みずにねむるゆめシベリア師弟

今日、弟子たちはよい子だった。
元々熱心なアイザックと負けず嫌いな氷河だから、いつだって修業は精一杯頑張っている。しかしそれ以外の部分でも、アイザックは苦手な野菜をいつもより多く食べたし、氷河は布巾を洗うのを忘れなかった。
すべてが女神のため・・・というのではなく、サンタクロースのためと思うと、少し複雑な気分である。
しかしいつもはなにやかにやと慌ただしい夜を思うと、きびきびと弟子たちが動いたことでもたらされた就寝前の穏やかなひとときは、カミュにとっても快適なものだった。
甘やかしすぎかもしれないが、クリスマスプレゼントは既に用意してある。
二人が寝静まってから、枕元に並べる算段だ。
暖炉の前で髪を乾かしながら、再度ダメ押しの手紙を書いていた氷河が、ふと顔をあげてカミュに言った。
「先生はサンタクロースに何お願いしたんでしたっけ？？」
？
そう言えばそんなことを、少し前にも聞かれた。
何か少し、心がざわついた。と思ったのも束の間、アイザックが言葉を継ぐ。
「馬鹿だな、氷河、忘れたのかよ。先生は新しいレッグウォーマーって言ってたろ？」
！
そうだ。そう言えば聞かれた。
その少し前に聖域からの手紙を受け取っていたカミュは、レッグウォーマーにしたらどうかという弟子たちの発言に、考え事をしたままそれもいいなと答えた記憶がある。あれは、もしも頼むなら・・・とか、子供だったなら・・・とか、そういう会話ではなかったのか。
「オレ、先生のお願いも書いておきますね」
「ありがとう・・・しかし私はもう子供ではないから、私の元へサンタクロースは訪れないだろうな」
「そんなことないです！！サンタクロースは優しい方ですし、先生は大人だけど、まだおじさんのようではないし・・・」
「・・・そうだろうか」
「そうですよ！オレたちのサンタクロースなら、絶対、先生の分も届けてくれます」
手紙を書き終えた氷河は、それをアイザックに見せた。二人は満足したように紙を床に置き、その前で手を組んで言った。
「サンタクロースさん、どうか、俺たちのところにも来てください。先生にもプレゼントを届けてください！！」
純真な子供たちの声が胸に痛い。
「さ、もう寝なさい」
「はい」
子どもたちは、少し名残惜しそうに、それでもわくわくと胸を躍らせながら寝室へと歩いて行った。

さて、どうすべきか。
やはりサンタクロースならば、心優しい子供の願いを無視することはないだろう。
私の分だけなかったと言ったときの、残念そうな弟子たちの顔が目に浮かぶ。
修業とは関係ない話だったとはいえ、きちんと会話を受け止めなかった数日前の自分の行動が悔やまれた。
しかし。
とりあえず頼んだのがレッグウォーマーでよかった。なんとなく考え事をしながらも、現実的なものを選びはしたのだ。腕時計などというアイザックの提案は、あれば便利だろうと思いつつも、却下した。
さて。
毛糸がない。
カミュは箪笥の引き出しから弟子たちが知らなそうな古いセーターを引っ張り出し、それをつらつらとほどき始めた。

寝落ちしそうになりながらも、何とかカミュはそれを仕上げた。水瓶座の黄金聖闘士にして、メリヤス編みとゴム編みの出来る男、それがカミュなのである。丈は少し短いかもしれないが、それくらいは勘弁して貰おう。

弟子たちの部屋に行く。
窓の下の方に紐が渡されており、いくつか鈴がかけてあった。
サンタクロースに対面する算段か。
小さく笑みを漏らしながら、手紙と引き換えにカミュはプレゼントを枕元に置いた。

部屋に戻り、ベッドに倒れ込む。

弟子たちの歓喜の声で起こされるのは、それから2時間後。
聖域にいる巻き毛のサンタからプレゼントが届くのは、5時間後のことだった。

追記を閉じる▲

【2012/12/25 (火) 00:05】 | シベリア師弟
トラックバック() | コメント(0)

page top↑

コメントを閉じる▲

先生の悩み

星矢ちゃんのお誕生日です。
おめでとう！！
相変わらずなにも・・・用意してませんけれども。

しかしです。
しかしですよ！！

皆様ご存知の、「寒いところで待ち合わせ」のゆいま様が星矢×氷河（にょた）を書いて下さいました～！！
脳に収まりきらない妄想を拾っていただいて嬉しい限りです。
ずばり直球の星矢ちゃんを書いて下さってありがとうございます！！
よかった・・・ブログやってて、本当によかった・・・。

本当に、萌え種沢山です♪
一人だと思いつかなくても、やり取りさせていただくと、あれもこれもとなるから不思議です。
私はひそかに老師のあれが気になっています・・・ゆいま様・・・。
そして、ゆいま様のにょた話を拝読して、どうしても書きたくなってしまった弟子の女体化に悩むカミュ先生の話。
もはや萌えでもなんでもなく、先生へのセクハラ以外のなんでもありません。

カッコいいカミュ先生が好きな方は読んじゃダメです！！
カミュ先生18歳なので、氷河いくつなんだよっていう話。
桃ではありませんが、展開上先生は若干変態寄りです。
ちゃんとしたカミュ×氷河（にょた）は、ゆいま様が書いて下さるのを待ちましょう。
先生の祟りなのか、うちの方では今日、雹が降りました。

それでもいいよという方だけどうぞ。

[27回]

その変化をカミュが知ったのは、一年ほど前のことだ。
寝ていたところを、半泣きの氷河に起こされた。
「先生、オレ、変なになっちゃった。どうしよう先生、オレ、変なになっちゃった・・・」
カミュは起き上がって枕元の明かりをつけると、パニックを起こしている氷河の肩にそっと手を置いた。
弟子たちを寝かせた後、指導の記録をつけた。それから今後の指導計画を立て、友に手紙を書き・・・ベッドに入ったのはほんの少し前のことだった。寝入りばなを起こされた苛立ちを押さえ、意図して穏やかな声を出す。
「どういうことか。落ち着いて話してみなさい」
オレンジの明かりの中で、カミュを見つめる氷河の顔は涙に濡れている。
ひっくひっくと幼げにしゃくりあげながら、言葉を繋いだ。
「さっき、急に目が覚めたんです。胸が痛い気がして、見てみたら、ほら！」
氷河はTシャツをぺろんとめくりあげてカミュの前に差し出した。
修行中にぶつけて、派手なあざでもできたのかとカミュは目を凝らした。
が、その目に飛び込んできたのは、ふるん、と柔らかに揺れる胸のふくらみだった。
「！？」
目線を、上にあげる。
白く滑らかな肌をたどってゆくと、氷河の顔に行きついた。
両手でめくりあげたシャツを押さえたまま、心配そうにこちらを見おろしている。
少女と言っても差し支えのない顔をしているが、確かに氷河の顔だ。
私の弟子は女だったのだろうか・・・。
いや、違う。
さっきだってアイザックと三人で風呂に入った。そのときは別に普通の少年だったはず。
カミュは再び目線を下す。
と、やはり、白く柔らかな胸。
続く腹も妙に柔らかそうで、これまで鍛えてきた少年のものとは明らかに違っていた。
眩いばかりの美しさだ。
小さな蕾が、いやでも目に入る。
何という夢だと、カミュは頭を抱えた。
確かに氷河にはそういうところがある。
聖闘士として自分が歩んできた道を、惑わせるような何か。
しかしこんな夢を見て、自分は明日、弟子の顔をまともに見られるのだろうか。
カミュはもう一度頭を振って、氷河のシャツを下させた。
「あの・・・変ですよね？　こんなのって・・・」
不安に耐え切れなくなったのか、氷河はその場に座り込んでしくしくと泣き始めた。
夢だろう。
しかし夢の中だとしても、泣いている氷河のことは見過ごせなかった。
部屋の明かりをつけ、毛布を掛けてやる。
「オレ、男ですよねぇ？　お風呂のとき、こんなじゃなかったですよねぇ？」
「ああ、そうだな」
「どうしよう。ずっとこんなだったら。これじゃ聖闘士にもなれない・・・」
落ちつくように肩を抱いてやろうとして、カミュはためらった。
「なにか、温かいものでも飲もうか」
すがるように、氷河はカミュのパジャマの裾を掴んだ。
そのまま二人で台所に移動する。
ミルクたっぷりの紅茶を淹れると、氷河はカップを両手で包んで、ふぅふぅと息を吹きかけた。
元々、美しい子であることは確かだ。
初めてその姿を見たとき、天使というのはこういうものかと柄にもなく思った。しかしそれはカミュに限ったことではないらしい。町を連れて歩くと誰かしら振り返って氷河を見ている。氷河が笑いかけると、いかつい八百屋の店主が訳もなく顔を赤らめたりした。
しかしこの子の中身を知っているのは自分とアイザックだけ。
天使などとは程遠い、何とも不器用で、負けず嫌いな一人の少年。
少年・・・。
カミュの思考を断ち切るように、「あ！」と氷河が声をあげた。
ふらりと体が揺れる。
カミュは氷河を支えたまま、手にしていたカップを受け取ってテーブルに乗せた。
「何だか、目の前がぐるぐるする・・・」
そう、言い終わらぬ間に、変化はあった。
頼りない肩がいくらかがっちりとし、柔らかな胸のふくらみはなくなり、元の少年の身体に戻った。
「ああああ・・・、戻った！！」
氷河は再び、Tシャツをめくりあげて自分の胸を確認し、パンツの中もなにやら覗き込んで、安堵の声をあげた。
時計の針は、12時をまわっている。
「よかったな。さぁ、部屋に戻りなさい」

しかしそれは、夢ではなかった。
氷河の変化は月一程度の割合で起こった。
そして、胸のふくらみはその都度大きくなり、18歳にして師であるカミュの頭を悩ませるのであった。
昨夜もそれは起こった。
いささかそれに慣れつつある氷河は、ため息をついて食事の後片付けを続けた。
テーブルを拭く度、胸が揺れる。
何故そんなところだけ早熟なのか。
二つの塊はＴシャツの下で小生意気に自己主張し、小さな突起がつんと布地を押し上げているのもわかった。
「氷河、これをつけなさい」
カミュはなるべく厚手の布で出来たエプロンを氷河に差しだした。
なんの疑いもなくそれを身に着けた氷河が台所に歩いてゆくと、思わずため息が漏れた。
慌てて振り返ると、真っ赤な顔をしたもう一人の弟子と目が合った。

よろしくない。
これは、教育上よろしくない。
今は数時間の変化で済んでいるが、その時間が増えぬとも限らない。
ということは。
それに備える必要がある。
一晩悩んだカミュは、一つの使命に突き当たった。
氷河に、ブラジャーを買い与えねばなるまい。

久しぶりに聖域に帰ってきた友は、さっきからため息ばかりついている。
悩みがあるのなら打ち明けてくれてもよさそうなものなのに。
しかしこうして自分のところに来たというだけでも、少しは頼ってくれているということなのだろうか。
となりあって石段に腰を下ろしたまま、ミロはそう思った。
「ため息ばかりついてると、幸せが逃げていくぞ」
「ああ、幸せか・・・我らにとって幸せとは何を指すのだろうな、ミロよ」
上の空でそうつぶやいた友は、闘技場から目を逸らしもしない。
「何を指すかって・・・今は違うのかよ。なぁカミュ、久々に会ったんだぜ。悩みがあるんなら俺に打ち明けてくれ」
「悩みか・・・そうだな・・・あの女性聖闘士の胸当ての下はどうなっているのか知っているか？」
「は？！」
「聖衣といい革の胸当てといい、アンダーウェアの上にただつけただけでは、女性の肌には少し硬すぎると思うのだが、あれは下に、なにか特別な布をあてていたりするのだろうか」
「カ、カミュ？」
「いや違うな、アンダーウェアの下に下着をつけていると考えるのが普通だな。一般の女性がつけるものとは少し違うように思われるが、むしろその方が良いのかもしれん。それは稽古着同様、女性には支給されるものなのだろうか、聖域に申請すればこちらでも受け取れるものなのだろうか」
「こちらって、カミュ？　欲しいのか？？」
「ああ、ものすごく必要なのだ」
数秒、目をまん丸くしていたミロだが、ふいに堪えきれなくなって吹き出した。
「なんだよ、カミュ！！悩んでると思えばそんなことかっ！そうだよな・・・いくら水瓶座の黄金聖闘士カミュだって、年頃の男の子だもんな。だがな、下着なんかより、それに包まれているものの方がずっとずっといいぞ？」
ミロは親友の肩に腕をまわして顔を覗き込んだ。
友の顔にじわじわと赤みがさす。
「それは、十分なのだ！！　肝心なのは下着なのだ！！」
「そう・・・なのか？」
「やはり早急に手配すべきか・・・」
爪を噛む友の顔を見守りながら、色々な嗜好があるもんだとミロは思った。

しかしながら冷静に考えると、聖域に申請するというのはいささか無理のある話だった。
カミュに女の弟子がいないことは明らかであり、それを説明するというのも面倒を引き起こしかねない。
女なのだとしたら仮面も必要になる。
しかしもう、その素顔は見てしまった。
素顔を見られてしまった女性聖闘士はその相手を殺すか、あ、愛するか・・・。
氷河の身柄を引き受けるのは、やぶさかではない。
ん？　今、私は何を考えていた？
今夜、やはり氷河は変化した。
ぐずぐず悩んでいる暇はない。
ついにアイザックが、鼻血を垂らした。
ゆゆしき事態だ。

薄明かりの中で、カミュはコツコツと爪で机を叩いた。
病気の妹がいると仮定する。
年頃になって下着が必要だが、病床を離れることが出来ない。
身よりは兄である自分一人・・・。
やはり、この筋書きが一番自然だ・・・。

何しろ氷河が少女化するのはほんの一時。
その間に下着屋に連れて行くというのも難儀な話だった。
しかも先ほど、そのことで盛大に泣かれた。
「オンナの下着なんて絶対につけませんっ！！　オレは男ですからっ！！」
「無論、お前は男だ。しかし氷河、私はな・・・」
氷河はバタンとドアを閉めて去っていった。
しかし。モノがそこにあれば装着しようという気にもなるかもしれない。
一度決めたことは、何としても実行せねば気が済まぬカミュだった。

少女となった氷河が元に戻るのは大抵12時過ぎ。ならばまだ、その姿のまま眠っている筈だ。胸囲を図るのならば、今しかない。
息を殺して、部屋に忍び込む。
暗闇を嫌う氷河は、枕元の小さな明かりをつけたまま眠っていた。毛布から覗いている肩のラインは、やはり少女のものらしく柔らかな丸みを帯びていた。
そっと毛布をはぐと、ほんわりと温かな空気が肌に触れる。
露わになる、もろくて、柔らかくて、美しいもの。
薄い寝衣を押し上げる胸が、いやでも目に入る。
メジャーを手にそっと背中に腕を回す。
なんて、柔らかくて温かなことか・・。
何か、新しい扉が開きそうになってカミュは頭を振った。
メジャーを胸の前で交差させる。
少しきつくし過ぎたのか、メジャーが胸に食い込んだ。それをほんの少し緩めるとメジャーを弾き返す衝撃に息を飲んだ。数字に目を凝らす。
「82・・・82、82、82・・・」

ハァハァと荒い息を吐いて、カミュは自室に辿りついた。
あとは、実行に移すのみだ。
色はやはり、白だろうか。
しかしあの、肌の白さ。
薄紅というのも似合いそうだ。
思いを馳せると、何となく楽しい気がしないでもないカミュである。
いや、さすがに男だから、薄紅は嫌がるだろう。
だったら水色・・・それも清潔感があってなかなか・・・。
こうしてシベリアの夜は更けていった。

知人に見られぬよう、カミュは小宇宙の力を借りて、パリに跳んだ。
洋品店の立ち並ぶ中に、ついに、その店はあった。
カミュは意を決してドアを開け、奇異の目で見る女性客を無視し、陳列されている華やかな商品をなるべく目に入れないようにして、レジへと走り店員に病床の妹の話を小声で語った。
残念、美青年なのに変態なのね・・・と店員は思いつつ、笑顔を浮かべて仕事にあたった。
「サイズはおいくつくらいかしら？」
「82です」
「トップのことかしら？　それともアンダー？」
端麗な顔にクエスチョンマークが浮かぶ。
「ここが、アンダー」
と店員は、寄せて上げた自慢の身体に手を当てる。
「で、ここが、トップ」
顔が、髪よりも赤く染まる。
「そこまでは聞いてこなかった。失敬」
カミュは光速でその場を後にした。

・・・なんだろう。このダメージは。
戦闘においてもこれほど、疲弊したことはなかった。
これ以上の戦いは、このカミュにも不可能・・・。

打ちのめされたカミュの脳内に、親友の声が響いた。
「おい、この前の件だけど、いい手があった。ちょっと聖域に来いよ」

12宮の入り口で、ミロは親友を出迎えた。
「おい、何か、疲れてる？」
「いや、平気だ・・・それより、この前の件というのは・・・」
「ああ、お前が欲しがっていた、ご婦人用の下着の件さ」
「お前っ！まさか人に話したのか・・・！！」
「いや、別に悪いことではないだろう？　お前がそれを必要としているって言ったらな、デスマスクがいいもんくれるって」
よりによって・・とカミュは頭を抱えた。露悪趣味のデスマスクとは、あまり気が合わない。聖闘士として相当な実力の持ち主であることは認めているが、生き方が自分とは違いすぎる。しかしミロは、案外あの人とうまくやっている。無論腹の底から信頼しているわけではあるまいが、昼食くらいは共にすることも苦ではないようだ。
案の定デスマスクは、にやにやと嫌な笑いを浮かべてカミュを出迎えた。
「俺ンとこに女が忘れてった奴があるけどよ。欲しいんなら持ってっても構わないぜ」
女性が下着を置き忘れてゆく・・・その状況を考えてカミュは眉を顰めた。
そんな、どこの者とも知らぬ女の物を、うちの氷河に与えるなど・・・。
しかし。
と、カミュは思い直す。
下着屋にもう一度足を踏み入れる勇気はない。
それに、シベリアの暮らしは質素だった。
カミュが着られなくなった服は弟子たちが着ていたし、弟子たちの間でも、服の貸し借りは頻繁にあった。
そう思えば、下着も同じ。ちゃんと洗濯すれば、誰の物でも構うまい。
取りあえず見てから考えるべきだ。
「拝見させてもらおう」
カミュがそう言うと、デスマスクはクックッとこらえきれぬように笑った。

寝室は煙草の匂いがした。
今しがた吸ったわけではないのに、壁に染みついたまま消えることはないようだった。
「え～っと、どこだっけぇ～？」
がさごそとデスマスクが漁る引き出しからは、見たこともないような薄いつるつるした布地が覗いていた。
それもまた、女性が身に着けるものなのだろう。
隣りのミロが、あれはいいのかというような目線を送ってくるのをカミュは無視した。
「あ、あったあった。二つあるけどな、これ、どっちがいい？」
デスマスクは右手に黒、左手に赤の下着をぶら下げて振り返った。
「先っぽしか隠れねぇのと、先っぽだけ隠れねぇのと、どっちが好みだ？」
カミュは自分の中で何かが砕けて、しゅうしゅうと気化する音を聞いた。
しかしとにかく隠れるやつを。
カミュは腕を伸ばし、紐のようなそれを我が手に掴んだ。

追記を閉じる▲

【2012/12/01 (土) 22:28】 | シベリア師弟
トラックバック() | コメント(0)

page top↑

コメントを閉じる▲

前ページ | ホーム | 次ページ