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光るきみの物語 6
「でもさ、カミュが行方不明って。それってやっぱり俺の赤点が原因なのか?」
城戸邸のリビングで星矢はミロに尋ねた。
「カノンが言ったんだ。俺たちが赤点をとると、聖域は大変なことになるって。」
「そうだ。そうならないために、カミュは姿を隠している。」
「女神は無事ってことはさぁ、結局沙織さんが黄金聖闘士になんかやらせようとしてるってことだろう? それって、そんなにひどいことなのか??」
星矢の問いに、ミロはうなった。
「俺が赤点とったんだから、俺が罰を受けるべきなんだよ。」
星矢が言うと、紫龍が言葉を継いだ。
「フッ、確かにその通りかもしれんな。だがお前一人に辛い思いはさせない。」
「そうだよ、僕たちがついてる。」
「ああ、恥かく時は一緒だぜ、兄弟☆」
「フ・・・。」
「でもさぁ・・・、沙織さんの罰ゲームって何だろう?」
「やっぱりさぁ・・・馬かなぁ。」
瞬の呟きにミロは耳を疑った。そんなミロをよそに、盛り上がる5人。
「そうだよ。きっとそうだ。さすが瞬だな。みんなを馬にして十二宮突破とか。」
「アテネ市街一周とか。」
「しかし、それでは、何故我が師カミュだけが行方をくらますのだ?」
「う~ん、なんか、乗り心地がいいとか??」
「牛や山羊もいるのに?」
「う~ん。」
「・・・考えたって始まらないぜ。とりあえず俺たちから女神に提案してみよう。黄金聖闘士程乗り心地はよくないかもしれないけど、俺たちなりに頑張るって。そうだ、邪武呼んで、六頭立ての馬車にしようぜ。」
かろうじて保っていた女神の像が、ガラガラと崩れ去るのを感じながら、ミロはそれを押しとどめることができなかった。
と、そこへ、突然ずぶ濡れのカミュが現れた。
「せ、先生っ!!」
「どうしたんだカミュっ?!」
機転を利かせた瞬からバスタオルを受け取ったカミュは、ぜえぜえと息を切らしながら言った。
「氷河、お前だ。お前が狙われてる。」
「何ですって?」
きょとんとしている氷河の両肩に手を置くと、カミュは周囲を見回した。
一輝の姿を認めると、ビッと、その長い指を指した。
「いいか、こいつ。年上で生意気だが、実はいい奴だと思っているだろう? 全然そんなことはないんだぞ。心を許すな。」
「それにこいつ。」
指の先には瞬。
「苦労して生きてきたのに、いつまでもかわいくて可憐だと思っているだろう? 騙されるな。」
「それにこいつ。」
と、今度は紫龍。
「いつでも公正で、心の清らかさに癒されるとか思ってるんだろう? それでも、結局やるときはやるのだ。」
「それで、いっちばん、あぶないのがこいつだ。」
指の先にはミロ。
「見た目の華やかさに、流されるな。身を滅ぼすぞ。」
呆気にとられる一同をよそに、カミュの説得は続く。
「いいか、男はみんな狼なのだ。お前は、まぶし過ぎるのだっ!!」
「落ち着け!」
ミロはカミュの頭に拳固を食らわせた。
殴られてカミュは意識を失った。
「先生っ!」
氷河が抱き上げると、すぅすぅとひどく穏やかな寝息が聞こえた。
「そう言えばこいつ、古典を任されて以来、ろくに眠ってないのかもしれないな。氷河、ちょっとベッドを貸してやってくれ。」
氷河は頷くと、一回り大きいカミュの身体を抱き上げ、大切そうに部屋へと運んだ。
「カミュは来てるか?」
テレパシーを感じて、ミロはあたりを見回した。
外の窓から、こそこそとこっちを覗く姿が見える。
「来てる。女神は居ないから、ちゃんとドアから入ってこい。」
しばらくして、カノンが貴鬼を連れて現れた。
「こんなものが海界に届いてな。時間がない。こっちで対策を考えよう。」
ミロは封筒を受け取るとざっと目を通した。
新キャスティング・・・それでさっきのあの発言か。
ミロは笑みを漏らしたのち、笑ってる場合ではないと顔を引き締めた。
「あの、いい加減僕らにも、事情を話していただけませんか?」
瞬が気遣うような顔をしながらこちらを見た。
「そうだよ。もとはと言えば俺の責任なんだ。今だって馬やるって覚悟を決めたところだし・・・。」
「馬?」とカノン。
「そうだよ。俺が赤点とったせいで、沙織さんの罰ゲームがあるんだろう? それだったら俺たちが馬やろうって、今話していたところなんだ。俺たちなら慣れてるから、鞭で打たれたって平気だ。アテネ市街を走り回ることだって苦じゃないぜ。」
何のことやらぽかんとするカノンの肩に、ミロが手を置いた。
カノンは頷くと口を開いた。
「実は女神が映画を撮りたいとおっしゃってな。」
そう言ってカノンはこれまでの経緯をかいつまんで話して聞かせた。
「ほとぼりが冷めるまでカミュが身を隠すことにしたのだが、そこにこれが届いた。氷河を主役に、明日から撮影をするそうだ。」
新キャスティング・・・と銘打たれたそれを、5人は覗き込んだ。
さすがに日本で勉強しているだけあって、のみ込みが早い。
「あはは、一輝が葵の上だってっ! お前、十二単着んのかよっ。」
「氷河が源氏って、マザコン、マザコンだもんねっ!マーマの役、シャカだって。」
「氷河と同じ金髪だし、意外とはまりそうだな。あ、写真がある。本当だ、これは明らかにマーマだ。」
「うわ~っ、本当だ~。しかし沙織さんもよく考えたねぇ。六条御息所がサガって、ちょっと洒落にならないよね。どうする、兄さん、取り殺されちゃうよ。」
「ふん、今度こそ決着をつけてやる。」
慣れているのだろうか、意外とノリよく受け止めている4人。
そこに、氷河が戻ってくる。
「氷河!見てこれ、マーマだよ。」
「何っ」という声よりも早く、氷河は光速で移動して写真を手に取った。
「・・・・・・ちょっと似ている・・・。」
「沙織さんがね。映画とるんだって。氷河が源氏で、桐壺がシャカなんだって。」
「一輝が葵で、瞬が夕顔なんだぜ。」
不愉快そうに、眉をしかめる氷河。
「でもね、もともとは、光源氏がカミュで、氷河は紫の上だったらしいよぉ。」
意味ありげに瞬はくすくすと笑った。
「ね、どっちの役がやりたいの? 僕は君相手に夕顔でも、全然かまわないんだけど。」
言葉に詰まる氷河の顔を面白そうに覗き込んでいる瞬の頭を、一輝がこつんと叩いた。
「ま、冗談はさておき。多分沙織さん、そんな本か漫画を読んだんじゃないかと思います。意外と影響を受けやすい人だから。」
「それで、君たちはどうしたらよいと思う? まさか本気で演じるわけでもあるまい。」
「当たり前だ。」と氷河。
「多分沙織さんの気が逸れるような、なんか別の漫画でも貸してあげたらいいんじゃないかなぁ。」
「あー、それはいいかも。」
「でも、何がいいんだろうな。」
悩む一同の前に、一輝がどさりと何かを置いた。
「ベルサイユの薔薇??」
作戦は功を奏し、聖域はしばらく静かになった。
後に舞台化の指令がとぶのを、彼らはまだ知らない。
おしまい
色々失礼いたしました。
追記を閉じる▲
私の想像の中で、一番鼻血が似合うのがカミュ先生です。
ちなみに二番目は紫龍です。
現実生活で、ちょっぴり行き詰ることがあって。
中々人生ままならんなぁ・・・と思う。
このくらいの年になると、幸せそうに見えても、みんな何かしら抱えている。
人に対しては、想像力を持ちたいと思う。
自分に関しては、振り切って進む強さと明るさを持ちたいと思う。
とはいえ、このあほ話を黙々と書いているせいで、なんかあんまり落ち込まずに済んだかも。
現実逃避ともいうけれど。
ちなみに二番目は紫龍です。
現実生活で、ちょっぴり行き詰ることがあって。
中々人生ままならんなぁ・・・と思う。
このくらいの年になると、幸せそうに見えても、みんな何かしら抱えている。
人に対しては、想像力を持ちたいと思う。
自分に関しては、振り切って進む強さと明るさを持ちたいと思う。
とはいえ、このあほ話を黙々と書いているせいで、なんかあんまり落ち込まずに済んだかも。
現実逃避ともいうけれど。
光るきみの物語 5
地上。
カミュが行方不明。
そう沙織に聞いて、氷河は居てもたってもいられなくなった。
アイザックも知らないと言っていた。
折角、今度こそ、師とともにいられると思っていたのに。
何故、どうして、どこへ行ってしまったというんだろう。
三度もつらい経験をした氷河は、たまらない不安に駆られた。
冷静にならなければと思う頭とは別に、体は震え、わけのわからない涙がぽたぽたと落ちた。
電話機を手にしたまま、氷河はその場に倒れ込む。
と、その細い体を、ふいに現れた逞しい腕が支えた。
「ミロ?」
フッと、紫の瞳は笑みをたたえた。
「相変わらず、泣き虫な坊やだな。」
カミュは無事だが、一時姿をくらます。しかしそれは、黄金聖闘士達の同意に基づくものであり、女神に背くものでもない。
そんな説明をミロから受けた。
到底納得のゆくものではない。
しかし今は、それを信じるしかないのだ。
「友として、君を守るようにカミュに頼まれた。君のそばにいて、君を守って欲しい・・・だが手は出すなと。フフ、君を前にして、そんなことできるかな。」
そう言ってミロは、まだ氷河の下まつ毛に残っている、宝石のような涙をぬぐった。
一方聖域。
シャカは、台本を手に船の上に立っていた。
「女神、平安時代に生きていた桐壺の更衣が、何故船に乗るのですか。それにこの衣装は一体・・・?」
真夏のギリシャで、シャカはフードのついた毛皮のコートを身に纏っている。
ちなみに髪は前分けである。
「いいんです。イメージです。その方が、一部の人間の共感を呼ぶんです。さ、台詞を言ってみて下さい。」
「光る君・・・。帝は正義と平和を愛するとてもりっぱな方なのです。あなたもいずれ、おとう様の力になれるようにがんばるのですよ。いいですね、光る君。DO CVIDANIJA 」
船の欄干に白い手を置いて遠い目をするシャカの姿を女神はカメラにおさめた。
「貴鬼、これを、海底神殿のカミュに届けてきてください。」
「え? だってさっきはどこにいるかわからないって。」
「あら、そうだったかしら。でもね、今はあなたの力が必要なのです。今道を開きますから、そこからお願いね。」
そう言うと女神は海を指差した。
指先から、光の帯。それはまっすぐスニオン岬に続いている。
「あの光の道をたどってゆけば、カミュとカノンのところまでつくはずです。」
光の道をたどって、貴鬼は久しぶりに海底神殿へと降り立った。
ここは北氷洋。
天秤座の聖衣を護るため、必死になって戦ったことを思い出す。
「あ、お前は・・・。」
二人は同時に声をあげた。
「女子供もクールに殺す」とか言って、自分を蹴り飛ばした男がそこには立っていた。
貴鬼は思わず身構える。
しかし相手は、両手を挙げて戦う意志のないことを示した。
「何か用か。」
「カミュとカノンに会いに来た。いるんでしょう? 女神に頼まれてきたんだ。」
女神と聞いて、アイザックは眉をしかめた。
ついにここもみつかった。
しかしさすがに、ここまで乗り込んでくることはないだろう。
ふと、アイザックは貴鬼が持っている封筒に気が付いた。
「おい、その封筒をよこせ。」
「ダメだよ。これはちゃんと、オイラがカミュに渡すんだ。」
うずくまる貴鬼の腕をアイザックがつかむ。
その手をそっと、カミュが止めた。
「もういい、アイザック。ありがとう。」
そう言って貴鬼から封筒を受け取ると、手紙に目を通した。
手紙に次いで、一葉の写真を眺めたカミュは、はっと息を飲んだ。
「駄目だ・・・。氷河があぶない。」
そう言うとカミュは手紙を取り落し、ふらふらと歩き始めた。
「私は地上に戻ることにする。アイザック、世話になった。」
カノンは手紙を拾い上げて目を落とした。
「前略 カミュ。
貴方がなかなか聖域に戻って下さらないので、残念ですが新キャストで撮影を始めることにしました。
光源氏・・・氷河
桐壺の更衣・藤壺(二役)・・・シャカ
葵の上・・・一輝
夕顔・・・瞬
六条御息所・・・サガ
朧月夜・・・ミロ
花散里・・・紫龍
紫の上・・・ヤコフ
惟光・・・星矢
明日から撮影スタートです♪ 貴方には朱雀帝でもお願いしようかしら♪」
手紙のほかにもう一枚、何故だか女物の毛皮のコートを着たシャカの写真が入っていた。
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