忍者ブログ
☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


お待たせいたしました。

キリリク1000を踏んで下さったO様からのリクエスト話です。
お題は、「もしハーデスが何も言わずに氷河をエリシオンへ連れ去ってしまったら、わが師やアイザックや女神やパンドラや青銅たちはどんなリアクションをするでしょう」

すごい。自分ではなかなか思いつかなかったテーマですが、この一文を読んでいるだけでもふつふつと楽しくなってきました。

で、若干調子に乗りました。
書いている自分はとても楽しかったのですが、大丈夫でしょうか???

ちょっと長くなってしまったので、2回に分けました。


拍手[9回]




「氷河」
そう、呼び止められた。
瞬ではない。瞬と同じ顔をしているが、その瞳は闇よりもなお昏い。
亜麻色の優しい髪は、漆黒に染まっている。
「ハーデス!!」
氷河は思わず目を見開いた。
「聖戦はもう終わったはず。瞬の身体を利用するのはやめろ。」
とっさに身構え鋭い眼光を放つ氷河に対して、瞬の姿を借りたハーデスは微笑んだ。
「余もこの身体に執着してはいない。この者の小宇宙はあまり心地よいものではないのでな。だが、そなたに会うには好都合だ。」
白い指が伸びて、氷河の頬をするりと撫でた。
「わかるな、余の言いたいことが。」
「・・・卑怯だ。」
「まぁ、よい。さぁ、あちらへ参ろう。」
瞬から抜け出した黒い力は、有無を言わさず氷河を包んだ。
包んだまま、消えてしまった。
 
 
「瞬!どうしたんだ。こんなところで!!」
城戸邸の庭に倒れている瞬に気づいたのは紫龍だった。
「わかるか? 瞬、何があった?」
瞬は頭を二、三度振ると、こめかみを押さえた。
「・・・わからない。お昼を食べたあとの記憶がはっきりしないんだ。・・・でも、いやな感じがする。ハーデスにのり移られた時の、あのときみたいな・・・。」
「聖域と連絡を取ろう。立てるか?」
 
星矢はすぐにヨットハウスから城戸邸に駆け付けた。
一輝は所在不明。それは今日に始まったことではないのだが。
城戸邸にいるはずの氷河の姿がない。
「携帯くらい持っとけよ。」
と星矢が言ったが、これまで不自由しなかったのは、互いの小宇宙でそれなりのコンタクトが取れていたからだった。黄金聖闘士のようにテレパシーが使えるわけではないが、おおよその所在の見当はつく。それなのに、氷河の小宇宙を誰も感じない。
「瞬と星矢は聖域に行って、このことを女神に伝えてくれ。俺はもう少し、ここで氷河を探してみる。」
 
同じとき、女神神殿にいた沙織は、つと顔をあげた。
「どうかなさいましたか?」
そばに居合わせたカミュが問いかけると、女神は沈痛な面持ちで眉をひそめた。
「瞬たちを呼びましょう。」
次の瞬間、カミュの目の前に瞬と星矢が現れた。
「ああ、沙織さん、やっぱり何かあったんですね!?」
 
瞬からの報告を受けたのち、女神は自分の見解を述べた。
「ハーデスが、氷河を連れ去ったと?!」
カミュはついていた膝を浮かしかける。押さえてはいるのだろうが、声もやや上ずっていた。
「また、冥界と戦うことになるんだろうか。」
星矢はどこか遠くを睨むようにして静かに言った。
「いえ、おそらくこれは、ハーデスの個人的な思惑でしょう。」
「個人的な?」
「ええ、この一件はカミュに一任することにします。瞬、星矢、わざわざ呼び寄せてすみませんでした。」
「ちょっと、待ってくれよ、沙織さん。氷河は俺たちにとっても大切な友なんだ。」
なおも食い下がろうとする星矢の肩に、瞬が手を置いた。
「僕たちに出来ることがあったら、何でもしますから。カミュ、氷河をお願いします。」
 
瞬と星矢を下がらせた後、女神は深くため息をついた。
「どうやらハーデスは、氷河を気に入ってしまったようなのです。それで神話の時代の神々のように、エリシオンへ連れ去ってしまった。花を贈るくらいはかわいいものですが、今回ばかりは許すわけにはいきません。とはいえこれは神同士の戦いとは別の話。貴方なら、その想いはハーデスなどに負けない。そうでしょう?」
女神はくすりと笑みを浮かべ、カミュは深く頭を垂れた。
「これを」
女神はカミュのそばに歩み寄って、花の鎖を彼の手首に巻きつけた。
「感謝いたします。」
 
 
**************** 


ソレントは主とともに旅を続けていた。
その主の気配が、ふいに変わるのを感じてソレントは立ち止まった。
上質なスーツを纏ったジュリアン・ソロの背中からは荒々しい海神のオーラが漂っている。
「ポ、ポセイドン様・・・?」
「ソレントよ。私は今、アテナの聖闘士のために少しばかり力を貸してやった。いや、彼にも辛い思いをさせたのでな。」
ポセイドンの見つめる先、はるかかなたの北の海から、一つの光が飛び去って行った。
 
 
***************** 


「こんなところで、何をしている!!」
一輝の目の前に突如現れた女は、頬を紅潮させ息を切らしている。
「ハーデス様が、キグナスを連れてエリシオンへ行った。」
一輝はわずかに眉をひそめた。
「あの一件以来執着なさっていたご様子だから、おそばに仕えさせるつもりだろう。もはや私にはどうすることも出来ない。しかし、もしお前が連れ戻しに行くというのなら力を貸す。」
パンドラは藍にも近い澄んだ不死鳥の瞳をまっすぐに見つめた。
「そうだろうと思った。」
腕に巻きつけていたブレスレッドを外すと、差し出された右手につけてやる。
「恩に着る。」
次の瞬間消えてしまった広い背中を、まだそこにあるもののようにパンドラは見つめた。
 
 
***************** 


「卑怯だ!こんなやり方はっ!俺は女神の聖闘士だ。誰がお前などに仕えるか!!」
見渡す限りの花々。優雅に腰を下ろしたハーデスの前で、一人氷河は息巻いていた。
「まぁ、そう騒ぐでない。まわりをよく見てみよ。美しい花が咲き乱れておろう。ここは誰もが憧れる楽園ぞ。痛みも、悲しみも、苦しみもない。永遠の楽土でそなたを愛してやろう。」
伸ばされた手を、氷河は振り払う。
とっさに放った凍気は、あっけなくハーデスに弾き返された。
聖衣もない。
地上へ帰る術もない。
姿は見えないが、いつどこから双子神が現れぬとも限らない。
氷河はじりじりと後退しながら、唇をかみしめた。
ハーデスは楽しそうにじっとこちらを眺めている。
「指一本でも触れたら舌を噛むぞ。」
そう言うとハーデスはおかしそうに笑った。
「やってみてもよいが、私は死の神だからな。何度死のうがお前は私のものだ。」
氷河の顔が、初めて恐怖で蒼ざめた。
ハーデスの人差し指が、つ、と氷河の額に触れた。
と、氷河の瞳から光が消え、ずるずるとその場に座り込んだ。
 
ハーデスはニンフを呼び集める。
「地上の穢れを洗い清め、無粋な服を改めさせよ。」
 
 
薄布の服を纏った氷河は、まさに神話の住人だった。
ニンフたちはくすくすと笑いさざめきながら氷河の髪を梳き、花の飾りをつける。されるがままになっている氷河は、どこかあどけない表情でニンフたちを見上げている。
 
 
 
PR


追記を閉じる▲



「氷河」
そう、呼び止められた。
瞬ではない。瞬と同じ顔をしているが、その瞳は闇よりもなお昏い。
亜麻色の優しい髪は、漆黒に染まっている。
「ハーデス!!」
氷河は思わず目を見開いた。
「聖戦はもう終わったはず。瞬の身体を利用するのはやめろ。」
とっさに身構え鋭い眼光を放つ氷河に対して、瞬の姿を借りたハーデスは微笑んだ。
「余もこの身体に執着してはいない。この者の小宇宙はあまり心地よいものではないのでな。だが、そなたに会うには好都合だ。」
白い指が伸びて、氷河の頬をするりと撫でた。
「わかるな、余の言いたいことが。」
「・・・卑怯だ。」
「まぁ、よい。さぁ、あちらへ参ろう。」
瞬から抜け出した黒い力は、有無を言わさず氷河を包んだ。
包んだまま、消えてしまった。
 
 
「瞬!どうしたんだ。こんなところで!!」
城戸邸の庭に倒れている瞬に気づいたのは紫龍だった。
「わかるか? 瞬、何があった?」
瞬は頭を二、三度振ると、こめかみを押さえた。
「・・・わからない。お昼を食べたあとの記憶がはっきりしないんだ。・・・でも、いやな感じがする。ハーデスにのり移られた時の、あのときみたいな・・・。」
「聖域と連絡を取ろう。立てるか?」
 
星矢はすぐにヨットハウスから城戸邸に駆け付けた。
一輝は所在不明。それは今日に始まったことではないのだが。
城戸邸にいるはずの氷河の姿がない。
「携帯くらい持っとけよ。」
と星矢が言ったが、これまで不自由しなかったのは、互いの小宇宙でそれなりのコンタクトが取れていたからだった。黄金聖闘士のようにテレパシーが使えるわけではないが、おおよその所在の見当はつく。それなのに、氷河の小宇宙を誰も感じない。
「瞬と星矢は聖域に行って、このことを女神に伝えてくれ。俺はもう少し、ここで氷河を探してみる。」
 
同じとき、女神神殿にいた沙織は、つと顔をあげた。
「どうかなさいましたか?」
そばに居合わせたカミュが問いかけると、女神は沈痛な面持ちで眉をひそめた。
「瞬たちを呼びましょう。」
次の瞬間、カミュの目の前に瞬と星矢が現れた。
「ああ、沙織さん、やっぱり何かあったんですね!?」
 
瞬からの報告を受けたのち、女神は自分の見解を述べた。
「ハーデスが、氷河を連れ去ったと?!」
カミュはついていた膝を浮かしかける。押さえてはいるのだろうが、声もやや上ずっていた。
「また、冥界と戦うことになるんだろうか。」
星矢はどこか遠くを睨むようにして静かに言った。
「いえ、おそらくこれは、ハーデスの個人的な思惑でしょう。」
「個人的な?」
「ええ、この一件はカミュに一任することにします。瞬、星矢、わざわざ呼び寄せてすみませんでした。」
「ちょっと、待ってくれよ、沙織さん。氷河は俺たちにとっても大切な友なんだ。」
なおも食い下がろうとする星矢の肩に、瞬が手を置いた。
「僕たちに出来ることがあったら、何でもしますから。カミュ、氷河をお願いします。」
 
瞬と星矢を下がらせた後、女神は深くため息をついた。
「どうやらハーデスは、氷河を気に入ってしまったようなのです。それで神話の時代の神々のように、エリシオンへ連れ去ってしまった。花を贈るくらいはかわいいものですが、今回ばかりは許すわけにはいきません。とはいえこれは神同士の戦いとは別の話。貴方なら、その想いはハーデスなどに負けない。そうでしょう?」
女神はくすりと笑みを浮かべ、カミュは深く頭を垂れた。
「これを」
女神はカミュのそばに歩み寄って、花の鎖を彼の手首に巻きつけた。
「感謝いたします。」
 
 
**************** 


ソレントは主とともに旅を続けていた。
その主の気配が、ふいに変わるのを感じてソレントは立ち止まった。
上質なスーツを纏ったジュリアン・ソロの背中からは荒々しい海神のオーラが漂っている。
「ポ、ポセイドン様・・・?」
「ソレントよ。私は今、アテナの聖闘士のために少しばかり力を貸してやった。いや、彼にも辛い思いをさせたのでな。」
ポセイドンの見つめる先、はるかかなたの北の海から、一つの光が飛び去って行った。
 
 
***************** 


「こんなところで、何をしている!!」
一輝の目の前に突如現れた女は、頬を紅潮させ息を切らしている。
「ハーデス様が、キグナスを連れてエリシオンへ行った。」
一輝はわずかに眉をひそめた。
「あの一件以来執着なさっていたご様子だから、おそばに仕えさせるつもりだろう。もはや私にはどうすることも出来ない。しかし、もしお前が連れ戻しに行くというのなら力を貸す。」
パンドラは藍にも近い澄んだ不死鳥の瞳をまっすぐに見つめた。
「そうだろうと思った。」
腕に巻きつけていたブレスレッドを外すと、差し出された右手につけてやる。
「恩に着る。」
次の瞬間消えてしまった広い背中を、まだそこにあるもののようにパンドラは見つめた。
 
 
***************** 


「卑怯だ!こんなやり方はっ!俺は女神の聖闘士だ。誰がお前などに仕えるか!!」
見渡す限りの花々。優雅に腰を下ろしたハーデスの前で、一人氷河は息巻いていた。
「まぁ、そう騒ぐでない。まわりをよく見てみよ。美しい花が咲き乱れておろう。ここは誰もが憧れる楽園ぞ。痛みも、悲しみも、苦しみもない。永遠の楽土でそなたを愛してやろう。」
伸ばされた手を、氷河は振り払う。
とっさに放った凍気は、あっけなくハーデスに弾き返された。
聖衣もない。
地上へ帰る術もない。
姿は見えないが、いつどこから双子神が現れぬとも限らない。
氷河はじりじりと後退しながら、唇をかみしめた。
ハーデスは楽しそうにじっとこちらを眺めている。
「指一本でも触れたら舌を噛むぞ。」
そう言うとハーデスはおかしそうに笑った。
「やってみてもよいが、私は死の神だからな。何度死のうがお前は私のものだ。」
氷河の顔が、初めて恐怖で蒼ざめた。
ハーデスの人差し指が、つ、と氷河の額に触れた。
と、氷河の瞳から光が消え、ずるずるとその場に座り込んだ。
 
ハーデスはニンフを呼び集める。
「地上の穢れを洗い清め、無粋な服を改めさせよ。」
 
 
薄布の服を纏った氷河は、まさに神話の住人だった。
ニンフたちはくすくすと笑いさざめきながら氷河の髪を梳き、花の飾りをつける。されるがままになっている氷河は、どこかあどけない表情でニンフたちを見上げている。
 
 
 
PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック