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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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いつも閲覧、ありがとうございます。

普段小話はPCで書いているんですが、出先だったりPC開く余裕がないときは携帯でぽちぽち打っていたりします。(そこまでして書きたいか・・・)
で、ふと気がつくと、自分あて未送信メールが大量に・・・。
気にいれば話に仕上げているので、残っているのはいつも以上にしょうもないものばかり。

例えばあれです。

カミュ先生の初夢。

「俺、本当はマーマになるのが夢だったんです!」
布に包まれた赤ん坊を大切そうに抱きかかえてほほ笑む氷河。
中を覗くと、一輝にそっくりな赤子。

これを、本当に1月2日にUPしようとしていた自分が怖い・・・。


あるいは。

鶴の恩返し。
氷河半裸。背中に羽。

むろん一輝どんは逃がしはしません。


こんな携帯、誰かに見られたらどうするんだ・・・。
そんなわけで、ちょっと整理しつつ、割と仕上がってる話をUPしてみたいと思います。
沙織さんは本当は男のメンツは立てる人だろうと思うのですが、まぁそれはそれとして。


拍手[11回]




とある昼下がり。
聖域、教皇の間には女神と黄金聖闘士達が顔を揃えていた。
といっても、特に非常事態と言うわけではなく、今後の聖域運営についての報告と確認がなされていた。開かれた聖域をスローガンに始められた御前会議だが、元々は戦いを専門とする面々である。やりたい奴がやればいいとばかりに、聞いていないものが数名。真面目に書類に目を落としつつも、ともすれば睡魔にとらわれそうになるものが数名。
女神、城戸沙織はそんな状況に慣れていた。彼らより更に手におえない5人を御してきたのだから。
進行役のサガがいたたまれなくなって表情を伺ったときも、至って優雅に微笑みを浮かべていた。
が、その女神が、急に眉間にシワを寄せると、サガの声を遮って立ち上がった。静寂の中に衣擦れの音が響く。
何事かと面白がるものが半分、自分達の態度を省みるものが半分。
 
すっと女神が片手をあげた。
と、指先から小宇宙が立ち上ぼり、彼女の前に何かがドサリと落ちた。
背中から石の床に打ち付けられた黒髪の男は、何事か起きたのを察したようだったが、馬のりになって殴りかかる金髪の少年の拳を受け止めるので精一杯だった。殴りかかった少年の方は、余程激昂しているのか、まだ気づかない。透明感のある白い肌が怒りで朱に染まっている。
「あっ!」と思わずカミュが声をもらした。
退屈な午後、思いもよらぬ見せ物が突然降ってきた。
そして宝瓶宮の守護者も狼狽することがあるのだと、それはそれで貴重な光景だと面々は思った。
 
「氷河、一輝」
女神の、不機嫌な声が響く。
その声で我に返った氷河は、女神の向こうに師の姿を認め、今度はさっと青ざめて、その場に座り込んだ。
「まったくあなた達は。何度目です?屋敷を壊すのは?!」
「5回」とふてくされたような一輝の声。
「花壇と塀を入れれば、8度目です。」
城戸の屋敷と言えば女神が育ち、今も度々帰る場所。言わば第二の聖域である。それを部分的とは言え8度に渡って破壊したというのか。カミュはクラクラとめまいがする思いがした。
「何度口で言ってもわからないようですから、罰としてそこで正座していなさい。」
はっと氷河は息を飲んだ。師は呆気にとられた様子で自分を見つめている。師に恥をかかせてしまった。もうどこか、消えてなくなってしまいたい。
うなだれたまま、氷河はその場にちょんと正座した。
「あなたもです。」
チッと舌打ちしながら、一輝は氷河の隣に座る。うつむいていた氷河は、性懲りもなく蒼い瞳でギリギリと一輝を睨み付けた。
ふぅ…ため息をついて女神が口を開きかけたとき、「女神」と声が響いて、赤い髪の男が跪いた。
「弟子の不始末は、師であるこの私の責任かと。」
「フッ、お前も並んで正座してみるか。」
デスマスクがそう揶揄すると、弾かれたように氷河が立ち上がった。
「沙織さん!違うっ!先生は関係ない!俺が悪いのは認めるから、カミュにはやめてくれっ!」
女神に、なんという話し方…。
片手で吹っ飛ばして非礼を詫びる。
「貴方に恥をかかせたことが、相当応えたようですから、これ以上言うことはありませんわ。さ、会議を再開しましょう。席について下さい。」
凍気は帯びていなかったが、拳圧で部屋の端までとばされた氷河は、床に手をついたまま、切実な表情で女神を見つめた。
あらあら、目に涙まで浮かべちゃって。
沸き上がるSっ気をなんとか押さえながら、沙織はカミュを席へと促し、会議を再開した。
 
もとより身の入らぬ会議だった。その脇に泥と芝にまみれた少年が座していれば、益々気は散る。どちらかと言えばまともに参加していた筈のカミュからはイライラした小宇宙が漂い、その盟友のミロに至っては、明らかに会議そっちのけで、うつむいて唇を噛んでいる少年を眺めていた。師に恥をかかせたという後悔が9割。しかしまだ一輝に対する怒りが消えたわけでもなさそうで、時々見開かれる瞳は、強い輝きを放っている。嫌いじゃないなと思って笑みをこぼすと、赤い瞳が非難するようにこちらを睨んでいた。
一輝の方は開き直ったように背を伸ばして座っていた。戦場では、いっぱしの男に見えたが、こう見ると年相応に見えなくもない。いや、さすがに15には見えないが、18くらいには見えるとカノンは思った。
 
そんな風に銘々、思いを巡らせるうち、会議は終わった。
弟子を気にする様子のカミュに、私が話しますからと笑顔で告げて、沙織は二人に向き直った。
とはいえ、くどくどと話すことなど残っていない。
これから二人には、退屈気味の守護者たちが待ち構える12宮を駆け降りるという罰ゲームが待っているのだから。
「下にセスナがあります。夕刻、日本に発ちますから、それに乗って帰ったら、屋敷の修繕をお願いしますね。」
無言を了承ととって、沙織は自室に消えた。
「貴様に関わると、まったく録なことがないな。」
吐き捨てるように言って、氷河は歩きだした。
どうせ、宝瓶宮に詫びをいれに行くんだろう。12宮を見下ろす階段に座り込んで、一輝はその後ろ姿を見送った。
 
 
 
カミュは自室に帰って一人になりたかった。
しかし何故だか、蠍座の男がついてくる。不機嫌な自分とは異なり、彼は妙に楽しそうに、ことの展開を見守っている。
仕方なくカミュは、コーヒーを淹れて、物好きな友人に差し出した。
「氷河のあんな顔は久しぶりに見た。お前が死んでからな、あれは泣きも笑いもしなかったんだぞ。」
カップを両手で包んで、ふぅふぅと息を吹き掛けながらミロが言う。
そんなことを言われると、甘やかしたくなってしまうではないか。振り払うようにカミュは小さく頭を揺すった。
「しかし、正直驚いた。シベリアでもあんな喧嘩は見たことがない。それに女神に対するあの口のききかたは…。」
そう言ってカミュは深くため息をついた。
「イッキは舌打ちしてたしな。セイヤもあんな感じだよな。」
「氷河は私の弟子だ。けじめだけはきっちりつけさせる。」
余計な口出すなよと目が語っている。
「ところで、不死鳥というのはどういう男だ?」
「俺も知らん。アンドロメダの兄で、元暗黒聖闘士のドン、シャカとカノンが一目置いている。」
そこまで話して、ミロは愉快そうに瞳を動かした。席を立って、壁際に置かれたソファーにどっかりと腰をおろす。
しばらくして、至極遠慮がちなノックの音が響いた。
「入りなさい。」
カミュが言うと、扉が開き、いきなり氷河はその場に手をついて詫びた。
詫びている内容は、カミュに恥を掻かせたと言う一点で、興奮しているせいか全く要領を得ない。
「シャワーを浴びて、頭を冷やしてきなさい。」
宝瓶宮に着替えが置いてあるあたり、ディープな師弟関係だとミロは思うのだが、その点を本人達は気にしていないらしく、髪まで洗いさっぱりした氷河は、清潔な白いシャツに着替えて戻ってきた。唇の端や頬に、所々血が滲んでいる。
 
「クールになれと教えた筈だな。」
「…はい。」
「聖闘士に私闘は禁じられているとも教えた。」
「…はい。」
「それに女神に対して、あの態度は何だ?」
「…すみません。」
「私に謝っても仕方ないだろう。」
「…はい。」
ふぅとカミュはため息をついた。
「で、原因は何だ?」
自分でも甘いと思いつつ、つい理由を問うてしまう。尋ねられた氷河は目を見開いてカミュを見つめた後、うつむいて黙り込んだ。
この子がそれほど激昂するなど、余程許せぬことがあったのか。
聖闘士として目的を同じくしていても、性格が相容れない人物というのはいる。カミュとて心当たりはある。実力は認めていても、友とは言いがたい男。だからといって表立ってぶつかりあうほど愚かではないが、氷河にとって不死鳥とはそういう人物なのだろうか。聖戦では相当な活躍を見せたが、かつては暗黒聖闘士を引き連れて、射手座の聖衣を奪いに来た男だ。先程の素行の悪さも思い出されて、カミュは思わず眉をひそめた。 
「不死鳥…かつては暗黒聖闘士を率いていたと聞くが…。」
師の瞳が剣呑に光るのに気づいた氷河は慌てて口を開いた。
「あ、あの頃は奴にも色んなことがあったんです。…射手座の聖衣が欲しかった訳でも、自分を誇示したかった訳でもない…。そのことは、戦った俺が一番よく知っています。」
「戦ったのか?」
突然ミロが口を挟んだ。その声でようやくミロの存在に気付いた氷河は、自分の失態を思って決まり悪そうな顔をして答えた。
「奴が銀河戦争をぶち壊しにきたときに。…負けた…とは、思ってませんけど…。」
それはそうだろう。不死鳥が如何に強くとも、自分と五分に渡り合った坊やに負けて貰っては困る。しかし氷河は悔しそうに唇を噛んでいる。勝った、という訳でもなさそうだ。
それにしても、とミロは思った。奴も目の当たりにしたのだな、あの美しい白い翼を。 
「あのときはお互い殺しあいの戦いをしたけれど、それはもう過去のことで。別に引き摺ったりはしていません。ただ…」
「ただ?」
「何でだか喧嘩になります」
「…なんだそれは…。」
「…距離が…よくつかめないのかな…。」
富士で一度幻魔拳を受け二度目は弾き返した。
それで言葉にすらできない心の奥底を、互いに真正面からのぞきこんでしまった。
いや、それだけではない。
多分幻魔拳などなくとも、感じていたことだ。
戦場でなら、調度いい距離。なのに日常生活で顔をあわせると、どうしたらよいかわからなくなる。
物思いに沈む氷河の横顔は、妙に大人びて見えた。
無意識で薬指の爪を噛む仕草に、カミュの中で危険信号が灯る。
「そんなことで女神の邸宅を破壊されては困るのだがな。」
「…はい。」
女神の邸宅…。
カミュや黄金聖闘士からみたら、城戸邸はそういうものなのだなと、氷河は改めて思った。
城戸の屋敷に、いい思い出などない。ただ他に部屋を借りるのも面倒なので、日本に来たときは利用している。
あんなものは、壊れたって構わない。
しかしそのこと自体、どこかに甘えを含んでいるのだ…。
一輝、お前もだ!!
次回はそのことをクールに指摘してやる。
性懲りもなく、氷河はそう考えて、小さく笑みをこぼした。
「ん?」
カミュに睨まれて、氷河はあわてて顔を引き締める。
「いえ…ひとつ、自分の過ちに気がつきました。」
「そうか。」
 
 
 
夕日を浴びながら、氷河が階段を降りてきた。
師匠への詫びが済んだのか、割とすっきりとした顔をしている。
脇に立つ一輝を一瞥すると、そのままセスナに乗り込んだ。
(服を着替えてやがる。
しかもなんで石鹸の匂いがするんだ?!)
あからさまに顔を背けて窓の外を眺めている氷河の姿を横目でみながら、一輝は憮然として頬杖をついた。
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とある昼下がり。
聖域、教皇の間には女神と黄金聖闘士達が顔を揃えていた。
といっても、特に非常事態と言うわけではなく、今後の聖域運営についての報告と確認がなされていた。開かれた聖域をスローガンに始められた御前会議だが、元々は戦いを専門とする面々である。やりたい奴がやればいいとばかりに、聞いていないものが数名。真面目に書類に目を落としつつも、ともすれば睡魔にとらわれそうになるものが数名。
女神、城戸沙織はそんな状況に慣れていた。彼らより更に手におえない5人を御してきたのだから。
進行役のサガがいたたまれなくなって表情を伺ったときも、至って優雅に微笑みを浮かべていた。
が、その女神が、急に眉間にシワを寄せると、サガの声を遮って立ち上がった。静寂の中に衣擦れの音が響く。
何事かと面白がるものが半分、自分達の態度を省みるものが半分。
 
すっと女神が片手をあげた。
と、指先から小宇宙が立ち上ぼり、彼女の前に何かがドサリと落ちた。
背中から石の床に打ち付けられた黒髪の男は、何事か起きたのを察したようだったが、馬のりになって殴りかかる金髪の少年の拳を受け止めるので精一杯だった。殴りかかった少年の方は、余程激昂しているのか、まだ気づかない。透明感のある白い肌が怒りで朱に染まっている。
「あっ!」と思わずカミュが声をもらした。
退屈な午後、思いもよらぬ見せ物が突然降ってきた。
そして宝瓶宮の守護者も狼狽することがあるのだと、それはそれで貴重な光景だと面々は思った。
 
「氷河、一輝」
女神の、不機嫌な声が響く。
その声で我に返った氷河は、女神の向こうに師の姿を認め、今度はさっと青ざめて、その場に座り込んだ。
「まったくあなた達は。何度目です?屋敷を壊すのは?!」
「5回」とふてくされたような一輝の声。
「花壇と塀を入れれば、8度目です。」
城戸の屋敷と言えば女神が育ち、今も度々帰る場所。言わば第二の聖域である。それを部分的とは言え8度に渡って破壊したというのか。カミュはクラクラとめまいがする思いがした。
「何度口で言ってもわからないようですから、罰としてそこで正座していなさい。」
はっと氷河は息を飲んだ。師は呆気にとられた様子で自分を見つめている。師に恥をかかせてしまった。もうどこか、消えてなくなってしまいたい。
うなだれたまま、氷河はその場にちょんと正座した。
「あなたもです。」
チッと舌打ちしながら、一輝は氷河の隣に座る。うつむいていた氷河は、性懲りもなく蒼い瞳でギリギリと一輝を睨み付けた。
ふぅ…ため息をついて女神が口を開きかけたとき、「女神」と声が響いて、赤い髪の男が跪いた。
「弟子の不始末は、師であるこの私の責任かと。」
「フッ、お前も並んで正座してみるか。」
デスマスクがそう揶揄すると、弾かれたように氷河が立ち上がった。
「沙織さん!違うっ!先生は関係ない!俺が悪いのは認めるから、カミュにはやめてくれっ!」
女神に、なんという話し方…。
片手で吹っ飛ばして非礼を詫びる。
「貴方に恥をかかせたことが、相当応えたようですから、これ以上言うことはありませんわ。さ、会議を再開しましょう。席について下さい。」
凍気は帯びていなかったが、拳圧で部屋の端までとばされた氷河は、床に手をついたまま、切実な表情で女神を見つめた。
あらあら、目に涙まで浮かべちゃって。
沸き上がるSっ気をなんとか押さえながら、沙織はカミュを席へと促し、会議を再開した。
 
もとより身の入らぬ会議だった。その脇に泥と芝にまみれた少年が座していれば、益々気は散る。どちらかと言えばまともに参加していた筈のカミュからはイライラした小宇宙が漂い、その盟友のミロに至っては、明らかに会議そっちのけで、うつむいて唇を噛んでいる少年を眺めていた。師に恥をかかせたという後悔が9割。しかしまだ一輝に対する怒りが消えたわけでもなさそうで、時々見開かれる瞳は、強い輝きを放っている。嫌いじゃないなと思って笑みをこぼすと、赤い瞳が非難するようにこちらを睨んでいた。
一輝の方は開き直ったように背を伸ばして座っていた。戦場では、いっぱしの男に見えたが、こう見ると年相応に見えなくもない。いや、さすがに15には見えないが、18くらいには見えるとカノンは思った。
 
そんな風に銘々、思いを巡らせるうち、会議は終わった。
弟子を気にする様子のカミュに、私が話しますからと笑顔で告げて、沙織は二人に向き直った。
とはいえ、くどくどと話すことなど残っていない。
これから二人には、退屈気味の守護者たちが待ち構える12宮を駆け降りるという罰ゲームが待っているのだから。
「下にセスナがあります。夕刻、日本に発ちますから、それに乗って帰ったら、屋敷の修繕をお願いしますね。」
無言を了承ととって、沙織は自室に消えた。
「貴様に関わると、まったく録なことがないな。」
吐き捨てるように言って、氷河は歩きだした。
どうせ、宝瓶宮に詫びをいれに行くんだろう。12宮を見下ろす階段に座り込んで、一輝はその後ろ姿を見送った。
 
 
 
カミュは自室に帰って一人になりたかった。
しかし何故だか、蠍座の男がついてくる。不機嫌な自分とは異なり、彼は妙に楽しそうに、ことの展開を見守っている。
仕方なくカミュは、コーヒーを淹れて、物好きな友人に差し出した。
「氷河のあんな顔は久しぶりに見た。お前が死んでからな、あれは泣きも笑いもしなかったんだぞ。」
カップを両手で包んで、ふぅふぅと息を吹き掛けながらミロが言う。
そんなことを言われると、甘やかしたくなってしまうではないか。振り払うようにカミュは小さく頭を揺すった。
「しかし、正直驚いた。シベリアでもあんな喧嘩は見たことがない。それに女神に対するあの口のききかたは…。」
そう言ってカミュは深くため息をついた。
「イッキは舌打ちしてたしな。セイヤもあんな感じだよな。」
「氷河は私の弟子だ。けじめだけはきっちりつけさせる。」
余計な口出すなよと目が語っている。
「ところで、不死鳥というのはどういう男だ?」
「俺も知らん。アンドロメダの兄で、元暗黒聖闘士のドン、シャカとカノンが一目置いている。」
そこまで話して、ミロは愉快そうに瞳を動かした。席を立って、壁際に置かれたソファーにどっかりと腰をおろす。
しばらくして、至極遠慮がちなノックの音が響いた。
「入りなさい。」
カミュが言うと、扉が開き、いきなり氷河はその場に手をついて詫びた。
詫びている内容は、カミュに恥を掻かせたと言う一点で、興奮しているせいか全く要領を得ない。
「シャワーを浴びて、頭を冷やしてきなさい。」
宝瓶宮に着替えが置いてあるあたり、ディープな師弟関係だとミロは思うのだが、その点を本人達は気にしていないらしく、髪まで洗いさっぱりした氷河は、清潔な白いシャツに着替えて戻ってきた。唇の端や頬に、所々血が滲んでいる。
 
「クールになれと教えた筈だな。」
「…はい。」
「聖闘士に私闘は禁じられているとも教えた。」
「…はい。」
「それに女神に対して、あの態度は何だ?」
「…すみません。」
「私に謝っても仕方ないだろう。」
「…はい。」
ふぅとカミュはため息をついた。
「で、原因は何だ?」
自分でも甘いと思いつつ、つい理由を問うてしまう。尋ねられた氷河は目を見開いてカミュを見つめた後、うつむいて黙り込んだ。
この子がそれほど激昂するなど、余程許せぬことがあったのか。
聖闘士として目的を同じくしていても、性格が相容れない人物というのはいる。カミュとて心当たりはある。実力は認めていても、友とは言いがたい男。だからといって表立ってぶつかりあうほど愚かではないが、氷河にとって不死鳥とはそういう人物なのだろうか。聖戦では相当な活躍を見せたが、かつては暗黒聖闘士を引き連れて、射手座の聖衣を奪いに来た男だ。先程の素行の悪さも思い出されて、カミュは思わず眉をひそめた。 
「不死鳥…かつては暗黒聖闘士を率いていたと聞くが…。」
師の瞳が剣呑に光るのに気づいた氷河は慌てて口を開いた。
「あ、あの頃は奴にも色んなことがあったんです。…射手座の聖衣が欲しかった訳でも、自分を誇示したかった訳でもない…。そのことは、戦った俺が一番よく知っています。」
「戦ったのか?」
突然ミロが口を挟んだ。その声でようやくミロの存在に気付いた氷河は、自分の失態を思って決まり悪そうな顔をして答えた。
「奴が銀河戦争をぶち壊しにきたときに。…負けた…とは、思ってませんけど…。」
それはそうだろう。不死鳥が如何に強くとも、自分と五分に渡り合った坊やに負けて貰っては困る。しかし氷河は悔しそうに唇を噛んでいる。勝った、という訳でもなさそうだ。
それにしても、とミロは思った。奴も目の当たりにしたのだな、あの美しい白い翼を。 
「あのときはお互い殺しあいの戦いをしたけれど、それはもう過去のことで。別に引き摺ったりはしていません。ただ…」
「ただ?」
「何でだか喧嘩になります」
「…なんだそれは…。」
「…距離が…よくつかめないのかな…。」
富士で一度幻魔拳を受け二度目は弾き返した。
それで言葉にすらできない心の奥底を、互いに真正面からのぞきこんでしまった。
いや、それだけではない。
多分幻魔拳などなくとも、感じていたことだ。
戦場でなら、調度いい距離。なのに日常生活で顔をあわせると、どうしたらよいかわからなくなる。
物思いに沈む氷河の横顔は、妙に大人びて見えた。
無意識で薬指の爪を噛む仕草に、カミュの中で危険信号が灯る。
「そんなことで女神の邸宅を破壊されては困るのだがな。」
「…はい。」
女神の邸宅…。
カミュや黄金聖闘士からみたら、城戸邸はそういうものなのだなと、氷河は改めて思った。
城戸の屋敷に、いい思い出などない。ただ他に部屋を借りるのも面倒なので、日本に来たときは利用している。
あんなものは、壊れたって構わない。
しかしそのこと自体、どこかに甘えを含んでいるのだ…。
一輝、お前もだ!!
次回はそのことをクールに指摘してやる。
性懲りもなく、氷河はそう考えて、小さく笑みをこぼした。
「ん?」
カミュに睨まれて、氷河はあわてて顔を引き締める。
「いえ…ひとつ、自分の過ちに気がつきました。」
「そうか。」
 
 
 
夕日を浴びながら、氷河が階段を降りてきた。
師匠への詫びが済んだのか、割とすっきりとした顔をしている。
脇に立つ一輝を一瞥すると、そのままセスナに乗り込んだ。
(服を着替えてやがる。
しかもなんで石鹸の匂いがするんだ?!)
あからさまに顔を背けて窓の外を眺めている氷河の姿を横目でみながら、一輝は憮然として頬杖をついた。
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