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続きです。
氷河たちがサンタさんにプレゼントをお願いするとしたら、何をお願いするんでしょうね??
星矢と瞬君はあれこれ思い浮かびます。
紫龍もまぁ。
氷河と一輝が一番謎。
氷河はあまり物欲なさそうなイメージがあります。
氷河たちがサンタさんにプレゼントをお願いするとしたら、何をお願いするんでしょうね??
星矢と瞬君はあれこれ思い浮かびます。
紫龍もまぁ。
氷河と一輝が一番謎。
氷河はあまり物欲なさそうなイメージがあります。
天秤宮。
挨拶をしようと紫龍と瞬が戸口に近づくと、何やら声が聞こえてくる。
引き戸をわずかにあけて中を覗くと、老師とシオンが手紙を前に途方に暮れていた。
「星矢の手紙には、『DS下さい』とだけ書いてあるのだが、これは一体なんだろうか。」
「はて、何かの略語のようだが、あまり聞いたことはないのう。・・・DSと言えば、わしにはドラゴン紫龍しか思い当らんが・・・。」
「それだ。それよ、童虎。」
「はて。プレゼントに紫龍をとは一体どういう意味じゃ?」
「どうもこうもないわ。そういうことだ。二人は無二の親友らしいが、さらにもう一歩。ねんごろになりたいということだろう。お前、師としてどうにかできないか。」
「それは無論、紫龍は義に篤い男だからな。わしの頼みとあらばひと肌もふた肌も脱いではくれようが・・・。だが、あまり春麗を泣かしたくはないのう・・・。」
ずるずるとその場にしゃがみこむ紫龍を瞬は引きずるようにしてその場を後にした。
「宝瓶宮を前にして、これほどダメージを受けるとは思わなかったね。」
「ああ、まったくだ。」
「でも、紫龍の手紙に、DSの説明、書いておいたんでしょ?」
「ああ、もう、俺も同じDSを頼むことにした。」
「・・・なら大丈夫だよ。・・・PS3とか書かなくてよかったね。」
重い足取りで二人は階段を上ってゆく。
宝瓶宮を訪ねる。
カミュは机に向かって何か書いていたようで、机には白い紙と辞書のようなものが見えた。
細い銀縁の眼鏡をはずすと、カミュは二人に向き直った。
「氷河がいないな。何かあったのか?」
「あ、いえ。氷河は元気です。お話がありまして、少しだけお時間を頂けますか?」
「よかろう。」
すぐに退室すると遠慮する二人に対し、意外にもカミュは温かな紅茶を淹れてくれた。砂糖とたっぷりのミルクが添えられている。
瞬が目で合図して、紫龍がおずおずと口を開いた。
「実は、今度のクリスマスに、我が師である童虎とシオンが、プレゼントを考えて下さっているようでして。サンタクロースに手紙を書くように言われたので、おそらくクリスマスの夜に、それを届けてくれるのかと・・・。」
「君たち、全員にか。」
「はい。」
それだけですべてを察したらしく、カミュは何やら思案をしながら天秤宮に目を向けた。
「氷河の分は、もう手配をしてしまった。その旨、私から二人に話してみよう。」
「はい、お願いします。」
二人はほっと胸をなで下ろすと、紅茶を飲み干して部屋を後にした。
カミュが天秤宮を訪ねようと部屋を出たところで、二人の姿が見えた。
「おお、カミュ、出かけるところか?」
「いえ、ちょうどお二人を訪ねようと思っていたところです。」
「ならばちょうどよかった。わしらもおぬしに聞きたいことがあっての。」
部屋の椅子に腰かけると、シオンは手にしていた便箋をカミュに手渡した。
「青銅の小僧どもに少しは年相応の楽しみを与えてやりたいと思ってな。今年はクリスマスプレゼントを用意しようと思っている。星矢たちの希望は何とか確認が取れたのだが、氷河の手紙にはそのように書いてあってな。おぬし、何か知らんか。」
「は、氷河の希望ならば少し前に私が預かっておりまして、プレゼントもすでに手配いたしました。」
「そうか。ちなみに、希望は何じゃ?」
「といいますと?」
「複数あってもよいものならば、こちらでも手配する。」
「いえ、それには及ばないかと。」
「しかし・・・わしらも氷河にだけ何もあげないというのは、ちとさびしいのう。」
「ならば直接お渡しになってはいかがでしょう。」
「それはならん。氷河にだけ直接手渡したのでは、他の者が気付いてしまうではないか。」
「しかし、サンタクロースからのプレゼントが二つというのもおかしな話です。」
「ならば、おぬしが、自分で直接わたすというのはどうじゃ?」
「それももう、用意してありますので。それにいつもと違うテイストのプレゼントが届いたら、氷河も混乱するでしょう。」
「氷河だけテイストが違っても、混乱は起きる。」
「それは私のあずかり知らぬこと。」
頑としてはねのけるカミュに対し、シオンはイライラした。
「・・・わかった。しかし何としても、プレゼントだけは届けにゆくからな!!」
捨て台詞を吐いて、シオンは部屋を出ていった。その後を童虎が追いかけてゆく。
二人の後ろ姿を眺め、カミュはため息をついた。
クリスマスイブ。教皇の間で、パーティは盛大に開かれた。
10時を過ぎたところで、女神は女子会へ。
それをきっかけにパーティは無礼講の様相を呈してくる。
氷河はさっきから時間を気にしていた。何しろ早く寝ないと、サンタさんは来てくれないのだ。ちらちらと時計に目をやる氷河に気づいて、カミュは立ち上がった。
「それでは夜も更けてまいりましたので、我々も・・・。」
ここからがイブだとばかり、カミュは氷河の肩に手をまわす。
「おお、そうじゃの。子供たちはそろそろ休むがいい。・・・だがカミュ、おぬしはしばし付き合え。」
両脇からじじ二人に腕を掴まれ、カミュは舌打ちした。
「カミュ、おぬしもたまにはゆっくりと酒を楽しむといい。」
シオンがそう言うと、氷河は遠慮がちに笑みを浮かべた。
「カミュ、お先に失礼します。どうぞごゆっくり楽しんでください。」
「お前たちも、もう部屋に戻るといい。」
シオンにそう言われ、紫龍は目を泳がせた。
「大丈夫です。後は私が何とかしましょう。」
ムウがそう耳打ちしてくれたので、紫龍はとりあえず部屋に戻って寝たふりをすることにした。
「ま、一献」
差し出されたブランデーをカミュは一気に飲み干した。
こうなったらじじ共二人をとっとと潰して部屋に戻るよりない。
「では私からも・・・。」
そう言ってカミュは二人のグラスに、芋焼酎をだばだばと注ぎ込んだ。
「なんだ? あれ?」
アイオリアが横目で見ながらムウに問いかける。
「誰がサンタを務めるかでもめてるんですよ。」
「あ?」
「・・・たく、誰が介抱すると思ってるんだか。」
そう言ってムウは、ピクルスをしゃりしゃりと噛み潰した。
気が付けば会場からは、氷河たち未成年だけではなく数名が姿を消している。
それはそうだろう。今日はクリスマスイブなのだから。
カミュは黙々と、じい二人と酒を酌み交わしていた。
部屋に戻った氷河は、シャワーを浴び、パジャマに着替え、すぐにベッドにもぐりこんだ。
こんなにぎやかなクリスマスは初めてだ。アイザックと3人で過ごしたクリスマスには及ばないけれど、たまにはこういうのもわるくない。
枕元に置いた小箱を開ける。そこには数枚のカードが入っていた。美しい箔押しのカードに、フィンランド語でつづられたメッセージ。
下にはアイザックの手で、ロシア語の訳が書き加えられていた。
サンタクロースは優しい。
修行中に負った、取るに足りない怪我のことまで心配して励ましてくれる。
貰ったプレゼントもさることながら、この手紙こそが氷河にとっては宝物だった。
カードの文字を目で追いながら、氷河はあたたかな思い出とともに眠りに落ちていった。
「さて、そろそろお開きにしましょうか。」
カミュの横には、巻き添えを喰ったミロが泥のように眠っている。
じじ二人は先ほどから、こくこくと船をこいでいる。
よし!
カミュは立ち上がると、宝瓶宮へと急いだ。
念のため、部屋の入り口を、フリージングコフィンを変形した壁で塞ぐ。
これで、サンタクロースは一匹たりとも入って来れぬはず。
「さ、お二人とも起きてください。」
ムウが声をかけると、二人はパッチリと目を開いた。
「フフ、18歳の肉体をなめるなよ。」
二人はいそいそとサンタクロースの衣装に着替え、プレゼントを片手に階段を降りて行った。
「カミュは寝ておらなんだな。」
「そうだな、宝瓶宮は最後にまわそう。」
さすがに眠い。
カミュは氷河の枕元にプレゼントとカードを置いた。
やわらかな金色の髪をそっと撫でる。
「おやすみ、氷河」
順調にプレゼントを配り終えた二人は、再び階段を上がってきた。
「あとは宝瓶宮だな。」
その宝瓶宮は、氷に閉ざされていた。
「こんなこともあろうかと思ってな、これを持ってきた。」
童虎は担いだ袋から、ライブラのソードを取り出して一閃した。
きらめく剣は夜の空気を切り裂き、氷はしゅうしゅうと蒸気をあげて消えた。
ガバッと跳び起きたカミュは、すぐに戸口へ駆けてゆく。
「ですから、プレゼントは・・・」
「スターライトエクスティンクション!!」
カミュの体は何処へともなく吹き飛んで行った。
「ふふ、よく寝ておる。」
しかし、氷河も聖闘士。
先ほどの物音で目は覚めていた。
起き上がろうとしたところでサンタさんの姿が見えたので、慌てて布団にもぐりこんで寝たふりをしたのだ。
薄目をあけてそっと覗くと、童虎とシオンの二人がごそごそとプレゼントをとりだす姿が見えた。
(あれ?サンタさんじゃない・・・?)
二人はプレゼントを枕元に置こうとしてやめた。
「ふん、あれも本当に弟子馬鹿よのう・・・。」
二人は窓のそばにプレゼントを置くと、足を忍ばせて去って行った。
ライトをつける。
枕元にも、プレゼントがある。
金のリボンのかかった箱に、いつものクリスマスカード。
「弟子馬鹿って言ってたな。」
氷河は封筒からカードを取り出すと、しげしげと眺めた。
サンタクロースは優しい。
先生より優しいと思っていた。
スターヒルまで飛ばされたカミュが部屋に戻ると、氷河が起きていて温かいお茶を淹れてくれた。
「先生、もう、サンタさんがきました。」
「そうか、良かったな。」
カミュはさも当たり前という風に目をそらしてしまう。
「今年は3人も。」
くすりと笑って氷河は窓の方へ目を向ける。
そこにはプレゼントがふたつ。
「氷河へ」
そして、
「カミュへ」
やれやれ・・・そういうことか。
「先生・・・ありがとうございます。」
「ん?」
氷河はカードを両手で持って、そっと胸に押し当てた。
「プレゼントも嬉しいけど、この手紙がずっと宝物でした。これからもずっと・・・。」
ついに、バレてしまったか。
カミュは小さくため息をつくと、うるんだ瞳でこちらを見つめている愛弟子をそっと抱き寄せた。
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天秤宮。
挨拶をしようと紫龍と瞬が戸口に近づくと、何やら声が聞こえてくる。
引き戸をわずかにあけて中を覗くと、老師とシオンが手紙を前に途方に暮れていた。
「星矢の手紙には、『DS下さい』とだけ書いてあるのだが、これは一体なんだろうか。」
「はて、何かの略語のようだが、あまり聞いたことはないのう。・・・DSと言えば、わしにはドラゴン紫龍しか思い当らんが・・・。」
「それだ。それよ、童虎。」
「はて。プレゼントに紫龍をとは一体どういう意味じゃ?」
「どうもこうもないわ。そういうことだ。二人は無二の親友らしいが、さらにもう一歩。ねんごろになりたいということだろう。お前、師としてどうにかできないか。」
「それは無論、紫龍は義に篤い男だからな。わしの頼みとあらばひと肌もふた肌も脱いではくれようが・・・。だが、あまり春麗を泣かしたくはないのう・・・。」
ずるずるとその場にしゃがみこむ紫龍を瞬は引きずるようにしてその場を後にした。
「宝瓶宮を前にして、これほどダメージを受けるとは思わなかったね。」
「ああ、まったくだ。」
「でも、紫龍の手紙に、DSの説明、書いておいたんでしょ?」
「ああ、もう、俺も同じDSを頼むことにした。」
「・・・なら大丈夫だよ。・・・PS3とか書かなくてよかったね。」
重い足取りで二人は階段を上ってゆく。
宝瓶宮を訪ねる。
カミュは机に向かって何か書いていたようで、机には白い紙と辞書のようなものが見えた。
細い銀縁の眼鏡をはずすと、カミュは二人に向き直った。
「氷河がいないな。何かあったのか?」
「あ、いえ。氷河は元気です。お話がありまして、少しだけお時間を頂けますか?」
「よかろう。」
すぐに退室すると遠慮する二人に対し、意外にもカミュは温かな紅茶を淹れてくれた。砂糖とたっぷりのミルクが添えられている。
瞬が目で合図して、紫龍がおずおずと口を開いた。
「実は、今度のクリスマスに、我が師である童虎とシオンが、プレゼントを考えて下さっているようでして。サンタクロースに手紙を書くように言われたので、おそらくクリスマスの夜に、それを届けてくれるのかと・・・。」
「君たち、全員にか。」
「はい。」
それだけですべてを察したらしく、カミュは何やら思案をしながら天秤宮に目を向けた。
「氷河の分は、もう手配をしてしまった。その旨、私から二人に話してみよう。」
「はい、お願いします。」
二人はほっと胸をなで下ろすと、紅茶を飲み干して部屋を後にした。
カミュが天秤宮を訪ねようと部屋を出たところで、二人の姿が見えた。
「おお、カミュ、出かけるところか?」
「いえ、ちょうどお二人を訪ねようと思っていたところです。」
「ならばちょうどよかった。わしらもおぬしに聞きたいことがあっての。」
部屋の椅子に腰かけると、シオンは手にしていた便箋をカミュに手渡した。
「青銅の小僧どもに少しは年相応の楽しみを与えてやりたいと思ってな。今年はクリスマスプレゼントを用意しようと思っている。星矢たちの希望は何とか確認が取れたのだが、氷河の手紙にはそのように書いてあってな。おぬし、何か知らんか。」
「は、氷河の希望ならば少し前に私が預かっておりまして、プレゼントもすでに手配いたしました。」
「そうか。ちなみに、希望は何じゃ?」
「といいますと?」
「複数あってもよいものならば、こちらでも手配する。」
「いえ、それには及ばないかと。」
「しかし・・・わしらも氷河にだけ何もあげないというのは、ちとさびしいのう。」
「ならば直接お渡しになってはいかがでしょう。」
「それはならん。氷河にだけ直接手渡したのでは、他の者が気付いてしまうではないか。」
「しかし、サンタクロースからのプレゼントが二つというのもおかしな話です。」
「ならば、おぬしが、自分で直接わたすというのはどうじゃ?」
「それももう、用意してありますので。それにいつもと違うテイストのプレゼントが届いたら、氷河も混乱するでしょう。」
「氷河だけテイストが違っても、混乱は起きる。」
「それは私のあずかり知らぬこと。」
頑としてはねのけるカミュに対し、シオンはイライラした。
「・・・わかった。しかし何としても、プレゼントだけは届けにゆくからな!!」
捨て台詞を吐いて、シオンは部屋を出ていった。その後を童虎が追いかけてゆく。
二人の後ろ姿を眺め、カミュはため息をついた。
クリスマスイブ。教皇の間で、パーティは盛大に開かれた。
10時を過ぎたところで、女神は女子会へ。
それをきっかけにパーティは無礼講の様相を呈してくる。
氷河はさっきから時間を気にしていた。何しろ早く寝ないと、サンタさんは来てくれないのだ。ちらちらと時計に目をやる氷河に気づいて、カミュは立ち上がった。
「それでは夜も更けてまいりましたので、我々も・・・。」
ここからがイブだとばかり、カミュは氷河の肩に手をまわす。
「おお、そうじゃの。子供たちはそろそろ休むがいい。・・・だがカミュ、おぬしはしばし付き合え。」
両脇からじじ二人に腕を掴まれ、カミュは舌打ちした。
「カミュ、おぬしもたまにはゆっくりと酒を楽しむといい。」
シオンがそう言うと、氷河は遠慮がちに笑みを浮かべた。
「カミュ、お先に失礼します。どうぞごゆっくり楽しんでください。」
「お前たちも、もう部屋に戻るといい。」
シオンにそう言われ、紫龍は目を泳がせた。
「大丈夫です。後は私が何とかしましょう。」
ムウがそう耳打ちしてくれたので、紫龍はとりあえず部屋に戻って寝たふりをすることにした。
「ま、一献」
差し出されたブランデーをカミュは一気に飲み干した。
こうなったらじじ共二人をとっとと潰して部屋に戻るよりない。
「では私からも・・・。」
そう言ってカミュは二人のグラスに、芋焼酎をだばだばと注ぎ込んだ。
「なんだ? あれ?」
アイオリアが横目で見ながらムウに問いかける。
「誰がサンタを務めるかでもめてるんですよ。」
「あ?」
「・・・たく、誰が介抱すると思ってるんだか。」
そう言ってムウは、ピクルスをしゃりしゃりと噛み潰した。
気が付けば会場からは、氷河たち未成年だけではなく数名が姿を消している。
それはそうだろう。今日はクリスマスイブなのだから。
カミュは黙々と、じい二人と酒を酌み交わしていた。
部屋に戻った氷河は、シャワーを浴び、パジャマに着替え、すぐにベッドにもぐりこんだ。
こんなにぎやかなクリスマスは初めてだ。アイザックと3人で過ごしたクリスマスには及ばないけれど、たまにはこういうのもわるくない。
枕元に置いた小箱を開ける。そこには数枚のカードが入っていた。美しい箔押しのカードに、フィンランド語でつづられたメッセージ。
下にはアイザックの手で、ロシア語の訳が書き加えられていた。
サンタクロースは優しい。
修行中に負った、取るに足りない怪我のことまで心配して励ましてくれる。
貰ったプレゼントもさることながら、この手紙こそが氷河にとっては宝物だった。
カードの文字を目で追いながら、氷河はあたたかな思い出とともに眠りに落ちていった。
「さて、そろそろお開きにしましょうか。」
カミュの横には、巻き添えを喰ったミロが泥のように眠っている。
じじ二人は先ほどから、こくこくと船をこいでいる。
よし!
カミュは立ち上がると、宝瓶宮へと急いだ。
念のため、部屋の入り口を、フリージングコフィンを変形した壁で塞ぐ。
これで、サンタクロースは一匹たりとも入って来れぬはず。
「さ、お二人とも起きてください。」
ムウが声をかけると、二人はパッチリと目を開いた。
「フフ、18歳の肉体をなめるなよ。」
二人はいそいそとサンタクロースの衣装に着替え、プレゼントを片手に階段を降りて行った。
「カミュは寝ておらなんだな。」
「そうだな、宝瓶宮は最後にまわそう。」
さすがに眠い。
カミュは氷河の枕元にプレゼントとカードを置いた。
やわらかな金色の髪をそっと撫でる。
「おやすみ、氷河」
順調にプレゼントを配り終えた二人は、再び階段を上がってきた。
「あとは宝瓶宮だな。」
その宝瓶宮は、氷に閉ざされていた。
「こんなこともあろうかと思ってな、これを持ってきた。」
童虎は担いだ袋から、ライブラのソードを取り出して一閃した。
きらめく剣は夜の空気を切り裂き、氷はしゅうしゅうと蒸気をあげて消えた。
ガバッと跳び起きたカミュは、すぐに戸口へ駆けてゆく。
「ですから、プレゼントは・・・」
「スターライトエクスティンクション!!」
カミュの体は何処へともなく吹き飛んで行った。
「ふふ、よく寝ておる。」
しかし、氷河も聖闘士。
先ほどの物音で目は覚めていた。
起き上がろうとしたところでサンタさんの姿が見えたので、慌てて布団にもぐりこんで寝たふりをしたのだ。
薄目をあけてそっと覗くと、童虎とシオンの二人がごそごそとプレゼントをとりだす姿が見えた。
(あれ?サンタさんじゃない・・・?)
二人はプレゼントを枕元に置こうとしてやめた。
「ふん、あれも本当に弟子馬鹿よのう・・・。」
二人は窓のそばにプレゼントを置くと、足を忍ばせて去って行った。
ライトをつける。
枕元にも、プレゼントがある。
金のリボンのかかった箱に、いつものクリスマスカード。
「弟子馬鹿って言ってたな。」
氷河は封筒からカードを取り出すと、しげしげと眺めた。
サンタクロースは優しい。
先生より優しいと思っていた。
スターヒルまで飛ばされたカミュが部屋に戻ると、氷河が起きていて温かいお茶を淹れてくれた。
「先生、もう、サンタさんがきました。」
「そうか、良かったな。」
カミュはさも当たり前という風に目をそらしてしまう。
「今年は3人も。」
くすりと笑って氷河は窓の方へ目を向ける。
そこにはプレゼントがふたつ。
「氷河へ」
そして、
「カミュへ」
やれやれ・・・そういうことか。
「先生・・・ありがとうございます。」
「ん?」
氷河はカードを両手で持って、そっと胸に押し当てた。
「プレゼントも嬉しいけど、この手紙がずっと宝物でした。これからもずっと・・・。」
ついに、バレてしまったか。
カミュは小さくため息をつくと、うるんだ瞳でこちらを見つめている愛弟子をそっと抱き寄せた。
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