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1月の終わり、カノンはソレントに呼び出された。
指定された店を訪れると、奥の席には懐かしい顔。
ソレント、イオ、バイアン、カーサ、クリシュナ。
椅子の数から考えて、あとの一人は来ていないらしい。
ソレントがメニューを手渡し、カノンはコーヒーを注文した。
先ほどのカノンの視線に気づいたのか、イオが言った。
「そう、そのアイザックのことなんだ。」
一番年下のアイザック。
まだ多感なお年頃。何かあったのだろうかと、カノンは眉間にしわを寄せた。
「いや、もうすぐ、奴の誕生日だろ。それでちょっとばかり、力を借りたいと思って。」
そう言えば彼も水瓶座だったなとカノンは思った。
「キグナス、というのがいるだろう? どうやらアイザックの想い人というのが彼みたいなんだ。どうだ? 脈はあるのか?」
そんなこと、自分に聞かれても・・・とカノンは思う。
大体天蠍宮と宝瓶宮の争いだけでも、見ているこちらはおなかいっぱいなのだ。ここにアイザックが参戦するとなると、自分が巻き込まれることは必至だ。
それはまぁ、氷河がアイザックのことを大切に想っていることはわかる。
多分、自分の命より大事な筈だ。
「でも、あれだろ? 師匠というのが強敵なんだろう?」
思わずコーヒーを吹き出しそうになる。
「・・・何故知っている?」
「酔わせたら、喋った。」とイオ。
「だがな、俺らとしては、アイザックの恋を叶えてやりたい。だから誕生日に二人きりのデートをプレゼントしてやるつもりだ。」
彼らの計画とは、つまりこういうことだった。
氷河を聖域から連れ出し、アイザックと二人きりでデートをさせ、その間氷河に変身したカーサが、カミュを足止めする。
「そこでだ。カノンには二つ、頼みたいことがある。一つは氷河を連れ出す役。もう一つは、カーサの貞操を護る役だ。」
カーサの貞操など、考えたくはなかった。
がしかし、本人は到って真剣だ。
もしも自分にカーサと同じ能力があったとして、氷河を装ってカミュと二人で一日過ごすとなれば、確かに護衛の一人もつけたいところだ。
「な、協力してくれるだろ?」
「しかし、カミュもアイザックを祝いたいと思うのだが・・・。」
「そんなこと言ってっから進展しないんだよ。もしも弟子としての立場をアイザックが問われたら、全部俺らの仕業だって言ってくれていい。誕生日くらい、願いを叶えてやろうぜ。」
彼らの友情に目頭が熱くなる。カノンが頷くと、クリシュナがそっと包みを手渡した。
青いスタッフジャンバー。
背中には「アイザックを幸せにする会」と書かれている。
胸元には、漢字で「卒業祈念」。
何を卒業するんだ?! 何を!
「ティティスが一生懸命縫ったんだ。着てくれるよな?」
「いや、返って目立ちすぎるだろう・・・。」
「いいですか? 貴方は聖闘士としての禊は済ませたかもしれない。しかし私たちに対してはどうだろう? いわばこれが免罪符です。」
ソレントにそう言われて、カノンは即座に袖を通した。
2月17日。
所用と偽って、カノンは氷河を双児宮に呼んだ。
それだけでもカミュは不服そうだったが、サガがどうのと言ってごまかした。
「御用って、何でしょう?」
しばらくして双児宮に現れた氷河は、珍しくディバックを肩からかけていた。
「買いたいものがあって、少し、付き合っては貰えないだろうか。」
「はぁ・・・でもあの、午後から用事があるんですけど。」
「用事?」
「ええ。」
「カミュと?」
「あ、いえ・・・。」
「それ程時間はとらせない。付き合ってくれ。」
半ば強引に、カノンは歩き始めた。
二人が出て行ったところで、もう一人、氷河が姿を現す。
「まさか、いきなりってことないよな。」
そう呟いて、のろのろと階段を上がって行った。
聖域を抜けて、市街地を歩いてゆく。
カノンの足どりは速いので、氷河は小走りでついてゆくような形だ。
「あの、買い物って、何なんでしょう? 俺で手伝えるようなものですか?」
「ああ、お前でないと駄目だな。」
「俺でないと??」
氷河はしばし考えて、嬉しそうに声をあげた。
「わかった!! アイザックのプレゼントでしょう!?」
まさか自分がプレゼントだとは思い至らぬ様子で、氷河は無邪気にはしゃいでいる。
「あの、もしかしてアイザックと約束してます?」
「・・・いや。仕事があるのでな。後で誰かに届けてもらおうと思っている。」
「じゃ、俺、渡しときましょうか?? 午後の予定って、アイザックと会う約束なんで。」
あ?
拍子抜けするカノンを置いて、氷河は先に進んでゆく。
「俺は、ブレスレッドにしたんですよ。アイザックが欲しいって言ってたのがあったから。それ以外だったら、帽子とか? あいつ、案外お洒落にこだわるんですよねぇ・・・。」
氷河はにこにこと笑いながら、傍らの店を眺めた。
「これとか、どうかなぁ。」
氷河が手に取ったのは、オリーブ色のキャスケット。
確かにアイザックに似合いそうだ。
それに、氷河の選んだものの方が、本人も嬉しいだろう。
カノンが会計をしていると、氷河が横から顔を出した。
「あの、メッセージカードってありますか?」
店員からボールペンまで貸してもらって、氷河はカノンに手渡した。
「いや、いいだろう。」
「駄目ですって。こういうのは、ちゃんと書かないと。」
氷河と店員に押し切られる形で、カノンはしぶしぶとペンを走らせた。
「買い物に付き合ってくれたお礼だ。お茶でもおごろう。」
カノンはそう言うと、約束の店を目指す。
そこは最近新しくできた、ポップな内装のカフェだった。
「君から渡しといてくれ。」
カノンは先ほどのプレゼントの包みを氷河に持たせると、奥の席へと背中を押した。
支払いだけ済ませ、カノンは聖域へと引き返す。
あとは、カーサの護衛か・・・。
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1月の終わり、カノンはソレントに呼び出された。
指定された店を訪れると、奥の席には懐かしい顔。
ソレント、イオ、バイアン、カーサ、クリシュナ。
椅子の数から考えて、あとの一人は来ていないらしい。
ソレントがメニューを手渡し、カノンはコーヒーを注文した。
先ほどのカノンの視線に気づいたのか、イオが言った。
「そう、そのアイザックのことなんだ。」
一番年下のアイザック。
まだ多感なお年頃。何かあったのだろうかと、カノンは眉間にしわを寄せた。
「いや、もうすぐ、奴の誕生日だろ。それでちょっとばかり、力を借りたいと思って。」
そう言えば彼も水瓶座だったなとカノンは思った。
「キグナス、というのがいるだろう? どうやらアイザックの想い人というのが彼みたいなんだ。どうだ? 脈はあるのか?」
そんなこと、自分に聞かれても・・・とカノンは思う。
大体天蠍宮と宝瓶宮の争いだけでも、見ているこちらはおなかいっぱいなのだ。ここにアイザックが参戦するとなると、自分が巻き込まれることは必至だ。
それはまぁ、氷河がアイザックのことを大切に想っていることはわかる。
多分、自分の命より大事な筈だ。
「でも、あれだろ? 師匠というのが強敵なんだろう?」
思わずコーヒーを吹き出しそうになる。
「・・・何故知っている?」
「酔わせたら、喋った。」とイオ。
「だがな、俺らとしては、アイザックの恋を叶えてやりたい。だから誕生日に二人きりのデートをプレゼントしてやるつもりだ。」
彼らの計画とは、つまりこういうことだった。
氷河を聖域から連れ出し、アイザックと二人きりでデートをさせ、その間氷河に変身したカーサが、カミュを足止めする。
「そこでだ。カノンには二つ、頼みたいことがある。一つは氷河を連れ出す役。もう一つは、カーサの貞操を護る役だ。」
カーサの貞操など、考えたくはなかった。
がしかし、本人は到って真剣だ。
もしも自分にカーサと同じ能力があったとして、氷河を装ってカミュと二人で一日過ごすとなれば、確かに護衛の一人もつけたいところだ。
「な、協力してくれるだろ?」
「しかし、カミュもアイザックを祝いたいと思うのだが・・・。」
「そんなこと言ってっから進展しないんだよ。もしも弟子としての立場をアイザックが問われたら、全部俺らの仕業だって言ってくれていい。誕生日くらい、願いを叶えてやろうぜ。」
彼らの友情に目頭が熱くなる。カノンが頷くと、クリシュナがそっと包みを手渡した。
青いスタッフジャンバー。
背中には「アイザックを幸せにする会」と書かれている。
胸元には、漢字で「卒業祈念」。
何を卒業するんだ?! 何を!
「ティティスが一生懸命縫ったんだ。着てくれるよな?」
「いや、返って目立ちすぎるだろう・・・。」
「いいですか? 貴方は聖闘士としての禊は済ませたかもしれない。しかし私たちに対してはどうだろう? いわばこれが免罪符です。」
ソレントにそう言われて、カノンは即座に袖を通した。
2月17日。
所用と偽って、カノンは氷河を双児宮に呼んだ。
それだけでもカミュは不服そうだったが、サガがどうのと言ってごまかした。
「御用って、何でしょう?」
しばらくして双児宮に現れた氷河は、珍しくディバックを肩からかけていた。
「買いたいものがあって、少し、付き合っては貰えないだろうか。」
「はぁ・・・でもあの、午後から用事があるんですけど。」
「用事?」
「ええ。」
「カミュと?」
「あ、いえ・・・。」
「それ程時間はとらせない。付き合ってくれ。」
半ば強引に、カノンは歩き始めた。
二人が出て行ったところで、もう一人、氷河が姿を現す。
「まさか、いきなりってことないよな。」
そう呟いて、のろのろと階段を上がって行った。
聖域を抜けて、市街地を歩いてゆく。
カノンの足どりは速いので、氷河は小走りでついてゆくような形だ。
「あの、買い物って、何なんでしょう? 俺で手伝えるようなものですか?」
「ああ、お前でないと駄目だな。」
「俺でないと??」
氷河はしばし考えて、嬉しそうに声をあげた。
「わかった!! アイザックのプレゼントでしょう!?」
まさか自分がプレゼントだとは思い至らぬ様子で、氷河は無邪気にはしゃいでいる。
「あの、もしかしてアイザックと約束してます?」
「・・・いや。仕事があるのでな。後で誰かに届けてもらおうと思っている。」
「じゃ、俺、渡しときましょうか?? 午後の予定って、アイザックと会う約束なんで。」
あ?
拍子抜けするカノンを置いて、氷河は先に進んでゆく。
「俺は、ブレスレッドにしたんですよ。アイザックが欲しいって言ってたのがあったから。それ以外だったら、帽子とか? あいつ、案外お洒落にこだわるんですよねぇ・・・。」
氷河はにこにこと笑いながら、傍らの店を眺めた。
「これとか、どうかなぁ。」
氷河が手に取ったのは、オリーブ色のキャスケット。
確かにアイザックに似合いそうだ。
それに、氷河の選んだものの方が、本人も嬉しいだろう。
カノンが会計をしていると、氷河が横から顔を出した。
「あの、メッセージカードってありますか?」
店員からボールペンまで貸してもらって、氷河はカノンに手渡した。
「いや、いいだろう。」
「駄目ですって。こういうのは、ちゃんと書かないと。」
氷河と店員に押し切られる形で、カノンはしぶしぶとペンを走らせた。
「買い物に付き合ってくれたお礼だ。お茶でもおごろう。」
カノンはそう言うと、約束の店を目指す。
そこは最近新しくできた、ポップな内装のカフェだった。
「君から渡しといてくれ。」
カノンは先ほどのプレゼントの包みを氷河に持たせると、奥の席へと背中を押した。
支払いだけ済ませ、カノンは聖域へと引き返す。
あとは、カーサの護衛か・・・。
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