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ずっと放置のブログなのに、見に来てくださってありがとうございます。
拍手もありがとうございました。
続く、第三話です。
絵梨衣さんが出てくるのでご注意ください。
人格無視です。とってつけたようにバードウォッチングをさせる。
そしてこの後はノープラン!!
(いや、桃シーンだけは思いついていなくもないが、まだ朝。一日って短いけど長い。)
拍手もありがとうございました。
続く、第三話です。
絵梨衣さんが出てくるのでご注意ください。
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そしてこの後はノープラン!!
(いや、桃シーンだけは思いついていなくもないが、まだ朝。一日って短いけど長い。)
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「それにしても、絵梨衣ちゃんにこんな趣味があるなんて知らなかったわ」
美穂は首から下げた双眼鏡を手にしながらそう言った。
「あら、でも、生き物はなんだって好きなのよ。エナガの赤ちゃん、ついに生まれたから、美穂ちゃんにもどうしても見せてあげたかったの。」
学園の仕事をしばし忘れ、二人は少女に立ち返り公園の中を歩いていく。朝露の残る草のにおいが二人の体を満たした。
「そこの、池の向こう側の、欅の木・・・」
指さした絵梨衣はふと立ち止まった。
「氷河さん・・・?」
「え・・・?」
絵梨衣が一時期氷河と親しそうだったのは、美穂も知っている。しかしその後は戦いに次ぐ戦いで、二人の仲はそれっきり進展することはなかったようだ。
「あ、絵梨衣ちゃんってば、何で隠れるのよ」
絵梨衣はカーブした小道の柵の影にしゃがみ、美穂もついつられてしゃがみ込んだ。
氷河は欅の木のそばに、コンビニの袋をぶら下げて立っている。
その横にいるのは、一輝さん??
二人は並んでベンチに腰を下ろすと、袋からペットボトルと大量のおにぎりを取り出した。
しゃがみ込んだまま、絵梨衣が双眼鏡をのぞきこんでいる。あわてて美穂もピントを合わせた。
どうやら一輝が、具について説明しているらしい。氷河は頷きながら聞いているが、ちょくちょく一輝を見つめては、はにかむようにおにぎりに目を落とす。
「なんだろう、あの二人、なんかちょっと萌える・・・」
絵梨衣がそっとつぶやき、美穂も思わず唾を飲み込んだ。
一輝に勧められ、氷河は鮭のおにぎりを手に取った。一輝は自分のおにぎりを手に取り、ビニールに切れ込みの入った①と書かれたところを指さすと、するすると下に向けて割いた。これまで気にしたことがなかったが、氷河は日本での生活にまだ全然慣れていないようだ。おぼつかない様子で①の行程をこなしたものの、②のビニールを横に引っ張るところで戸惑っている。一輝は自分のおにぎりを口に咥えると、氷河の分もビニールをとってやった。教えるようにゆっくりとしてみせ、氷河が口に運ぶのをじっとみつめている。氷河は少し緊張した面持ちで海苔に歯をあて、一口頬張ってごくんと飲み込むと、満足そうに笑みを浮かべた。みつめていた一輝もほっとしたように顔をほころばせ、自分のおにぎりを頬張る。
「なんなの、このつがい。マジ萌える」
絵梨衣ちゃん、マジとか言うんだ・・・。
邪神降臨の気配を感じつつ、美穂も双眼鏡から目を離すことなく二人を見守った。
一輝の笑顔を美穂は初めて見る。自分の好きなものを好きな人に認めてもらえたと言う満足感が滲んでいて、美穂は初めて一輝をかわいらしいと思った。一方で氷河は、一輝の言動をすべて心に刻もうとするかのようだ。好きな人が、自分以外の人にあんなひたむきな視線を向けていたら傷つくだろうな。そう美穂は絵梨衣を気遣ったが、なんだか逆にテンションが上がっているようなのでホッとする。
氷河が二つ目のおにぎりを手に取るのを、一輝はちらちらと気にかけている。今度は自分でビニールをむき、がぶりとかじりついた氷河は、二口目で急に眉をひそめて口元を押さえた。
「梅干しだ」
絵里衣が小さくつぶやく。
一輝がいたずらっぽく笑いながらペットボトルの水を差し出す。氷河はごくごくとそれを飲み下すと、涙目で訴えるように一輝を見た。一輝はこらえきれないようにゲラゲラと笑うと、氷河のおにぎりを取り上げ、自分の食べかけと交換した。
兄弟なんだし、そんなの、珍しいことでも何でもない。しかし自分の食べかけを口にする一輝を、氷河ははっとしたように見つめて顔を赤らめた。
そうだったのね、氷河さん。最近ずっと寂しそうだったけど、よかったね、よかったねと、美穂は熱くこみ上げるものを感じながら頷いた。
「次は米粒つけろ」
絵梨衣が低い声で念じている。確かにここまで来たらベタなあれをやってほしい。ここまで世話を焼いているのは一輝の方だが、だからこそ一輝の頬についたのを、氷河にぱくりとやってほしい。
しかしそう、ベタの神様は降りてこない。二人は無難に食べ終わり、そのまま並んで腰を下ろしている。おにぎりがなくなった分の距離を、氷河がちゃっかりと詰めた。
何を話しているのかわからないが、一輝が自分の腕を伸ばして検分するような仕草をする。その腕は星矢と同じように、いくつもの傷跡が刻まれていることだろう。氷河はその手を取ると、白い指先で傷跡をたどり、やおら唇を押しあてた。
「見た?! 絵梨衣ちゃん! 見た?!」
返事より先にカシャカシャという音が聞こえた。絵梨衣はエナガのひなを撮影するために持ち込んだ望遠カメラで、決定的瞬間を捉えたようだった。
敬虔な騎士の仕草にも見えるそれが、次第に官能の色を見せ始めたところで、一輝が金色の頭をコツンと叩いた。氷河は顔を上げて頭に手をやると、少し不服そうに唇を尖らせた。
「あ! いけない! そろそろ学園に戻らないと・・・」
我に返ると、腕時計の針は7時近くを指している。絵梨衣はカメラから目をそらさずに、「無理」とだけ言った。
「でも子供たちの朝ご飯の時間になっちゃう。私だってずっと見ていたい。でも行かなきゃ。また明日こよう? ね、きっと明日はもっと濃いものが見れるはず!」
シャッターを切り続ける絵梨衣を引きずるようにして、美穂は断腸の思いでその場を離れた。
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一輝は氷河(Bスワ)の手を引いて屋敷の階段を下り、重たい一枚板のドアを開けようとしたところで瞬と鉢合わせた。押そうとしたドアが勝手に動いたので、一輝は少し前のめりになった。首からかけたタオルで汗を拭く瞬は、早朝のジョギングを終えたところのようだ。
「あれ? 兄さん・・・と氷河?」
瞬は珍しそうに二人の顔を交互に見つめると、つながれている手に気づいた。視線を感じて一輝は慌ててその手を放したが、
「出かけてくる」
そう言って再び氷河の手を引っ張った。
「あ、朝ご飯は?」
「いらん」
一輝は氷河の手を引いて走り、氷河の方は大人しく手を引かれたままちらりとこちらを振り返った。
「変なの」
顔を合わせれば喧嘩ばかりだと言うのに、どうもあの二人のことはよくわからない。拳を交えた者同士の暗黙の了解のようなものがあって、ごくたまに入り込めない気がするときがある。喧嘩を目にする度お互いもっと素直になればいいのにと思うけれど、そうなったら二人きりでどっかに行っちゃう気がする。
「手なんかつないじゃって。一線越えちゃった?」
呟くと、妙に従順そうな氷河の顔が思い出されて、瞬は頭を横に振った。
庭だけでも相当な広さがあった。門を出たところで、ようやく一輝は氷河の手を放した。
スワンとしてはずっとつないでいたい気分であったが、大通りに出ると朝でもそれなりに人が歩いている。
「まずは飯だな。・・・と言ってもこの時間だとコンビニくらいか」
目的を定めたようで、一輝は前を向いてずんずんと歩いてゆく。その背中は、記憶にあるものより一回り大きくなった気がする。あの頃のようなピリピリと張り詰めた気配はないのに、あの頃よりずっと強くなったことがわかる。ほれぼれする背中だ。そう思うのは自分だけではないようで、時折すれ違う人の視線を感じる。
どうだ、これが俺の一輝様だ。
そう叫びたい気持ちでぶつけられた視線を振り返ると、3人寄り添うように立っている女子高生が、口元に手をやってピョンピョンとはねた。
あ・・・。
スワンは女子高生の後ろの、窓ガラスに映る自分の姿に気づいた。
豪奢な金髪の、貴公子然とした姿がそこにはあった。一輝にだけ投げかけられていると思っていた視線は、自分が動かしているこの躰にも向けられていたものだった。
(くそう、派手な奴・・・)
男の自分から見ても嫌になる程の美貌に苛立ち、それからそんな男が身に着けようとしていたもっさりしたレッグウォーマーを思い出して、スワンは小さく笑った。
「どうした?」
一輝が振り返る。
「あ、いえ」
飛びつきたい思いをこらえて、スワンは一輝に駆け寄った。
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