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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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ずーーーーっと前に書いて、色々怖くてあげられなかった小話です。
かわいいお洋服話を読んで、なんとなくUPしてみたくなりました。
本当に氷河のファンなのかと言われそう・・・。
氷河、カミュ、瞬君、なんかごめんなさい。

拍手[21回]




聖戦が終わって、神々との戦いはひと段落したように思われる。
聖域の守護は女神と、彼女の力によって復活した黄金聖闘士達が行い、星矢たち青銅聖闘士は、聖闘士として更なる研鑽を積みつつ、日本で学生生活を送っている。
 
 
平和な土曜日。
瞬はリビングで数学の予習をしていた。
すぐ横のソファでは氷河が本を読んでいる。
淡いグレーのカットソーに、白のコットンシャツ、黒のパンツ。氷河の着るものは、大抵シンプルだが彼によく似合っている。パンツにせよ、靴にせよ、いつもあつらえたように彼の身体にあっていて、それがとてもスマートで上品な雰囲気を醸し出しているのだ。
日本で学生生活を始め、少しずつファッションにも興味を持ち始めた瞬は、そのことについて一つの疑念を抱いていた。
「氷河ってさ、いつも、服、どこで買ってるの?」
「服?」
驚いたように本から顔をあげた氷河は、質問の意味を理解すると、やや気まずそうな表情を浮かべて目を逸らした。
「これまで洋服に興味を持つ余裕なんてなかったけど、学校に行くようになったら、なんかそういうの、楽しくって。氷河はいつも素敵な服を着てるから、僕もそのお店を覗いてみたいと思ったんだ。」
にっこりと笑みを浮かべながら、瞳だけはそらさずにじっとみつめる。
氷河はしばらく瞳を泳がせた後、観念したという風にうつむいた。
「服は・・・カミュが・・・」
やっぱり!!!
「俺が修行したシベリアには、服屋なんてなくてな。近くのコホーテク村に、マーシャおばさんの店というのがあって食料品や日用雑貨を売ってるんだが、そこのシャツは高くて粗悪品だからと先生が・・・。瞬はどうしてたんだ? アンドロメダ島って、店とかあるのか?」
「そりゃあ、僕だって修行時代は支給された服を着ていたよ。でも日本には沢山お店があるでしょう? 氷河、もしかして、自分で服買ったこと、ない?」
なんとなくあきれられているということを感じ取りながらも、氷河は頷くしかなかった。
だって服は、いつも先生が揃えてくれて、それで何も不自由していなかったのだから。
「もしかして氷河、パンツまで先生に買ってもらっていたりして・・・。」
冷やかし半分で言ってみたのに、氷河の反応は鈍い。自分で聞いておきながら、瞬はいささかブルーな気分になった。
「だから、マーシャおばさんの店には、高くて粗悪品しか置いていないのだ。」
「マーシャおばさんのお店の話はもういいよ。パンツなんてそこのコンビニでも売ってるよ。だいたいパンツを買ってくれる人なんて、お母さんか恋人くらいのものなんだよ!」
「マーマはもう死んでしまったから・・・。」
恋人というところは微妙にスルーして、氷河は遠いシベリアの海を想って目に涙を浮かべた。
「あのね、黄金聖闘士にパンツ買わせるなんて、氷河くらいのもんだよ。カミュだって忙しいんだし、氷河もちゃんとしなきゃ。」
それを言うなら、弟子のパンツをいそいそと買いに走る黄金聖闘士というのもあの人くらいだろうと思いつつ、瞬はその言葉を飲み込んだ。
「決めた。明日、一緒に服を買いに行こうよ。自分で選んだ服を見せたら、きっとカミュも安心すると思うよ。」
「そうか。」
「一人前だって所を見せて、カミュに安心してもらわなきゃ。」
瞬がそう言ってほほ笑むと、氷河は得心した様子で頷いた。
 
 
街は相変わらず混んでいた。
駅からして混んでいて、人のわりに狭い構内を、氷河は聖闘士らしからぬ足取りで、周囲のペースを気にしつつ歩いて行った。
駅を出て、少し裏道に入ったところに、最近瞬が気に入っているショップがある。そこならば店員とも親しいし、カミュが用意するフランスの高級ブランドにも引けはとるまいと瞬は踏んでいる。
高いものなんてそうは買えないけど、こちらは最新の流行と若さで勝負だ。
決意も新たに瞬が信号待ちをしていると、氷河が熱心に傍らのお店を眺めている。
「瞬、このTシャツ・・・。」
そう言って氷河が手に取ったのは、白地に大きく「常勝」と書かれたものだった。
「常勝って、常に勝つって意味だろう?・・・クールだ・・・。な、聖衣の下に着たら格好良くないか?」
「いや、聖衣の下から部分的に見えるだけだから、なんて書いてあるかわからないよ。」
「そうか・・・。でも、お土産にもいいな。ミロとか喜びそうだ。」
それを着たミロの姿を思い浮かべ、瞬は頭を振った。
「カミュとミロに常勝で、俺はこっちの日々精進かな。瞬、友愛っていうのもあるぞ。あはは、こっちは唯我独尊だ。」
いつにないテンションで、氷河はどんどんお店の中に入ってゆく。
「うん。でも氷河、まだ来たばっかりだからさ、気に入ったのをチェックしておいて、他も見てから決めるというのも手だと思うよ。」
「そういうものか。」
ようやく店から引っ張り出すことに成功した瞬は、ほっと息をついた。
 
「こんにちは」
そう言って亜麻色の髪をもつ美少年が顔を出すと、奥からすぐに店長が現れた。数か月前からこの店に来るようになった瞬は、店ではその名が知られている。その美しい容貌と均整のとれたスタイル。今は学生でアルバイトは禁止されているそうだが、卒業後はぜひともこの店のカリスマ店員となって欲しい。
顧客である今でさえ、彼目当ての女の子が増えたのだ。彼が新作を身に纏い、その優しい笑みを振りまけば、店の売り上げは飛躍的に伸びるに決まっている。
店長はそう踏んでいた。
その、大切なお客様兼未来のカリスマ店員が、もう一人美少年を連れてきた。
見事な金髪に蒼い瞳。鍛えられた肉体に、白いシャツを無造作に着こなしている。シンプルで一見何のこだわりもなさそうに見せながら、どれも上等で品の良いものばかりだ。
海外の俳優かモデル??
しかし仕事柄、そうした雑誌はよく目を通している筈の自分が、何故この少年に見覚えがないのだろうと、店長は混乱した頭でしばし考えた。
「今日は友達を連れてきちゃいました。彼にオススメの服ってあります??」
混乱したまま店長は、勝負のときとばかりに店の中をせわしく走り、商品をかき集めた。
彼ら二人が店の服を纏い、店の紙袋を下げて街を歩くだけでどれだけの宣伝効果があるだろう。ぜひともこの少年とも懇意になりたい。いや、ならねばならない。
「こちらはいかがでしょう。今朝届いたばかりの新作です。」
店員が差し出したのは、淡いブルーを基調としたチェックのパーカーだった。
「これに、白のパンツとこちらのスニーカーはいかがでしょう?」
「あ、きれいな色。どう、氷河? 似合いそうだよ?」
手に取ったパーカーを、瞬は氷河の胸にあてる。
氷河は照れくさそうに鏡を一瞥した。
「このズボン、短くないか?」
「ううん、この丈だからいいんだよ。スッキリして軽快に見えるでしょ?」
「そういうもんか。じゃ、これを買うか。」
「待ってよ、氷河。試着くらいしてみようよ。」
「大丈夫だろう」と言うのをなんとか試着室に押し込む。
待ちながら瞬は他の洋服にも目を走らせた。
こっちのピンクも意外と似合いそうだし、ジャケットとかもいいな。
やがて氷河は気恥ずかしそうにカーテンから顔を覗かせた。
「こちらへどうぞ。」
店長はわざと人目に付く正面の鏡に氷河を案内した。
値札を付けたまま落ち着かない様子で歩く氷河は、しかしどこかの雑誌から飛び出してきたかのようだ。かわいらしいデザインが、冷たい印象を和らげている。店の隅で女の子たちが、ひそひそと何かを囁き始めた。
「きつくはないな。」
「どう? 気に行った?」
「よくわからん。」
「とても似合ってると思うよ。」
結局、瞬と店員に勧められるまま、試着した服一式とピンクのシャツを買った。
さりげなく行きのTシャツ屋を回避して、瞬は氷河と喫茶店に入った。
「あ~、今日は楽しかった。」
「人の買い物に付き合って何が楽しいんだ?」
「だって面白かったじゃない? いつもと違う氷河も見れたし、素敵な服もたくさん買えたしさ。」
「そうか。ま、楽しかったのならよかった。ありがとうな。」
「ねぇ、氷河。笑わないで聞いてくれる? 僕、すべての戦いが終わったら、ああいうお店で働いてみたいんだ。色々な人にきれいな服を着て、喜んでもらうんだ。いいと思わない?」
びっくりした顔で、氷河は瞬をみつめる。
「すべての戦いが終わったら何をするかなんて、そんなこと考えたことなかった。すごいんだな、瞬は。」
 
 
次の土曜日、氷河は新しい服に身を包んで聖域へと発った。
 
「お久しぶりです。カミュ。」
いそいそと弟子を迎えたカミュは、いつもとは異なる服装にわずかに眉をひそめた。
「あ、あの、俺も少しは自立しなきゃと思って、自分で服を買ってみました。・・・変でしょうか?」
「・・・いいや、良く似合っている。お前は何を着ても似合うよ。・・・本当に一人で選んだのか?」
「・・・いえ、あの、瞬に付き合って貰って・・・。」
そうだろうな。奴のやりそうなことだ。
わずかに周囲の温度が下がったことに、氷河は気が付かない。
「似合ってはいるが、ここはどこだ、氷河。」
「え・・・、聖域です。」
「そうだ。そしてお前は女神に拝謁し、師である私に顔を見せるためにここに来た。友達同士で遊ぶのならよいが、そのズボンの丈はどうだろう。」
そんなことを言ったら、擦り切れたTシャツもボロボロのレッグウォーマーもアウトだろう・・・とは氷河は思いつかなかった。
「奥に新しい服があるから着替えてきなさい。」
 
 
聖域から帰ってきた氷河は、真新しいリネンのシャツと紺のパンツを纏っていた。
「あれ・・・? 氷河、この前買った服は・・・?」
「女神に拝謁するにはカジュアルすぎると言われた。確かにそうだよな。俺も迂闊だった。」
何で丸め込まれるんだよ、氷河!
自分で選んだものならば、ショートパンツだって履かせかねない変態教師の癖に・・・。
ふつふつと沸き上がる怒りを、瞬は笑顔で噛み殺した。
「あ、でもこれ、俺に付き合ってくれたお礼にってカミュが。」
紙袋を開けると、中には白のサスペンダーが一本入っていた。
 
 
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聖戦が終わって、神々との戦いはひと段落したように思われる。
聖域の守護は女神と、彼女の力によって復活した黄金聖闘士達が行い、星矢たち青銅聖闘士は、聖闘士として更なる研鑽を積みつつ、日本で学生生活を送っている。
 
 
平和な土曜日。
瞬はリビングで数学の予習をしていた。
すぐ横のソファでは氷河が本を読んでいる。
淡いグレーのカットソーに、白のコットンシャツ、黒のパンツ。氷河の着るものは、大抵シンプルだが彼によく似合っている。パンツにせよ、靴にせよ、いつもあつらえたように彼の身体にあっていて、それがとてもスマートで上品な雰囲気を醸し出しているのだ。
日本で学生生活を始め、少しずつファッションにも興味を持ち始めた瞬は、そのことについて一つの疑念を抱いていた。
「氷河ってさ、いつも、服、どこで買ってるの?」
「服?」
驚いたように本から顔をあげた氷河は、質問の意味を理解すると、やや気まずそうな表情を浮かべて目を逸らした。
「これまで洋服に興味を持つ余裕なんてなかったけど、学校に行くようになったら、なんかそういうの、楽しくって。氷河はいつも素敵な服を着てるから、僕もそのお店を覗いてみたいと思ったんだ。」
にっこりと笑みを浮かべながら、瞳だけはそらさずにじっとみつめる。
氷河はしばらく瞳を泳がせた後、観念したという風にうつむいた。
「服は・・・カミュが・・・」
やっぱり!!!
「俺が修行したシベリアには、服屋なんてなくてな。近くのコホーテク村に、マーシャおばさんの店というのがあって食料品や日用雑貨を売ってるんだが、そこのシャツは高くて粗悪品だからと先生が・・・。瞬はどうしてたんだ? アンドロメダ島って、店とかあるのか?」
「そりゃあ、僕だって修行時代は支給された服を着ていたよ。でも日本には沢山お店があるでしょう? 氷河、もしかして、自分で服買ったこと、ない?」
なんとなくあきれられているということを感じ取りながらも、氷河は頷くしかなかった。
だって服は、いつも先生が揃えてくれて、それで何も不自由していなかったのだから。
「もしかして氷河、パンツまで先生に買ってもらっていたりして・・・。」
冷やかし半分で言ってみたのに、氷河の反応は鈍い。自分で聞いておきながら、瞬はいささかブルーな気分になった。
「だから、マーシャおばさんの店には、高くて粗悪品しか置いていないのだ。」
「マーシャおばさんのお店の話はもういいよ。パンツなんてそこのコンビニでも売ってるよ。だいたいパンツを買ってくれる人なんて、お母さんか恋人くらいのものなんだよ!」
「マーマはもう死んでしまったから・・・。」
恋人というところは微妙にスルーして、氷河は遠いシベリアの海を想って目に涙を浮かべた。
「あのね、黄金聖闘士にパンツ買わせるなんて、氷河くらいのもんだよ。カミュだって忙しいんだし、氷河もちゃんとしなきゃ。」
それを言うなら、弟子のパンツをいそいそと買いに走る黄金聖闘士というのもあの人くらいだろうと思いつつ、瞬はその言葉を飲み込んだ。
「決めた。明日、一緒に服を買いに行こうよ。自分で選んだ服を見せたら、きっとカミュも安心すると思うよ。」
「そうか。」
「一人前だって所を見せて、カミュに安心してもらわなきゃ。」
瞬がそう言ってほほ笑むと、氷河は得心した様子で頷いた。
 
 
街は相変わらず混んでいた。
駅からして混んでいて、人のわりに狭い構内を、氷河は聖闘士らしからぬ足取りで、周囲のペースを気にしつつ歩いて行った。
駅を出て、少し裏道に入ったところに、最近瞬が気に入っているショップがある。そこならば店員とも親しいし、カミュが用意するフランスの高級ブランドにも引けはとるまいと瞬は踏んでいる。
高いものなんてそうは買えないけど、こちらは最新の流行と若さで勝負だ。
決意も新たに瞬が信号待ちをしていると、氷河が熱心に傍らのお店を眺めている。
「瞬、このTシャツ・・・。」
そう言って氷河が手に取ったのは、白地に大きく「常勝」と書かれたものだった。
「常勝って、常に勝つって意味だろう?・・・クールだ・・・。な、聖衣の下に着たら格好良くないか?」
「いや、聖衣の下から部分的に見えるだけだから、なんて書いてあるかわからないよ。」
「そうか・・・。でも、お土産にもいいな。ミロとか喜びそうだ。」
それを着たミロの姿を思い浮かべ、瞬は頭を振った。
「カミュとミロに常勝で、俺はこっちの日々精進かな。瞬、友愛っていうのもあるぞ。あはは、こっちは唯我独尊だ。」
いつにないテンションで、氷河はどんどんお店の中に入ってゆく。
「うん。でも氷河、まだ来たばっかりだからさ、気に入ったのをチェックしておいて、他も見てから決めるというのも手だと思うよ。」
「そういうものか。」
ようやく店から引っ張り出すことに成功した瞬は、ほっと息をついた。
 
「こんにちは」
そう言って亜麻色の髪をもつ美少年が顔を出すと、奥からすぐに店長が現れた。数か月前からこの店に来るようになった瞬は、店ではその名が知られている。その美しい容貌と均整のとれたスタイル。今は学生でアルバイトは禁止されているそうだが、卒業後はぜひともこの店のカリスマ店員となって欲しい。
顧客である今でさえ、彼目当ての女の子が増えたのだ。彼が新作を身に纏い、その優しい笑みを振りまけば、店の売り上げは飛躍的に伸びるに決まっている。
店長はそう踏んでいた。
その、大切なお客様兼未来のカリスマ店員が、もう一人美少年を連れてきた。
見事な金髪に蒼い瞳。鍛えられた肉体に、白いシャツを無造作に着こなしている。シンプルで一見何のこだわりもなさそうに見せながら、どれも上等で品の良いものばかりだ。
海外の俳優かモデル??
しかし仕事柄、そうした雑誌はよく目を通している筈の自分が、何故この少年に見覚えがないのだろうと、店長は混乱した頭でしばし考えた。
「今日は友達を連れてきちゃいました。彼にオススメの服ってあります??」
混乱したまま店長は、勝負のときとばかりに店の中をせわしく走り、商品をかき集めた。
彼ら二人が店の服を纏い、店の紙袋を下げて街を歩くだけでどれだけの宣伝効果があるだろう。ぜひともこの少年とも懇意になりたい。いや、ならねばならない。
「こちらはいかがでしょう。今朝届いたばかりの新作です。」
店員が差し出したのは、淡いブルーを基調としたチェックのパーカーだった。
「これに、白のパンツとこちらのスニーカーはいかがでしょう?」
「あ、きれいな色。どう、氷河? 似合いそうだよ?」
手に取ったパーカーを、瞬は氷河の胸にあてる。
氷河は照れくさそうに鏡を一瞥した。
「このズボン、短くないか?」
「ううん、この丈だからいいんだよ。スッキリして軽快に見えるでしょ?」
「そういうもんか。じゃ、これを買うか。」
「待ってよ、氷河。試着くらいしてみようよ。」
「大丈夫だろう」と言うのをなんとか試着室に押し込む。
待ちながら瞬は他の洋服にも目を走らせた。
こっちのピンクも意外と似合いそうだし、ジャケットとかもいいな。
やがて氷河は気恥ずかしそうにカーテンから顔を覗かせた。
「こちらへどうぞ。」
店長はわざと人目に付く正面の鏡に氷河を案内した。
値札を付けたまま落ち着かない様子で歩く氷河は、しかしどこかの雑誌から飛び出してきたかのようだ。かわいらしいデザインが、冷たい印象を和らげている。店の隅で女の子たちが、ひそひそと何かを囁き始めた。
「きつくはないな。」
「どう? 気に行った?」
「よくわからん。」
「とても似合ってると思うよ。」
結局、瞬と店員に勧められるまま、試着した服一式とピンクのシャツを買った。
さりげなく行きのTシャツ屋を回避して、瞬は氷河と喫茶店に入った。
「あ~、今日は楽しかった。」
「人の買い物に付き合って何が楽しいんだ?」
「だって面白かったじゃない? いつもと違う氷河も見れたし、素敵な服もたくさん買えたしさ。」
「そうか。ま、楽しかったのならよかった。ありがとうな。」
「ねぇ、氷河。笑わないで聞いてくれる? 僕、すべての戦いが終わったら、ああいうお店で働いてみたいんだ。色々な人にきれいな服を着て、喜んでもらうんだ。いいと思わない?」
びっくりした顔で、氷河は瞬をみつめる。
「すべての戦いが終わったら何をするかなんて、そんなこと考えたことなかった。すごいんだな、瞬は。」
 
 
次の土曜日、氷河は新しい服に身を包んで聖域へと発った。
 
「お久しぶりです。カミュ。」
いそいそと弟子を迎えたカミュは、いつもとは異なる服装にわずかに眉をひそめた。
「あ、あの、俺も少しは自立しなきゃと思って、自分で服を買ってみました。・・・変でしょうか?」
「・・・いいや、良く似合っている。お前は何を着ても似合うよ。・・・本当に一人で選んだのか?」
「・・・いえ、あの、瞬に付き合って貰って・・・。」
そうだろうな。奴のやりそうなことだ。
わずかに周囲の温度が下がったことに、氷河は気が付かない。
「似合ってはいるが、ここはどこだ、氷河。」
「え・・・、聖域です。」
「そうだ。そしてお前は女神に拝謁し、師である私に顔を見せるためにここに来た。友達同士で遊ぶのならよいが、そのズボンの丈はどうだろう。」
そんなことを言ったら、擦り切れたTシャツもボロボロのレッグウォーマーもアウトだろう・・・とは氷河は思いつかなかった。
「奥に新しい服があるから着替えてきなさい。」
 
 
聖域から帰ってきた氷河は、真新しいリネンのシャツと紺のパンツを纏っていた。
「あれ・・・? 氷河、この前買った服は・・・?」
「女神に拝謁するにはカジュアルすぎると言われた。確かにそうだよな。俺も迂闊だった。」
何で丸め込まれるんだよ、氷河!
自分で選んだものならば、ショートパンツだって履かせかねない変態教師の癖に・・・。
ふつふつと沸き上がる怒りを、瞬は笑顔で噛み殺した。
「あ、でもこれ、俺に付き合ってくれたお礼にってカミュが。」
紙袋を開けると、中には白のサスペンダーが一本入っていた。
 
 
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