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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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とっても励みになっております。

やさぐれ氷河、どんどん妄想で補ってお読みください。

拍手[22回]




翌朝は、晴れた。
太陽の光が雪に反射して、窓からも強い光が差し込んでくる。
雪を撫でてきた朝の風がどんなものか。
氷河にはわかる。
きしきしと、白い雪を踏んで歩く足の記憶。
 
夢を見た。
ずい分と昔の夢だ。
多分、人の体温を感じながら眠ったせいだ。
夢の中に母が現れて、雪の間から覗いた花を見つけて慈しむような笑みを浮かべた。
 
氷河はベッドに転がったまま、部屋に満ちた光をぼんやりと眺めた。
昨夜のカミュの言葉が蘇る。
「傷を治すことだ。私たちがすべきことは。今はそれだけを考えよう。」
何故、私たちと言うのか。
今はと言ったのは何故だ。
 
 
部屋を出ると、リビングにカミュの姿はなかった。
テーブルの上に置手紙がある。
「夕刻までには戻る。食事は台所に用意してある。」
氷河は台所に行き、鍋の中を覗いた。
肉の入ったシチュー。
途端に空腹に襲われる。
 
パンをちぎっては、シチューにつけて食べた。
時計の針は11時を過ぎている。
朝食兼昼食。
シチューを二度おかわりし、大きくて丸い黒パンをあらかた一人で食べてしまった。
とりあえず、飯がうまいことだけは確かだ。
満腹になった氷河は、暖炉の前にその身を投げ出した。
暖炉の火は、母を思い出させる。
それがほんの少し優しく煌めいたかと思うと、竹刀の音と怒号に消えた。
粗末な服を着て、それでも何か生きる意味があるかのように思っている子供たち。
それはぞろぞろと、バスの中へと詰め込まれていった。
 
氷河は立ちあがって、ドアを眺めた。
分厚いが粗末なそのドアに、鍵はついていなかった。
出て行くなら、今だ。
氷河は雪の気配に覚悟を固めた。
ドアを開けると、一気に冷たい空気が入り込んでくる。
光が反射して外は眩しいくらいなのに、息すらままならないほど寒い。
それでも数歩足を踏み出してみる。
一面、氷。
北国の暮らしは知っている筈だった。
しかしそれは氷河の記憶にある景色とはだいぶ違った。
360度どこを見渡しても、他に建物が見当たらない。
遠景を遮るように立っているのもまた、氷の壁だ。
「なんなんだ、ここ・・・。」
氷河は呆気にとられて、ため息をついた。
その息がまつげにかかって、みるみる凍り付く。
「くそっ!」
氷河は小屋に駆け戻り、ドアを固く閉め、暖炉の前で手をすり合わせた。
 
弟子を育てていた場所だとあいつは言った。
やはり聖闘士というのはみな、こんなろくでもないところで育つものなのか。
デスクイーン島の籤をひいたとき、周りの人間は皆息を飲んだ。
憐みの視線と自分が行かなくて済んだという安堵感が、ざわざわと氷河を取り囲んだ。
しかし・・・、ここだって相当なものだ。
あのうちの誰かが、この場所も籤で引き当てたのだろうか。
シベリアを誰かが引いた記憶はない。
あれば多分、気に留めた筈だから。
しかしこの地であいつの指導を受け、聖闘士になった奴がいる。
 
 
いつの間にか眠ってしまったらしい。
氷河は起き上がって、あたりを見回した。
カミュはまだ帰っていない。
することもないので、小屋の中をうろうろしてみる。
と言っても台所と居間の他は、カミュの部屋と、借りている氷河の部屋だけだ。
氷河の部屋は、多分弟子だった奴が使っていた部屋だ。
クローゼットには、まだいくらかの服が残されている。知っている奴だろうかと、名前を探したが、どこにもそれは残されていなかった。
カミュの部屋に行く。
起きてそのままだった布団が妙にだらしなく見えて、氷河はそれを直した。
ベッドに机、本棚。
質素な部屋だが、こんな風に並べられた本を、氷河は初めて見た。
タイトルだけ眺めても、何のことだかさっぱりわからない。
そのうちの一冊を手に取ってみる。
パラパラと頁をめくると、ところどころにひかれた線と、書き込まれた青いインクの文字が目に入った。
あの男が、そうやって本を読む姿が目に浮かぶ。
 
ここは地獄だろうか。
だとしたらどんな?
 
とりあえず、飯はうまい。
一人で夕食をとりながら、氷河はもう一度考えた。
これだけ比べれば、確かに島とは天国と地獄というくらいの差がある。
シチューを頬張りながら、氷河は置手紙を手に取って、もう一度その文字を眺めた。
「夕刻までには戻る。」
時刻は8時をまわっている。
 
聖衣がない。
ということは、あれを着てどこかで戦っているのだろうか。
あいつより、もっと強い奴というのもいるのだろうか。
あいつより、卑劣な奴はきっとたくさんいるだろう。
 
食べ終わった皿を台所に運び、なんとなくカミュの真面目そうな瞳を思い出した。
それで仕方なく、洗って棚に戻した。
 
戦ったら、あいつでも怪我をすることがあるんだろうか。
その場を動けなくなるような怪我。
命を落とすような怪我。
てのひらの熱を思い出す。
帰ってきてほしい、と思った。
もう一度顔を見ないと落ち着かない。
あれは一体どういう奴なんだ。
その正体を突き止めるまでは。
 
ドアを開けてみると、外は真っ暗だった。
生き物の気配はない。
凍てついた空に、星だけが恐ろしいほど輝いていた。
 
 
 
任務を終えてカミュが帰ったのは、0時を過ぎた頃だった。
予定より、ずいぶんとかかってしまったな。
家の前でマントを外して砂塵を落とした。
それと同時に、張りつめていた気持ちが解ける。
ドアをあけると、何かが目に入った。
毛布にくるまって、壁に凭れたまま氷河が眠っている。
 
なんでまた、こんなところで・・・。
 
寝室に運んでやろうと肩と膝の後ろに腕を差し入れると、蒼い瞳がうっすらと開いて笑った。
 
 


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翌朝は、晴れた。
太陽の光が雪に反射して、窓からも強い光が差し込んでくる。
雪を撫でてきた朝の風がどんなものか。
氷河にはわかる。
きしきしと、白い雪を踏んで歩く足の記憶。
 
夢を見た。
ずい分と昔の夢だ。
多分、人の体温を感じながら眠ったせいだ。
夢の中に母が現れて、雪の間から覗いた花を見つけて慈しむような笑みを浮かべた。
 
氷河はベッドに転がったまま、部屋に満ちた光をぼんやりと眺めた。
昨夜のカミュの言葉が蘇る。
「傷を治すことだ。私たちがすべきことは。今はそれだけを考えよう。」
何故、私たちと言うのか。
今はと言ったのは何故だ。
 
 
部屋を出ると、リビングにカミュの姿はなかった。
テーブルの上に置手紙がある。
「夕刻までには戻る。食事は台所に用意してある。」
氷河は台所に行き、鍋の中を覗いた。
肉の入ったシチュー。
途端に空腹に襲われる。
 
パンをちぎっては、シチューにつけて食べた。
時計の針は11時を過ぎている。
朝食兼昼食。
シチューを二度おかわりし、大きくて丸い黒パンをあらかた一人で食べてしまった。
とりあえず、飯がうまいことだけは確かだ。
満腹になった氷河は、暖炉の前にその身を投げ出した。
暖炉の火は、母を思い出させる。
それがほんの少し優しく煌めいたかと思うと、竹刀の音と怒号に消えた。
粗末な服を着て、それでも何か生きる意味があるかのように思っている子供たち。
それはぞろぞろと、バスの中へと詰め込まれていった。
 
氷河は立ちあがって、ドアを眺めた。
分厚いが粗末なそのドアに、鍵はついていなかった。
出て行くなら、今だ。
氷河は雪の気配に覚悟を固めた。
ドアを開けると、一気に冷たい空気が入り込んでくる。
光が反射して外は眩しいくらいなのに、息すらままならないほど寒い。
それでも数歩足を踏み出してみる。
一面、氷。
北国の暮らしは知っている筈だった。
しかしそれは氷河の記憶にある景色とはだいぶ違った。
360度どこを見渡しても、他に建物が見当たらない。
遠景を遮るように立っているのもまた、氷の壁だ。
「なんなんだ、ここ・・・。」
氷河は呆気にとられて、ため息をついた。
その息がまつげにかかって、みるみる凍り付く。
「くそっ!」
氷河は小屋に駆け戻り、ドアを固く閉め、暖炉の前で手をすり合わせた。
 
弟子を育てていた場所だとあいつは言った。
やはり聖闘士というのはみな、こんなろくでもないところで育つものなのか。
デスクイーン島の籤をひいたとき、周りの人間は皆息を飲んだ。
憐みの視線と自分が行かなくて済んだという安堵感が、ざわざわと氷河を取り囲んだ。
しかし・・・、ここだって相当なものだ。
あのうちの誰かが、この場所も籤で引き当てたのだろうか。
シベリアを誰かが引いた記憶はない。
あれば多分、気に留めた筈だから。
しかしこの地であいつの指導を受け、聖闘士になった奴がいる。
 
 
いつの間にか眠ってしまったらしい。
氷河は起き上がって、あたりを見回した。
カミュはまだ帰っていない。
することもないので、小屋の中をうろうろしてみる。
と言っても台所と居間の他は、カミュの部屋と、借りている氷河の部屋だけだ。
氷河の部屋は、多分弟子だった奴が使っていた部屋だ。
クローゼットには、まだいくらかの服が残されている。知っている奴だろうかと、名前を探したが、どこにもそれは残されていなかった。
カミュの部屋に行く。
起きてそのままだった布団が妙にだらしなく見えて、氷河はそれを直した。
ベッドに机、本棚。
質素な部屋だが、こんな風に並べられた本を、氷河は初めて見た。
タイトルだけ眺めても、何のことだかさっぱりわからない。
そのうちの一冊を手に取ってみる。
パラパラと頁をめくると、ところどころにひかれた線と、書き込まれた青いインクの文字が目に入った。
あの男が、そうやって本を読む姿が目に浮かぶ。
 
ここは地獄だろうか。
だとしたらどんな?
 
とりあえず、飯はうまい。
一人で夕食をとりながら、氷河はもう一度考えた。
これだけ比べれば、確かに島とは天国と地獄というくらいの差がある。
シチューを頬張りながら、氷河は置手紙を手に取って、もう一度その文字を眺めた。
「夕刻までには戻る。」
時刻は8時をまわっている。
 
聖衣がない。
ということは、あれを着てどこかで戦っているのだろうか。
あいつより、もっと強い奴というのもいるのだろうか。
あいつより、卑劣な奴はきっとたくさんいるだろう。
 
食べ終わった皿を台所に運び、なんとなくカミュの真面目そうな瞳を思い出した。
それで仕方なく、洗って棚に戻した。
 
戦ったら、あいつでも怪我をすることがあるんだろうか。
その場を動けなくなるような怪我。
命を落とすような怪我。
てのひらの熱を思い出す。
帰ってきてほしい、と思った。
もう一度顔を見ないと落ち着かない。
あれは一体どういう奴なんだ。
その正体を突き止めるまでは。
 
ドアを開けてみると、外は真っ暗だった。
生き物の気配はない。
凍てついた空に、星だけが恐ろしいほど輝いていた。
 
 
 
任務を終えてカミュが帰ったのは、0時を過ぎた頃だった。
予定より、ずいぶんとかかってしまったな。
家の前でマントを外して砂塵を落とした。
それと同時に、張りつめていた気持ちが解ける。
ドアをあけると、何かが目に入った。
毛布にくるまって、壁に凭れたまま氷河が眠っている。
 
なんでまた、こんなところで・・・。
 
寝室に運んでやろうと肩と膝の後ろに腕を差し入れると、蒼い瞳がうっすらと開いて笑った。
 
 


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