えろ。これ以上お前に振り回されるわけにはいかない!!」
「ふん。お前の方こそ消えるがいい」
同じ風貌の二人が罵り合う様を、サガはぼんやりと眺めた。
何となく過去の自分自身を思い出す。こんな次元の悩みではなかった筈だが。
「氷河、こういう場合、無理に抑えつけようとすると逆効果になる。私も過去には君たちにひどい思いをさせてしまったが、そもそもそれは、自分の中にある声を無理やり抑え込もうとしたせいだった。今の君も、その頃の私と似ている。己の心に素直に向き合い、分かり合うことが一番なのではないか。」
真摯なサガの言葉に思わず流されかけた氷河だが、ここは踏みとどまって首を振った。
「いや、これは、自然に湧いて出た人格じゃないですから・・・」
 
と、突然サガが両手を交差させ、あたりの空間を薙ぎ払った。
一瞬にして、ミッドガルドとカノンの姿が時空の彼方へと消えた。
「カミュが帰ってくる」
 
 
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ミッドガルド妄想 双子座篇


「どうして目覚ましが止まってたんだっ!!」
今更考えても遅いことを心の中で叫びながら、氷河は12宮の階段を駆け下りていた。
カミュは昨日から任務で出かけている。だからって、気が弛んだんだろうか。
俺は俺で、書庫の資料整理という、大切な仕事があるというのに。
こんなことで、カミュの顔に泥を塗るなんて。
ああ、嘆いていても仕方ない。
兎に角今は急ぐことだ。
 
挨拶だけを残して各宮を走り去る。
ミロも不在でよかった。見つかったら絶対にからかわれて足止めされるところだ。
安堵したのも束の間、双児宮で腕を掴まれた。
「おい、お前、どこから湧いて出た?」
宮の中ほどに立っていたカノンは、氷河の腕を掴むと、ぶしつけにこう尋ねた。
「すまない。今、急いでるんだ。」
「宮の主として、確認せぬわけにはいかない。先ほど、お前は下から上がってきてサガと一緒にこの階段を降りて行った。その後、誰かが上がっていった気配はない。それなのにお前は上から来てこの宮を降りてゆく。これは、どういうことだ?」
「俺が、サガと??」
「ここに寄って言葉を交わしたから間違いない。」
「確かに俺は、書庫でサガの手伝いをする予定でした。だが寝坊して・・・」
そう言う氷河の髪は、確かにいつも以上にはねている。
服だってタンクトップにだらしなくシャツを引っ掛けただけだ。
「あの・・・本当に俺と似てましたか?」
「似てるというより、お前そのものだった。サガとて彼をお前の名で呼んでいた」
氷河の血の気が一気に引いた。
ミッドガルドに間違いない。
何故だか実体を伴って復活したミッドガルド。
俺とおんなじ姿をしているなんて、奴しか考えられない。
満足して消えたはずなのに、また、戻ってきたというのか。
聖域で何をするつもりなのか・・・嫌な予感しかしない。
ああ・・・とうめいて氷河は頭を抱えた。
「あいつ・・・消えたんじゃなかったのか?! だったら余計急がなくてはっ!」
「あいつ?」
「ああ、貴方には関係ない」
眉根を寄せたカノンの顔を見て、さすがに失礼だったかと氷河は言葉を繋いだ。
「あ、すみません。貴方が、ということではなくて、あれは、いてはいけない存在だから」
同じ姿形をした、いてはいけない存在?
カノンは腕を捕えていた力を強めた。
「聞かせてもらおうか。いてはいけない『あいつ』の正体を」
「でも、急がないと。放っておいたら何するかわからない」
「何するかわからないような奴なのか。だが、サガがついている。焦ることはない」
いえ、だから、そのサガ相手に何するか気が気じゃないんだって!!
誰もいない書庫で二人きり。
いや、誰かいるとかいないとか、そんなことを気にするような奴じゃない。
だが、あいつのやることなんて、十中八九決まっている。
叫びだしたい気持ちを堪えながら、氷河はカノンの顔を見上げた。
「あ!! そうか、岬!! スニオン岬に閉じ込めればいいのか!」
別々の身体と人格を持っているのに、妙なところだけシンクロして消すに消せない。
岬に閉じ込めておけば、誰の目に留まることもなく安泰だ。
そうだ、それがいい!!
だったら早くサガに伝えて、とっとと奴を閉じ込めて貰おう!!
輝き始めた氷河の瞳とは逆に、カノンの瞳は暗く濁った。
「ほう・・・岬にか。・・・お前にどれほど正当な理由があるのか聞かせてもらおうか」
自ら地雷を踏みまくったことには気づかずに、どうして12宮ってこんなに面倒なんだろうかと氷河は思った。
 
 
一刻も早く二人を追いかけたいのに、私室に押し込まれて椅子に腰を掛けた。この十二宮で、不幸にも守護者の注意を引いてしまった場合、ちゃんと話さなければいっそう面倒なことになるということは、氷河も経験上知っている。それはカノンにおいても同じことのようだった。
 
「聖戦より前の話ですが、俺、敵に捕らわれて洗脳されたことがあるんです。情けない話ですが、ミッドガルドと名乗って、敵方についたんです・・・。」
その、ミッドガルドが、どういうわけか実体を伴って現れたと、氷河は打ち明けた。
なんだ、双子ではないのか・・・と、カノンはちょっと冷静になる。それにしても洗脳された別人格が実体を持って動き回るなど聞いたことがない。何がしかの存在が、実体化に寄与しているに違いなく、氷河一人でそいつを捕えてどうこうできる問題ではないはずだ。
「教主も倒したし、女神に逆らおうという気は持ってないみたいなんですけど、とにかくやることが滅茶苦茶で・・・。でも、あいつを殺すと俺も死ぬ。だから倒すことも出来ずにいました・・・でも、聖域に現れるなんて・・・あン・・っ!」
「?」
俯きがちに話していた氷河の身体が小さくはねるのを、カノンは見逃さなかった。白い肌が、薄らと赤く染まっている。
「いえ、なンでも・・・ナイです・・・あの、俺、行かなきゃ・・・」
立ち上がった氷河の腕を掴むと、氷河の身体がびくりと震え、その顔は泣きそうに歪んだ。
その表情が、妙に色っぽい。
「まだ話の途中だ。それに、何でもないようには見えないが?」
「あとでちゃんと話しますから、今は行かせてください。じゃないとあいつ・・・!」
言いながら氷河は手の甲を唇にあてた。
少し、息が荒い。
ミッドガルドというのが一人でどこかに行ったのなら急ぐ必要もあるだろう。だが、同行しているのはサガだ。任せておいても問題はあるまいと、カノンは鷹揚に構えた。
「そのミッドガルドというのが、女神に逆らうものではないという保証はない。このこと、カミュは知っているのか?」
「・・・いいえ・・・」
「お前ひとりで抱え込んでいい問題ではないだろう?」
「・・・・・・でも」
「?」
「先生には知られたくない・・・」
瞳にはじわじわと涙が浮かぶ。思いがけず涙を目にして、カノンは一瞬たじろいだ。
「なるべく内密に事を運んでやる」
そう言うと、救いを求めるかのように蒼い瞳が一瞬大きく見開かれた。しかしまた、手の甲が口元を覆う。その手を掴んで引きはがすと、氷河の肩が小さく震えた。
「あの、あいつと躰がシンクロしていて・・・。ちょっと今・・・・」
目を逸らして荒い息をついてから、氷河は意を決したように向き直った。
「ミッドガルド・・・・・・あいつ・・・色魔なんです・・・」
「は??」
予想外の言葉に、カノンは呆気にとられて氷河を見た。
うつむいた氷河の耳が、真っ赤に染まっている。
「洗脳されるときに・・・・・・色々あって・・・今のあいつは色欲を満たすことしか考えていない・・・女神に歯向かうとかではなくて、頭の中それだけで・・・。あの・・・サガにも失礼なことを・・・」
「ぶっ」
氷河には悪いが、思わず噴いてしまったカノンである。
「わ、笑いごとじゃないんですっ!! あいつ、俺と同じ姿格好で、誰彼かまわず、す、すごいことを・・・」
すがるようにカノンのシャツの裾を掴んだ氷河は、そこまで言ってふいにうつむいた。
「すごいこと?」
「・・・ハイ・・・」
「今も?」
氷河は、いたたまれないという風に身を縮こまらせた。耳も、首筋も、どこもかしこも赤い。色が白いから余計に目立つ。
「それでお前までシンクロして、感じているというわけか?」
こくりと氷河が頷く。
く・・・。かわいいじゃないか。
 
思えば先ほど現れた氷河は、自分の知っている氷河とは少し違った。
サガの姿を認めるとうれしそうに口元をほころばせ、肩を並べた。
同じ場所で仕事をするのだからその場で待っていればいいものを。下から上がってきて一緒に降りて行ったということは、サガを迎えに来たのに違いなく、なんとなくそのことがカノンの中で引っかかっていた。
ああ、別人格なのだと思えば、確かに合点がいく。
 
氷河には悪いが、ちょっと面白くなってきたカノンである。
あの真面目くさった愚兄が、そのミッドガルドの誘惑にどこまで耐えうるのか。
何しろ見た目だけなら天下一品の美少年。
各種しがらみがあるから手を出さずにいるものの、向こうから迫られて拒みきれる男がいるだろうか。
「ミッドガルドが色欲を満たしたいと考え、サガがそれに応える・・・別にそれで問題はないのではないか」
カノンの言葉に、氷河は信じられないという風に目を見張った。
「サガは・・・立派な方です。そんなこと、するわけない。俺が、そんな馬鹿なことしたと思われて、軽蔑されるのが嫌なんだ」
「だが、いま現にことは進んでいるんだろう?」
「それはミッドガルドが、勝手にのしかかって・・・」
「立派な方か・・・だがあいつも男だ。しかも人一倍欲深い男」
カノンの瞳が不穏に光った。
彼が海将軍になったのには、兄であるサガとの相克が原因だったらしいということを思い出して、氷河は慌てた。
「そんな・・・すべては、あいつがいけないんだ。ミッドガルドが・・・」
「では賭けをしようか? サガが、ミッドガルド相手にどうするか?」 
正面から見据えられて、氷河は目を逸らすことが出来なかった。
「あれとていっぱしの聖闘士だ。ミッドガルドとやらに襲われる心配などないはずだ。お前の言うとおり立派な男なのだとしたら、誘惑されることなく、仕事に集中するはずだ。昼までの3時間、サガが拒み通したら、ミッドガルドを岬に幽閉する口利きをしてやろう。そのかわり」
「?」
「俺が勝ったら、お前にミッドガルドと同じことをしてもらう」
「!?」
「サガの人望はその程度か?」
「・・・・・・・」
「ん?」
「・・・わかりました・・・。俺は、サガを信じていますから」
 
 
ミッドガルドの身に何かあればわかるというので、二人は双児宮の私室で待つことにした。
「間違いなんてあるわけないから、本でも読んでます」
そう言って氷河は、本棚から一冊、本を借りた。
窓際の席に腰かける。
だが、気が気ではない。
一刻も早く書庫に駆け付けたかったのに、何故こんなことになってるんだろう。
そう考えている間にも、唇に熱を感じた。
そうだよな・・・あいつがそんな、じっとしているわけがない・・・。
立ち上がりかけると、カノンと目が合った。
「どうした? もう負けか?」
「違います。・・・ただちょっと・・・ミッドガルドが仕掛けたから・・・嫌だっただけだ」
「ふうん」
 
少し離れたソファでコーヒーを飲みながら、氷河の様子をうかがう。
懸命に本を読んでいるふりをしているが、読んでいないのは一目瞭然だ。
さっきからしきりに口元に手をやる。
ミッドガルドの身に何かあればって、そういうことか。
「あ・・・」
氷河の左手から、本が落ちる。
カノンはそれを拾い上げて、氷河を見おろした。
蒼い目にはうっすらと涙が浮かんでいて、得も言われぬ色香が漂っている。
「進行状況を説明して貰わねばフェアじゃないな」
氷河は口に当てていた手を外すと、太腿の上で強く握りしめた。
「・・・だ、だから、ミッドガルドが。サガが、自分から動いているわけじゃない」
「ふうん・・・だが、お前もずいぶん感じているみたいだが」
「ちが・・・っ」
「答えろ。今、向こうは何してる?」
「・・・・・・」
俯いたために頬にかかった髪を掬う。
そのついでに耳を撫で上げると、それだけで体はびくりと震えた。
「お前が偽れば勝負にならん」
正論だと思ったのか、氷河はうるんだ瞳で一瞬カノンを見上げると、再び下を向いて絞り出すように言った。
「・・・あ・・・・・・サガの・・・を・・・くちで・・・」
おい。
予想以上に速い展開だな。
時計をちらりと眺めて、カノンはちょっぴり悲しい気持ちになった。
サガよ、既にアウトだ。
というか氷河。
お前の判定だとそれはセーフなのか?
そんなもの欲しそうな顔で指噛んでるってお前・・・。
「ん・・・っ!」
声を漏らした氷河が、慌てて両手で口元を覆い、苦しそうにきつく目を閉じた。
「フ・・・この勝負、俺の勝ちだな。」
 
 
白いカーテン越しに差し込む光が、氷河を照らしている。
ベッドの上に広がる淡い、金色の髪。
翳を落とすほど、長いまつげ。
そのどれもが清浄な美しさを湛えていて、心のどこかで希求していた聖なるものを間近で捕えているような錯覚を起こさせた。
負けを認めた氷河は、おとなしくカノンに従う。
というよりも、氷河自身限界ではあったのだろう。
耳朶を口に含んだまま左手を差し出すと、いくらか迷ったのち唇を薄く開いた。
人差し指と中指で、口腔をかき混ぜる。
熱く柔らかな舌が、その後を追って絡みついた。
何もかもが、上気してこちらを誘っている。
しかしそれは、ミッドガルドが兄を欲してのこと。
「躰がシンクロしていると言ったな? だったらお前が感じれば、向こうも感じると、そういうわけか?」
光を帯びるカノンの瞳に、怯えるようにして氷河は頷いた。
カノンの長い指が触れる。
「ミッドガルドは色魔だって?」
「・・・・・・」
「だったら、こんなにしているお前は何だ?」
氷河は、言うなという風に、目を逸らした。
 
 
 
「・・・というわけで、我々は、お前が誘惑に耐えてミッドガルドをかわしてくれることを期待していた訳なんだが。見事に期待を裏切ってくれたな、サガよ」
「お・・・俺・・・本当に信じてたんですけど・・・」
氷河がうるうると涙を浮かべて睨んでいる。
「その割にあんたたちだって楽しんでたみたいじゃないか?」
眉間にしわを寄せたサガの腕に、ミッドガルドが腕を絡めている。
「うるさいっ!! お前さえあんなことしなければ・・・!!」
「だけど教皇のローブとか着てるの見たらつい・・・わかるだろう?」
「わかるかっ!!」
「試してみろよ。俺も今度、この人で試してみるから。」
「なっ・・・」
「だけど、そっちだってすごかったよな。俺、あんたのこともずーっと感じてたよ」
サガの横をするりと抜けて、ミッドガルドはカノンの首に腕を回した。
まんざらでもないカノンがミッドガルドの腰を抱くのを見て、氷河は少しどきりとした。
「・・・っ・・・とにかくもう、お前消えろ。これ以上お前に振り回されるわけにはいかない!!」
「ふん。お前の方こそ消えるがいい」
同じ風貌の二人が罵り合う様を、サガはぼんやりと眺めた。
何となく過去の自分自身を思い出す。こんな次元の悩みではなかった筈だが。
「氷河、こういう場合、無理に抑えつけようとすると逆効果になる。私も過去には君たちにひどい思いをさせてしまったが、そもそもそれは、自分の中にある声を無理やり抑え込もうとしたせいだった。今の君も、その頃の私と似ている。己の心に素直に向き合い、分かり合うことが一番なのではないか。」
真摯なサガの言葉に思わず流されかけた氷河だが、ここは踏みとどまって首を振った。
「いや、これは、自然に湧いて出た人格じゃないですから・・・」
 
と、突然サガが両手を交差させ、あたりの空間を薙ぎ払った。
一瞬にして、ミッドガルドとカノンの姿が時空の彼方へと消えた。
「カミュが帰ってくる」
 
 
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