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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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ざっくん、お誕生日おめでとう~!!!
ずっととらえどころのなかった君ですが、日を追うごとに大好きになってゆきます。

氷河誕の時のSSの続きです。
タイトル修羅場でしたが、いくらなんでもあれなので『向日葵』に変えました。
なんで2月に向日葵??
いえ、大大大好きな人の歌に「向/日/葵/は/ゆ-れ-る-ま-ま」という作品がありまして。
なにげに私の中のざっくんソングであります。
歌詞とか載せるのもあれなのでやめておきますが、本当にざっくんソングなんですよぉ~。
(ちなみにミロ氷ソングは、懐かしのセカ〇ド・ラブでございます。こいも にどめなら~です)

拍手[24回]

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向日葵

「馬鹿だな」

そいつが放った言葉は、むろん俺にも聞こえた。

「何だよ、会うなり・・・?」

そう言ったときの氷河の声は屈託のないものだったが、一輝という男の瞳は一言では言い表せぬほど多くのものを語っていた。そのことを氷河も感じ取ったんだろう。
「夕方、少し時間をくれ」
ずい分と大人びた口調でそう言った。
一輝は黙ったまま上へ行き、俺たちは市場へ向かうため下へと向かった。

「お好み焼き」
「ん?」
「お好み焼きという料理があるんだ。日本に。小麦粉に、キャベツや肉や魚介を入れて焼いて食べる」
「へぇ」
「日本で瞬に、アンドロメダの聖闘士なんだが・・・瞬に習って焼いてみたから上手に焼ける。ちゃんとソースも日本から持ってきたんだぞ」

少し俯いたまま、氷河は言った。
さっき、思い出してしまった俺たちの間にある傷口を、埋めようとするような話し方だった。

「うまいのか? それ?」

からかうように言うと、ようやく顔をあげた。

「うまい。俺も食べたのは最近なんだが、びっくりするほどうまい。だから今日は俺がそれを作る」
「わかった。びっくりするほどうまいんだな?」
「うむ。多分、びっくりする・・・」
少し自信なさげな声に、思わず吹き出してしまう。
「なんだよ。上手に焼けるって言ったくせに」

昼飯の話。
夕飯の話。
朝飯の話。
昼飯の話。
夕飯の話。
朝飯の話。

どこまでも続いてゆきそうなそんな会話を、俺たちは数えきれないほど交わしてきたはずなのに、それは突然途絶え、深い深い孤独に浸された。
それでもこうして再びめぐりあえば、俺たちはまた、同じような会話を続けられる。幼い頃の記憶は繋がっていて、何かをしたり話したりするたびとめどなくあふれ出す。どんなふうにからかったら、氷河が口をとがらせるのか、そんなことだって手に取るようにわかる。あのときだってそうだ。氷河がどんな顔をして泣くのか、俺にはわかった。
俺たちの間にどれだけのものが横たわっているかなんて、さっきのあの男に指摘されるまでもなく、俺たちだってわかっている。目を背けているわけじゃない。たわいもない会話がどれだけ愛しいものか、苦しくなるほど知っているからだ。


「アンドロメダって、イオと闘った奴だろ? 南太平洋の」
「ああ」
傷口に、そっと触れる。
大丈夫。
それは、いつか痛くなくなる。
「イオに勝つなんて相当な実力者だろうが、料理も上手いのか?」

蒼い瞳が一瞬大きく見開かれて、それからうれしそうに笑った。

「上手いぞ。瞬は器用なんだ。デザート作りだって相当な腕前だし、ちゃんとそれぞれが好きな味に合わせてくれる」
「ふーん」
「さっきの一輝が、瞬の兄貴だ」
「ああ」
「不死鳥だ」
「あれがか」

「カーサもな、ああ見えて料理がうまい」
「そうか・・・」
氷河は足元を見つめながら、ずいぶん低い声で言った。
「そんな顔すんなよ」
「だってな、こっぴどく負けたんだ」
「相変わらず駄目か、ああいうの?」
「うん・・・、反省した・・・」
「あの人、お前にも化けたことあるぞ」
「え?」
「俺の誕生日に、お前の格好で手料理作ってきた」
目を真ん丸にしてこちらをみつめている氷河は、そのことの意味についてはまるで気が付いていないようだった。
「うそだろ?」
「さあな。今度会ったら聞いてみたらいい」

氷河が作った今日の昼飯を、思い出したりする日が来るだろう。
そのとき俺たちは、どこでどうしているのか。
それでも、それが、あったことには変わりがない。
たわいもない日常が、少しずつまた俺たちをつないでいく。



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氷河ーーーー!!
氷河ーーーー!!
生まれてきてくれてありがとーーーーー!!
お誕生日おめでとうーーーーーーーーー!!

誕生日ですが、仮タイトルが『修羅場』だったお話をUPします。
結局修羅場じゃないですが。

拍手[21回]

向日葵


聖域はいつも晴れている。
久しぶりに一輝がそこを訪れると、階段の上の方から笑い声が降ってきた。黄金聖闘士達とは異なる、不安定な少年の声だ。まだ完全には修復されていない12宮の、寄せられた瓦礫のせいで姿は見えない。それが誰か、知らぬ声ではないのにぴんと来ない。足音は二人分。軽く4、5段駆け下りたかと思えば止まる。止まったかと思えば駆け下りる。

「・・・だからな、今日は俺が作る」
「それ、ランチの時間に間に合うのか?」

茶化すように言う、もう一人の声は、知らぬものだ。
さきほどの声が甘えたように畳み掛ける。

「ひどいな、アイザック。俺だって、ちゃんと当番こなしてただろう?」
「それはそうだが・・・」
「・・・っておい、なに笑ってる?」
「だってさ、お前、あの時の・・・」
「あ、あれは、ちょっと・・・」

聞くうち、その声の主がわかった。それが氷河だと確信するにつれ、心がじわじわと冷たくなってゆく。
あんな風に、すべてを委ねたような声音を、一輝は聞いたことがない。
からかわれるのを喜んでいるような、あんな甘えた口調も。
一輝自身というだけではなく、星矢や瞬と話すときですら、アレがあんな風に笑うのは聞いたことがない。
もう一人の男は誰だ? アイザックというのは?
角を曲がると、互いに姿が見える。水を差すような気がするが、こちらが隠れるのも癪に障る。

「ちょっと、なんだ?」
「ちょっとはちょっとだよ。ああ、もう、忘れろ!!」

白い手が伸びて金色の髪をかき回す。

「あっ、コラ」

咎めだてする腕もまた白い。
瓦礫の陰から現れた一輝に気づいたのか、両の手首を掴んだ手が止まった。

「え?」

振り返った氷河の顔には、まだ笑みが残っていた。
初めて見る顔だ。

「あ、一輝」

両の手首を預けたまま、その顔が少しずつ一輝の知るものになってゆく。

「来てたのか」

相手が手を放すと、氷河は向き直って数歩階段を降りた。十分に親しみを込めた声ではあったが、足らないと思った。もう一人の男に目をやる。
初めて見る男の髪はやはり金色で、氷河のよりやや濃い。精悍なその姿から、ひと目で戦士であることが知れた。同じ背丈の氷河と並ぶと兄弟の様だ。同じ血を引いているのは自分達である筈なのに、二人が並ぶと同族の天使とでもいうような、浮世離れした雰囲気が漂う。が、何よりも目を引くのは、左目の深い傷。
海将軍たちが、神の意志で再び命を得たと聞いた。
そしてその一人が、氷河と既知であるらしいということも。
左目の傷から、あの頃の氷河の包帯の意味をくみ取ることはたやすかった。
あの頃の。
ひたすら自分を消して戦いに向かっていったあの頃の氷河のことを思うと、胸の中がしんとする。

なのに。
それなのに今のコイツの無邪気さは何だ。
隻眼の男を無言で見ていると、向こうも尖った視線で答えた。

「馬鹿だな」
「何だよ、会うなり・・・?」

お前、あの時どれだけ・・・畳み掛けたい気持ちを堪えたのは、氷河の瞳が懇願するようにこちらを見たからだ。
さっきまで柔らかく笑っていた顔が、ふいに磁器のような繊細さを見せた。
一輝は軽くため息をついて、これ以上は何も言わぬ旨を伝えると目を逸らした。

「いつまで、こっちにいる?」
「・・・」
「夕方、少し時間をくれ」
「・・・」

無言を了承と取ったのか、氷河は階段を降りて行った。
隻眼の男が、ちらりとこちらを振り返った。




「待たせたか」

氷河が息を切らせて走ってきた。
宝瓶宮でランチをとり、午後のお茶をすませ、夕食の下ごしらえをしてから抜けてきたという顔だ。それで結局、昼食はちゃんと作れたのだろうか、などといらぬことをつい考えてしまう。
息を整えた氷河は、まっすぐに一輝に向き直った。

「何も話さなくてすまなかった。・・・今なら、話せる」

古い遺跡の一角に氷河は腰をおろし、一輝の手をひいて座るように促した。
そこで氷河は、ぽつぽつと話をした。
キグナスの聖闘士となるまでの経緯と、海底神殿での出来事を。

「・・・だから、悪いのはアイザックじゃない」

蒼い瞳が、真っ正直にこっちを見ている。
間違ったのは自分で相手は悪くないのだと、本気で信じて疑わない顔だった。

いや、十分に悪い。
俺ならあんな風にコイツを苦しめたりしない。
あんな。
あんな・・・。
そう思いかけて、一輝は拳を握った。
その拳が傷つけた、氷河の左胸。
あの男にも譲れぬ何かがあった。
それが共に過ごした時間と、互いの心を、全く無視した結末へと導いていった。

だが氷河、お前にも譲れぬ理由があって、海に潜ったんだろう?

「・・・城戸のこと、師匠に話したのか?」
「話すものか、あんな奴のこと」

俯いてあらわになった首筋が、わずかに朱に染まった。

「馬鹿。つくづくお前は馬鹿だ」

一輝は盛大にため息をつくと、その手を掴んで正面に引き寄せた。

「な、何でだよ」

心外だという顔で、氷河は眉根を寄せる。
手首を捉えたまま蒼い瞳を見据えると、右に左にとさ迷ったのちうっすらと涙を浮かべた。
ごまかすように唇をとがらせてうつむいた氷河は、自分の額をこつんと一輝の額にあてた。

ああべつに、俺がわかってりゃいいことか。


「そろそろメシの時間だな」

一輝がそう言うと、氷河は顔をあげて西に傾く太陽に目を向けた。

「・・・一緒にくるか?」
「遠慮しとく」

胸やけしそうに甘い宝瓶宮。
というのはもはや、聖域の常識だ。
おそらくただ一人、そのことに気づいていない男は、断られたことを気にする風でもなく「じゃあな」と言って去っていった。
階段を駆け上がって次第に遠のいてゆく姿を、一輝は見上げた。
赤い夕陽が、夢みたいにそのちっぽけな背中を包んでいる。


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