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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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帝国の住人ですからー、書かずにはおれませんでしたー。
特にストーリーはないんですけどね、なぞらずにはいられない・・・。

拍手[11回]




死ぬ間際に見たものを伝えて、ブラックスワンは息絶えた。
命と引き換えに眼球を送ってきたのは、俺への忠誠か、奴への憎悪か。白い凍気の渦は、スワンのものとは格が違った。
相変わらず、目につく金色の髪。
壊してやりたいとずっと思っていた。
お前でさえ、穢れた欲望の果てに生まれてきた。
それにふさわしい死を与えてやる。
 
 
 
ひやりとした空気に振り返ると、凍り付いて輝く光の粒の向こうに、氷河が立っていた。
6年。
聖闘士の修行は、氷河の顔も戦士のそれに変えた。
鋭く睨む蒼い瞳には、聖闘士としての自信が滲んでいる。
岩場を蹴ると同時に、氷河は拳を繰り出した。
ふん、あいにく、戦いは正攻法とは限らんのだ。
闇には、闇なりの戦い方がある。
別段欲しいとも思わなかったが、スワンから受け取った映像は、跳びかかる氷河の姿に重なった。
「いくぞ一輝!! ダイヤモンドダスト!!」
一瞬身をひいて凍気を受け止めると、一輝はそれを掌で弾き返した。
白銀に輝く聖衣が、洞穴にあたってはねた。金色の髪が揺れ、細くしなやかな躰がずり落ちてゆく。
「バカな・・・。」
自らが放った拳をまともに浴びた氷河は、立ち上がろうとしてわずかによろめいた。
 
お前、知ってたんだろう?
俺たちの生まれを。
 
一輝は氷河を見おろしたまま、ゆっくりと歩みを進めた。
 
 
口の端に血を滲ませて、じっと睨んでいる氷河の顔を思い出す。
7年前。
めったにないことだが、あの日、俺たちがいた施設の前を黒塗りの車が通った。
監督の一人が俺たちを下がらせようとしたときに、ふいに氷河が飛び出した。
日本語がわからないのか、普段はじっと黙っているだけの奴が、何を思ったのか道路の真ん中に立ち、手を広げた。
さほどのスピードは出していなかったが、それでも車はブレーキを軋らせて止まった。
「馬鹿もんっ!」
男が氷河の手を引っ張って無理にどかせようとしたところで、向こうから辰巳が走ってきた。
氷河の顔を見て、辰巳はほんの一瞬だけひるんだ。振り上げた竹刀が、空中で止まった。
氷河が、何を叫んだのかはわからない。
フロントガラスの奥を見据えながら、異国の言葉を叫んだ。
初めて聞く声だ。
引き下がらせようとする男の手を氷河が払おうとすると、我に返ったように辰巳が竹刀を振り下ろした。それは音をたてて、氷河の右腕を打った。
氷河はそのまま地面に倒れたが、再び立ち上がって何か叫んだ。
唇を噛んだのか、口元を血が伝っていた。
「どけ!頭を下げて、どくんだ。」
そう言って辰巳は再び竹刀を振り上げる。
見かねて、石を投げた。それは見事に辰巳の額に命中した。
「お前だな、一輝っ!!」
竹刀を受けながら見上げると、男に担ぎ上げられて運ばれてゆく氷河が見えた。
氷河は手足をばたつかせ、なおも何かを叫んでいた。
 
 
デスクイーン島で城戸についての話を聞いたあと、氷河のことを思い出した。
氷河が城戸の人間に逆らうような真似をしたのはあの時一度きりだった。何が氷河をそうさせたのか、あの時、俺たちの誰一人としてわからなかった。
俺たちだって言いたいことがなかったわけではない。
だが逆らえばどんな目に合うかは、誰もが知っていることだった。
氷河とてそれについては知っていたはずだ。
にもかかわらず、言いたいことが奴にはあった。
いつも俺たちを虫けらのように扱う辰巳でも、監督の男でもなく、城戸光政という男に。
いくつものあざを作って部屋に帰ってきた氷河は、どこか捨て鉢な顔をしていた。
それでも俺をみつけると、シャツの裾を掴んで引き止め何か言った。
恥ずかしそうに笑みを浮かべたから、それが礼を述べる言葉であることがわかった。
「なんだお前、笑えるんじゃん。」
くしゃくしゃと髪をかき混ぜると、困ったように首をすくめた。
 
 
氷河、お前は何を飲み込んで生きてきた?
あの日やすやすと打ちのめされた細い身体が憎い。
俺を見て小さく笑った顔が憎い。
 
壊してやりたい。
 
 
 
小宇宙を高めて氷河を見おろすと、ぞっとするほど美しい海が意識の中に入り込んでくる。
反吐が出る程、甘い感情。
 
(マーマ、ぼくはこれから毎日マーマにあいにくる・・・。マーマのすきな花を毎日とどけてあげるからね・・・)
 
氷の海の底で、氷河が笑っている。
瞳は泣いているのに、唇だけが笑みの形をとっている。
歪んだ世界。
未来なんかどこにもない。
 
 
「女々しいな。死んだ母親に毎日会いに行っているのか。」
そう言うと奴の顔に、驚きの表情が走った。
「な・・・。お前は俺の心の中を・・・?」
死んだ母親にすがりついて、埋め合わせてきたのか。
驚きのあまり朱がさした首筋が、もろく弱い心を、そのまま表しているかのようだった。 
 
「その女、あいつの何がよかったんだろうな。金か? どうやって、孕んだのかくらい、お前だってわかっているんだろう?」
氷河は拳を握りしめると立ち上がった。
「愚弄するようなことを言うな。・・・母は、信じていた。」
「ほう・・・。なら、いいように遊ばれたってわけだ。あれを信じるって、相当にめでたい女だな。」
喰ってかかるかと思ったが、氷河は静かに一輝をみつめた。
 
「一輝。考えるな。そのこと。何も答えなんかでない。」
 
「よくも平気な顔をして生きているな。」
 
「生きるさ。生かされたんだからな。」
 
身構える氷河より一瞬早く、一輝が拳を放った。
 
「鳳凰幻魔拳!!」
 
お前、よく見ろよ。
惨めな自分の姿を。
 
目を見開いている氷河の唇が震える。
やがてそれが身体にも伝わり、ぐらりと傾いで膝をついた。
 
神経が引き裂かれてゆく音。
一輝にだけ、それが聴こえる。
躰の中を這いまわって、大切なものを引きずり出して絶望に変える。
 
大方、母親の夢か。
 
噛みしめた唇が赤く染まり、悲鳴が漏れる。
白く細い指が髪を掻きむしり、こめかみの肌を抉った。
 
 
「マ・・・マ、それだけ。・・・あとはいらない。何も・・・。ザ・・・ク・・・。」
 
 
右の手が空を掻くように伸びて、拳の形をなした。
 
(アイザック、お前のようにうまくはやれないけど。
俺だって誓いは守る。)
 
やがて瞳は焦点を結び、乱れた髪の間から蒼く光った。
 
時折体が痙攣して、びくびくと奇妙な形にはねる。
それでも瞳は一輝を鋭く見据えた。
 
 
何か違うものが胸に詰まっている。
気に入らんな。
 
 
動かぬ体で放った凍気は、上空へと突き抜けあたりを凍てつかせた。
不死鳥の聖衣ですら、凍りついて眠っている。
だが、その動きは手に取るようにわかった。
馬鹿だな、氷河。
これはスポーツではなく殺し合いだ。
格下相手に手の内を見せ、情けをかけるとは。
 
「そうか、そういうことだったのか。」
 
ブラックスワンが右目を送ってよこした意味を今更理解して、氷河は戦場にはひどく場違いな、生真面目な顔をして唇を噛んだ。
 
「身体が動くまい。」
 
細い指が、わずかに揺れて止まった。
「あ・・・」
前髪が血と汗でぬれている。
それを払いのけることすら、今のお前には出来ない。
荒くついた息だけが聴こえる。
 
「これでおわりだ。」
 
胸を貫く。
生暖かい熱が、拳を包んだ。
雪のように輝く聖衣と白いシャツが血に染まってゆく。
信じられないという顔をして、氷河は目を見開いた。
 
死ぬ時は皆、こんな空みたいな瞳をするのか。
違う。
俺は憎むことをやめない。
 
痛みに漏れる声を噛み殺して、氷河は拳を持ち上げた。
素手で打ち返すと、それはあっけなく砕けた。
それでも左手は俺の腕を掴んだままだ。
 
「右腕一本はもらうといったろう。」
 
痺れるような痛みが、徐々に腕をせりあがってくる。
あの日。
シャツの裾をそっと握りしめてきたあの手。
今は凍気を発して、俺の右腕を奪った。
 
身体を突き倒すと、柔らかな金色の髪だけが揺れた。
 
すべてを焼き尽くすための、これが一歩目。


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死ぬ間際に見たものを伝えて、ブラックスワンは息絶えた。
命と引き換えに眼球を送ってきたのは、俺への忠誠か、奴への憎悪か。白い凍気の渦は、スワンのものとは格が違った。
相変わらず、目につく金色の髪。
壊してやりたいとずっと思っていた。
お前でさえ、穢れた欲望の果てに生まれてきた。
それにふさわしい死を与えてやる。
 
 
 
ひやりとした空気に振り返ると、凍り付いて輝く光の粒の向こうに、氷河が立っていた。
6年。
聖闘士の修行は、氷河の顔も戦士のそれに変えた。
鋭く睨む蒼い瞳には、聖闘士としての自信が滲んでいる。
岩場を蹴ると同時に、氷河は拳を繰り出した。
ふん、あいにく、戦いは正攻法とは限らんのだ。
闇には、闇なりの戦い方がある。
別段欲しいとも思わなかったが、スワンから受け取った映像は、跳びかかる氷河の姿に重なった。
「いくぞ一輝!! ダイヤモンドダスト!!」
一瞬身をひいて凍気を受け止めると、一輝はそれを掌で弾き返した。
白銀に輝く聖衣が、洞穴にあたってはねた。金色の髪が揺れ、細くしなやかな躰がずり落ちてゆく。
「バカな・・・。」
自らが放った拳をまともに浴びた氷河は、立ち上がろうとしてわずかによろめいた。
 
お前、知ってたんだろう?
俺たちの生まれを。
 
一輝は氷河を見おろしたまま、ゆっくりと歩みを進めた。
 
 
口の端に血を滲ませて、じっと睨んでいる氷河の顔を思い出す。
7年前。
めったにないことだが、あの日、俺たちがいた施設の前を黒塗りの車が通った。
監督の一人が俺たちを下がらせようとしたときに、ふいに氷河が飛び出した。
日本語がわからないのか、普段はじっと黙っているだけの奴が、何を思ったのか道路の真ん中に立ち、手を広げた。
さほどのスピードは出していなかったが、それでも車はブレーキを軋らせて止まった。
「馬鹿もんっ!」
男が氷河の手を引っ張って無理にどかせようとしたところで、向こうから辰巳が走ってきた。
氷河の顔を見て、辰巳はほんの一瞬だけひるんだ。振り上げた竹刀が、空中で止まった。
氷河が、何を叫んだのかはわからない。
フロントガラスの奥を見据えながら、異国の言葉を叫んだ。
初めて聞く声だ。
引き下がらせようとする男の手を氷河が払おうとすると、我に返ったように辰巳が竹刀を振り下ろした。それは音をたてて、氷河の右腕を打った。
氷河はそのまま地面に倒れたが、再び立ち上がって何か叫んだ。
唇を噛んだのか、口元を血が伝っていた。
「どけ!頭を下げて、どくんだ。」
そう言って辰巳は再び竹刀を振り上げる。
見かねて、石を投げた。それは見事に辰巳の額に命中した。
「お前だな、一輝っ!!」
竹刀を受けながら見上げると、男に担ぎ上げられて運ばれてゆく氷河が見えた。
氷河は手足をばたつかせ、なおも何かを叫んでいた。
 
 
デスクイーン島で城戸についての話を聞いたあと、氷河のことを思い出した。
氷河が城戸の人間に逆らうような真似をしたのはあの時一度きりだった。何が氷河をそうさせたのか、あの時、俺たちの誰一人としてわからなかった。
俺たちだって言いたいことがなかったわけではない。
だが逆らえばどんな目に合うかは、誰もが知っていることだった。
氷河とてそれについては知っていたはずだ。
にもかかわらず、言いたいことが奴にはあった。
いつも俺たちを虫けらのように扱う辰巳でも、監督の男でもなく、城戸光政という男に。
いくつものあざを作って部屋に帰ってきた氷河は、どこか捨て鉢な顔をしていた。
それでも俺をみつけると、シャツの裾を掴んで引き止め何か言った。
恥ずかしそうに笑みを浮かべたから、それが礼を述べる言葉であることがわかった。
「なんだお前、笑えるんじゃん。」
くしゃくしゃと髪をかき混ぜると、困ったように首をすくめた。
 
 
氷河、お前は何を飲み込んで生きてきた?
あの日やすやすと打ちのめされた細い身体が憎い。
俺を見て小さく笑った顔が憎い。
 
壊してやりたい。
 
 
 
小宇宙を高めて氷河を見おろすと、ぞっとするほど美しい海が意識の中に入り込んでくる。
反吐が出る程、甘い感情。
 
(マーマ、ぼくはこれから毎日マーマにあいにくる・・・。マーマのすきな花を毎日とどけてあげるからね・・・)
 
氷の海の底で、氷河が笑っている。
瞳は泣いているのに、唇だけが笑みの形をとっている。
歪んだ世界。
未来なんかどこにもない。
 
 
「女々しいな。死んだ母親に毎日会いに行っているのか。」
そう言うと奴の顔に、驚きの表情が走った。
「な・・・。お前は俺の心の中を・・・?」
死んだ母親にすがりついて、埋め合わせてきたのか。
驚きのあまり朱がさした首筋が、もろく弱い心を、そのまま表しているかのようだった。 
 
「その女、あいつの何がよかったんだろうな。金か? どうやって、孕んだのかくらい、お前だってわかっているんだろう?」
氷河は拳を握りしめると立ち上がった。
「愚弄するようなことを言うな。・・・母は、信じていた。」
「ほう・・・。なら、いいように遊ばれたってわけだ。あれを信じるって、相当にめでたい女だな。」
喰ってかかるかと思ったが、氷河は静かに一輝をみつめた。
 
「一輝。考えるな。そのこと。何も答えなんかでない。」
 
「よくも平気な顔をして生きているな。」
 
「生きるさ。生かされたんだからな。」
 
身構える氷河より一瞬早く、一輝が拳を放った。
 
「鳳凰幻魔拳!!」
 
お前、よく見ろよ。
惨めな自分の姿を。
 
目を見開いている氷河の唇が震える。
やがてそれが身体にも伝わり、ぐらりと傾いで膝をついた。
 
神経が引き裂かれてゆく音。
一輝にだけ、それが聴こえる。
躰の中を這いまわって、大切なものを引きずり出して絶望に変える。
 
大方、母親の夢か。
 
噛みしめた唇が赤く染まり、悲鳴が漏れる。
白く細い指が髪を掻きむしり、こめかみの肌を抉った。
 
 
「マ・・・マ、それだけ。・・・あとはいらない。何も・・・。ザ・・・ク・・・。」
 
 
右の手が空を掻くように伸びて、拳の形をなした。
 
(アイザック、お前のようにうまくはやれないけど。
俺だって誓いは守る。)
 
やがて瞳は焦点を結び、乱れた髪の間から蒼く光った。
 
時折体が痙攣して、びくびくと奇妙な形にはねる。
それでも瞳は一輝を鋭く見据えた。
 
 
何か違うものが胸に詰まっている。
気に入らんな。
 
 
動かぬ体で放った凍気は、上空へと突き抜けあたりを凍てつかせた。
不死鳥の聖衣ですら、凍りついて眠っている。
だが、その動きは手に取るようにわかった。
馬鹿だな、氷河。
これはスポーツではなく殺し合いだ。
格下相手に手の内を見せ、情けをかけるとは。
 
「そうか、そういうことだったのか。」
 
ブラックスワンが右目を送ってよこした意味を今更理解して、氷河は戦場にはひどく場違いな、生真面目な顔をして唇を噛んだ。
 
「身体が動くまい。」
 
細い指が、わずかに揺れて止まった。
「あ・・・」
前髪が血と汗でぬれている。
それを払いのけることすら、今のお前には出来ない。
荒くついた息だけが聴こえる。
 
「これでおわりだ。」
 
胸を貫く。
生暖かい熱が、拳を包んだ。
雪のように輝く聖衣と白いシャツが血に染まってゆく。
信じられないという顔をして、氷河は目を見開いた。
 
死ぬ時は皆、こんな空みたいな瞳をするのか。
違う。
俺は憎むことをやめない。
 
痛みに漏れる声を噛み殺して、氷河は拳を持ち上げた。
素手で打ち返すと、それはあっけなく砕けた。
それでも左手は俺の腕を掴んだままだ。
 
「右腕一本はもらうといったろう。」
 
痺れるような痛みが、徐々に腕をせりあがってくる。
あの日。
シャツの裾をそっと握りしめてきたあの手。
今は凍気を発して、俺の右腕を奪った。
 
身体を突き倒すと、柔らかな金色の髪だけが揺れた。
 
すべてを焼き尽くすための、これが一歩目。


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