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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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続きです。

ハーデス篇を読んでいるといつも思うのですが、天国ってここしかないんでしょうか??

書いていてとっても楽しかったです。
お題を下さったO様、ありがとうございました。


拍手[25回]

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ザシャ。
耳慣れぬ乱暴な音がして、ニンフ達は悲鳴をあげた。
金色の鱗衣が、花々を踏み散らしてゆく。
ニンフ達は氷河の手を取ってその場を去るように促すが、氷河は立ち上がる気配を見せない。諦めたニンフ達は、ハーデスの元へ走り去っていった。
「氷河、お前を迎えに来た。」
「あなたはだれ?」
蒼い眼を見開いて、氷河は問いかける。
記憶を消されたか・・・。
アイザックは眉をひそめた。
しかし、そんなことは俺たちに関係ない。
「氷河、俺はお前を愛する者だ。」
「どうして? むねがいたい。」
氷河は手を伸ばして、左の目から頬に走る深い傷に触れた。
「一緒に帰ろう。」
雪の中の一輪の花をアイザックは思い出した。
こわさないようにそっと抱きしめる。
 
その頭を、蹴り飛ばしつつ入ってくる男。
「海闘士ふぜいがこんなところで何をしている?」
その背中には、ごおごおと炎が燃えている。
「あつい・・・。でも、どこかなつかしい。」
「そうだ氷河。思い出すんだ。俺たちの絆は、こんなことで途切れる程やわなものではなかった筈だぞ。」
そう言って一輝は両のてのひらを氷河の頬に添えた。
 
その手を、ひねりあげながら凍結させる男。
「まさかお前まで紛れ込んでいたとはな。とっとと地上へ戻れ。」
カミュは氷河の前に膝をつくと、その両肩に手を乗せた。
「氷河、わかるか?」
「ああ・・・。」
氷河の瞳からは、ただただ透明な涙が零れ落ちる。
「何も言わなくていい。私が、お前を護ってやる。」
ひしと抱きしめるカミュの肩に、やけに冷たい手が触れた。
 
「ああ、アイザック、お前もいたのか・・・。」
 
師弟はしばし見つめ合った。
 
尊敬する師カミュ。
だがここは譲るわけにはいかない。
自分とて今は海闘士の頂点を極める海将軍の一人だ。まして今はポセイドン様のお力でこの場に立っている。こと氷河に関しては、絶対に負けるわけにはいかない。
 
決意を新たにするアイザックの横顔を一輝は眺めた。
左目の、深い傷。
こいつがあの包帯の犯人か。
あの時の氷河を思い出すと、ふつふつと怒りがこみ上げる。
 
そんな一輝の姿を、カミュは横目で眺めた。
弟ではなくこっちがくるとはな。
氷河の口からは、こいつの悪口しか聞いたことがない。
だが氷河は、こいつの事だけ、「あいつ」と呼ぶのだ。
妙に甘い顔をして、あいつと呼ぶ。それが前から気に入らなかった・・・。
 
 
氷河を囲んで、妙な三角形が出来ている。
今にも千日戦争がはじまりそうなきわどい雰囲気だ。
 
そこに割って入る声。
「騒がしいぞ、お前たち。ここはお前らのような者が立ち入ることを許される場所ではない!!」
 
「ああ、ハーデスか。今、大事なところだから引っ込んでいろ。」
 
「なっ!?」
思わずひるんだハーデスだが、気を取り直して言葉を続けた。
「キグナスは余のものだ。このエリシオンで永遠に余に仕えるのだ。」
 
「ふざけるな!つい最近ちら見した程度の奴が、口出しするとは笑止千万。貴様が氷河に手を出すなど1000万年早いわ!」
 
「そうだ。私など氷河が8歳の頃からの付き合いだ。6年間、極寒の東シベリアの氷原で聖闘士にそだてあげたのもこのわたし・・・。聖域より教皇の許しを得て永久氷壁にねむるキグナスの聖衣をさずけたのもわたし・・・。教皇にさからい聖域に挑戦してきたのを死にいたらしめかけたのもこのわたしだっ!!」
 
「お言葉ですがカミュ。貴方の厳しい指導のもと、陰で氷河を支えてきたのはこの俺です。淋しい夜、悔しい夜、幾度その涙をぬぐい二人で励まし合ってきたかしれない。」
 
「お前たちが出会ったのはこいつが8歳の時からか。俺はその前の7歳の頃からの付き合いだ。お前らがいったん死んだ後、共に戦ってきたのもこの俺だ。」
 
「黙れ人の子が!」
 
「うっさいな、今大事なところだと言っただろう。」
 
三方から飛んできた小宇宙がハーデスにヒットした。
寒いのかあっついのか。でも相対的には寒いと思いながら、ハーデスは衣の汚れを払った。
 
「そもそも師弟という壁の前で、どれだけ私が想いを募らせてきたことか。」
 
「だったら俺だって。貴方が氷河に傾ける想いに気づきながら、どれだけ耐えてきたと思ってるんですか。それだけならまだしも、海界と地上に引き裂かれてしまって!!」
 
「フッ、ならばお前らはその壁とやらの手前でぐずぐず燻っているんだな。」
 
「お前、片親同じだろうが。」
 
「うるさい、知ったことか!」
 
「初めてシベリアに来たときから、思えばずっと好きだったんだ。」
 
「私だってそうだ。弟子としてお前も大切だったが、氷河に対する思いは少し違っていた。」
 
「ならば俺とて子供の頃からだ。俺の心が憎しみに染まったときも、前を向かせてくれたのはこいつだった。」
 
「氷河に出会って私の人生は変わった。甘いとしか思えなかったあの子の優しさが、少しずつ人としての生きる喜びに気づかせてくれたのだ。」
 
「俺だって同じことです。海将軍という自分の運命を呪ったこともありましたが、氷河は変わることなく俺に向かってきてくれた・・・。」
 
 
「あ、あの・・・。」
 
氷河の声に、三人は我に返る。
三角形の真ん中に座りこんでいる氷河は、顔を真っ赤にして見上げている。
その表情は、いつもの氷河のものだ。
 
「お前、いつから戻った?」
「壁がどうとか・・・。」
 
先ほどまであれ程情熱的だった三人は思わず数歩退いた。
「そこからずっと聞いていたのか?」
こくん、と氷河は頷いた。
 
(こんなどさくさまぎれで告白とは・・・!)
シチュエーションにこだわるカミュは、ぎりぎりと奥歯を噛んでハーデスを睨んだ。
 
「で、お前はどうなんだ? 俺たち三人のなかで誰を選ぶ?」
アイザックがクールに質問を切り出した。
 
「え?」
「お前が決めることだ。」
「え・・・あ・・・?」
 
かけがえのない師、カミュ。
命がけで自分を守ってくれた友、アイザック。
そしてずっと一緒に走り続けてきた一輝。
 
え、でも選ぶって・・・??
 
「あの、もう少し、時間を下さい。カミュも、アイザックも、一輝も、俺にとってはかけがえのない存在です。でも、少し、時間を。だめですか?」
 
気遣うようにこちらを見上げている氷河の頭を、カミュがそっと撫でた。
アイザックが手を差し伸べて、氷河を立ち上がらせる。
 
「氷河、余も待っている。」
 
「お前は黙っとけ!!」
 
黄金聖闘士のカミュの手首には女神の花環。
海将軍の鱗衣にはポセイドンの念。
二神を同時に敵にまわそうとは、ハーデスも思わない。
しかも不死鳥の腕には、パンドラに授けたブレスレッドまで巻きついている。
 
「もういい、帰れ。」
 
ハーデスは4人を地上へ飛ばすと、やれやれとため息をついた。
 
 
 
パンドラの目の前に、ふいに4人は姿を現した。
紅い髪の黄金聖闘士が、氷河を横抱きにしている。
その横に、りりしい海将軍が立っている。
少し、離れたところに一輝。
何だかちょっとふてくされたような顔をしている。
氷河はパンドラの姿を認めると、カミュの腕から降りて向き直った。
カミュが羽織らせたマントの隙間から、まっすぐな白い足が覗いている。
「貴方が一輝を向かわせてくれたんだな。本当に助かった。ありがとう。」
そう言って氷河はちらりと一輝の方を見た。
黄金聖闘士と海将軍は、氷河を間に挟むと、背中に手を置いた。
三人は軽く目礼して、パンドラのそばを通り過ぎてゆく。
 
一輝はブレスレッドを外すと、パンドラに手渡した。
「お前にも色々あるのだな。あんな奴やめて、私にしてしまえ。」
冗談めかしてパンドラが言うと、一輝はふてくされた顔のまま呟いた。
 
「知っているだろう。俺も、欲しいものは必ず手に入れる男だ。」
 


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お待たせいたしました。

キリリク1000を踏んで下さったO様からのリクエスト話です。
お題は、「もしハーデスが何も言わずに氷河をエリシオンへ連れ去ってしまったら、わが師やアイザックや女神やパンドラや青銅たちはどんなリアクションをするでしょう」

すごい。自分ではなかなか思いつかなかったテーマですが、この一文を読んでいるだけでもふつふつと楽しくなってきました。

で、若干調子に乗りました。
書いている自分はとても楽しかったのですが、大丈夫でしょうか???

ちょっと長くなってしまったので、2回に分けました。


拍手[9回]




「氷河」
そう、呼び止められた。
瞬ではない。瞬と同じ顔をしているが、その瞳は闇よりもなお昏い。
亜麻色の優しい髪は、漆黒に染まっている。
「ハーデス!!」
氷河は思わず目を見開いた。
「聖戦はもう終わったはず。瞬の身体を利用するのはやめろ。」
とっさに身構え鋭い眼光を放つ氷河に対して、瞬の姿を借りたハーデスは微笑んだ。
「余もこの身体に執着してはいない。この者の小宇宙はあまり心地よいものではないのでな。だが、そなたに会うには好都合だ。」
白い指が伸びて、氷河の頬をするりと撫でた。
「わかるな、余の言いたいことが。」
「・・・卑怯だ。」
「まぁ、よい。さぁ、あちらへ参ろう。」
瞬から抜け出した黒い力は、有無を言わさず氷河を包んだ。
包んだまま、消えてしまった。
 
 
「瞬!どうしたんだ。こんなところで!!」
城戸邸の庭に倒れている瞬に気づいたのは紫龍だった。
「わかるか? 瞬、何があった?」
瞬は頭を二、三度振ると、こめかみを押さえた。
「・・・わからない。お昼を食べたあとの記憶がはっきりしないんだ。・・・でも、いやな感じがする。ハーデスにのり移られた時の、あのときみたいな・・・。」
「聖域と連絡を取ろう。立てるか?」
 
星矢はすぐにヨットハウスから城戸邸に駆け付けた。
一輝は所在不明。それは今日に始まったことではないのだが。
城戸邸にいるはずの氷河の姿がない。
「携帯くらい持っとけよ。」
と星矢が言ったが、これまで不自由しなかったのは、互いの小宇宙でそれなりのコンタクトが取れていたからだった。黄金聖闘士のようにテレパシーが使えるわけではないが、おおよその所在の見当はつく。それなのに、氷河の小宇宙を誰も感じない。
「瞬と星矢は聖域に行って、このことを女神に伝えてくれ。俺はもう少し、ここで氷河を探してみる。」
 
同じとき、女神神殿にいた沙織は、つと顔をあげた。
「どうかなさいましたか?」
そばに居合わせたカミュが問いかけると、女神は沈痛な面持ちで眉をひそめた。
「瞬たちを呼びましょう。」
次の瞬間、カミュの目の前に瞬と星矢が現れた。
「ああ、沙織さん、やっぱり何かあったんですね!?」
 
瞬からの報告を受けたのち、女神は自分の見解を述べた。
「ハーデスが、氷河を連れ去ったと?!」
カミュはついていた膝を浮かしかける。押さえてはいるのだろうが、声もやや上ずっていた。
「また、冥界と戦うことになるんだろうか。」
星矢はどこか遠くを睨むようにして静かに言った。
「いえ、おそらくこれは、ハーデスの個人的な思惑でしょう。」
「個人的な?」
「ええ、この一件はカミュに一任することにします。瞬、星矢、わざわざ呼び寄せてすみませんでした。」
「ちょっと、待ってくれよ、沙織さん。氷河は俺たちにとっても大切な友なんだ。」
なおも食い下がろうとする星矢の肩に、瞬が手を置いた。
「僕たちに出来ることがあったら、何でもしますから。カミュ、氷河をお願いします。」
 
瞬と星矢を下がらせた後、女神は深くため息をついた。
「どうやらハーデスは、氷河を気に入ってしまったようなのです。それで神話の時代の神々のように、エリシオンへ連れ去ってしまった。花を贈るくらいはかわいいものですが、今回ばかりは許すわけにはいきません。とはいえこれは神同士の戦いとは別の話。貴方なら、その想いはハーデスなどに負けない。そうでしょう?」
女神はくすりと笑みを浮かべ、カミュは深く頭を垂れた。
「これを」
女神はカミュのそばに歩み寄って、花の鎖を彼の手首に巻きつけた。
「感謝いたします。」
 
 
**************** 


ソレントは主とともに旅を続けていた。
その主の気配が、ふいに変わるのを感じてソレントは立ち止まった。
上質なスーツを纏ったジュリアン・ソロの背中からは荒々しい海神のオーラが漂っている。
「ポ、ポセイドン様・・・?」
「ソレントよ。私は今、アテナの聖闘士のために少しばかり力を貸してやった。いや、彼にも辛い思いをさせたのでな。」
ポセイドンの見つめる先、はるかかなたの北の海から、一つの光が飛び去って行った。
 
 
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「こんなところで、何をしている!!」
一輝の目の前に突如現れた女は、頬を紅潮させ息を切らしている。
「ハーデス様が、キグナスを連れてエリシオンへ行った。」
一輝はわずかに眉をひそめた。
「あの一件以来執着なさっていたご様子だから、おそばに仕えさせるつもりだろう。もはや私にはどうすることも出来ない。しかし、もしお前が連れ戻しに行くというのなら力を貸す。」
パンドラは藍にも近い澄んだ不死鳥の瞳をまっすぐに見つめた。
「そうだろうと思った。」
腕に巻きつけていたブレスレッドを外すと、差し出された右手につけてやる。
「恩に着る。」
次の瞬間消えてしまった広い背中を、まだそこにあるもののようにパンドラは見つめた。
 
 
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「卑怯だ!こんなやり方はっ!俺は女神の聖闘士だ。誰がお前などに仕えるか!!」
見渡す限りの花々。優雅に腰を下ろしたハーデスの前で、一人氷河は息巻いていた。
「まぁ、そう騒ぐでない。まわりをよく見てみよ。美しい花が咲き乱れておろう。ここは誰もが憧れる楽園ぞ。痛みも、悲しみも、苦しみもない。永遠の楽土でそなたを愛してやろう。」
伸ばされた手を、氷河は振り払う。
とっさに放った凍気は、あっけなくハーデスに弾き返された。
聖衣もない。
地上へ帰る術もない。
姿は見えないが、いつどこから双子神が現れぬとも限らない。
氷河はじりじりと後退しながら、唇をかみしめた。
ハーデスは楽しそうにじっとこちらを眺めている。
「指一本でも触れたら舌を噛むぞ。」
そう言うとハーデスはおかしそうに笑った。
「やってみてもよいが、私は死の神だからな。何度死のうがお前は私のものだ。」
氷河の顔が、初めて恐怖で蒼ざめた。
ハーデスの人差し指が、つ、と氷河の額に触れた。
と、氷河の瞳から光が消え、ずるずるとその場に座り込んだ。
 
ハーデスはニンフを呼び集める。
「地上の穢れを洗い清め、無粋な服を改めさせよ。」
 
 
薄布の服を纏った氷河は、まさに神話の住人だった。
ニンフたちはくすくすと笑いさざめきながら氷河の髪を梳き、花の飾りをつける。されるがままになっている氷河は、どこかあどけない表情でニンフたちを見上げている。
 
 
 


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