忍者ブログ
☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


お洒落デートなんて、したことないんですよ。
だからきっと甘々話が書けないんです。

でも、ない力を振り絞って、カミュ・氷。


拍手[13回]

PR



少し早く、約束の場所に氷河はついた。
今日の午後女神が聖域に戻るので、カミュはその護衛のために日本に来た。
女神の元へは3時までに行けばいい。
それまでの4時間は二人で過ごせる。
 
都内の広い庭園。
混雑した駅前より、返ってわかりやすいだろうとその場所を選んだ。
木々は、もう春の準備をしている。
枝の先に萌す小さな新芽を見上げながら、氷河は小さく笑みをこぼした。
 
「待たせたな。」
ふいに、カミュの気配を身近に感じた。
ぼんやりしているところを見られてしまったと、氷河は顔を赤くして振り返った。
「いえ、まだ時間には早いです。」
お互い早く来てしまったんだなと、カミュは唇に笑みを浮かべた。
 
こんな風に公園を歩くなんて、初めてのことだ。
しかも先生と。
ギリシャの気候にはだいぶ慣れたけれど、それでもやっぱり不思議な気がする。
雪のない道を、先生と歩いている。
でも、先生はフランスで生まれたと言っていたから、雪のない景色の方がもしかしたらなじみ深いのだろうか。
革靴の底が、静かに地面を蹴っている。
知らないことが、沢山ある。
 
カミュは立ち止まって振り返ると、片手を差し出した。
訳もなく胸がきゅっとなるのを感じながら、氷河はそこに自分の手を乗せた。
やや肌寒い今日は、公園にもあまり人がいない。
こうしているとどこまでも甘えたくなってしまう。
抱きしめてほしいと、いつも思う。
修行時代にさえ。
組み手をしたり、跳びかかったり。
怪我をして小屋まで運んでもらったり。
そんなことはしょっちゅうあった。
だけど、そう言うんではなくて。
先生の腕に包まれて、ずーっといられたら、どんなに安心するだろうと思う。
甘いんだな、俺は。
子供のままなんだ。
 
 
公園を望むレストランで昼食をとった。
ガレットというのを初めて食べた。
「これ、フランスの料理なんですよね?」
「そうだな。こんなに豪華に具材が乗ったのは食べたことがないが。」
「そうなんですか?」
「ああ、私は・・・ということだが。今度一緒に作ってみようか?」
「はい。」
メニューを見た限りでは薄っぺらいと思ったのに、食べてみると意外とお腹がいっぱいになった。
「あ、会計は俺が。折角日本に来て下さったし、あの・・・、バレンタインデーだし。」
「では、氷河に甘えようか。」
支払いをしながらちらりと席に目をやると、カミュが窓の外を眺めていた。
やっぱり何か用意してきた方がよかったろうか。
美味しかったけど、満足して頂けたろうか。
「お客様?」
「あ」
差し出されたお釣りを受け取って、慌てて財布の中に押し込んだ。
 
 
城戸沙織として女神が参加している会食へは、紫龍が同行している。
その会場へと、二人は向かった。
「まだ時間があるな。」
大通りを歩きながら、カミュはそう言うと、喫茶店に目をやった。
紅茶が美味しそうな落ち着いた店。
店員は奥の小さな部屋を案内してくれた。
「選んでいてくれ。」
カミュはメニューを手渡すと、席を外した。
ケーキの選択は難しい。
ひとつ頼んでも、いざとなると別の方がよかったような気になる。
氷河はメニューとにらめっこして、フォンダンショコラにしようと決めた。
 
ふと。
花の匂いがかすめる。
顔を上げるとカミュが、真っ赤な薔薇の花束を持って立っていた。
・・・え?・・・あ、沙織さん?
「バレンタインデーだからな。氷河。」
・・・え?
氷河は慌てて立ち上がった。
ぎこちなく差し出した両手に、花束がのせられる。
「これを、俺に?」
「そうだ。お前に。」
シベリアではいつも、隠れるようにして花を買っていた。
村の薪割りを手伝ったりして、ごくたまに貰らえるわずかなお金。
それはいつも一輪の花になった。
それを見るとカミュは、咎めるような悲しそうな顔をした。
けれども口に出して何かを言わないのをいいことに、俺はいつまでも花を買うのをやめなかった。
「あの・・・。」
「ん・・・?」
唇がわずかに開いたものの、言葉が出てこない。
カミュの手がそっと、頭にふれた。
優しくなでるように耳の脇を滑らすと、肩に置かれた。
 
「強くなったから、もう大丈夫だろう?」
 
先生のきれいな瞳が、覗き込むようにじっとこっちを見ている。
うつむくと同じように、深い赤を湛えた薔薇が、目に入った。
 
「・・・いいんでしょうか?」
「?」
「貴方のことを好きになっても?」
 
「ああ、そうならば私も嬉しい。」
 
引き寄せられた胸の中に、氷河は頭を預けてみた。
 
 


追記を閉じる▲

カミュ先生!!お誕生日おめでとうございます!!

氷河は「カミュ」とか「我が師カミュ」って呼ぶんだけど、私は「せんせい」という響きが好きなので、あえてそう呼ばせて頂いております。

結局、これと言ってラブラブ話は書けなかったのですが、当人たちはどこかで激甘な時間を過ごしているに違いないと信じております。

子供と一緒に寝てしまい、今、むっくり起き上がって更新。
相当前から試行錯誤していた、修業時代のお話です。

憎悪の塊となった一輝を変えたのは氷河だけど、その氷河を育てたのはカミュだっていう。
しかも、14歳で~。
苦労しただろうねぇ・・・。

せんせ~!!
貴方がいなければ、あの純白で、甘えん坊で、一見クールで、頑張り屋さんの氷河はいませんでした。
ありがとう。
ありがとう。
そして、おめでとう。


拍手[17回]




白い翼


このところ氷河は、何かを思い悩んでいる。
母を喪った悲しみからいまだ立ち直れずにいるこの少年が、じっと唇を噛んでいるのは珍しいことではない。しかしそんなとき蒼い目は、一人記憶のうちに籠ろうかとするかのように伏せられているのが常だ。あるいはこの世にはない遠いところを、焦がれるようにじっと見つめている。
ここ数日の氷河の様子は、これとは少し違う。
時折、物言いたげにこちらをじっと見ている。
それでいて視線を返すと、驚いたように肩をすくませて目を伏せてしまうのだ。
気になりながらも、カミュは数日待った。
感情を殺すばかりではなく、自分から口にして現実を変えてゆくことを、この子も学ばねばならない。
そうはいっても、気持ちは焦れる。
それは勘のいいアイザックも同様のようで、所用のためコホーテク村へ出かけた帰り道、なんだかんだと理由をつけて、一人小屋へと走っていった。
 
キシキシと雪を踏みしめながら、二人は歩いてゆく。
足元だけをじっと見つめながら歩いていた氷河は、ふいに立ち止まって口を開いた。
「先生・・・聖闘士は、私闘を禁じられているんですよね?」
思いもよらぬ質問に、カミュは足を止め振り返ってまじまじと氷河をみつめた。
こちらを見上げる瞳は、救いを求めるように大きく見開かれている。
「ああ、そうだ。私闘は、禁じられている。」
その瞳の熱さに、答えきれているのだろうかと訝しみながら、カミュはただ事実を伝えた。
「・・・そうです。ここへ修行に来たとき、最初にそのことを教えていただきました。だけど、俺・・・、俺は・・・人を憎んだことがあるんです。」
恐ろしい事実を打ち明けるように、うつむいたままそう語った氷河は、唇をギュッと噛んで首を振った。
「いいえ、今でも憎んでいる。もし自分にその力があって、そいつと再び会ったなら、俺はそいつを、こ、こ・・・」
「殺すかもしれない?」
はじかれたように、氷河は頭を上げた。
怒りと憎しみに燃える瞳は、しかしすぐに涙で曇った。
 
この子の中にはこんな激しい感情もあったのかと、カミュは少なからず驚きを覚えた。
しかし今この子が恐れているものは、私闘を禁じる聖闘士の掟でも、憎んでいる相手でもなく、憎しみに翻弄されそうな自分自身だ。
小宇宙に目覚め、戦士としての自分の成長を自覚しているのかもしれない。
だからこそ、自分のうちにある憎しみが怖くなる。
そう思うと、カミュは氷河という少年に対する愛情を改めて感じずにはいられなかった。
 
「・・・何があった?」
尋ねると氷河は口を閉ざした。
迷うように瞳は揺れているが、唇は言葉を発しない。
その表情もまた、初めて見るものだった。
やがて氷河はがっくりと頭を垂れると、小さく呟くように言った。
「許せないんです・・・父を。」
 
それ以上のことを、氷河は語らなかった。
母親と二人で生きてきたこと。
母親を失って、ここに来たこと。
その事実からいくらかの推測はできる。
しかし、殺すかもしれない・・・とは。
 
大切なものを奪われた記憶なら、カミュにもある。
サガが消え、アイオロスが裏切り、ムウが行方をくらましたあの時。
ただしそれは憎しみとは別の感情で、今もまだひたひたと胸の内に燃えている。
もしも仲間たちが、目の前で殺されたとしたらどうだろう。
自分は、彼らのために敵を倒そうとするに違いない。
しかしそれは、憎しみとは違う。
自分たちの信念を貫き通すために戦うだけのことだ。
しかしもし、弟子達を殺されたのだとしたら・・・?
考えただけで、カッと胸の内が熱くなるのを感じて、カミュは自嘲した。そのとき、自分は初めて誰かを憎むのかもしれない。
 
「憎しみに駆られて誰かを殺したら、聖闘士でなくなるという以前に、自分が自分でなくなってしまうだろうな。」
氷河はじっとカミュの言葉を聞いている。
「お前には、お前でいてほしい。」
 
氷河はうつむいた。
それも含めてお前なのだと、そう言ってほしかったか?
 
カミュは氷河の前にしゃがむと、両の頬に流れている涙を親指でぬぐった。
「誰かを憎むというのは、そんなにも苦しいものか?」
「・・・・苦しい?」
「そう見えるが・・・?」
「苦しめてやりたいと思っているのに?」
氷河は固く結んでいた唇からフッと笑みをこぼした。
「苦しめるつもりで自分が苦しむなら、そんな感情は捨ててしまえ。」
言ってしまってから、カミュは自分の幼さを恥じた。
けれども他に取り繕う言葉などみつからない。
なんにせよ、そこから立ち直らなければならないというのは事実だ。
「・・・先生のもとでなら、それができるような気がします。」
まだ僅かに残る涙を輝かせたまま、氷河はカミュを見つめてきっぱりと言った。
 
ゆっくりでいい。
誇り高く生きて行こう。
 
カミュは立ち上がって、氷河の手をひいた。
 
空を渡るための翼なら、私が与えてやる。
 


追記を閉じる▲