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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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すべて書き尽くされたネタだと思いますが、ただ書きたかったのです。
完全に自己満足の世界です。

黄金復活設定。
氷河たち5人は、日本で学生生活を送りながら、時折聖域で修業しています。

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先生が来る!  その1



「来月の24日、童虎とカミュがこちらに来ることになりました。公務の合間なので、一泊二日という短い期間なのですが、楽しく過ごしていただきたいと思います。」
朝食の席で女神からこの話を聞いたとき、氷河は「わっ!」と子供じみた歓声をあげた後、赤面してうつむいた。
日本に住んでいる現在でも、時々は聖域やシベリアで会っているのだから、それ程喜ぶことはあるまい。
けれど師のもとを訪れるのと、自分の住んでいる日本に招くのとでは違うのだと、本人は熱く語るのだった。
しかし何故童虎とカミュなのか。
「老師・・・いえ、童虎についてなのですが、聖域でも彼を261歳と扱えばよいのか20歳と扱えばよいのか、正直戸惑っているのです。261歳でしたら、一人で公務というのもなんですし・・・。でもお供をつけるというのも彼のプライドが傷つくでしょう?そんな訳で、日本に弟子のいる二人を派遣するというのが、一番無難な方法でした。」
と、これが弟子二人のいないところで女神がぶっちゃけた真相だった。
 
老師はいらっしゃるのに、春麗はこないのだなと紫龍は思った。
もうしばらく会っていない。今は老師も五老峰に坐しているばかりではないし、さみしくしてはいないだろうか・・・。
そう思いに耽る紫龍の肩を、氷河がぽんと叩いた。
「俺たち二人の師がみえるのだからな、精一杯歓迎しようぜ☆」
その日から城戸邸の掃除は、彼ら二人が受け持つことになった。
師を招く以上は、部屋は心地よく磨き上げられていなければならないという氷河の発案だったが、この意見は紫龍の意見と至極一致した。そんな訳で学校前の早朝、修行時代よろしくせっせと雑巾がけをする二人の姿が見られることとなったのだった。
「掃除はまぁいいとして、紫龍は老師をどこかへご案内するのか?」
「いや、まだ決めていない。公務の合間ということはお疲れもあるだろうし、城戸邸の庭を見ていただくというのでもいいのではないかという気がしている。」
「そうか。確かに公務の合間だものな。近場だと、動物園くらいか。」
氷河は師匠にも白熊を見せたいのか、それとも師弟そろって白熊好きなのかと考えながらも、紫龍は声に出して突っ込むのをやめにした。
「あとは食事だな。・・・俺、日本食はあまり作ったことがないな。」
親指の爪を噛みながら、氷河は真面目に思案している。
紫龍は日本食どころか、料理自体全くしたことがない。五老峰ではいつも春麗が作ってくれたし、城戸邸には専属のシェフがいる。氷河にしたところで日本で料理するところなど見たこともないが、修行時代は弟子として食事の支度もしていたということなのだろう。
「食事は、いつものように城戸のスタッフに任せたらどうだろう。」
いささかの自信もない紫龍はそう言った。
「そうだな。しかし、何か一品くらいは作って差し上げたいな。」
呟くようにそう言って、氷河はどこから入手したのか、料理本をパラパラとめくった。
「瞬に教えて貰おうかな・・・。」
と、その本人が、女神とともに大荷物を抱えて戻ってきた。
「24日さ、皆で花火しようよ。でね、その時はちょっと趣向をこらそうかと思って・・・。」
 


来月なんてずい分先だと思っていたのに、あっという間にその日は来た。
いつも通り5時に起きて弟子二人は雑巾がけを始める。
いつもより一層丁寧に、心を込めて・・・。
しかし氷河の様子がいつもと違う。
すぐに息が上がり、よく見れば頬も赤く上気している。
「氷河、お前・・・。」
「何でもない。」
遮るように言い放った氷河を捕まえて、額に手をあてる。案の定、それは火が付くように熱かった。
「大丈夫だから、気付かなかったことにしてくれないか?」
蒼い瞳は涙をたたえていて、紫龍は一瞬たじろいだ。
「カミュが来るのは11時だろう。それまで休んでいれば、熱も下がるかもしれない。」
そう説得して無理やりベッドに押し込むと、本当は余程辛かったのか、病人はフウフウと荒い息をしながら眠り込んだ。
「何だあいつ。遠足で熱を出す子供か。」
目玉焼きをつつきながら、一輝は容赦なく鼻で笑った。
この一か月、別人かと思う程いそいそと準備を進めてきたのに。
それを思うと、かわいそうだけれどちょっと笑ってしまう一同である。
「でも氷河がいなかったら、誰がカミュを接待するの?」
瞬のその言葉に、一同は黙り込んだ。
アクエリアスのカミュ。
氷河から散々名前を聞かされているので、いい人というイメージは漠然と抱いているのだが、その実彼が笑ったところは見たことがない。
クールを信条とし、弟子の氷河を氷の棺に閉じ込めた人。
「氷河の熱・・・下がるといいね。」
瞬の一言に、一同は深く頷いた。
 
約束の時間より少し早く二人は現れた。
童虎は紫龍と同じような、緑の中華服を着ている。自分たちの兄といってもおかしくないその様相には、いまだに違和感を覚えずにはいられない。
けれどもその明るく温かな人柄は、すぐにその場の空気を和ませた。
「女神、お招きいただきまして、ありがとうございます。紫龍、久しぶりじゃの。」
その童虎の後ろに佇むのは、茶系のシックな服装に身を包んだ長身の男。
聖衣を纏っているときも美しいとは思っていたけれど、シンプルな服を着ている分、その美貌は際立って見える。
片膝をついて女神に礼を述べる姿は洗練されていて、思わず息を飲むほどだった。
と、そこへ。
「あ!ダメだよ、氷河っ!」という瞬の声と、バタバタという足音が響いた。
カミュはすっと頭をあげ、赤い絨毯の敷かれた階段を見上げた。
久しぶりに会う愛弟子は何故かパジャマのままであり、額には何やら白いものがペタリと貼られている。
「我が師カミュ・・・!」
聖域での再会よろしく、氷河はよろよろと膝をついた。その顔は赤く、目はうるんでいる。その姿に幼い頃がダブって、カミュは思わず笑みをこぼした。
「お前、熱があるのか?」
氷河はコクリと頷くと、その瞳からはポタポタと涙がこぼれた。
「折角来てくださったのに・・・。色々とご案内しようと思っていたのに・・・。」
カミュはしゃがんで両方の手で頬を包むようにして氷河の蒼い瞳を覗き込んだ。
「それは構わない。私はお前に会いに来たのだから。それより、まだ寝ていた方がよいな。部屋はどこだ。」
真顔できっぱりとそれだけ言って、カミュは氷河を抱きあげた。
氷河は大人しくそれに従い、何やら指を指しながら二階に運ばれていった。
「あの氷河がお姫様抱っこ?!」
一同は信じられないものを見るように呆然と見送った。
 


氷河が目を覚ますと、もう夕暮れが近かった。
感じるのは親しみのある師の小宇宙。
おでこの冷えピタは剥がされ、カミュの手がかざされている。
幼い頃、よく熱を出した。
その時もこうやって、先生が介抱してくれた。
熱が出たときはいつも怖い夢を見て、マーマのいない淋しさに飲まれそうになった。そのときも先生がそばにいて、静かな小宇宙で心を満たしてくれたのだった。
「熱は下がったようだな。」
「はい、ご心配をおかけしました。公務の合間なのに、お世話をかけてしまって・・・。」
「腹が減っただろう?何か持ってくるか?」
「いえ、もう大丈夫ですから、皆と一緒に・・・。」
そう言って氷河は立ち上がった。熱が下がったせいか、体も軽く普段の調子に戻っている。
「あ!そうだ。瞬から言われていたんです。夕食は皆浴衣で、食事の後で花火をしようって。」
氷河はクローゼットに走り寄り、中から紙の包みを取り出した。
「浴衣?」
「日本の着物の・・・仲間みたいです。」
氷河が紙の包みを広げると、白地に藍で花の描かれた美しい布が現れた。
「ほう・・・。」とカミュは感嘆の声をもらす。
「先生のはこちらです。」
そう言って出されたのは、藍色の地に同じ花が白で描かれたもの。
「服を脱いで羽織ってみてください。帯は俺が締めますから。」
そう言って氷河は自分も服を脱いで、白いキモノを身に纏った。
「俺も着てみるのは初めてなんですけど、一応着方は習ったので・・・。」
愛弟子があまり器用でないのをカミュは知っていたが、浴衣などというのは未知の代物なので素直に従うしかない。
氷河の方はよく似合っている。
日本人から見たら、似合うというよりエキゾチックな感じがするのかもしれないが、自分の目には十分美しく見える。
というよりも。
ほっそりとした首筋が際立ち、合わせからのぞく鎖骨のラインが艶めかしく。
できることなら襟元に手を差し入れて、すべてをあらわにしてしまいたくなる。
(な、なんなのだ、この服・・・。)
そんなカミュの思いを知ってか知らずか、氷河は帯を手に持って歩み寄る。
「お待たせしました。」
緊張した面持ちでカミュの正面に立ち、襟を合わせる。それから少し屈んで腰のあたりで合わせた布を右手で抑えながら、肩にかけていた帯を後ろに回し、その端を掴むために、左手も抱きつくように腰に回した。
カミュは何となく目をそらす。そらしてからまた目を向ける。
氷河は他の何ものも目に入らぬという風に、無心で帯と格闘している。
 

その時、ノックの音がした。
「夕食の支度が出来たので、いかがかと思って。」
「あ!瞬、ちょっとタスケテ・・・」
そう言われて扉を開けた瞬は、再び扉を閉めて立ち去ろうかと思った。
鏡の方を向いているカミュは、浴衣を纏ってはいるもののほとんどはだけていて、引き締まった胸があらわになっている。
一方で氷河は膝をついてカミュの腰に手を回す格好。自身の浴衣もはだけて、投げ出されたふくらはぎが妙に艶めかしい。
「帯が、結べないんだ・・・。」
その一言でようやく瞬は我に返った。
よく見れば氷河は帯をまこうとしている。
カミュは弟子の言いつけどおり、おとなしく立っているのだろう。
「折角浴衣を合わせても、帯をまこうとすると浴衣がずれるんだ・・・。」
「氷河ってば、あんなに練習したじゃないか!
ずれるなら、ここをカミュに押さえていただけばいいんだよ。」
「あ・・・」と言ってカミュは顔を赤くした。
さっきから氷河は二本の手では足りないというように、脇腹のあたりに頭を押し付けたり顎を押し付けたりしていた。
一体何の真似だろうかと妙なことばかり考えてしまったが、冷静に考えれば、ただはだけてくる布地を押さえたい一心だったのだ。
だったらそうと言えばいいものを・・・。
やや八つ当たり気味に、カミュはそう思った。
「僕がお手伝いします。氷河、君のも直さないと駄目だからね。」
師の前でいいとこなしの氷河は、少し不服そうに頷いた。
瞬の手にかかると、あっという間に着付けは終わった。
先ほどの乱れた着こなしも悪くはないが、やはりこちらの方がこざっぱりして目にも心地いい・・・と、愛弟子の姿を見ながらカミュは思った。
そんなカミュを弟子は弟子で、ぽーっとして見つめている。
「きれいです。先生。」
カミュは別段喜ぶ風でもなく、慣れたように黙って聞き流していた。
 


城戸邸の広い庭で、一同は童心にかえって花火を楽しんだ。
カミュにとっても生まれて初めて手にする花火であり、その儚い美しさに魅了されて、幾本も手にとっては火をともした。
カミュの手にする花火に、氷河が新しいのを近づけると、炎が移って勢いよくもう一つの花が咲いた。
並んでその様子を眺めながらカミュが口を開いた。
「熱を出すなんて、クールでいないからいけないのだ。」
「はい、すみません、先生。」
 
その会話を聞きかじった一輝が呟く。
「あいつらのどこがどうクールなんだ。」
「やめよう、兄さん。あの人たちから、クールという建前を奪ってはいけない。」
妙に大人びた口調でそう言って、瞬はノンアルコールビールを飲み干した。
 


 


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