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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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す、すみません。
調子に乗って続き書きました。

カミュ先生ごめんね。





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光るきみの物語 4




星矢赤点のニュースは、すぐさま聖域の知るところとなった。
「数学担当は、確かカノンだったな。岬へ閉じ込めろ。」
「俺は、やるべきことはやった。そんなに言うのならばお前が指導すればよかったろうっ!!大体、試験まで一週間もないのに、かけ算の暗記から始めたんだぞっ!そっから高1の数学だぞっ!」
「やかましいっ!!それをやるのがお前の仕事だっー!!」
そうして牢の扉は無情にも閉ざされ、ざぶざぶと塩水を飲む体験を、カノンは久々に味わったのだった。
 
しかし、岬の方がまだマシなのかもしれない。
聖域に残れば、明石の君を演じなければならない。
都を離れた光源氏に見初められ、姫君を生み落す役。
狂ってる。やっぱり聖域は狂ってる。
 
カノンは洞窟の奥の、サガも知らない細い道をたどり、海底神殿に逃げ込むことに決めた。
 
「しかし、どうしたものだろう。カノンを幽閉したところで問題は解決しない。」とアイオリア。
「・・・私も、姿をくらまそうか?」
カミュの発言に、シュラは眉をひそめた。
「逃げる気ではないだろうな?」
「そうではない。主役がいなければ、映画を撮ろうにも撮れんだろう。仮に撮ったとしても、恋愛だなんだという場面は免れる。しばらくすれば、女神のお気持ちも変わるかもしれん。」
「・・・まぁ、確かにそうだな。」
「で、どこに隠れるんだ? 相手は女神だぞ。」
「ああ、少し心当たりはある。・・・まだ学校があるので氷河は置いてゆく。ミロ、友としてお前に頼みたい。氷河を護ってやってくれ。あの子は精一杯頑張って、古典の赤点も免れたのだ。優しい子だからな、何があるかわからない。どうか私の代わりに、あの子を護ってやってくれ。あの子の美しい笑顔を、あの子の澄んだ、天使のような心を。・・・だが、手は出すなよ。」
殴りたい気持ちを堪えて、ミロは頷いた。
 
聖域を後にしたカミュは、シベリアを訪れた。
修行地よりさらに北の、海沿いにある一軒の小屋。
小宇宙を感じたのか、ノックする前に扉は開いた。
「どうなさったんですか?カミュ?」
隻眼の少年はそう言うと、カミュを部屋に招き入れた。
熱い紅茶にジャム。
差し出されたそれは、懐かしい味がした。
「聖域で色々とあってな。しばらくここで匿って貰えないだろうか?」
師の申し出にアイザックは戸惑った。
道を違えた自分を、師が頼ってくれることは嬉しい。尊敬する師と、一緒に過ごせることも嬉しい。
しかし匿ってくれというのは、一体どういうことなのか?
師が道を誤る筈がない。
だとしたら、聖域で何かあったのか?
アイザックの思いつめた表情を見て、カミュは口を開いた。
「いや、別段、事件があったという訳ではないのだ。女神も無事だし、氷河も元気だ。落ち着いたら、私も聖域に戻る。」
「実は・・・氷河からさっき電話がありました。女神が、先生を探していると・・・。」
何ということだろう。
直接私に語りかけるのではなく、氷河を使ってコンタクトを取ってくるとは・・・。
しかしこれは、氷河のためでもあるのだ。
カミュは心を鬼にした。
「アイザック、訳を聞かずに匿ってほしい。ここはもうばれている。海底神殿にしばらく置いて貰えまいか?」
「・・・わかりました。」
 
氷の海に飛び込んで、カミュはアイザックのあとを追った。
決して穏やかではない潮流の中を、アイザックは力強く泳いでゆく。
その姿はカミュの知らないものだった。
 
深く深く氷の海を潜ってゆくと、ひと際強い水の流れに巻き込まれた。
くるくると体はまわり、上も下もわからなくなる。
そんなカミュの手をアイザックが引いた。
そうして気が付くと、石畳の上に立っていた。
「仲間と話してきます。」
 
一人石段に腰かけて、カミュはあたりを見回した。
ここは、北氷洋なのだろうか?
ここで氷河とアイザックは戦ったのだろうか?
自分が三度命を得たあとも、氷河はしばらく左目の包帯を解かなかった。その時の、暗く、こわばった表情を思い出す。
そしてアイザックの左目。
想いはまわり、気が付くと涙がこぼれていた。
自分が命を得たときには、すべてが終わった後だった。
一度も泣くことなく、通り過ぎてきてしまった。
 
「先生。」
膝に頭を乗せ、涙が流れるままにしていたカミュは、アイザックの声で頭をあげた。
グイと涙を拭いて振り返ると、アイザックの後ろに見覚えのある人物が立っていた。
「カノン・・・。」
「話は、アイザックから聞いた。確かにそれが得策かもしれん。」
 
「ポセ・・・ジュリアン・ソロ氏とソレント、それにイオとバイアンは復興のために世界をまわってます。クリシュナとカーサと俺が、ここの神殿を少しずつ修復してるんです。クリシュナに話をしたら、わかってくれました。表向き、歓迎するわけにはいかないけれど、北氷洋の住居に関しては、自由に使っていいそうです。」
「ありがとう。クリシュナにも礼を伝えてくれ。」
「はい。」
お前は大丈夫なのか・・・?とカミュはカノンを見上げて目だけで尋ねた。
ポセイドンの封印を解き、海界を利用して世界征服を試みた男。
今は女神の側につき、双児宮を護っている。
ノコノコとこんなところに戻ってきて、大丈夫なのか?
「・・・俺は北大西洋の部屋を借りる。」
ふてくされたような顔して、カノンは言った。
その顔がおかしくて、思わずカミュは笑みをこぼした。
帰る場所が、あるのだ。ここにも。
そのことはカノンが、海界でもそれなりの信頼を得てきたこと、そして戦いの後も義を尽くしてきたことを意味する。
 
「お腹すいていませんか?ご飯にしましょうか?」
「ああ」
「シードラ・・・じゃない、カノンもどうぞ。」
足取り軽く住居へと向かうアイザックについて、カミュもカノンとともに歩き始めた。
と、背後に何か気配を感じる。
振り返ると何か白いものが、ちらりと視界に入って消えた。
 
「意外とここは食糧豊富なんですよ。」
軽快に魚をさばいては鍋に放り込みながら、アイザックは言った。
「手伝おうか?」
「大丈夫です。俺が作るんで、先生はゆっくりしていて下さい♪ ブイヤベース、作りますね。ちょっと時間かかるけど、美味しいの作るから待っててください。」
 
カミュは椅子に腰かけて、窓の外を見た。
またしても、柱の陰に白い姿。
「少し、席を外す。」
そう言って、カミュは立ち上がった。
 
 
部屋を出て、柱へと向かう。
氷河がアイザックを倒して、打ち壊した柱だ。
力強く海を支えていただろうそれは、途中で散々に砕けており、瓦礫が端に集められていた。
 
ザッ。
ごくわずかに足音がした。
カミュはとっさに構え、小宇宙を高めた。
柱の陰から、人影が現れる。
 
「お、お前は・・・・・・氷河?!」
 
「心配だから、来ちゃいました。」と氷河は言って、にっこりと笑った。
「ミロはどうしたんだ、ミロは。」
「ええ、海界を探してみると言ったら納得してくれて。やっぱりここにいらしたんですね。」
「しかしお前、どうしたんだその格好?」
「あは、先生、こういうのお嫌いですか?」
そう言って氷河は、くるりと片足で回って見せた。
 
白い、ミニスカートが揺れる。
 
ふわふわと胸元にフェイクファーのついた、白いミニのキャミワンピ。
大変に似合っているが、これはどういうことだろう?
髪と手首にも、白いふわふわの飾りがついている。
その両手を、胸の前で組むようにして、氷河はカミュを見上げた。
「よかった。ご無事で。会いたかった・・・せんせい。」
 
石畳に、赤い滴が落ちた。
 
い、いかん、鼻血・・・。
 
と、その時、小石が飛んできて氷河のでこにあたった。
「いい加減にしとけよ、カーサ。」
そう言うとカノンは、ポケットティッシュを落として去って行った。
 
「うう、これがカーサか・・・。」
カミュはポケットティッシュを拾い上げ、一枚取り出すと鼻に詰めた。
 
「カノンよ。さすがにお前は男の情けを知る男。」
 
そうして、奇妙な海底生活が始まったのだった。



つづく





 
 
 
 
 
 
 


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微妙にカミュ・氷はいってます。
なんも起こりませんが、苦手な方はご注意ください。
これで完結です。





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光るきみの物語 3


1日目の午前中に古典の基礎を学び、午後に試験の傾向と対策を掴んだカミュは、2日目には原文で源氏物語を読んでいた。辞書を引きながら読み進めてゆけば、自然と単語や文法も頭に入る。また、何と言っても今回の高2の試験範囲が、源氏物語の冒頭と若菜の章であったからだ。
よりにもよって若菜か・・・とカミュは思う。
幼くして自分の元に引きとり、源氏が自分の理想を注ぎ込んだ女性、紫の上。彼女との出会いが描かれた場面だ。
誰かさんにピッタリの役・・・?!
冗談ではない。
私はそれほど好色ではないし、育てた子供には翼が生えている。
つぼみのまま手折って、手に入るものなのか。
そんなことを思いながら、気が付けば物語にのめり込んでいるカミュであった。
 

夕食の後は自習ということで、青銅聖闘士達は部屋に戻った。
黄金聖闘士達は、リビングでコーヒーを飲んでいる。
「進み具合はどうだ?」
訪ねるとカノンが重いため息をついた。
「瞬と紫龍は大丈夫だろう。氷河も理系は平気だな。問題は星矢の数学と一輝の物理。それに英語だ。奴に物理と英語が通じないのは、なんかわかるような気もするが。」
「そちらはどうじゃ?」
「ええ、なんとか明日から指導に入れそうです。」
「さすがだな。」と優艶な笑みを浮かべるアフロディーテに、カミュは言い返した。
「こちらも必死なんだ。」
「さて、ちょっと発破かけに行くか。」
カノンがそう言うと、アフロディーテが立ち上がって、5人分のコーヒーを淹れた。
 
 
ノックをすると立ち上がる気配がして、すぐに部屋のドアが開いた。
ドアノブに手を置いたままの氷河の顔は、若干疲れて見える。
「コーヒーを持ってきた。」
「すみません。ありがとうございます。」
そう言ってトレーを受け取ると、ソファの前の小さなテーブルに置いた。
「どうだ。はかどっているか?」
「ええ、頑張ってはいるのですけれど・・・。」
「明日から、古典の勉強を始める。お前、苦手だそうだな。」
普段よりやや深く見える二重の瞼をしばたたかせて、氷河はカミュをみつめた。
「明日から覚悟しておけ。」
「もしかして、もうカミュは、わかるようになっちゃったんですか?」
「付け焼刃だがな。高校生の定期テストの指導ぐらいはなんとかなる。数学が済んだら、少し予習しておくか?」
「はい。」
修行時代を思い出して、氷河は少しうれしくなって笑った。
 
「古典は、本当に何書いてあるかわからない。それに源氏物語は、なんか嫌いです。」
教科書を前にして、氷河は不満をたれた。
「光源氏が、女たらしだからか?」
「そう!そうですよ。あちこちの女性に手を出して、子供まで産ませて。そういう男は嫌いです。」
「そんな屁理屈をこねる前に、試験をクリアすることだな。それに、ちゃんと読んでみると、意外と面白いぞ。」
子供じみた顔をしている氷河を引き寄せると、カミュはソファの隣に座らせた。
「光源氏の女性遍歴の根底には、母親への思慕があると、女神が言っていた。」
「沙織さんが?」
「ああ、ここに来る前に少し、この話になってな。」
「桐壺の更衣は、源氏が幼い時に死んでしまうだろう?」
「あれ?そうでしたっけ?」
カミュは教科書を手に取ると、ペシンと氷河の頭を叩いた。
「試験範囲だ。」
紫の上が妻となるまでをかいつまんで話して聞かせると、ほぅと氷河はため息をついた。
「そんな話でしたか。
・・・やっぱり女の人たちはみんなかわいそうだな。」
少し遠くを見るようにして、氷河は呟いた。
「六条御息所にしたってそうでしょう? 彼女だって源氏の被害者だ。」
思わずカミュは、聖域に残るサガのことを思い出した。
「しかし、光源氏は、彼女のことを責めたりはしない。むしろ彼女をそこまで追い詰めた自分に責任があると思うのだ。」
「そりゃそうですよ。」
「・・・紫の上についてはどう思う?」
「え?」
コツコツと教科書を叩きながら、カミュは尋ねた。
「幼くして引き取られて、妻となった紫の上だ。」
「ああ、そのひと。その人は割と幸せそうだけど・・・。でも誰かに似てるなんて、そんな理由じゃ悲しいだろうな。」
「紫の上は源氏の生涯の伴侶だ。・・・しかし彼女は、源氏の庇護のもとに育って、そのまま妻となった。彼女には、それを拒む自由も、いやそれを疑う自由すらなかったと、そんな気がする。そういうのは、本当の幸せと言えるのだろうか?」
何気ない風を装いながらも、カミュの目は真剣だった。
「でも。そういうのって、ちゃんとわかるんじゃないでしょうか? どんな出会い方をしても、結局好きな人のことは、好きになるんだって思いますけど。」
「年の差は?」
「そんなのは関係ない。」
教科書に目を落としたまま、ふっと氷河はやわらかく笑った。
「で、源氏物語は、光源氏と紫の上が結ばれて終わりですか?」
「いや、まだ続く。」
「二人の幸せなくらし・・・?」
首を傾けた氷河がかわいくて、カミュは少しめまいがした。
「いや、朧月夜という恋人との交際がばれて、光源氏は都を離れるのだ。そして明石というところで別の女性と出会う。そして・・・。」
「やっぱり最低だっ。」
唇をとがらせる氷河を前に、思わず口走ってしまった。
「私は浮気などしないっ!」

「・・・・・・・・・・・・はい?」

「・・・いや、なんでもない。」
コホンと咳払いをして、カミュは教科書を手に取った。
「試験範囲の部分。5回ずつ声に出して読んでおきなさい。今日のところはそれで勘弁してやる。」
 
 
 
カミュの努力の甲斐あって、氷河は赤点を免れた。
しかも古典は、自分でもびっくりの93点。
誇らしい気持ちで屋敷に帰ると、沈鬱な空気が立ち込めていた。
コキュートスに漬かっているような顔の5人の真ん中で、星矢が答案用紙を手にして立っていた。
「ごめん。俺、数学やっちった。」






おしまい

読んでくださった方、長々お付き合いくださりありがとうございました。
 
 
 


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