忍者ブログ
☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


お正月がすぎると、もう街はバレンタインですね~♪
相変わらずの馬鹿話です。
区切りどころがわからなくて、長いですが一気に載せちゃいました。





拍手[18回]

PR



珍しく大きな紙袋を抱えて氷河が帰ってきた。
「なぁに? それ?」
リビングで一人、お茶を楽しんでいた瞬が声をかけると、氷河は満足そうにその包みをテーブルに載せた。
「街でチョコレートを沢山売ってたんだ。明日聖域に行くから、土産に丁度いいと思ってな。沢山あるから選びきれなくて、ついこんなに買ってしまった。」
幾ら日本の風習に疎くとも、場の雰囲気から何かを感じ取って欲しかったと思う瞬である。
「お土産って、カミュに?」
「ああ、もちろんカミュのもある。カミュが前に好きだと言っていたフランスのチョコレートが売られていたんだ。日本で売るのは今だけなんだそうだ。一緒に食べようと思ってな。」
「カミュのも、ってことは、他にもあるの?」
「ああ」
氷河はにこりと笑みを浮かべると、がさごそと紙袋から包みを取り出した。
「これはミロのだな。ミロのはお酒が入っているのにした。これ、一応チョコレートだから、俺らだって食べてもいいんだよな?」
「うん・・・、ミロとも一緒に食べるつもり?」
「あの人が、分けてくれたらの話だが。」
「あとな、すごくきれいなチョコレートも見つけた。惑星をイメージしたチョコレートでな、地球とか火星とか、一粒一粒がピカピカで宝石みたいなんだ。何だかサガを思い出して買ってしまった。
でもサガだけじゃカノンが可哀想だからな。こっちは塩の入ったチョコレートなんだそうだ。どんな味がするんだろうな?」
氷河は得意げに、ずんずんと包みを取り出してゆく。
「でな、このでかいのな、ゴリラの形なんだぞ。面白いから一輝に。」
さっきお土産と言ってたのに、明らかに趣旨がずれてきている。
「星矢のは馬だ。ペガサスがあればいいのに、見つけられなかった。
紫龍はな、ビターにした。カカオの割合が違うのを食べ比べられるんだそうだ。あいつ、そういうの好きそうだろう?」
「ねぇ、氷河ぁ、僕のはないの?」
「あるに決まっているだろう。これ、瞬のだ。これをな、ホットミルクに入れてくるくる回すと、溶けてホットショコラになるそうだ。うまそうだろう? 色々な種類があるんだぞ。でも白が一番瞬のイメージにあうな。瞬とお茶を飲むのは楽しいからな。これも一緒に飲みたいと思って買ったんだ。」
涼しげな顔に、優しい笑みが浮かんだ。
鈍感な癖に。
口下手な癖に。
時々平気でこういうことを言う。
 
「ね、僕これ、大事にとっておいて、14日に二人きりで飲みたい。2月14日って空いてる?」
「ああ、東京にいるはずだが。」
「なら約束。指切りしよう。僕、このホットショコラにあいそうなクッキー、用意しとくから。」
「わかった。だが、14日って、何かの日だったか?」
「バレンタインデー」
氷河の顔が、少し曇る。
その言葉だけは、知っている様子だ。
「日本では、女の子が好きな子にチョコレートを渡して告白する日なんだよ。」
「・・・もしかして、それでチョコレートを沢山売ってたのか?」
「もちろん。ほら、僕にくれたこの包みにも、沢山ハートの絵が描いてある。」
「あ、あのな、瞬・・・。」
「14日、楽しみにしてる。・・・大丈夫。欧米では、男女関係なく、親しい人に贈り物をする日なんでしょう?? 恩師にプレゼントしたって、おかしなことはないよ。義理チョコって言葉もあるくらいだから。・・・でも、僕は、氷河からもらって嬉しかったな。」
そう言うと瞬は立ち上がり、手にしていたカップを洗うために席を立った。
「あ、あのな・・・」
「僕も氷河とお茶するの好きだよ。二人でいっぱい美味しいもの食べようね。」
カップをしまうと、笑顔を残して瞬はその場を後にした。
後ろ手でドアを閉め、心の中で呟く。
(僕だってね、いつまでも手を拱いているわけじゃないんだよ。いい加減、気が付きなさい、氷河!!)
 
 
 
バレンタインデーは、女の子が好きな人にチョコレートを渡す日。
瞬からそう教わったものの、買ってしまったものは仕方がない。
こうなったら1月のうちにすべて渡してしまおう。
ちゃんと事情を話せば、みんなわかってくれるはず。
氷河は妙な自信を持って、双児宮に突っ込んでいった。
 
 
双児宮―
 
私室のドアをノックすると、現れたのは意外にもサガだった。
「あ、こちらにいらしたんですね。てっきり教皇の間かと思っていました。」
教皇代理を務めるサガが、日中双児宮にいるのは珍しい。
カノンと間違えてもよさそうなものだが、不思議とこの少年は二人を見間違えることがない。
「いや、少し用があってな。午後にはあちらへ戻るつもりだが。」
「いえ、丁度良かったと思って。お渡ししたいものがあったんです。」
そう言うと氷河は、がさごそと紙袋から何かを取り出した。
「あの、これ、別にバレンタインだからという訳じゃないんですけど。俺も知らなかったんですが、日本ではバレンタインにチョコレートを贈る風習があるらしくて、それで、売り場を見ていたら、貴方の事を思い出したから。いや、違う。このチョコレートが、星みたいで、とてもきれいで、それで、貴方を思い出して、貴方にあげたいと思ったんだ。」
バレンタインとは関係ないことを説明しようと思うあまり、かえって意識してしまう氷河である。
顔を真っ赤にしながら、しどろもどろで話す氷河の姿をサガはじっとみつめた。
これはしかし、どう考えても告白というやつなのではないか。
これまで、縁談の話は数知れずあった。
遠巻きに視線を送られたり、手紙が届いたりすることも数知れずあった。
そしてまた、黒サガ時代に、美味しい思いをしたこともあった。
しかしサガは、ずば抜けて美しく聡明であるがゆえに、意外にも直接告白されたことはなかった。
こんな不器用で、可憐な告白をされたのは初めてだ・・・。
首をやや傾げながら、懸命に言葉を探す姿が返って新鮮だ。
・・・がしかし、カミュはどうした??
この子が本気であるというのなら、私もカミュと本気で語り合おう。
幾ら弟子とはいえ、愛しあう人間を自分で選ぶ権利はある筈だ。
「カミュは、知っているのか?」
「あ、先生のは別にあります。」
あっさりと帰ってきた答えに、サガは拍子抜けした。
よかった。変なこと口走らなくて本当によかった。
別の意味で、一度カミュと話さねばなるまいと思うサガであった。
 
「あ、ところでカノンは?」
「・・・カノンなら中庭だが。」
っておい、まさか!
止める間もなく氷河は走り去ってゆく。
思えばあの紙袋、妙にでかくないか?
 
 
 
大した用はないのだが、兄貴が部屋にいるので中庭に出てみたカノンである。
ベンチに腰かけてぼんやり煙草をふかしていると、背後から声がした。
「あ、こんにちは。これ、お土産です。」
「なんだ? これは。」
「チョコレートです。塩入りの。」
「・・・食べてみませんか?」
「今か?」
「ええ、どんな味がするのか、気になって。」
蒼い瞳がじっと見つめるので、つい断りきれなくなる。
手にしていた煙草の火を消し、かさこそと包みを開く。
箱の中には、金色の紙に包まれた薄い正方形のチョコレートが並んでいた。
包みをほどいて、チョコレートを一口齧る。
その様子を、間近で氷河がじっと見ている。
「甘い? それともしょっぱい??」
しょっぱいだけのチョコレートが売られている筈がないのに、本気で言っているのだろうか?
「しょっぱいな。全然甘くない。」
そう言うと、蒼い目は大きく見開かれた。
そんなに気になるなら、自分で食べればいいのに。
なぜ自分に食べさせるのか。
「もしかして、美味しくなかったですか?」
「いや。食べてみるか?」
「はい!」
満面の笑みで一枚受け取ると、慎重な手つきで口に運ぶ。
「ん・・・なんだ、甘いじゃないですか。でもそうか、ちょっと塩の味もしますね。複雑だな。貴方みたいだ。」
「・・・・・・」
「もうひとつ貰っていいですか?」
「ああ」
氷河は幸せそうな顔をして、味わうように目を閉じた。
「うん、美味しい! はまりますね。」
指についたチョコをぺろりと舐める。
少し目を逸らすようにして。
やわらかそうな舌先が親指をかすめた。
「それじゃあ、また!」
カミュがいて、アイザックがいて、ミロがいる。
なんだかどっと疲れて、カノンは青い空を見上げた。
 
 
天蠍宮―
 
私室を訪れた氷河は、赤い包みをミロの胸に押し付けるようにして渡した。
「あの、ミロ、これ、お土産だ。」
「なんだ。チョコレートか。こういうのは2月14日に貰いたかったな。俺のために買ってくれたんだろう?」
「そ、そうだけど、別にバレンタインだからというんじゃない。ただ、沢山チョコレートを売っていて、これなら貴方も気に入るんじゃないかと思ったから。」
「コニャックが入っている。」
「そうだ。」
「坊やにはまだ早そうだな。」
「チョコレートだぞ、それくらい食べられるに決まっている。」
「大人の食べ方を教えてあげようか?」
「・・・?」
ミロは箱をあけ一粒とりだすと、銀紙をほどいて口に含んだ。
すばやく氷河を抱き寄せて唇を重ねると、軽く噛んだチョコレートを舌先で口内に押し込んでやる。
少し辛い酒の味が、チョコの甘みとともに口の中に広がる。
それだけで無論終わるつもりもなく、チョコレートが溶けてなくなるまで、ミロは丹念に氷河の口の中を味わった。
「な、な、何するんだっ?」
「顔が赤い。酔った?」
「そんなんじゃないっ!!」
「別のお酒のもあるけど、試してみるか?」
「もういいっ!」
氷河はくるりと背を向けて、宝瓶宮の方へと走り去った。
 
 
宝瓶宮―
 
カミュは不在だった。
氷河は手元のチョコレートをじっとみつめた。
前にカミュが任務でフランスに行ったとき、お土産で買ってきてくれたチョコレート。
先生に、こんなお気に入りがあるなんて知らなかったから、何だか少し可笑しかった。
このところ忙しくて、フランスに行くこともそう簡単にはできないだろうから、日本でこれを買うことが出来てよかった。
何と言って渡そうか。
別に、先生にはバレンタインでもいいんだな。
大切な、大切な人だから。感謝の気持ちを込めて。
そう考えると、2月14日に直接渡したいという気がしてくる。
けれどもう、瞬と約束してしまった。
瞬は楽しみにしていると言っていた。
しかし、カミュは俺の師なのだから。
もう一度瞬と話してみよう。
そう考えて氷河は、チョコレートの包みを、畳んだ紙袋と一緒にバッグにしまった。
 

 
所用を終えたカミュは、自宮に戻るため階段を上がって行った。
向こうからカノンが降りてくる。
カミュの姿を認めると、何やら表情をこわばらせた。
「何か?」
「いや・・・、何でもない。」
そう言って足早に通り過ぎて行った。
 
双児宮では、サガが部屋から出てきたところだった。
眉間に、やや皺がよる。
「何か?」
「ああ」
言いかけてサガは迷った。
はて、何というべきか。
ダイレクトにチョコレートのことを話せば、困るのは氷河だろう。
ここはいったんひいておいて、改めてそれとなく話すことにしよう。
「いや・・・、何でもない。」
教皇の間に行くつもりだったサガは、なんとなく二人で階段を上ってゆくのに気がひけて、再び部屋に戻った。
カミュは首をかしげると、再び階段を上がった。
 
 
ミロは、いつものミロだった。
だが、珍しくチョコレートなど食べている。
「あ? これ? 氷河から貰った。バレンタインだからな。」
「バレンタイン!」
「日本じゃ、好きな人に、チョコレート渡すんだろ?」
「氷河がそう言ったのか?」
「さぁてね。俺のために選んでくれたそうだよ。」
カミュはわずかに瞳を細めると、黙ったままその場を去った。
 
 
ミロにチョコレート。
ミロにチョコレート。
ミロに、バレンタインのチョコレート。
いや、ちょっとまて。
さっきの双子。
サガもカノンも何か変だった。
サガにチョコレート。
カノンにチョコレート。
双子に、バレンタインのチョコレート。
悶々としながら、カミュは階段を上ってゆく。
何だか、こめかみのあたりが熱い。
自宮の前で、カミュは大きく息を吸った。
クールになるのだ。
 
 
「おかえりなさい。」
氷河はニコニコと笑って、カミュを出迎えた。
「お昼はまだですか?」
「ああ」
「よかった。シチュー、作っておきました。」
そうして二人は、少し遅い昼食をとった。
「お茶入れますね。」
「ああ」
あたたかなロシアンティー。
だが、肝心なものは何も出てこない。
氷河は日本での近況などを語って聞かせるが、カミュの耳には入って来ない。
ミロにあげて、サガにあげて、カノンにまであげて。私にはなしか、氷河。
眉間にしわを寄せて押し黙っているカミュを見て、氷河は首をかしげた。
「どうかしましたか?」
こうしていても仕方がない。
カミュは意を決して口を開いた。
「氷河、何か、私に隠し事をしていないか?」
「え?」
氷河はぎくりとして、ちらりとバッグの置かれているソファを振り返った。 
「え、してないですよ。そんな。」
「ならばどうして目を逸らすのだ。」
「いえ、だって・・・。隠し事だなんて、そんなんじゃないんです。でも、今は言えません。ちゃんと、その時が来たらお話します。」
その時って、いつだ。
プロポーズを承諾してからか。
そんなこと、私が許すとでも思っているのか。
「その時では遅いのだ、氷河。いくら私でも、それまで待つことなどできない。それまで何もせずに、ただじっと待っているなど。どうしてそれが、わからんのだ。」
「もしかして、何か、知ってます?」
ムッとした表情でカミュは押し黙った。
氷河はくすくすと笑いだす。
「先生ってば、そんなにチョコレートがお好きなんですね。先生にはちゃんと14日に渡したいって思っていたんですけど。だったら今食べましょうか。俺、バレンタインにチョコレートを渡す習慣があるなんて知らなくって、街で見かけたのを沢山買っちゃったんですよ。ミロ達にはさっき渡したんですが、先生には、やっぱり14日に渡したいなって思って。でも、そうですよね。ミロが食べてるのとか見たら、先生だって食べたいですよね。」
氷河はバッグからチョコレートを取り出すと、カミュに差し出した。
「氷河、私はな・・・。」
「これ、好きなのでしょう?」
カミュは氷河からチョコレートを受け取った。
「いや、もはや何も言うまい・・・とは、もはや言っていられない。」



 
 
 


追記を閉じる▲

続きです。

氷河たちがサンタさんにプレゼントをお願いするとしたら、何をお願いするんでしょうね??
星矢と瞬君はあれこれ思い浮かびます。
紫龍もまぁ。
氷河と一輝が一番謎。
氷河はあまり物欲なさそうなイメージがあります。





拍手[23回]

 
 
天秤宮。
挨拶をしようと紫龍と瞬が戸口に近づくと、何やら声が聞こえてくる。
引き戸をわずかにあけて中を覗くと、老師とシオンが手紙を前に途方に暮れていた。
 
「星矢の手紙には、『DS下さい』とだけ書いてあるのだが、これは一体なんだろうか。」
「はて、何かの略語のようだが、あまり聞いたことはないのう。・・・DSと言えば、わしにはドラゴン紫龍しか思い当らんが・・・。」
「それだ。それよ、童虎。」
「はて。プレゼントに紫龍をとは一体どういう意味じゃ?」
「どうもこうもないわ。そういうことだ。二人は無二の親友らしいが、さらにもう一歩。ねんごろになりたいということだろう。お前、師としてどうにかできないか。」
「それは無論、紫龍は義に篤い男だからな。わしの頼みとあらばひと肌もふた肌も脱いではくれようが・・・。だが、あまり春麗を泣かしたくはないのう・・・。」
 
ずるずるとその場にしゃがみこむ紫龍を瞬は引きずるようにしてその場を後にした。
「宝瓶宮を前にして、これほどダメージを受けるとは思わなかったね。」
「ああ、まったくだ。」
「でも、紫龍の手紙に、DSの説明、書いておいたんでしょ?」
「ああ、もう、俺も同じDSを頼むことにした。」
「・・・なら大丈夫だよ。・・・PS3とか書かなくてよかったね。」
重い足取りで二人は階段を上ってゆく。
 
 
宝瓶宮を訪ねる。
カミュは机に向かって何か書いていたようで、机には白い紙と辞書のようなものが見えた。
細い銀縁の眼鏡をはずすと、カミュは二人に向き直った。
「氷河がいないな。何かあったのか?」
「あ、いえ。氷河は元気です。お話がありまして、少しだけお時間を頂けますか?」
「よかろう。」
すぐに退室すると遠慮する二人に対し、意外にもカミュは温かな紅茶を淹れてくれた。砂糖とたっぷりのミルクが添えられている。
瞬が目で合図して、紫龍がおずおずと口を開いた。
「実は、今度のクリスマスに、我が師である童虎とシオンが、プレゼントを考えて下さっているようでして。サンタクロースに手紙を書くように言われたので、おそらくクリスマスの夜に、それを届けてくれるのかと・・・。」
「君たち、全員にか。」
「はい。」
それだけですべてを察したらしく、カミュは何やら思案をしながら天秤宮に目を向けた。
「氷河の分は、もう手配をしてしまった。その旨、私から二人に話してみよう。」
「はい、お願いします。」
二人はほっと胸をなで下ろすと、紅茶を飲み干して部屋を後にした。
 
 
カミュが天秤宮を訪ねようと部屋を出たところで、二人の姿が見えた。
「おお、カミュ、出かけるところか?」
「いえ、ちょうどお二人を訪ねようと思っていたところです。」
「ならばちょうどよかった。わしらもおぬしに聞きたいことがあっての。」
部屋の椅子に腰かけると、シオンは手にしていた便箋をカミュに手渡した。
「青銅の小僧どもに少しは年相応の楽しみを与えてやりたいと思ってな。今年はクリスマスプレゼントを用意しようと思っている。星矢たちの希望は何とか確認が取れたのだが、氷河の手紙にはそのように書いてあってな。おぬし、何か知らんか。」
「は、氷河の希望ならば少し前に私が預かっておりまして、プレゼントもすでに手配いたしました。」
「そうか。ちなみに、希望は何じゃ?」
「といいますと?」
「複数あってもよいものならば、こちらでも手配する。」
「いえ、それには及ばないかと。」
「しかし・・・わしらも氷河にだけ何もあげないというのは、ちとさびしいのう。」
「ならば直接お渡しになってはいかがでしょう。」
「それはならん。氷河にだけ直接手渡したのでは、他の者が気付いてしまうではないか。」
「しかし、サンタクロースからのプレゼントが二つというのもおかしな話です。」
「ならば、おぬしが、自分で直接わたすというのはどうじゃ?」
「それももう、用意してありますので。それにいつもと違うテイストのプレゼントが届いたら、氷河も混乱するでしょう。」
「氷河だけテイストが違っても、混乱は起きる。」
「それは私のあずかり知らぬこと。」
頑としてはねのけるカミュに対し、シオンはイライラした。
「・・・わかった。しかし何としても、プレゼントだけは届けにゆくからな!!」
捨て台詞を吐いて、シオンは部屋を出ていった。その後を童虎が追いかけてゆく。
二人の後ろ姿を眺め、カミュはため息をついた。
 
 
 
クリスマスイブ。教皇の間で、パーティは盛大に開かれた。
10時を過ぎたところで、女神は女子会へ。
それをきっかけにパーティは無礼講の様相を呈してくる。
氷河はさっきから時間を気にしていた。何しろ早く寝ないと、サンタさんは来てくれないのだ。ちらちらと時計に目をやる氷河に気づいて、カミュは立ち上がった。
「それでは夜も更けてまいりましたので、我々も・・・。」
ここからがイブだとばかり、カミュは氷河の肩に手をまわす。
「おお、そうじゃの。子供たちはそろそろ休むがいい。・・・だがカミュ、おぬしはしばし付き合え。」
両脇からじじ二人に腕を掴まれ、カミュは舌打ちした。
「カミュ、おぬしもたまにはゆっくりと酒を楽しむといい。」
シオンがそう言うと、氷河は遠慮がちに笑みを浮かべた。
「カミュ、お先に失礼します。どうぞごゆっくり楽しんでください。」
「お前たちも、もう部屋に戻るといい。」
シオンにそう言われ、紫龍は目を泳がせた。
「大丈夫です。後は私が何とかしましょう。」
ムウがそう耳打ちしてくれたので、紫龍はとりあえず部屋に戻って寝たふりをすることにした。
 
「ま、一献」
差し出されたブランデーをカミュは一気に飲み干した。
こうなったらじじ共二人をとっとと潰して部屋に戻るよりない。
「では私からも・・・。」
そう言ってカミュは二人のグラスに、芋焼酎をだばだばと注ぎ込んだ。
「なんだ? あれ?」
アイオリアが横目で見ながらムウに問いかける。
「誰がサンタを務めるかでもめてるんですよ。」
「あ?」
「・・・たく、誰が介抱すると思ってるんだか。」
そう言ってムウは、ピクルスをしゃりしゃりと噛み潰した。
気が付けば会場からは、氷河たち未成年だけではなく数名が姿を消している。
それはそうだろう。今日はクリスマスイブなのだから。
カミュは黙々と、じい二人と酒を酌み交わしていた。
 
 
部屋に戻った氷河は、シャワーを浴び、パジャマに着替え、すぐにベッドにもぐりこんだ。
こんなにぎやかなクリスマスは初めてだ。アイザックと3人で過ごしたクリスマスには及ばないけれど、たまにはこういうのもわるくない。
枕元に置いた小箱を開ける。そこには数枚のカードが入っていた。美しい箔押しのカードに、フィンランド語でつづられたメッセージ。
下にはアイザックの手で、ロシア語の訳が書き加えられていた。
 
サンタクロースは優しい。
修行中に負った、取るに足りない怪我のことまで心配して励ましてくれる。
 
貰ったプレゼントもさることながら、この手紙こそが氷河にとっては宝物だった。
カードの文字を目で追いながら、氷河はあたたかな思い出とともに眠りに落ちていった。
 
 
「さて、そろそろお開きにしましょうか。」
カミュの横には、巻き添えを喰ったミロが泥のように眠っている。
じじ二人は先ほどから、こくこくと船をこいでいる。
よし!
カミュは立ち上がると、宝瓶宮へと急いだ。
念のため、部屋の入り口を、フリージングコフィンを変形した壁で塞ぐ。
これで、サンタクロースは一匹たりとも入って来れぬはず。
 
「さ、お二人とも起きてください。」
ムウが声をかけると、二人はパッチリと目を開いた。
「フフ、18歳の肉体をなめるなよ。」
二人はいそいそとサンタクロースの衣装に着替え、プレゼントを片手に階段を降りて行った。
「カミュは寝ておらなんだな。」
「そうだな、宝瓶宮は最後にまわそう。」
 
 
さすがに眠い。
カミュは氷河の枕元にプレゼントとカードを置いた。
やわらかな金色の髪をそっと撫でる。
「おやすみ、氷河」
 
 
順調にプレゼントを配り終えた二人は、再び階段を上がってきた。
「あとは宝瓶宮だな。」
その宝瓶宮は、氷に閉ざされていた。
「こんなこともあろうかと思ってな、これを持ってきた。」
童虎は担いだ袋から、ライブラのソードを取り出して一閃した。
きらめく剣は夜の空気を切り裂き、氷はしゅうしゅうと蒸気をあげて消えた。
ガバッと跳び起きたカミュは、すぐに戸口へ駆けてゆく。
「ですから、プレゼントは・・・」
「スターライトエクスティンクション!!」
カミュの体は何処へともなく吹き飛んで行った。
 
「ふふ、よく寝ておる。」
しかし、氷河も聖闘士。
先ほどの物音で目は覚めていた。
起き上がろうとしたところでサンタさんの姿が見えたので、慌てて布団にもぐりこんで寝たふりをしたのだ。
薄目をあけてそっと覗くと、童虎とシオンの二人がごそごそとプレゼントをとりだす姿が見えた。
(あれ?サンタさんじゃない・・・?)
二人はプレゼントを枕元に置こうとしてやめた。
「ふん、あれも本当に弟子馬鹿よのう・・・。」
二人は窓のそばにプレゼントを置くと、足を忍ばせて去って行った。
 
ライトをつける。
枕元にも、プレゼントがある。
金のリボンのかかった箱に、いつものクリスマスカード。
「弟子馬鹿って言ってたな。」
氷河は封筒からカードを取り出すと、しげしげと眺めた。
 
サンタクロースは優しい。
先生より優しいと思っていた。
 
 
スターヒルまで飛ばされたカミュが部屋に戻ると、氷河が起きていて温かいお茶を淹れてくれた。
「先生、もう、サンタさんがきました。」
「そうか、良かったな。」
カミュはさも当たり前という風に目をそらしてしまう。
「今年は3人も。」
くすりと笑って氷河は窓の方へ目を向ける。
そこにはプレゼントがふたつ。
「氷河へ」
そして、
「カミュへ」
やれやれ・・・そういうことか。
 
「先生・・・ありがとうございます。」
「ん?」
氷河はカードを両手で持って、そっと胸に押し当てた。
「プレゼントも嬉しいけど、この手紙がずっと宝物でした。これからもずっと・・・。」

ついに、バレてしまったか。

カミュは小さくため息をつくと、うるんだ瞳でこちらを見つめている愛弟子をそっと抱き寄せた。



 
 
 
 


追記を閉じる▲