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☆矢熱再燃。 ただただ氷河が好きだと叫びたい二次創作ブログです。 色気のある話はあまり書けないと思いますが、腐目線なのでご注意ください。 版権元とは一切関係ございません。
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ご無沙汰しております。
ずい分久しぶりにブログを開いたら、黄金魂への不満で終わっていてこれはいかんと反省した次第です。
なんだかんだ言いながら、黄金魂、見ております。
バルドル、かわいかった!!
もうすぐ最終回ですね~!!


折角更新したので、書きかけのまま長らく放置していた小話を乗っけてみたいと思います。
この後ノープランなので本当に恐ろしいですが、
一氷増えろの祈りを込めて。

と言いつつ、一氷風味の一輝とBスワの話です。
Bスワ→一輝っぽいので、地雷な方はご注意ください。





拍手[18回]

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人の気配を感じて目をひらくと、間近に自分を覗き込んでいる黒い瞳と目があった。
思いつめたようなこの瞳には覚えがある。眠気が遠ざかり意識がはっきりしてくるにつれて、記憶が蘇ってくる。それが誰なのか思いあたって、氷河は声をあげた。
「ブラックスワン・・・?」
名を呼ぶとこくりと頷き、スワンは体を起こした。
「お前、生きていたのか・・・」
そう言うと、スワンは自嘲的な笑みを浮かべて首を横に振った。
たしかに氷河の上に乗りあげている、その身に重さを感じない。
失われたはずの右目も、しっかりと見開かれている。
「お前達がハーデスと戦った影響で、一時的に意識が目覚めた。今の俺は、いわゆる幽体というやつだ。しかしどうやら、俺の姿は同じ白鳥座を守護星座にもつ、お前にしか見えないらしい。」
氷河が体を起こすと、ブラックスワンはすうっと身を引いて、そばの椅子に腰かけた。
「この数日、一輝様のおそばにいたのだが、姿どころか声すらも届かない」
そう言ってスワンは、口惜しげに眉を顰めた。
「俺の意識がこの世にあるのは、あと一日だけなのだ。お前に頼みごとをするのも勝手な話だが、どうか俺の願いをきいてもらえないだろうか」
ブラックスワンがプライドの高い男だということを、戦った氷河はよく知っている。
その男がこうして頭を下げるというのはよほどのことだ。
絞り出すような声に、氷河は力強く頷いた。
「わかった。で、何をすればいい」
真っ直ぐに見つめ返してくる視線を受け止めて、ブラックスワンは告げた。
「今日一日だけ、お前の体を貸してくれ。一輝様のおそばにお仕えして、一輝様の今のお心持を知りたい」
「そんなことができるのか?」
「ああ、実はさっき少し試してみたのだ」
勝手にとり憑くな、と氷河はさすがに苦笑いを浮かべたが、そのまま乗っ取らずに許可を求めてくるあたり、彼なりに筋を通しているのだろう。
だったら氷河の返事は簡単だった。
「わかった。今日一日だな。だが、事情だけは俺から一輝に説明させてくれ。お前がとった言動が俺のものだと思われると、後々面倒だからな」
それだけ言うと、氷河は立ち上がって服を着替えはじめた。
「お前、俺を疑ったりしないのか?」
Tシャツに腕を突っ込んだ氷河に、話しかける。
大体富士の地底で闘ったときだって、最後の最後で自分を見逃そうとして墓穴を掘ったのだ。凍気を操る聖闘士。非情を装いながら、どこかおっとりしている。それは聖戦を経た今でも変わっていないようだ。自分にとってはその方が都合がいいのに、ついやきもきしてブラックスワンは言いつのった。
「一日だけで本当に体が返ってくるかとか、色々考えることはあるだろう」
「ああ、そうか」
氷河はTシャツを腕に絡ませたまま、ぼんやりと頭を傾げた。
「だがそんなこと、しないだろう? 一輝もお前と話したいだろうし、俺だって向こうの世界に話したい人がいるからな、気持ちはわかる。一日くらいどうってことない」
「そうか・・・」
心のなかがじんとする。ブラックドラゴンが言っていた友情とはこのことだろうか。氷河と手合せする中で、本当は気づいていた。気付いていながら、これまで認める気になれなかった。
「感謝する。この恩を返せればいいのだが・・・」
そう言ってブラックスワンは黙った。あと一日で消えて行く身では、恩を返すことなど叶わないだろう。だが、消えゆく最後の一瞬まで、このことは忘れまいと誓った。
「あ、あと、どうせなら、その服装はやめてもらえるか」
「は?」
レッグウォーマーを履く手を止めて氷河は振り返った。
「折角一輝様と一日過ごすのだ。恥ずかしくない格好がいい」
「貴様・・・」
アイデンティティーを否定され、ムッとしながらも、氷河はクローゼットを開いた。
「どの服がいいんだ?」
とはいえあるのは、擦り切れたデニムとTシャツばかりである。スワンはふわふわと近寄って吟味した挙句、パンク風に見えなくもない、太腿の部分が大きく破れた黒のパンツと黒のTシャツを選んだ。

朝5時。二人は連れ立って一輝の部屋に向かった。二人と言ってもスワンの魂は、ぼんやりと氷河の肩のあたりに浮かぶのみである。
氷河はノックもなしにドアを開けると、おもむろに一輝の頭をこづいた。
「な、何をする、キグナスっ。貴様、一輝様に向かって・・・!!」
「大丈夫だ。なんならお前も今日一日、こいつをしばき倒したっていいんだぞ。俺の凍気はあの頃より増している」
己のてのひらをみつめてうっすらと微笑む氷河の首に、スワンは手をまわした。力はないがぞっと悪寒が走るのを感じて、氷河はその手を振り払い睨みつけた。
「一輝様に無礼を働くものは許さん!」
「無礼も何も、こんなもの、踏みつけたって罰は当たらん」
手を掴んでもみ合う二人だが、一輝には氷河の姿しか見えない。
「朝っぱらから何をやってるんだお前は」
不機嫌に目を開いた一輝をみて、ブラックスワンはうるうると瞳をうるませた。
「話がある。起きろ」
氷河は一輝のシャツの襟元を掴むと強引に引き起こし先ほどの話を語った。
「・・・というわけだから、今日一日、お前とスワンで何を話そうが、何をしようが、それは俺のあずかり知らぬことだ。俺の言動だと思われるとなかなか厄介だからな、それだけ注意してくれ。じゃあな」
そう言って氷河は目を閉じた。
「朝から寝ぼけやがって」
一輝はため息をついたが、氷河の体が崩れ落ちたので床にぶつからないよう慌てて手をのばし抱きかかえた。
元々白いが、その顔は血の気を失ったようにみえる。息もしなければ、体温も感じない。
ぞっとして、頬をぴたぴたと指で叩く。
「おいっ! しっかりしろ!」
瞼が、ぴくりと動いた。
ほっとして息を吐くと、意識が戻るのを待った。
左の瞼に、うっすらとした傷が残っている。
この瞳が、奪われなくてよかった。
と同時に、自分のせいでなくしてしまったもう一つの光のことを思って胸がずきりと痛んだ。

やがて金色の睫毛に縁どられた瞼がゆっくりと持ちあがり、おぼろげな蒼い瞳が現れた。
「大丈夫か、ひょ・・・」
「一輝様っ!!!!!」
意識を取り戻すと同時に、氷河はがばっと腕を回し、ぎゅうぎゅうと一輝にしがみついた。
そのまま一輝の首筋にじっと顔を埋めると、すうっと鼻から息をすいこんだ。
「はぁ~~、一輝様の匂いだ・・・」
「・・・・・・スワンか・・・」
「はい!」
キラキラと目を潤ませて覗き込んでくる表情には、確かに覚えがある。しかし、氷河の姿でそれをやられると、幾分感覚がおかしくなる。
一輝は氷河の背中に回していた手を外すと、立ち上がって眉間を押さえた。
「氷河からは、一日お前に体を貸すという話を聞いた。それで、間違いないか」
「はい。・・・あの・・・、わがまま言って申し訳ありません。ここ数日、一輝様のおそばに浮遊しておりましたら、どうしても話がしたくなって・・・」
膝の上にのせた拳をぎゅっと握りしめる。考えなしの行動をとったことが、急に不安に思われた。
「・・・あいつには大きな借りが出来たな・・・」
「はっ」
「・・・だが、お前と再会できるなどと思いもしなかった。戦いに巻き込んでしまったことを、詫びたいとずっと思っていた」
一輝が膝をついたので、ブラックスワンは慌ててその手を両手でつかんだ。
「一輝様は、俺たちのことを忘れてしまったのですか? 俺たちは、考えなしに誰かに巻き込まれるような人間じゃない。男として貴方に惚れたから、ついてゆこうと思った。
それに、俺たちだって、奴らと戦うなかで、気付いたことがあったんです。だから巻き込んだなんて、そんな風に思わないでください」
目を見開いた一輝の顔がずい分幼げに見えて、ブラックスワンは笑みを浮かべた。
「白銀聖闘士に歯が立たなかったのは悔しいですが、仕方ありません。ドラゴンが先陣を切ったから、俺たちも覚悟を決めて戦いました。あれから、会えてないですけど。きっとみんな同じ気持ちです」
ぎゅっと腕がまわされて、スワンは再び一輝の胸の中に戻った。耳元で、幾分湿った一輝の声がする。
「すまなかった・・・」
あやまってほしいなんて、思ったことがない。
けれど一輝のその一言で、自分の人生は捨てたものではなかったと、スワンは確信した。

と、隣室から目覚まし時計の音が聞こえた。
一輝はしばし思いを巡らすと立ち上がった。
「行こう。ここはいささか面倒だ」







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氷河さんのお誕生日ですね!!
ものすごく久しぶりに小話を書いてみましたが、萌え要素がゼロ・・・orz。

マーマの身元ねつ造話です。
親戚の叔母さんとか出てきます・・・。

登場人物は、マーマと氷河とちょこっとだけ一輝です。



拍手[17回]


私の宝物


「遅くなりました」
冷たい外気を遮断するため二重にされた扉の二つ目を開くと、すぐに氷河が駆け寄ってきた。ナターシャはしゃがんで氷河を抱きとめると、柔らかな金色の髪に顔を埋めた。冷たい頬に、やんわりと幼子の体温が伝わってくる。シャンプーと汗の入り混じった、我が子の甘い匂いを存分に吸い込んでから、顔を上げて蒼い瞳を見据える。
「おかえりなさい。マーマ」
「ただいま。氷河」
今日は休みのはずだったのに、急に仕事が入ってしまった。留守番することに慣れてしまった氷河は、ふてくされるわけでもなくナターシャを仕事に送り出し、息を切らして走ってきたナターシャをニコニコと出迎えた。
「さ、暖炉の前においでなさい」
傍で見守っていたアンナが声を掛ける。ナターシャは氷河の肩に手を置いたまま立ち上がると、丁寧に頭を下げた。
「叔母様。今日はありがとうございました。急なことで、本当に助かりました」
「いいえ。ヒョウガはいい子にしていたわよ。さ、お茶でも淹れようね」
ナターシャがストールを外すと、月の光のような豊かな髪がさらさらと肩にこぼれた。白く美しい肌は上気し、頬がバラ色に輝いている。
ああ、こんなに美しい娘なのに。
アンナは小さくため息を漏らす。
この子は姉さんの自慢の娘だった。だのに、何だって、遠い異国の男などに心を奪われてしまったのか。
数日前、アンナはナターシャに知人の息子を紹介しようとした。先方は乗り気だったのに、ナターシャは首を縦には振らなかった。
「ミツマサは素晴らしい人」
そう言ってナターシャは、大切なものを仕舞い込むように両の手を胸に置いた。いくらナターシャから話を聞かされても、一度も顔を見せたことのない異国の男など、アンナには信じることが出来ない。
ナターシャにも、アンナの気持ちはわかる。こうして時折、氷河を預けている。一人でもこの子を育ててみせると言いながら、彼女を頼って生きていることも確かなのだ。それでも、愛する人は一人だけ。自分を偽って生きてゆくことは出来ない。
アンナの丸い背中を見つめるナターシャの手を、氷河がぎゅっと握った。
「あのね、マーマ。ぼく、お絵かきしてたの」
「そう。では、見せてくれる?」
「うん!」
氷河はテーブルへと走って行き、散らばった数枚の白い紙を手に取った。どれがよく描けたか吟味するように見比べながら、暖炉の前のソファにナターシャを座らせ、そのそばに座り込んだ。
「これは、バス」
強い筆圧ではみ出さんばかりに描かれた絵に、ナターシャは思わず笑みをこぼした。車の後ろには荒っぽい線が何本も引かれている。
「ずいぶんと走っているみたいね」
「そう。このバスはね、びゅんびゅん、遠くまで走るよ」
「あら、ここに乗っているのは、だあれ?」
「マーマだよ。その横が、ぼく」
照れくさそうに氷河は笑った。一つだけとびぬけて大きな窓のなかに、並んだ顔がふたつ、描かれている。目も口も、大きな弧をなしているいつものニコニコ顔。氷河の絵の中で、ナターシャはいつも笑っている。これ以上なく優しいその顔が、ナターシャは好きだ。
氷河から見れば、私はこんな風に優しく見えるのかしら。それとも、そうあって欲しいという願いなのかしら。願いだとしたらちょっと悲しいけど、それでもこの顔を見ると私はホッとする。いつまでも、こんな風に笑った顔で描いてもらえたらいい。
「それからね」
「ええ」
「こっちは何かわかる?」
長い睫毛に縁どられた、真ん丸な目がナターシャを覗き込む。
「これは・・・、お船ね」
そう答えると、氷河は満足げにふうと息を吐いた。
「そうだよ。大きい船だからね。これだったら、ニホンへも行かれるよ」
「そうね・・・」
無心に絵を見つめる氷河の髪を、ナターシャは撫でた。
私がその船を待っていること、あなたは知っているのね。そうよ、いつか、お船に乗って日本へ行きましょう。あなたのお父様と兄弟たちのいる日本へ。
ティーカップをテーブルに置いたアンナが、寂しげにこちらを見つめているのにナターシャは気づいた。
「新しい人生を見つけて、兄弟でも作ればいいのさ。あんたと二人っきりで生きていくんじゃ、この子だって可哀想だよ」
柔らかくて小さな氷河の耳のなかにも、アンナの言葉が入っていった。ナターシャは氷河に見えないようにうつむいて唇を噛んだ。アンナの優しさが言わせた言葉だということはわかる。けれどもこんな小さな耳のなかに、入れてほしくなかった。
「お言葉ですけれど、叔母様。氷河は、可哀想なんかじゃありません」



帰り道、ずんずんと歩いてゆくマーマの手は、俺の手を痛いくらいに握っていた。
「氷河、あなたのお父様は立派な方よ。それに、日本にはあなたの兄弟がいる。私も会ったことはないのだけれど、大丈夫、きっと仲良くなれるわ」
「うん。大丈夫だよ。マーマ・・・」



目を開くと、黒い瞳がじっとこちらを見おろしているのがわかった。
「おい、そろそろ降りて来い」
「ああ、寝ていた」
ソファから身を起こし、顔にかかっている髪を手で払った。
朝から一階は慌ただしかった。瞬たちが誕生日だからと、俺のためにケーキを焼いてくれたのだ。傍で見ているのも照れくさく、二階の私室に来て、そのまま眠ってしまったらしい。その間にずいぶんと懐かしい夢を見た。
っていうか、俺。声に出してはいなかったろうか。マーマって、ずい分はっきりと口にしたような気がする。
腰に手を置いたまま、じっと待っている一輝の表情からは何も読み取れない。わざわざこちらから、確認するのもおかしな話だ。立ち上がると一輝は背を向けて、ドアノブに手をかけた。
「誕生日に免じて、寝言で母親を呼んだことは黙っていてやろう」
「チッ」
けれども心のなかに、夢の中の優しさが満ちていた。やがて日本で出会った、一輝の幼い顔を思い出す。懸命に瞬を思いやる姿を見て、信じられる奴だと思った。
大丈夫だよ、マーマ。
俺に、命を与えてくれてありがとう。
「マーマは大切な人だ。別に恥じることなんかない」
開き直ってそう言うと、一輝はニヤリと笑った。
どうせコイツにも、思い当たる節があるんだろう。



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