忍者ブログ
☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


喫茶嘆きの壁を書いていた頃に、並行して考えていたお話です。
浴衣、キュロット、ウエディングドレス、サンタクロース・・・コスプレシリーズはこれにて完結・・・かな??

設定としましては、黄金さん復活設定。
氷河たちは学生兼聖闘士で、冬休みの合宿と称して、師匠以外の指導を受けることになっています。
(本当は担当決めのお話も書いていたのですが、つまらないので切りました。
わかりにくくてすみません。)





拍手[7回]

PR



スパイ修行 1



冬の強化合宿のためアフロディーテがいるコテージを訪れた氷河は、何故デスマスクもいるんだろう、と思った。
二人が親しいのはなんとなく知っているが、指導スケジュールに彼の名前はない。
なのに、氷河の正面の椅子にどっかりと腰を下ろして、アフロディーテよりも大きな顔をしている。
「なんで俺がいるんだって顔してるな。」
「そんな・・・」
図星をさされた氷河は慌てて否定する。
それでもデスマスクは気分を害した風もなく、フンと鼻で笑った。
「君にはカミュという師匠がいるからな、戦いについては彼の教えがあれば十分だ。今回我々が君に教えたいのは、敵情視察の方法だ。」
アフロディーテの真剣な表情に、氷河も顔を引き締めて頷いた。
「君は先の北欧での戦いにおいて、先に現地に赴いて調査をしたんだったな?」
「はい。」
「どんなふうに行ったんだ。」
「ええ、まずは捕まったふりをして・・・。」
「馬鹿かっ!!」という言葉が、二人の口から同時に飛んできた。
「敵の戦力もわからないのに、いきなり捕まったのか?」
「・・・はい。中に入るにはそれが一番かと。」
「殺されなかったのが不思議だな。」
「その時は、フレアが・・・ああ、ヒルダの妹なんですが、彼女が助けてくれて事情も話してくれました。」
ちょっと誇らしげに笑う氷河の顔はかわいい。この顔でなかったら、フレアも放置したに違いない。
そんな二人は、別の一件ではヤコフに助けられ、別の一件ではドルバルに洗脳されたことを知らない。
「これは本当に、ちゃんと教えてあげなければならないな。」
アフロディーテはため息をつくと、寄りかかっていた壁から背を起こして正面に向き直った。
 
調査にはいくつか方法がある。
味方のふりをして近づき情報を聞き出すという方法もあるが、これは演技力が必要とされるからな、君には難しいだろう。
だからまず、極力相手に見つからずに忍び込む方法を考えよう。
それだけでも大変なことだ。
敵陣の状況をなるべく詳細に調べ、退路の確保も怠ってはならない。
戦うのは本当に、最後の手段だ。
 
概論の後、デスマスクからは錠前の外し方や盗聴の仕方、アフロディーテからは変装の仕方と、およそ聖闘士らしくない技を学んだのだった。
 
「さてと」
慣れぬ講義に疲れた様子の氷河を面白そうに眺めながら、デスマスクは言った。
「では実戦だ。明日の朝までに、シュラ先輩の部屋から、愛用のライターを持ってこい。」
何だかヤンキーのようなことを言いつけられつつも、氷河は従わざるを得なかった。聖域の縦の掟は絶対なのである。
「シュラは、今アテネ郊外のグラード財団の保養施設に泊まっている。そこの誰にも見つからないようにするんだぞ。」
「し、しかし、それでは泥棒ではないか。」
「大丈夫だ。あとでモノは返すんだし、俺たちからもちゃんと話してやるよ。」
そう言ってデスマスクは出ていった。
「少し、手伝ってあげようか?さっき変装という話をしただろう? ここにその、使用人の服がある。この服を着て忍び込めば目立ちにくい。」
身内の施設なのだから、いつもの氷河である方が自然である。
しかしアフロディーテの碧い瞳に見つめられると、若干思考能力が狂うのだ。
「さっき言ったように、調査のためにはあらかじめ念入りに準備をしておくことが必要なんだ。まずはシュラのスケジュールだな。」
「ああそれならば、指導スケジュールが。」
そう言って氷河が取り出した紙には、冬休み中の各自の予定が書かれている。
紫龍は、最初の3日間はシュラの指導、続く3日間はアイオリアの指導を受けることになっていて、今日明日は早朝から夕暮れまで、みっちりシュラの訓練を受けている筈だった。
 
「今は4時だから、まだ訓練中だな。その間に部屋に入らせてもらって、取ってくればいいのか。」
呟く氷河を横目に見ながら、アフロディーテはくすりと笑った。
 
 
 
「何だか厭な予感がする」
休憩中。煙草に火をつけながら、シュラは呟いた。
「厭な・・・とは?」
とっさに身構え真剣なまなざしを送ってくる紫龍をみて、シュラはわずかに首を振った。
「大したことではないのだ。今朝、こちらへ来るときに、妙に楽しそうなデスマスクとすれ違ってな。またロクでもないことを企んでいなければいいのだが。」
「デスマスクは今回の指導スケジュールに名前がなかったが。その間、何か任務があるのか?」
「それがどうやら、アフロディーテのサポートにつくらしい。」
「ということは、氷河の?? 氷河が、デスマスクとうまく折り合いをつけられるとは思えないのだが・・・。」
「そこはまぁ、アフロディーテがどうにかするだろう。しかし、一体何の訓練をしてるのやら。」
 
 
 
そのアフロディーテは、手渡した服を前に途方に暮れる氷河を楽しげに眺めていた。
「こ、これ、女性用ですけど。」
「ああ、あいにく君くらいのサイズだと、女性用しか手に入らなかった。」
そんなはず、あるだろうか。
自分くらいの背丈の男性職員が、いたっておかしくないはずだ。
氷河は恨めしそうに、アフロディーテを見上げた。
「ま、着てみたまえ。」
 
一輝とケーキ屋に行ったあたりから、どうもおかしい。
段々自分自身も抵抗感が薄れてきているようなのが怖い。
黒の長袖の服に、ピッチリとアイロンのかかった真っ白な襟。
黒のスカートに、白いフリルの前掛け。
スカートは、ウエストは合うのに丈がやや短い。
「これでいいんですか?」と別室から現れた氷河の姿を見て、アフロディーテは笑みを浮かべた。
きっちりとした上着に対し、やや短過ぎるタイトスカート。
そのギャップが、いい感じだ。
 
「それだけでは、完成といえないな。」
「はい・・・」と氷河はため息交じりに返事をして、鏡の前に腰を下ろした。
 
紅筆をとって、唇に紅を塗る。
美少年が、みずから紅をさす光景は魅惑的だ。
 
しばし堪能した後、アフロディーテは口を開いた。
「全然、なってない。」
数十分後、アフロディーテの手によって、完璧なメイドさんが誕生した。




追記を閉じる▲

ミロ様のお誕生日♪
昨夜は天蠍宮の戦いを読み返しながら、0時を迎えました。

大好き大好きミロさん。

誕生日に合わせて何か書けるくらいなら、もうとっくに何か書いてるさ・・・とふてくされつつ、書きかけていた話を何とか最後までまとめてみました。


氷河の修業時代に、ミロさんが遊びに来ていたり、カミュとミロが氷河について色々お話している様子の描かれた作品が大好きなのですが、今回はカミュのだんまりバージョン。

だって、カミュはアイザックを後継者に、氷河をお嫁さんにする予定だったでしょう??
大事な人のことは、だ~れにも話さないカミュ先生。
で、天蠍宮で、氷河をみてびっくりするミロさん。
見た目も、素質も、根性も超一級!!
そりゃそうか、カミュが育てたんだもんなぁ・・・。
そんなのが隠れテーマでした。


拍手[9回]

二つの小宇宙が、ぶつかり合ってはじけて消えた。
そうなることは、わかっていた。
わかっていたのに、止めることはできなかった。
 
13年もの間聖域で暗くくすぶっていたものが、この一日で一気に吐き出され、ぶつかり、砕け、浄化された。
その激流の中に、ミロは立っていた。
やがて波が引くように互いの小宇宙が静まり、目を覚ました女神の小宇宙で満たされてゆく。
初めて感じるのに、どこか懐かしい、安らぎに満ちた小宇宙だった。
 
しかし、とミロは神殿へと続くはるかな階段を見上げた。
失ったものもまた、あまりにも大きい。
 
自分を命がけで助けてくれた少年たちのもとへ、女神が駆けていく。
その背中を見送ってから、ミロもまた階段を上った。
 
今だけは。
悲しむことも許される。
怒ることも。
 
 
宝瓶宮は、静かに冷気を発していた。
近寄るだけで、皮膚が張りつめ、息が詰まる。
「あの馬鹿・・・。」
そう呟いて、ミロは階段を上りつづけた。
 
 
 
あのとき。
氷河たちの抹殺指令をアイオリアが受けたあと、その足でミロは宝瓶宮に立ち寄った。
「氷河、と、言わなかったか? お前の弟子。抹殺しろと言われたが、どういうことなのか話を聞かせろ。」
私室で何かを片付けていたカミュは、振り返りもせずに言った。
「お前が行くのか?」
「いや、アイオリアが。」
「なんだ、お前が行くのなら、代わってもらおうかと思ったのに。アイオリアなら、そうもいくまいな。」
「自分一人で十分だと言っていた。奴にも色々あるからな、容赦しないだろう。」
「・・・ならば仕方ない。」
一切の感情を伺わせない友の態度に、ミロは苛立った。
こんな返事だけで引き下がりはしないことを示すために、テーブルの椅子を引き寄せて腰を掛ける。
「アイザックについてはよく話をしたお前が、氷河については何も語らなかった。白鳥座の本命はアイザック。氷河については、身を守る術くらいは教えてやりたいと、そう言ってなかったか?」
「よく覚えているな。」
「身を守るだと? 氷河を含む青銅5人に白銀10人が倒された。・・・お前、自分の立場をわかっているのか?」
「6年がかりで反逆者を育てた男・・・というところか?」
憮然とするミロの前を、立ち上がったカミュが横切った。
やがてカップを二つ手にして戻ってくると、そのうちの一つをミロに差し出した。
「兄弟子のアイザックを事故で亡くしたので、氷河を鍛えて白鳥座の聖闘士に仕上げた。教皇の指示に従い、私闘を演じる青銅聖闘士達の抹殺に向かわせた。だが、その命に背いた。・・・私が知っているのもそれだけだ。」
目を伏せてコーヒーを口にするカミュの元へ、ミロは近づいた。
「氷河というのはどういう男だ? それは本当に、女神への反逆か?」
射るようにカミュを見据えたまま、ミロは低い声で尋ねた。
その視線を、カミュは真正面から受け止めた。
だが、やがて窓の方へと視線を転じた。
「反逆などと、おそらくはそんな自覚もない。」
その瞳に初めて、口惜しさが滲んだ。
「だが、無用に人を傷つけるようなことはしない男だ。
・・・・・・近いうち、シベリアに行ってくる。ひとつ、やり残したことがあるのでな。」
カミュは拳を口元にあてると、わずかに歯をたてた。
理不尽さに突き当たったときに見せるその仕草を、ミロは幼い頃から知っていた。
 
 
本当のことを言えば、ほんの少し期待していたのだ。
聖衣を授かった若い弟子を従えて、友が誇らしげに自分の前に現れる日のことを。
 
それは本当に叶わぬ願いだったのか。


初めて対峙した氷河は、もう、決断を下したあとだった。
そうと決めたものを、氷河は決して手放さなかった。
そして、その白い翼は、間違いなくカミュの授けたものだ。
 
あいつが、手など抜くはずがないのだ。
兄弟子がいようと、青銅聖闘士だろうと。
そして氷河は、それについてきたのだ。
 
繰り出される拳は、粗削りだがカミュとよく似ていた。
間合いをとる姿勢やわずかな身のかわし方も。
雪を思わせる真っ白な小宇宙は、拳を交えるたび、輝きを増した。
 
 
 
吐く息も凍るほどの凍気の中を、ミロは歩いて行った。
あたりは一面、白く輝いている。
 
カミュと氷河は、互いに手を伸ばすように倒れていた。
カミュは口元に、わずかな笑みを浮かべている。
 
「馬鹿・・・。」
 
マントを外すと、ミロは友の亡骸にかぶせた。
 
と、そのとき。
背後からわずかに小宇宙を感じた。
振り返ると、少年の傷だらけの手が、わずかに動いた。
 
「・・・生きてる・・・!」
 
生きてる!
あいつの、大切な・・・!
 
ミロは、氷河を抱き寄せると、確かな鼓動に耳を寄せた。
 
 
 


追記を閉じる▲