師走。
と言っても、宝瓶宮のわが師は落ち着いていた。
隣の磨羯宮では、シュラが人間シュレッダーと化して、持ち込まれた不要書類を刻みまくっている。
反対隣の双魚宮では、階段まで家具や雑貨が持ち出され、やはり壮大な大掃除が行われている。
宝瓶宮はアフロディーテのところのように、装飾品があるわけではない。
必要なものが、必要な分あるだけで、その生活はわりと簡素なものだ。且つ日々の清掃も怠らないので、年末だからと言って慌てて掃除する必要はないのだった。
しかし、そうはいっても多少の物はたまる。
明日が不燃ごみ収集最後の日なので、カフェオレを飲み終わったカミュは立ち上がった。
クローゼットの中に入っている段ボールを持ち出す。
その中に放り込まれている雑多なものを、要不要に分けねばならない。
聞けば日本では、ときめき整理術なるものが流行っているそうだ。
カミュは箱の中身を取り出して、ひとつずつ分類する。
 
何かの記念で貰ったネクタイピン・・・ときめかない
忘年会のビンゴ大会で貰ったたこ焼き器・・・ときめかない
氷河が土産でくれた寿司キーホルダー・・・ときめく
完成してしまったパズル・・・ときめかない
小冊子『聖闘士の心得』・・・ときめかない
氷河が昨年使っていたレッグウォーマー・・・ときめく
サガから渡された携帯電話・・・ときめかない
 
 
こうしてものの数分で、ときめきに囲まれた部屋が完成した。
至極穏やかな気持ちで、新年が迎えられそうな気がする。