忍者ブログ
☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


ご無沙汰しております。
以前某様に捧げさせていただいたテロメア妄想話をUPしてみます。
少しだけ手直ししたんですが。
あれですね。
文章が下手ということだけはわかって、上手くは書けない・・・悲しい・・・。
でも、氷河かわいがりたい人間としては、設定だけはとても気に入っていたりします。


氷河、一輝、星矢たちとカミュ。
(一氷テイスト、カミュ氷テイスト)


拍手[11回]

PR



「お、おい、誰でもいいから、早くこっちへ来てくれ」
うろたえる辰巳の声が聞こえて、一同は立ち上がった。
エントランスの方へと歩いてゆくと、辰巳の向こうに小さな子供の姿が見える。
「あとで説明はするから、とりあえず、ほら、部屋に入って着替えろ」
子供はじっと歯を食いしばって辰巳を睨みつけている。7歳ほどの小さな体には合わないぶかぶかのTシャツを見ても、一同は左程驚かなくなっていた。
「クロノスのいたずら、今度は氷河か・・・。」
戦いは終わったというのに、ちょいちょいクロノスが聖闘士達にテロメアを仕掛けてくる。しかし24時間という期限付きだし、自分が仕掛けられるのでなければ結構おもしろい。一輝が3歳児になり瞬が赤ん坊になるというハプニングを乗り越えた青銅っこたちは、案外気楽に事を受け止めていた。
「それにしてもあれだね。この頃の氷河というのはぐっとくるね」
「ああ。母親を亡くしたばかりなのに、父親から冷たい仕打を受けて、それを誰にも打ち明けずにひとり健気に頑張っていた頃の氷河だろ。もう、オレ、滅茶苦茶にちやほやしてやりてえ・・・」
「うむ。負けん気が強そうなのに、時折見せるあの淋しそうな瞳がたまらんな。確か老師から頂いた砂糖菓子があった筈だが・・・」
狼狽する辰巳をよそに、まずはビジュアルを楽しむ3人である。


「あ、ほら、お前の兄弟たちだ。な、とりあえず中に入れ」
今日の辰巳は何か変だ、と氷河は思った。いつもより年を取って見えるし、屋敷の中に入れだとか安心しろだとか言う。聞きたいことは山ほどあるが、こいつがちゃんと、答えるだろうか。
黙ったまま睨みつけていると、辰巳がため息をついた。
「ああもう、埒が明かん」
そう言って辰巳が、氷河の腕を掴む。
(いけない。このまま俺まで捕まったら、みんなを探せなくなる!)
氷河は辰巳の手に力いっぱい噛みつくと、その手を振りほどいて外へと駆けだした。
追いつかれるのは目に見えているので、近くの植栽の陰に身を隠す。腰を落としたまま、裏口の方へと進んでゆく。
(なんなんだよ・・・)
城戸の屋敷には、一度入ったことがある。マーマを失ったあと、なんとか日本にたどり着いた日のことだ。マーマの死を告げても、あの男は顔色一つ変えなかった。そして俺は、他の兄弟達と共に、施設の方へと回されたんだ。
気が付いたら、広い庭に立っていた。なじみの木はあるのに、兄弟の姿も、施設の建物も見つからない。みんな、どこに連れて行かれたんだ。辰巳の奴、何か説明をするとか言ってたけど、今度は何をする気なんだ・・・。
足音が聞こえて、氷河は身を潜めた。
辰巳ではなくて、さっきの若いお兄さんたちが、玄関から出てきてキョロキョロとあたりを見回している。
(兄弟たち・・・とか言ってたな。もう、何人兄弟がいるんだよぉ・・・)
どうやって子供が生まれてくるかはわからなくても、100人越えに凹む氷河である。年齢層が広がったことで、その他にも兄弟だという人たちが無限に沸いて出てくるような気がする。普通、兄弟はそんなにいないはずだ。
かたかたと身体が震えるのを感じて、氷河は両手で自分の体を抱きかかえた。真冬だというのに、着ているのはぶかぶかのTシャツ1枚だ。ズボンは足に絡まるだけなので脱ぎ捨てた。靴もない。でもズボンの上についていたオレンジのフワフワしたやつは、あったかいので足にはめた。ロシアにいた頃の寒さよりましだが、さすがにこの格好では、肩も太腿もすーすーして、寒くてたまらない。
「ハクションっ」
思わずくしゃみをしてしまったところで、赤いTシャツのお兄さんと目が合った。まんまるな優しい目でにこっと笑われたけれど、立ち上がって逃げた。
「氷河ぁ、大丈夫だ。一緒にケーキでも喰おうぜ」
のんびりとした声が聞こえてくる。
(なんだよ、ケーキって、そんなの、ここで食べたことなんて・・・)
門の方に向かって夢中で走っていると、ふいに目の前に人影が現れた。
「あ!」
足元の芝生は微妙に傾斜していて、止まろうと思っても加速がついていてうまく止まれない。足をもつれさせた氷河は、ゆっくりとしゃがんだその人の胸に抱きとめられた。後ろから、赤いTシャツの人が駆けてくる。その後ろからも、二人。
(つかまっちゃった・・・)
ぎゅっと目を閉じたところで、低い声が聞こえた。
「あいつらに、追われているのか?」
見上げると怖い顔がじっとこっちを見ている。この人より、赤いTシャツのお兄さん達の方が優しそうだけど・・・でも・・・。氷河は覚悟を決めて頷いた。
「よし、力を貸してやる」
男は氷河を抱き上げると軽々と走り始めた。
「あ! ずるいぞ、一輝!!」
「にいさん!」
男の駆け足は、速いなどというレベルを超えている。一度地面を蹴るだけで、景色がびゅうと流れる。風が顔にあたって苦しいので、氷河は男の胸に顔を押し付けてぎゅっとしがみついた。赤いTシャツのお兄さんも、同じくらいのスピードで追いかけてくる。
走りながら男の人は笑っている。笑ったまま、ひときわ高くジャンプして広大な敷地を巡る高い塀の上に飛び乗った。
「どこへ行きたい?」
そう聞かれて、氷河は口ごもった。
城戸の屋敷なんてまっぴらだ。
でも、兄弟達を放っておくわけにもいかない。
「施設の子を探してるんだ。建物も、子どもも、急にみんないなくなっちゃった」
「わかった。作戦を立ててから、またここへ戻ろう」

まわされていた腕が、強く氷河を抱きしめた。
景色がぐらぐらしたので目を閉じる。
再び目を開くと、そこは部屋の中だった。

「・・・・・・あなたは、聖闘士なの?」
さっきから思っていたことを、氷河は恐る恐る口にした。
「何故そう思う?」
「あんなに速く走ったり、ジャンプしたり、こんな風に、場所が変わったり・・・。普通の人間には出来ないすごいことが出来るのは聖闘士だけだって聞いたから」
「聖闘士だけかどうかは知らないが、まぁ、俺は聖闘士だ」
「へぇ・・・」
澄んだ空色の瞳が、キラキラと一輝をみつめた。
氷河からそんな目でみつめられるのは初めてなので、思わず口元がニヤける。
「あの赤いTシャツのお兄さんも?」
「ああ」
控えめにドアをノックする音が聞こえて、一輝は立ち上がった。
「至急、子供用の服を買ってきて貰いたい。背丈は・・・あのくらいだ」
照れくささをごまかすように、一輝は眉間にしわを寄せた。
変わった指令ではある。しかし主は困った人間を放っては置けないたちなのだ。指令は一輝が思う程には珍しいものではなかった。
「御意」
ブラックドラゴンは、部屋に立っている子供の姿を一瞥すると、その場を後にした。

「座れ」
一輝が促すと、氷河はL字型のソファの一角に腰をかけた。
「施設の子どもを探していると言ったな」
氷河は息を詰めてこくんと頷いた。
「俺、今あの屋敷にある施設で暮らしているんです。そこには俺の他にも100人くらい子どもがいる筈なんですけど、知りませんか? 気が付いたら誰もいなくなっていて・・・。どこに行ったのか、早く見つけないと」
「だったら屋敷の人間に聞けばいいんじゃないのか?」
そう言うと氷河は瞳を曇らせて首を振った。
「本当のことが知りたいんだ。あいつらはいつも勝手にものを決めて好き勝手するけど、だまされるの、イヤなんだ。他の子たちが、辛い目にあうのもイヤだ・・・」
「そんなに信用ならん奴らなのか?」
「・・・うん」
「だが、お前もそいつらの厄介になっているんだろう?」
そう言うと氷河はキッとして、鋭い視線を向けた。ああ、こいつは、確かに氷河だと一輝は思った。
「やらなきゃいけないことがあるから、今はあそこにいる。でも、いつまでもあんな奴らの世話になんてなるもんか」
小宇宙こそ感じられないものの、小さな体からふつふつと怒りが沸きあがる。
「・・・お前、聖闘士になりたいんだろう?」
ずっと胸に秘めていた思いを当てられて、氷河は目を見開いた。
「俺は聖闘士だからな。このまま俺の元で修行するという手もある。それならあんな奴らの世話になる必要もない。屋敷を抜け出してきたんだ、今のお前は自由だ」
氷河は丸い瞳をぱちぱちと数回しばたたいた。
「・・・みんなをみつけたら。そしたら考える。・・・あなたがどれだけすごい聖闘士か、見せてもらってから考える」
形の良い唇が、生意気そうに笑った。

ブラックアンドロメダが用意してくれた昼食をとる。ご丁寧にウインナーがたこの形にしてあって辟易する。自分の皿にまで並べられたそれをフォークに突き刺したまま一輝は手を止めた。
(こんなもん、どこで覚えたんだ・・・?)
だがもしかしたら氷河だけは、そんなものを食べたことがあるのかもしれない。ロシアにたこのウインナーはないだろうが、母親が懸命に拵えたそんなものを。
ブラックドラゴンは周到に2着の服を買ってきた。デニムにパーカーというカジュアルなものと、どこぞの御曹司かというようなジャケットと半ズボン。
「ウィーン少年合唱団みたい・・・」
ブラックアンドロメダは執拗に御曹司スタイルにこだわったが、本人はパーカーを選んだ。これから城戸邸に乗り込んで行くことを思えば、確かにそれが正解だろう。
「行くか」
身支度を整えると、一輝は立ち上がった。

「・・・あの、今度は、ワープみたいなの、しないの?」
一輝の後ろを追いかけるように歩きながら、氷河は尋ねた。
城戸邸からさっきの部屋がどれだけ離れているのかはわからない。でも、こっちは急いでいるのに、この人はまるっきり、散歩でも楽しんでいるみたいだ。
「少し、話さなくてはならないことがある。あっちだと落ち着かないからな」
一輝は横手の公園へと入ってゆき、ジャングルジムに寄りかかった。
「さっき、屋敷にいた赤いTシャツの、あいつも聖闘士だと言ったろう」
「・・・うん」
「あいつも、俺も、あの屋敷の施設で育った。施設で一年身体を鍛えてから、本格的に聖闘士の修行を積んだんだ。俺は、屋敷の主が大嫌いで、そいつが自分の父親だと知ったとき、殺してやろうと思った。・・・・・・だが、その男にも男なりの信念があったんだそうだ」
ハッとした顔で、氷河がまっすぐに見上げてくる。
その蒼い瞳から、一輝は目を逸らした。
「地上を護るために、自分の子を聖闘士にすることに決めたという話だ。どこまで本当かは知らんがな」
今はもう、城戸に対して憎しみは抱いていない。しかし、もろ手をあげて父を信じるには、子どもの頃に負った傷跡が生々しすぎた。
一輝の言葉を氷河は静かに聞いていたが、やがて神妙な面持ちで口を開いた。
「・・・本当だと思う。マーマは本当のことしか言わないもの。父さんは愛と平和を愛する人なんだって言ってた」
「ふうん」
どこか晴れ晴れとした表情を浮かべる氷河に、一輝は苛立ちを覚えた。
「でも、やり方はひどいな。どうやってあの人を受け入れていったらいいかわかんないや」
ジャングルジムに手を掛けて、氷河はよじ登った。
「城戸があなたの父親だってことは、あなたは俺の兄さんなんだな」
「まあな」
「施設のみんなを、見たことある?・・・みんな、どこ行っちゃったんだろう?」
「そこが面倒なとこなんだが」
「え?」
「さっきの赤い服の奴な、星矢だ」
「え?」
「後ろにいたのが、瞬と紫龍」
「え?」
「つまり、俺たちはそれぞれ修行を積んで聖闘士になった。氷河、お前もだ。だがまぁ、ちょっとした事情があってお前だけ7歳に逆戻りした。まぁ、あれだ、深く考えるな。じき元に戻る」
「????」
「とりあえず、屋敷に戻ろう。みんなお前と話したくてうずうずしている」
そう言うとジャングルジムのてっぺんにしゃがんでいる氷河に手を伸ばした。
「・・・・・・あっ!」
「?」
「一輝って言ってた!!」
「・・・」
「一輝って、あの一輝なのか??」
「まぁ、そうだな」
目を逸らす一輝の首に、氷河がとびついた。
「あ、おい」
慌てて体勢を整えながら、一輝は細い躰を抱きしめた。柔らかな金色の髪がくすぐったい。
「瞬も一輝も、無事だったんだ!!」


マホガニー製のテーブルの上に置かれた、薄い磁器のティーセットが、さっきからカタカタと揺れている。
ま、凍りつかないだけましかと思いながら、瞬は立ち上がって窓の外を眺めた。
「すぐに戻ってくるはずですから」
言うそばから、一輝の小宇宙を感じた。と、同時に、室温が下がる。瞬はカーデガンの襟元を合わせながら、このツケはあとで何倍にもして返してもらおうと胸に誓った。
しばらくして、ゆったりと歩く一輝と、機嫌良さげにその横を走る金髪の子どもが目に入る。
「あ、服着せたんだ」
ギンッと鋭い視線を受けて、瞬は苦笑した。
「あ、いえ、さっきまでぶかぶかのTシャツ1枚でしたから」
二階の部屋からは、芝生を歩いてゆく二人の姿がよく見える。
ドアへと向きを変えたカミュの前に立って、瞬は制止した。
「もう少し、時間を頂けませんか。あそこに、僕らのいた施設があったんです。氷河は、まだ貴方と出会う前みたいだったし、とても、混乱していると思うから」
カミュは小さく息を吐くと、ドアに背を向け、窓をみつめた。
氷河は確かめるように、芝生をちょこちょこと走り廻り、欅の大木の前で立ち止まった。


「この木・・・」
「覚えてるか?」
氷河が一輝の手を取って眺めた。
「聖闘士になったんだな」
「ああ、お前もだ」
「岩や・・・・・・氷を、この手で砕くことが出来る?」
「ああ」
「俺も?」
「シベリアの分厚い氷を砕いて、普通の人間じゃ触れることも出来ないような冷たい海に潜ってお前は母親に会いに行く。母親は静かに船室で眠っていて、お前はそこに、毎日花を届けるんだ」
蒼い瞳が見開かれて、ポタポタと滴が零れ落ちた。
「マーマは、花が好きだから」
それだけのために。こいつは命がけで聖闘士になった。デスクイーン島は地獄だと言われたが、聖闘士の修行なんて、どれも似たり寄ったりだ。あの極寒の地で、生きて行くだけでも大変なことだったろう。
「よく、頑張ったな」
「・・・・・・うん」
元の姿に戻れば忘れるんだから、これくらい言っても差障りはないだろう。
俯いて涙を隠している金色の頭を、一輝はくしゃくしゃとかき混ぜた。


「兄さんは、子供の頃から本当に優しくて、男らしくて、頼れる人だったんです。デスクイーン島で憎しみを植え付けられたために、僕らと戦って。特に氷河には幻魔拳をかけて、マーマが腐乱する映像を見せたり、体が動かないのをいいことに、師匠の貴方にはとても言えないあんなことやこんなことをしたりしたせいで、内心はどうあれ今じゃすっかり嫌われちゃっていますけど、子供の頃の氷河にしてみたら、本当に信じられる存在だったのだと思います。弟の僕にだけじゃなくて、兄さんはみんなに優しかったから。あ、こっちにくるみたいですよ」
き、聞き捨てならんことしか言っていない。
カミュは小刻みに震えながら、かろうじてクールを保った。
ドアを開けて、瞬はどうぞと微笑んでいる。
今のことは、いずれじっくりと本人に問いただすこととして。
カミュは瞬に先に行くようにと促した。
瞬はカミュに会釈すると、軽やかに階段を駆け下りて行った。
私の知らない、彼等だけが知っている氷河。
私を知らない、彼等だけを知っている氷河。
階段の手すりに手を置いて、カミュは紅い絨毯の敷き詰められた入口の広間を見おろした。
「あ~、戻ってきた!!」
駆け寄った星矢の顔を、氷河はじっと見つめた。
「星矢! 紫龍! 瞬! みんな、生きていたんだな!」
「あったりまえだろ!」
氷河の目線の高さにしゃがんだ星矢が勢いよく氷河の首に腕をまわした。
「邪武や、蛮たちも元気にしているぜ」
「みんな聖闘士になったのか?」
「そうだ。それで今は沙織お嬢さんと一緒に頑張ってる」
氷河の顔が微妙に歪むのを見て、星矢は豪快に笑った。
「大丈夫。今は馬にはされてない。邪武はまぁ、あれだけどな」

「私闘を繰り広げる者たちを処刑せよ」
指先を離れていった封書の冷たさを思い出して、カミュは背を向けた。


「数年前、そこでくじ引きをした」
窓の外をみつめたまま、カミュは振り向かなかった。
「俺は最悪のデスクイーン島で、あいつはあんたのいるシベリアだ。だから自分はくじ運がいいと、あいつはいつも俺に自慢をする。あいつがうじうじと母親を慕うのは歪んでいると俺も思う。だが、憎しみに駆られてすべてを葬ろうとするのとは、較べることすらできん。俺も、奴はくじ運が良かったと思う」
小さな拳を握りしめて。
くじ引きの順番を待っている緊張した氷河の面持ちは容易に想像ができた。
母親のことをひたすら念じて、シベリアに来たいと願っていたことだろう。
果たしてそれが良いことだったのか。
むしろより過酷な運命を、担うことになったのではないのか。
そう思いつつ、幻のように見える氷河の小さな手が、シベリアを引き当てるようにとカミュも願った。


「ほら、氷河の先生だよ」
瞬の声がして、カミュは振り返った。
あのときよりやや幼いが、やっぱり氷河はおんなじように顎を引いて、緊張を隠しきれない様子でカミュを見上げた。
「カミュだ」
「カミュ・・・せんせい・・・」
右手を差し出すと、氷河はおずおずとそれに応えた。
だが手が触れた途端愛しさがこみ上げて、その手を引いて抱き寄せた。

ぽわん。

漫画のようにもやもやと視界がかすんで、氷河は元に戻った。
サイズの合わない子供服が、びりびりに破けているのもお約束である。
「え? あれ? なに?」
気が付けば裸のまま我が師に抱きしめられている。
それはいいけど、ギャラリーがいる。
「なぁ~んだ、もう、戻っちまったのか」
「もうちょっと見ていたかったね」
口々に呟きながら、星矢たちは部屋の入り口から去っていった。
「フ・・・」
一瞬だけ向けられた愉快そうな一輝の瞳が、妙に気になる氷河である。



※テロメアって、体が変化するだけでもとの記憶は残ってるみたいですが、ここでは記憶なしとさせていただきました。何でもいいから、逆行させたかったんです(汗)。相変わらず幼児化大好き。


追記を閉じる▲

いつもPCの傍らに「聖闘士星矢大全」があります。
先日オットに見つかって「あ、コレ・・・。」(ちなみにオットも読破済み。LC読むとき便利だったようです。)
「うん、ちょっと調べたいことあって・・・。」
「普通の主婦はこの本で調べたいことなんかないんだぞ!」

・・・いや、あるんだよ。毎日のように!!!
あの人とこの人の体重差とか。
マニアックな誕生日がパスワードだったときとか・・・。

などと言えずに薄ら笑いです。

あまりに更新できないので、なんとなく思いついて先日書いたテロメア番外編を。
時間的には、前回の話のすぐ後です。
氷河出てきませんが・・・ま、5月だからいいかな・・・?


拍手[14回]



 
パエリアをたらふく食べたミロは、そのままソファーに転がって、くうくうと寝息をたてはじめた。
クッションを抱きしめて丸くなる姿は、大きな子犬のようでもある。
「おい、寝るんなら部屋戻って寝ろよ。」
「んー。」
返事はしたものの、目を開ける気配はない。
やれやれとため息をついて、アフロディーテは立ち上がり毛布を掛けてやった。
 
優しげなその表情は、振り返ったときには一変していた。
デスマスクがワインを注ぐと、グラスを持ち上げ一息に赤い液体を飲み干す。
 
「まっぴらだな。過去を晒されるなんて。」
 
そう呟くと、三人は一様に苦い顔をした。
 
「あれだな。共同戦線だ。このうちの誰かがおかしくなったら、残りが全力でかくまう。24時間押し込んで誰にも見せねぇ。」
「それしかないだろうな。だが、いつどこでなるかわからん。」
「なんかあったら他の二人のところへ行くようにと、何かに書いて持っとくことだな。おい、紙貸せよ。思い立ったら書いとこうぜ。」
デスマスクは差し出した紙に、さらさらと文字を書きつけた。
 
「カプリコーン、ピスケスの元へ行け。」
それから少しペンをとめ書き足した。
「俺達は負けたが聖戦には勝った。24時間、元に戻るまで誰とも喋るな。」
書いてからそれをくるくると丸めてポケットに突っ込んだ。
「袋かなんかに入れて首から下げときゃどうにかなるだろ。」
 
二人もそれに習う。
 
「今度のように、三人まとめて、なんてことあるか。」
至極平和な顔で眠るミロを眺めながら、シュラが呟いた。
デスマスクは口の端を吊り上げて両手をあげた。
「そうなったらもう、諦めるしかねえな。」
 
 
明け方近く、ミロが元に戻ったのを契機に別れた。
目を覚ましたミロは呆気に取られた顔をして、今にも千切れそうになりながら、なんとかまとわりついている服をながめた。
 
「宝瓶宮には氷河か。」
そう呟く。
シュラが投げた服に着替えると、こっちもキツイと呻いた。
「14才3人で楽しそうだったぞ。」
「3人?」
「君と、氷河と、カミュだ。」
ミロは目を丸くして、それからゲラゲラと笑った。
「なんだよ。あいつもか。なんにも覚えてなくてつまんないな。」
 
 
宝瓶宮にさしかかると、元に戻ったカミュが立っていた。
 
「色々と迷惑をかけたようだな。」
少し顔を赤くして言った。
「あの服、駄目にしてしまった。」
「いいよ。なかなか似合っていたけどな。さっき、ミロが元に戻った。」
「そうか。」
 
瞳の色は変わらない。
ミロもカミュも。
過酷な事実を乗り越えてきたとしても、己に恥じるものは何もない。
いや、私とて恥じているわけではない。
だが。
 
アフロディーテは部屋にもどり、ポケットの紙片をとりだすと、書き加えた。
 
彼は光に戻った。
彼は私のものではない。
 
銀細工のロケットにそれを挟むと首から下げる。
ため息をひとつついて、アフロディーテは立ち上がった。
 
明るみ始めた空に、まだ星が残っている。
その中を、アフロディーテは一人歩いた。
 
ここに咲くのはすべて毒薔薇だ。
私と彼以外を寄せ付けぬための。
 
あれから、ここを訪ねたことなどない。
だが、時を巻き戻したら、私は間違いなくここに来るだろう。
あの頃はそれだけ足しげく、この場所を訪ねていたのだから。
 
小さな洞穴に、脇道がある。
その道をゆくとがらんとひらけた空間があって、さらに奥深く道が続く。
あの時揺らめいていた蝋燭の光を思い出す。
狂乱の声が聞こえてくる気がして、アフロディーテは思わず眉を顰めた。
天然の壁に指を這わせながら進んでゆく。
と、いくらも歩かぬうち、道は途絶えた。
反対側から、突き崩された跡。
湿った土の匂いがして、ごく最近それがなされたことが知れた。
 
先を越されたな。
 
アフロディーテは僅かに唇の端をあげると、岩肌に背を預けた。
 
 
**********
 
 
「今日はな、誘いに来た。」
教皇の間に珍しく現れたデスマスクは、大理石の机に片手をついて言った。
書類に目を落としていたサガが、顔を上げる。
「例のクロノスさんのいたずらだよ。俺たちもあんたも後ろ暗いところがあるからな。いざってときにはかばい合おうってことになった。保険はいくつあってもいい。あんたを誘いに来た。」
サガは黙っている。黙ったまま、デスマスクを見つめ、やがて目を伏せた。
「一人で閉じこもろうとか考えてっと、また爆発すんぞ。」
「う・・・。」
「何も考えずに、正面の階段を降りて来い。と、あいつからの伝言だ。」
 
 
 


追記を閉じる▲